パチモノ勇者の成り上がり   作:雨在新人

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矛盾の実践、を眺める鼠

決闘は結局1vs1となった

 

 まあ、盾の勇者本編でもそうだったしな。本編ではプライドの問題から仲間を使うことを槍の勇者が許さなかったという形だったが、今回はちょっと違う。槍の勇者が仲間を使うならば、それ即ち俺が盾の勇者側として参加する大義名分を作ること

 向こうの思惑としては盾の勇者を大々的に潰す演目としたい訳で、それを引っ掻き回す可能性のある薄汚いネズミなんぞ居てはいけないという訳だ。盾の勇者(岩谷尚文)に攻撃手段はない。それが勇者の武器の盾というもの

 いや正式には攻撃手段あるのだが、色々と使いにくい面が多すぎるしそもそもが基本オーバーキル専用だ。アイアンメイデンは実質拘束技なので置いておくとして、憤怒のカースの固有効果であるカースバーニングと、カースシリーズ特有の処刑具スキル

 確か盾はブルートオプファーだったか、トラバサミで真っ二つにするスキルだ。外見はエグいものの魔法感とか全く無いが、これは勇者の武器のスキル。勇者の武器、即ちこの世界の守護者が死ねといっているに等しい為、火力はもう語るのもアホらしい。ぶっちゃけた話、誰であろうが耐える方が可笑しい。耐えられるのはステータス差の大きな別の勇者か、或いは世界を侵略する神、そしてその力の多くを与えられた強大な転生者くらいだろう

 つまり、処刑具スキルは撃てば相手は死ぬので使えず、カースバーニングも、尚文のはセルフカースで攻撃反応型である為使いにくい。というか、そもそも今の尚文カースシリーズ解放されてないな確か、元から関係ないか

 

 因みにだが、クソナイフがクソナイフなので変化を禁じられているが、しっかりと投擲具にもカースシリーズはある

 というか、既に憤怒の投槍と高慢の投剣Ⅱとインヴィディア・チャクラムⅢはカースシリーズ専用ツリーに見えている。憤怒は兎も角、高慢と嫉妬って何で解放されてるんだこれ、しかも育ってるし。ついでに色欲が無いのが意外である、あれだけクソナイフがおちょくってきてるというのに。なので一応俺もクソナイフがカース封印解除してくれればカースバーニングやら処刑具スキルやらは撃てる。まあ、憤怒の投槍のスキル解説を見る限り俺のカースバーニングは視線誘導地点指定発火型。アヴェンジブースト第一段階で白目含めて真っ赤に染まっていては視線が無いので使えないという宝の持ち腐れっぽいんだが

 

 閑話休題。とりあえず、盾と槍では攻撃手段の無い尚文に勝ち目はない。リファナに言えば嫌な顔されるだろうが、本当に無いのだ。だが、此処にクソネズミが居たとしよう。王達からすれば戦力は未知数だ。ぶっちゃけクソナイフ使えば今の段階でならば此処に居る全勇者を同時に相手しても多分勝てるが、クソナイフは使ってはいけないのであくまでも仮定。だとしても、もしかしたら番狂わせ起こせるかもしれないと考えたら、100%の勝利を捨てる訳がないとなる訳だ

 

 なので、見守る

 ラフタリアはリファナが何とか落ち着かせてくれたようで、今はその腕のなかで眠っている。疲れもあったのだろうか

 リファナの目もちょっと疲れていそうなものだが、一人気丈に振る舞っていて。その辺りは兵士に取り囲まれていて幾らか殺さないと近づけない

 

 「おらぁっ!」

 決闘の開始と同時、尚文がマントを広げる。弱めのモンスター相手ではろくにダメージを受けない事を利用して、自分に噛み付かせていたのを解き放ったのだ

 ……そういや盾の勇者本編でもやってたなそんなこと

 

 ……だが

 「大風車!」

 解き放たれたバルーン達は元康が槍を振り回すだけで軽く弾けて倒れる

 いやまあ、寧ろあの時何で効いてるんだってなるくらいの雑魚だものなバルーン、ぶっちゃけ多分村に居た頃のラフタリアにナイフだけ持たせて放り出したとしてバルーン1体になら勝てるって程度のクソザコ。仮にも勇者相手には目眩ましにしかならない

 だが、その隙に尚文は走り接近する。槍の弱点はその長さ。射程が長い利点が、懐の相手を攻撃出来ない弱点にもなるという判断だろう

 ……おい尚文、何で相手が勇者だと分かっててそんな馬鹿思った

 

 構わず尚文は長槍の穂先を避けて全体重をかけて突進し……

 そして、直前で姿を変えた短槍に自ら突き刺さった

 「ぐあぁぁっ!」

 「なおふみ様!」 

 ……そりゃそうである。槍は懐に入ればその長さゆえに扱いが難しくなる。それが本来の弱点だ。だが、勇者武器はコピーなり解放なりした武器に姿を自由に変えられる。つまり長さだって何時でも変えられるのだ。さっきは先手必勝と特に長い槍にしてようが、接近されたら短い投槍に変えて対応とか普通にする。俺でもするいや俺の場合は長めの投槍で誘ってナイフでぐさりだけど。対勇者経験が足りなさすぎるぞ尚文

 なんて端から見てるだけかつかつて女神の言う通りに勇者武器を集めようと対勇者シミュレートしていたからこそ言えるネズミ的考察を脳内で垂れ流しつつ

 

 それでも諦めず尚文は何とか元康の体を押し倒す事に成功

 ……あ、普通に蹴り飛ばされた。だよなぁ、四聖勇者で最も筋力関連延びやすいのって槍だしレベル差もあって抑えておける訳がないわこれ

 それでも何とかギリギリ残してたらしいバルーンを股間に噛み付かせるも……

 ダメージ通ってないなあの元康。気にせず立ち上がって素手で破裂させた。流石バルーン、弱点の股間狙って尚ダメージ無しか。ステータス的には当然である

 

 ヤバイぞこれ。何の介入も無くても普通に尚文負けそうだわこれ。どうすんだこれ

 どうせ勝てないならば精一杯嫌がらせしてやるよとは原作での尚文の台詞だったか。嫌がらせどころかそれすら出来ずにボコられてるんだが。本来のステータス差を考えれば当たり前と言えば当たり前なんだがある程度有利になってくれないと俺が困る。あのクソビッチが魔法で援護して反則してくれないじゃないか。それを咎められないから向こうの非が作れないぞ

 

 「俺の、勝ちだ!

 リファナちゃん達を解放しろ!」

 2分後、元康は足で押さえ付けた地面に転がる尚文の首筋にその槍を突き付け、宣言した

 ……おーい、スペック的には当たり前だが普通に負けてんじゃねぇよ尚文ぃっ!

 「ふざけるな!」

 威勢だけは良く尚文が叫ぶ

 「しかし、これは誰の目にも勝敗は明らかじゃ。盾が認めずとも関係など無い!勝者は……」

 まあ、けれども地面に俯せに押さえ付けられていては負け犬の遠吠え。槍の勝利をあのクソ杖が宣言しようとして……

 

 クソナイフが震えている事に気が付いた

 どうしたクソナイフ、まさか此処から介入して尚文勝たせろと?いや違う?

 ならば……と思って、その震えが何なのかに気が付いた。共鳴するように、武器ツリーが反転しかけている。即ち……

 「リファナぁっ!

 ドライファ・ライトニングオーラ!ドライファ・プラズマフィールド!」

 「……のか

 全部、全部、奪うのか!」

 全速で兵士なんぞ気にせずリファナの前へ、そして自分に使える精一杯の防御魔法を展開。直後、周囲に黒い炎を撒き散らしながらゆらりと尚文が立ち上がった。その腕の盾は禍々しい姿に変化している

 ……憤怒の盾……?マジで発現させやがった

 ん?ポップアップ?何だ、憤怒の盾Ⅱか。って段階なんて関係ないだろクソナイフ

 って特に大きな炎弾が迫ってくる!プラズマフィールドでは……防げる訳があるか!おい尚文!リファナまで焼き殺す気かボケ!

 「ブレイズダガー!」

 爆発するダガーで迎撃、宙で爆発させて黒い炎を相殺する

 ……、ついクソナイフぶん投げてしまった。まあ良いか、リファナの為だ

 

 「ぐぅぅぅっ!」

 カースの炎は流石に堪えたのだろう、足を退けて踞る(元康)の首根っこをアイアンクローで掴み、喉を焼きながら黒い炎を纏う尚文が嗤う

 「俺の、勝ちだ」

 ……何だ、案外正気だなあいつ。じゃあ良いか

 そんな尚文に向けて、どこぞのクソビッチが魔法を唱え……

 一瞬だけ迷う。ぶっちゃけこれ、無視しても良くないか?と。多分セルフカースであの女神の尖兵なクソビッチは焼けるだろうし、明らかに可笑しいから止めようとしただけと言われれば大義名分として可笑しくない

 って迷うな!フラッシュスロー!

 閃光の早さで迎撃、炸裂

 

 その炸裂音に、ゆらりと尚文が振り返った。亡霊みたいな動きしてるぞ尚文大丈夫か尚文

 「バーストランス!」

 「なっ、ぐっ!」

 「ぐわぁぁっ!でも!」

 その隙に元康が爆発する槍で反撃、自分もまた黒い炎に焼かれつつも尚文の拘束を再び脱した

 

 「そこまで!」

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