パチモノ勇者の成り上がり   作:雨在新人

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半分ネタ選択肢だった天木錬ちゃんが強いのは何となく知ってたけど何でこんなに弱いんだ谷子しっかりしろ谷子

100票越えて半数投票がありましたので、何となく予想してましたが錬は自分がヒロイン側にされる天木錬ちゃんルートに行くこととなります


虎男

「アトラは、アトラは居るんだろうな!」

 相変わらずの吠え方である

 ……確認したことによると、ゼルトブルの一族経営の奴隷商のところでアトラだけタクト一行が買ってゆき、余ったフォウルは妹が居ないと知れば絶対に死ぬまで暴れるだろうという事で、どうせならばハクコ種大嫌いなメルロマルクに送って叡知の賢王に媚でも売らないかという事でこの奴隷商の所へ輸送されてきたという話らしい。うん、下衆い

 まあ、あの杖の勇者ならば妹の仇だと思ってるハクコ種の奴隷とか嬉々として苦しめてぶち殺す気がするな。後にその事で苦しみそうだが

 ……これは今ほぼ関係ないんだが、このフォウルとアトラの母親はあの王の妹である。妹を殺されたという半分勘違いな恨み(それなりに愛はあったのだろうが、あの王からすればハクコに妹を奪われたことは間違いないので筋違いかというとだ)から妹の忘れ形見の片割れ殺してたとか、知ったらどうなっていた事やら。流石に妹に似てるらしいアトラなら兎も角フォウルじゃ妹の子な事に気が付かないだろうしなあの王。だが、折角のハクコ種だからと高い金で盾の勇者御一行に売り付けてしまおうという事でそれは現実にならず俺のところへ回ってきた訳だ

 因みに、今は妹は貴重な薬剤が手に入ったので治療中、暫くかかるからと引き離している事になっているらしい

 いや、数日かかってる時点で薄々気付かれてるだろ、アトラはもう居ないと。生きてるかは……知らん!タクトの奴に惚れたら間違いなく生きてるが、惚れなかった場合は……。確か原作では惚れなかったから追放された錬金術師とか居たな。それならまだ良いんだが、癇癪起こして殺されてる可能性とかある

 

 因にだが、奴隷商等には離れて貰っている

 このテントひとつ壊れるかもとも言ってある

 アレだ。俺が壊す気は無いが、フォウルの奴がどうするかは未知数だ

 

 「……」

 「お前……」

 睨むような目

 「フォウル、だったか

 出ろ」

 「何?」

 檻の鍵を開ける(鍵は貰った)と、怪訝そうな目で此方を見るフォウル

 流石ハクコ種。見てるだけでネズ公尻尾が怯えたようにピーンするわ。レベルは20台と俺の半分ちょいのはずなんだけどな

 「お前を奴隷として買った。これで分かるな?」

 「アトラもだろうな!」

 「いや、買ったのはお前だけだ」

 ギリッと奥歯を噛む音

 いや、何で聞こえるんだそんな音、デカ過ぎる

 

 「てめぇ!」

 っ!あぶねっ!

 ギリギリで身を屈めて飛んでくる拳を避ける

 何の遠慮もない一撃。跳ねっ返りが過ぎるぞフォウル。そんなんじゃ奴隷やってけないぞフォウル

 だからこんな優良なスペックの癖に性格で不良在庫なんだが。奴隷だろうが折れないからなーこいつ。原作でアトラが死んですら折れなかった筋金入りのバケモノメンタルだ。押さえ付けられるものじゃない

 「アトラを、見捨てるような奴!」

 「違うっ!」

 今度は左から襲う拳を両の掌で受け止める

 っ、ビリビリ来る。元々ネズ公(ハツカ種)、防御よりも避ける事を得意とする種族ではあるのだがそれでも仮にもパチモノとはいえレベル上の勇者補正込みの俺に両手で受け止めて尚腕が軽く痺れる威力の拳とかどうなってんだチートかよ。って世界から特別扱いされるチート種族だったわハクコ種

 

 「気が付いてるんだろうが、お前も!」

 言葉と共に殴りかえ……しちゃダメだろおい

 駄目だ。ヤンキーノリでやりかけた。自重自重

 「何を!」

 「お前の大事な妹は此処にもう居ない!

 いや、お前だけが邪魔だからこんなメルロマルク(最終処分場)に送られたんだよ!」

 「てめぇ!アトラを何処へやった!」

 怒りのあまりか獣人化。ちょっと待てこの時期から使えて良いのかそれ

 虎男化したフォウルに投げ飛ばされ、咄嗟に尻尾でフォウルの腕を掴んで共にアイキャンフライ、開いた檻どころかテントを突き破って外へ

 

 「俺が!知るか!

 と、言いたいが妹だけ買っていったらしいぞ?」

 「アトラァァァァッ!」

 うん、うるせぇ

 「アトラは目が見えないし歩けないんだ、そんなアトラだけを誰が」

 「鞭の勇者タクト・アルサホルン・フォブレイだな」 

 「フォブレイ……それに鞭の勇者……」

 少しだけ迷いが出たような表情の虎男に

 「因みにウン十人の愛人を侍らせるクズのハーレム野郎だ」 

 「アトラァァァァッ!?」

 容赦の無い追撃。まあ、事実だ諦めろフォウル

 「そんな、そんな奴にアトラは……」

 色を失った顔をしながらフラフラと歩みを進めるフォウル

 

 「おい、何処に行く気だ奴隷」

 「アトラを……助ける!」

 復活早っ!

 「クズのハーレム野郎なんかにアトラは渡さないからな!」

 「いやもう奴の手に渡ってるんだが」

 「ならば取り返す!」

 ぐるる、と唸る虎男

 ……うーんこの虎突猛進。さては自分が奴隷だって自覚とかねぇな?

 いや、ぶちのめせば良いやと思ってるだけか

 「おいおい、俺はお前を買った主人だぞ?放置か?」

 「持ち主を殺せば、奴隷紋の罰は発動しない!」

 「おい

 自動で発動するように禁則事項を」

 「決められる前に倒せば良い!」

 駄目だこりゃ。脳ミソまでアトラに染まってる

 

 「……そもそも、一人で行く気か?

 鞭の勇者に勝てる気か?」

 「それでも、アトラを」

 「そもそもだ、そのお前の妹はお前が守ってやらなきゃ直ぐに死ぬような無能なのか?」

 「アトラを馬鹿にするな!

 でも、あいつは……」

 「面食いだと噂される鞭の勇者が買っていくんだ。病だか何だかを治せる算段はあるんだろうよ

 治ったとして、お前の大切な妹はそんな無能だとお前は思ってるのか?」

 昔の自分が言われたくないように、言葉を選んで紡ぐ

 というか、転生前に妹くれよと同級生に言われた際に会わせる訳にはと断ったら俺が言われた言葉のアレンジである。俺は返答に詰まったが、瑠奈はわたしはそんな無能だから帰って、と部屋の中から言った。しょんぼりして奴は俺を一発殴ってから帰った。理不尽である

 

 「違う!アトラは……」

 「なら信じろ

 お前が強くなって助けに行くまで、その妹はタクトのところで無事だとな」

 「それで、どうしろと言うんだ」

 敵がい心はそのまま。けれども、煽った事もあり言葉だけは聞いてくれる

 ……煽りばっかりやってる気がするな俺

 ってクソナイフ、アジテートクソネズミの称号光らせるな目がチカチカする

 

 「言った通りだよ

 立派になってから助けに行け。今のままじゃ死ぬだけだ

 だからこそ、暫くは妹を信じてやれ」

 「強く、」

 「だから俺が来たんだよ

 盾の勇者の仲間スカウト隊の隊長がな」

 因みにメンバーは俺一人である。当然だな

 「正直な話、鞭の勇者の素行は大分アレだ

 どうせ、どこかで四聖と揉め事を起こす。その時までに強くなって、そこで妹を助けろ」

 

 「盾の……勇者……」

 複雑な表情で、虎男がぽつりと呟く

 元々シルトヴェルトのお偉いさんの家系だからなこいつ。盾信仰と他とで揺れてる感じか

 

 「待ってろよアトラ。お兄ちゃんとお前が物語で好きだった盾の勇者様が何時か助けてやるからな」

 よし、落ちた

 話さえ聞いてくれれば割と楽だったな


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