パチモノ勇者の成り上がり   作:雨在新人

30 / 149
漸く今作品のメインライバルの登場である

原作でこの辺りの時間軸のタクトって何してたんでしょうね、ハーレムで快楽に浸って遊んでたとかそんなんですかね?


転生者の足音

「『ポータルジャベリン』!」

 唱えると共に、俺の見ている景色はリユート村のものから廃墟へと変わる

 尚文の奴のポータル何処へ繋がってるんだと思ったら、リユート村……ではなく、その近くの山であった。尚文が赤ビッチや元康を恨みつつ一人で籠っていたあそこである。俺にとっての原点があの村であるように、尚文にとってのこの世界での原点は召喚の間…ではなくあの即席の寝床であったようだ

 なんか悲しくなってくるな、尚文の事だけど

 

 ということで山を降りてリユート村へ来たところ感謝感激歓迎の雨霰。それを終えて一息ついた夜、こそっとポータルを使ったというのが現状である

 因みにちょっと村の外の空気吸ってくる、とメモは残してきた。パーティメンバーならば互いの居場所は分かるがそれも魔法で誤魔化した。リファナやラフタリアは幻影系の魔法に素養があるから軽い偽装はバレるかもしれないが、尚文はそんな素養無いので安心だ。パーティメンバーの居場所を探られても村から少し離れた場所に居るように見えることだろう。尚文が居るはずと偽装した場所に近付いてきたらポータルで飛び直せば良い。リユート村、システムエクスペリエンス、村の跡地、城下町の4つが現在のポータル地であるのだから。因みに跡地へのポータルを消したくなかったのでスキルカスタムして枠を増やしてある。かなりオーバーカスタム費用が高くて正にぼったくりクソナイフだったが仕方ない

 

 「相変わらず廃墟だな」

 なんて呟くものの、目には灯りが映る

 ……クソナイフがざわついている。空気がピリピリする。謎の焦りが胸の奥から湧いてくる

 「……『我、転生者が天に請い、地に祈り、理を切除し、世界を繋ぎとめよう。龍脈の力よ。猛る激情の雷と勇者の力と共に形を成せ』」

 口をついて出るのは俺の使える最強の魔法段階。疑似リベレイション

 そんなもの基本過剰過ぎるものだが、使わないといけないような気がして

 「『力の根源たる投擲具の偽勇者が命ずる。我が願う者の姿を雷光の歪曲の中に隠せ!』」

 「『アル・リベレイション・ホログラフィックプラズマⅡ』!」

 力を借りて、その姿を隠す。周囲に満ちる静電気。それでもって光を屈折させ……って魔法だからそんな理屈じゃないか。特にリベレイションだしなパチモノだけど

 

 姿を隠したまま近づいて……灯りの正体を確かめる

 うん、冒険者っぽいハーレムパーティだな。男一人に、女がいっぱい

 1、2、3、4、5……まだいやがる。なんだこのパーティふざけてるのか女しかいねぇな。男はどうした男はこいつ昔のってか今のですぞってない元康か何かか?

 まずはたった一人の男を見る。顔は整っていて線は細いな、しっかり女装したら美少女と見間違えられることもありそうなくらい。勇者で言えば樹系の顔だな。髪は緩くウェーブのかかった金のショートで目は青。男らしさでも出したいのか赤いバンダナを巻いているが本人の顔立ちが男の割には可愛い系なのであまり似合っていない

 服装はラフなジャケットにジーパンととても現代的だ。フォーブレイでは実用化されてタクト様ブランドとして若い男女の間で大流行してるらしいがメルロマルクでは珍しい外見

 ……怪しさ満点である。役満である

 うん、恐らくそうだよなクソナイフ?と脳内で問いかけるとクソナイフが震えるくらいにはビンゴである

 

 回りの女は十人十色。東洋の龍を擬人化したような満月を思わせる女、狐の尻尾を二本生やした幼女、ドラゴンそのものの尻尾と翼を生やした巨乳女、強い花の香りのする恐らくは花の擬人化っぽい生えてるのか付けてるのか分からない花飾りの女、メルロマルク外では愛玩奴隷として人気の猫耳猫尻尾女、どこかの国の姫のような気品をまだ残す女、白衣の幼女、そして……メイド服の女

 メイド服の女が一番近くに居るな。甲斐甲斐しく手に持った皿から料理を掬って差し出している

 ……よく荒れないなーこのハーレム、どうなってんだホント

 

 って待てよ?あの差し出してる料理の皿に載っている酒……安酒だな。ほぼ間違いなく、狸の親父の為に俺が置いていったもの。御供えモノを私物化した上に呑もうというのかてめぇ殺すぞ

 なんて気持ちはぐっと堪えて暫く様子を見続ける。料理を食べてふにゃっと少年の顔が緩んだ

 実に幸せそうで結構な事だなてめぇ俺は今そんな顔出来ないってのに良いご身分だ。何様だお前?

 鞭の勇者様である

 

 「美味しいよ、エリー」

 「タクト様、嬉しいです!」

 なんて金髪男がメイドの頭を撫でている。メイドの顔も蕩けてるな、これがリアルニコポか

 何という茶番か

 だがこれで確定。奴はタクト。タクト・アルサホルン・フォブレイ。少し前に話題に出した転生者御本人である

 何でもうメルロマルクに出向いてきてるんだこいつ……早いわ、まだ四聖勇者じゃこいつに対抗する準備整ってないぞ。ってか俺でも無理である。ぶっちゃけた話、アヴェンジブーストが完全に発動してすら勝てるか怪しい。タクト一人なら勝てそうな気はするんだが、ハーレムメンバーと同時に相手して勝てるかというときっと無理だ。俺が殺される前にタクトとあそこの狐幼女とドラゴンと白衣に止めをさせるかどうかって戦いになるな。タクト一人で良いんじゃないかって?この世界には魂がある。概念ではなく実際に。なのでタクト殺してもハーレムメンバーのうち魂云々に長けた奴も同時に始末しないと残った魂に器を作ったとかそんなんで復活されて終わりだ

 つまり、長々と語ったがまあまず勝てないという訳である

 「にしても、使えなかったよなあいつ

 俺にわざわざ投擲具の勇者がこの辺りに居たって話をしたのに居ないとか」

 「そうじゃ、タクトの手を煩わせるだけじゃったの」

 「タクト様の貴重な時間を奪うなんて」

 やんのやんの、口々にタクトに賛同する女共

 ……どうすんだこいつ。どうやってか追い払わないと詰むぞこれ。メルロマルク内に居る勇者は3人+α。盾、槍、杖、あとは弓も居るかもってくらい。投擲具居ないし他で良いかと誰が狙われても勝てない

 

 ……クソナイフ?お前斧とか槌とかのフリ出来るか?

 なんて問いに、クソナイフの姿が変わる。大きめの投げ斧の姿に、そしてトンカチの姿に、ところころと

 よし、投擲具だけど斧やハンマーっぽいな

 迷ってる暇はない。やるしかない

 

 フロートダガー、チェンジダガー、として合図と共に突撃してくれるナイフを予め出しておき、武器を投げ斧に変える

 更にはもう一度アル・リベレイション・ホログラフィックプラズマ。投げ斧に巨大な輝く斧の幻を被せる用意を調え……

 ぐえ、魔力尽きた。まあ良い生命力を振り絞れば魔法は使える。後で虚脱感にぐぇぇぇっ!するだけだ

 良いなクソナイフ、と更にポータルジャベリン発動待機。平行しすぎて頭が痛い。だが、それが割とやり易いのも投擲するので複数投げる事が割と当たり前の投擲具の利点。他の勇者武器に比べてスキルの連射性が高いのだ。火力はちょっと一発一発抑え目だが

 

 「……何だよ、折角お前から奪ってやろうとフォーブレイ行ってたってのに入れ違いかよ」

 最近板についてきた……と思いたい勇者ユータのフリをしつつ姿を見せる

 「な、何だお前」

 「お前の探してる、投擲具の勇者ユータ様だよっと!

 『力の根源たる我が意に従い、軛を受けよ、眷属器!』」

 勇者武器を奪う力を発動!

 

 瞬間、奪う力と奪う力の合間に挟まれて何とか逃げようとする力が二つ

 このまま数時間せめぎあい続ければこの二つの眷属器がタクトの軛から逃げられそうなのだが、そんな長時間やってたらタクトハーレムに襤褸雑巾にされることは確実なのであくまでも一瞬、此方に意識を向けさせるためだけのもの

 ……ん?二つ?槌と……爪?

 

 あれ?鞭の勇者なのに鞭持ってないのか?反応が……

 っておい鞭ぃぃぃぃっ!タクトを離れてこんなネズミのところ行くのやー!此処に居るのー!じゃねぇよ鞭ぃぃぃぃっ!此方の力だけに全力抵抗してたから暴れておらず感知できなかっただけかよ

 

 「そっちから来てくれるとはな!ヴァーンズィンクロー!」

 タクトの奴が漸く事態を理解したのか、禍々しい爪を取り出してスキルを撃つ!

 ……転生者シリーズじゃないかこの爪

 なんてことを考えられるほど余裕に、その一撃を避ける。原作からタクトの奴は閃光の早さを持つスキルヴァーンズィンクロー大好き過ぎる。どうせそれが飛んでくると分かっていれば避けるのは容易い

 「なっ!レベル330の俺の攻撃を避け……」

 「シャイニング・アクスバスター!」

 そんな呆けるタクトへ向けて巨大な幻の輝く斧を振り下ろす!

 まあ、幻なので実際には幻に隠して投げ斧をエアストスローしてるだけなのだが

 「ぐっ!」

 軽くよろける。ろくな……ってかダメージ入ってないな。3/12以下のパチモノ勇者と制限かかっているとはいえ12/12パチモノ勇者、後者である俺の方が基礎値はよほど高いはずなのだが流石のレベル差か。280近い差は流石に

 「はっ!レベル330にそんな攻撃!」

 「タクト!奴が使ったのは」

 「ああ、斧だ!

 好都合だ、お前の投擲具だけじゃなく斧も」

 「うるせぇ喋るな待ってるのかったるいんだよフラッシュピアース!チェンジダガー(援)!」

 これみよがしな投擲具スキルでもって、タクト……なんて狙ってもしょうがないのでその横のメイドを狙う

 撃ち込むのは同じく投擲具のスキル、ビーコンバッジ。良く映画なんかであるだろ?逃げる犯人を追跡するために主役が逃走する車両に発信器投げて貼り付けるっての。アレの魔力により動作する版だ

 タクトが動く前にヒット。流石はフラッシュ系スキル、速度だけはクソ速い

 「エリィィィィッ!

 てめぇ、エリーに何しやがる!」

 「ちっ、効かないか」

 視界の端に大体どこどこに居るというガイドが出るようになったこと、つまり撃ち込んだビーコンが動作を始めた事を確認してわざと聞かなかったかーと嘘をほざく

 「何だ」

 露骨にほっとしたようなタクト

 「はっ!レベル差を舐めたな、お前は負けるんだ」

 そんな一瞬蒼白になったのに直ぐに得意気になったころころ変わる面を見ながら

 「フォーブレイで続きは遊んでやるよ

 そこで奪ってやるから覚悟しておけ『ポータルジャベリン』!」

 「逃がすか!バインドウィ……」

 サンクチュアリなるポータル阻害を唱えられる前にそそくさとポータルで退散した

 

 おちょくったし……これでフォーブレイに戻ってくれると良いんだが

 にしても最後に見えた鞭、割と普通の鞭だったな。転生者シリーズじゃなさそうだ。鞭に関してだけは割と色々と使えてても可笑しくないな、警戒を怠ってはいけなさそうだ

 ……改めて思うがどうすんだコレ


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。