「あ、孵るみたいですよなおふみ様」
翌日昼、一行でどうぞ!とリユート村の人々が貸してくれた家のリビング
漸く起きてきた尚文とラフタリア相手に、リファナがそんなことを言う
見ると、窓際に置いておいた卵に軽くヒビが入っていた
二人して眠そうな顔してるな。いやまあ、特に何もないんだが
尚文の奴はリユート村の薬屋が盾の勇者様は薬学を学び始めたようですね!とぐいぐいと色々と押し付けてきたそうなのでそれを俺と別れてから使って薬を作っていたら朝方だっただけ。ラフタリアの奴は魔法が使えればナオフミ様を守れるかもとやっぱりリユート村の魔法屋から貰った魔法書を読み込んでいたら朝方だっただけだ
因みにリファナはぐっすり寝ていた。ゼファーの奴もでちでち寝息立ててた。それ寝息かよ。俺はその寝顔(当然リファナ側)を見てから外でリベレイション魔法を型に嵌まったアレ以外でも使えるようにと龍脈法の練習をしていた。つまり俺も朝方まで起きてたわけで……まあ、ハツカ種なんて要はそこらに居るどこでも見かけるネズミのような亜人だからな、割と夜更かし耐性は高いのだ。にしても独学だとロクに使えないな龍脈法。どこかで良さげなドラゴンから習わないと実用化は遠いか
アヴェンジブースト第二段階くらいまでキレてれば良い感じに補正掛かって撃てるかもしれないが……そこはその時次第だ
「当たりだと良いですねなおふみ様」
「何でも良い」
「やっぱりドラゴンだと良いですねナオフミ様」
「外れでも良いぞ」
「何でですかナオフミ様」
「煩くないペットも悪くない、そう思っただけだ」
もごもごもご
尚文の奴の言葉に騒ぐラフタリアが口を自分で塞ぐ。そういえば何でも良いや魔物はあまり騒がないしの考えだったっけ尚文が魔物の卵を買ったのって。だから外れでも良いやウサピル辺りでもと
……残念ながらその原作尚文の考えは煩く喋る鳥が孵る事で御破算になったし、今回も狙って御破算にしに行っている訳なのだが
ヒビの合間から羽毛のような柔らかそうな物体が見えている。色は……白いな。フィーロってこんな色だっけ。確か外伝ではサクラって名前つけられてたし桜色……でもないか。桜色と白の二色だったか
……何でそんな色合いのフィロリアルが人化すると金髪碧眼になるのかは謎だ。ってか金髪碧眼はタクトもそうだな、今は高速でフォーブレイに戻っていっている、恐らくは龍の姿になったドラゴン……確か名前はレールディアにでも乗っているのだろう。だが、昨日見掛けたばかりだから不吉な色でああ嫌だ嫌だ。まあ、人化までには数日あるからその頃にはマシか
ピキピキと卵の亀裂は広がってゆき、パキンと上が割れてそこから結構小さな生き物が顔を出した
「キュア!」
羽毛は生えてるけど随分とトカゲっぽいなーこのフィーロ
なんて、ふわふわの羽毛、小さな角に卵の殻の破片を引っ掻けた真っ白いトカゲのような生き物と眼があう
「キュア!」
……あ、尚文の胸元へ飛んだ
見事に白い。羽毛と鱗に覆われた体を持つ凄くトカゲな真っ白いフィロリアル
現実逃避は止めよう
リファナァァァァァァァァッ!違うぞリファナぁぁぁぁぁっ!どう見てもワイバーンの幼体だリファナぁぁぁっ!
違う、違うんだリファナ……狙ってたのはこんな卵ガチャの大当たりじゃなくて原作どおりっぽく進めるためのフィロリアルのアリア種なんだ……
大当たりじゃなくて、トントンな普通の当たりで良かったんだ……
って、リファナは何も悪くないので言っても仕方がない
そもそもだ、考えてみれば当たり前である。俺の適性は雷、特に静電気だプラズマだの細かいところが得意である。だがリファナの適性は確か火、陽炎だとかが特にという感じだ。つまり、リファナの魔法適性は火なのだ。そしてワイバーンだドラゴンだは火を吐くから火の適性があれば何となく親和性とか感じるかもしれない。逆にフィロリアルは火を基本吐かない。火適性で気になる筈がないのだ
つまり、リファナが気になってるたった一個の時点で、そんなもの大当たりでしか無かった訳だ。その事に気が付かなかった俺が悪い。リファナは尚文の為に一生懸命大当たりを探り当てただけだってのに
「これは……」
「ナオフミ様!ワイバーンですよワイバーン!大当たりです!」
「なおふみ様、やりました」
自分が選んだ卵だからか、ぐっと拳を掲げるリファナ。可愛いが違うんだ
うん、そうだな。リファナは悪くない、計画が狂ったって俺が一人馬鹿言ってるだけだ
「勘は当たったな、リファナ」
「まさか本当に当たるとは思ってなかったでち」
なんてやっていると……
ゆらゆら揺れる俺のハゲ尻尾に興味でも沸いたのか、尚文の胸の中から飛び出してワイバーンが俺の尻尾の先に取り付いた
……飛べてないな、流石に産まれたばかり。なので落とさないように尻尾は床につくくらいまでピンと下ろし、そこでじゃれさせる
……尚文の視線が怖い。あいつの主人は俺だろうそれすらも奪うのかとか言いたげだ。クソナイフも軽く震えてカース出てきそうだなーしてるしキレ易いなこの尚文
「リファナ、パス」
器用に尻尾で掬い上げて、リファナに渡す
「あ、うん
えーっと、こう?」
リファナの尻尾に眼を移すワイバーン
「ってことで、動く尻尾が気になるだけだろ尚文。産まれたばかりなんだ」
俺だけじゃないから安心しろ尚文、奪わないからな尚文
なんてやっているうちに、餌無いぞどうすんだこれということになり、外に出ることに
原作ではこのヒヨコ何て魔物だ?だったのだが、ワイバーンだからな。分かりやすすぎた
出る前にこっそり卵の殻を少しだけくすねておく。尚文が盾に吸わせた後の処分の時にだから問題はないはずだ
解放は魔物使いの投棒。棒かよ、と思うがまあ棒も武器か。にしてもクソナイフ、これ投げて取ってこいさせる犬の玩具意識して無いか?
……変えてみるとそのものだった。おいこらクソナイフ
「あ、盾の勇者さま」
「盾の勇者さまー!上の何ー」
村に出れば口々に村民が挨拶してくる
それに尚文の奴は割と適当に返しながら、村を突っ切って牧場に向かっていた
因みに、今はワイバーンの奴はリファナの頭の上におちついてそのイタチ耳とじゃれている。尚文は不満げだが、まあ尚文の耳は人間の耳だからな、じゃれるのには向かない
なんてやっているうちに牧場に着いた
何でも波で飼っていた魔物が2割ほど減ってしまったらしい。……2割で済んだと、盾の勇者様のお陰だと本人は言っていた
「という訳で、買った卵からワイバーンが孵ったんだが、何を食べさせれば良いのか知らないか?」
牧場主に尚文が聞くと頷きが返ってくる
「ああ、基本的に雑食ですので何でも食べますよ。肉を好みますが果物でも豆でも何でも
ただ、まだ幼いので柔らかいものが良いでしょう。幼いうちから堅いものを食べさせると歯が欠けることがあるとか」
「何でも良いのか」
「はい。村で売っている煮豆なんかでも大丈夫です」
「なるほど、ありがとう」
……おお尚文、礼が素直に出るとか偉いな尚文
「それで、名前は何にしましょう」
とりあえず煮豆と昼飯を買って(因みにお前が買うべきだと言ったんだろと金は俺持ちである。なのでついでにリファナが好きな果物も俺の趣味だと買っておいた)、貸して貰った家に戻った所でラフタリアの奴が言った
フィーロ。じゃないからな……。確かに名前は必要だ。任せた尚文
「売るかもしれないのに名前が要るのか?」
「売っちゃうんですかなおふみ様!?」
リファナが果物から顔をあげて言う
「ずっと雛とか呼ぶんですかナオフミ様?」
ラフタリアも追撃
「む……」
それもそうか、と唸る尚文
「じゃあお前が付けろ、お前が買えと言ったんだろ?」
「却下でち。ボクをゼファーと呼んだりマスターは名付けのセンスが壊滅的でち」
「尚文も似たようなもんだぞゼファー」
何時もの無表情で俺をディスるでち公に半眼でツッコム。にしてもこいつ名前には執着強いな……
「おい」
名誉毀損だと言いたいのか尚文が抗議してくるがまあ、無視だ無視
「尚文。お前もしもフィロリアルが孵っていたらなんて付ける?」
「フィーロで良いだろう」
「だろ?尚文も俺と同レベルだ」
結局、名前はブランに決まった。意味は古代語で白。提案者はリファナである
「よろしくね、ブランちゃん」
「キュア!」
???「うぉぉぉぉっ!ドラゴンなんかにたん付けしてストーキングとか絶対に嫌ですぞぉぉぉぉっ!フィーロたんにお義父さん助けてですぞぉぉぉっ!
フレオンちゃんこの愛の狩人をドラゴンの魔の手から御守りくださいですぞぉぉぉぉぉっ!
うぉぉぉぉぉ!フィーロたぁぁぁぁぁん!ドラゴンなんかに負けないですぞぉぉぉぉぉ!」