パチモノ勇者の成り上がり   作:雨在新人

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後始末

某日某所

 ぶっちゃけた話ロクマタオロチをヴェルダンにした割とすぐ後すぐ近くの森の中

 一人の男がぶつくさ言っていた

 

 「そんな、必殺の召喚スキルがあんなに簡単に破られるなんて」

 「落ち込まないでくださいリュージさま、あんなのズルに決まってます」

 「だよなリーシャ、あんなの汚いチートに決まってる」

 近くの金髪の女の子に慰められ、男が顔を上げたところに

 「いや?お前らのと同質……という訳でもないな。お前らの敵の力だよ」

 ひょい、とそこに幻を解いて姿を現す俺。もうちょっと色々と食べられそうなもの探してくるわ、とリファナには言ってある

 

 「んなっ!白髪鼠!」

 「人を白髪ネギみたいに言うな」

 男は何か違和感のある顔立ちの……貴族っぽい服の若い少年だ

 「どういうことだ、俺の敵の力?俺に敵なんて」

 「勇者の力って事だよ転生者」

 「そうか!あれが盾の力……

 必殺のはずの召喚を倒すほどに味方を強化するチート……必ず手にいれてみせる!」

 ぐっと拳を握りこむバカ

 うーんこのバカ。頭大丈夫かバカ

 

 「その調子ですわリュージ様!」

 横の金髪は……何となく尚文に魔法うったあの女神に似てるな。こんなのしか女が居ないとか悲しい転生者だなこいつ。リファナみたいな大切に思える相手に会えなかったんだなこいつ

 何か憐れに思えてきた

 

 「何だその目は!」

 「いや、憐れだなこの転生者って」

 「煩い!俺をそんな眼で見るな!俺は選ばれた人間なんだ」

 「お前も俺も、選ばれてなんかいねーよ」

 行くぞクソナイフ。各々勝手に動かれても困るから、転生者狩りの時間だ

 今の時期に四聖に仕掛けるとか警戒されるだけだから殺したと経験値野郎にも大義は振りかざせるので問題ない

 

 「ふっざけんなぁぁぁぁっ!」

 叫びと共に魔方陣から湧いてくる八つの頭の白蛇

 今度は学習したのか最初から合体しているらしい

 無駄な学習を。というか、1vs8仕掛けた方がまだ勝率あるんじゃないのか?何で合体させてんだこいつ、1vs1とか負けるわけ無いだろ

 

 「はあ、見せてやるよ、お前ら転生者が最終的に対峙しなければならない存在を」

 手元にクソナイフを呼び寄せて、竜鱗の投剣に変える

 「んなっ、それは」

 「エアストスロー、セカンドスロー、ドリットスロー

 トルネードスロー」

 構わず基本コンボスキル。投げた3本のナイフが白蛇を取り囲み、竜巻を起こして数百個の肉片へと変えた

 うん、弱い。基本コンボだぞこれ。多少強い相手ならばこれで拘束して別の必殺スキルって感じのものだ。何でこんなんでズタズタにされてんだこいつの召喚したもの。いくらなんでも弱すぎる

 

 「そ、そんな」

 一瞬で片付けられ、男は眼を見開く

 いや、実際ロクマタオロチも俺がさくっと処理した訳で、何でヤマタノオロチで勝てると思ってたんだよお前。もっと別のもの呼べよ

 「う、嘘だ……盾の力は此処には……」

 「いや、別に最初からそんなものかかってないからな?

 お前の白蛇が弱いだけだ

 だから、投擲具の勇者に道端の石ころとして片付けられる」

 「うぉぉぉぉぉっ!」

 バカが叫ぶと共に、バチっとクソナイフがスパークする

 「かかった!お前が投擲具の勇者だって言うならばこれで武器を奪え……」

 もう良いや。勇者武器を奪う力まで使ったんだ。見逃す道理は何処にもない

 

 「……」

 無言で近付き、その喉を尻尾で締め上げる

 かひゅっという苦しげな息と共に力が解除され、クソナイフのスパークが止まる……ってこれ幸いと逃げるなクソナイフ。逃がさないからなお前だけは

 「もう良いや。勇者の恐ろしさを魂に刻みながら解体されろ、計画の邪魔だ

 ブレイズソーサー」

 竜鱗の投剣により解放されたスキルを放つ

 赤熱する投剣が丸ノコのように不吉な音を立てながら奴に近付き……

 

 「ぎ、ギャァァァァァッ!」

 その右手の指先から順にミンチに変えていく

 ……うん、リファナには見せられないグロさだな。このスキルは封印しよう

 「投擲具の勇者様!」

 と、突然金髪が叫ぶ

 何だ?命乞いか?リュージだか何だかを助けて?か?言われたらまあ、二度と顔を見せるなで助け……てもなぁ……

 「り、リーシャ」

 「助けてください!あの男に騙されていて」

 「リーシャ!?」

 悲鳴すら忘れてバカが信じられないものを見るように金髪の方を見る

 「大切な人だったなら最後まで守ろうとしろ、クソボケビッチがぁぁっ!

 ブレイズダガー!」

 裏切ろうとした金髪は処刑だ。胸糞悪い

 爆発するナイフを胸元に受け、えっ?と呆けた表情のまま金髪ビッチは爆発四散した

 

 「リーシャぁぁっ!」

 「よくもまあ、目の前で裏切ろうとしたビッチにそう叫べるものだな」

 憐れ過ぎる。本当にビッチしか近くに居なかったんだなこいつ。流石にこのままミンチは可哀想だ止めてやろう

 「フラッシュピアース」

 ということで、さくっと眉間にピックを撃ち込んで殺してやる。そのまま死骸は二人とも焼却した

 ……魂だけになって化けて来ないと良いが。って、所詮こんな雑魚転生者、タクトじゃあるまいし化けて出る力もないか

 なんて尚文狙いの転生者狩りは片手間で

 余談だがその日の夜ゼファーの奴に聞いたところによるとあの白蛇は女神に召喚能力を与えられた転生者がレベル30になると呼べるようになる低級悪魔だったらしい。レベル30台かよ、弱かった訳だ。そんなんでイキってた辺りあの転生者は本当に馬鹿だったらしい。って、馬鹿ばかりじゃないと勇者が生き残れないか。本当に見る目ねぇな女神の奴。力があるって鍛えることすらしない馬鹿すら選ぶとは

 

 「おや、何か御用ですか、ハイ」

 本題はこっち。ポータルジャベリンで飛んだ奴隷商の場所だ

 あれである。売れずに不良在庫と化している奴隷を買い取ろう。この値段はと躊躇されている本来の金額でいい、と俺言ってしまったからな。それを果たしに来たという訳だ

 忘れてると後が怖い

 

 「前に尚文を匿って貰う際に言っただろう?不良在庫を引き取ると、な

 それを買いに来た」

 「その事ですが、ハイ」

 ん?何か言いにくそうだな

 「元々その件でと渡そうとしていた奴隷なのですが、ついさっき買い戻されまして、ハイ」

 「……は?」

 「精神の壊れた猫亜人だったのですが……」

 「猫亜人?何でまた」

 「ルロロナ村の亜人で」

 「……ん?お前、リファナ等がルロロナ村の亜人だと知ってたのか?」

 ルロロナ村。ぶっちゃけ村民の大半は村の外ほぼ行かないから村の名前に興味なんか無いし、そのせいで俺も良く忘れるが確か俺の故郷、つまりはリファナの故郷そんな名前だったはずだ

 「あのラクーンの少女には見覚えがあります、ハイ」

 まあ、顔役の娘だしなラフタリア。だからか

 

 「つまり、何だかんだリファナやラフタリアの知り合いを斡旋してやろうと思っていたが、買い戻しが発生した、と」

 にしても猫亜人か……誰だ?まあ良いや、そんなに親しい奴は居ないし

 何故かって?だって俺ハツカ種だぞ?ネズ公が猫と親しくするかよ

 『称号解放 イタチ例外ネズミ』

 ……そういや、イタチもネズミ食うな。だがリファナは例外だ

 

 「その通りです、ハイ」

 「いや、盾の勇者関連だろ?断れよ」

 「それが……」

 「それが?」

 「買い戻しに来たのが、弓の勇者様でして」

 「……は?」

 今度こそフリーズ

 樹?何でまたあの弓の勇者がそんなことを

 

 「少し前に弓の勇者様が匿名で奴隷を解放しまして、ハイ

 国に任せようとした事で奴隷として再流通した訳で

 

 その事にあの国王を見て気が付かされたとか、あの時リーシアさんが言ってたことこそ正しかったとかぶつぶつ言ってましたです、ハイ」

 ……ああ、そういう

 

 原作でも似たようなエピソードあった気がする。助けたけど結局詰めが甘くて奴隷に戻った亜人の話

 ……あれ?でもじゃあこの世界では原作と違って樹の奴そのまま放置じゃないのか?

 ……今更言っても仕方ないな

 

 「他の奴隷でも良い

 結局盾を匿うのは女王側のお前としては当然の話だったのかもしれないが、言ったことは言ったことだ」

 「では、高いものでいきます、ハイ」

 「一つ聞くが、いくらだ?」

 「金貨40枚でどうでしょう?」

 「高っか

 ……いやまあ、足り……るな」

 「諸々はおまけしておきますです、ハイ」

 「……おまけってか、ここまで高いと銀貨数枚の登録料諸々は誤差だな」

 ……因みにだが、尚文が初見で見せられたlv75のちょっと粗悪品扱いな狼男で金貨15枚盾の勇者特別価格である。それの倍以上と言えばまあ、ヤバイ価格なのは間違いない

 果たしてどんなものが出てくるのやら……


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