パチモノ勇者の成り上がり   作:雨在新人

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勇者の噂

そんなこんなで、フォウルの奴を拾ってから約1週間が経とうとしていた

 

 「あ、そうだ尚文」

 今日も昼飯時起きな盾の勇者サマに、俺は声をかける

 ……此処はリユート村の貸して貰っている家。何だかんだで其処を拠点として未だに使わせて貰っていた

 「なんだネズ公」

 「今日あたり、仲間?が一人増える」

 「は?」

 寝起きの不機嫌そうな目を見開く尚文

 

 「いや、お前を匿って貰う際に不良在庫な奴隷買い取るから匿えという形で約束しててな」

 「そういえばやってたねマルスくん」

 「それが今日リユート村まで送られてくる」

 また勝手なことを……とばかりにじろりと尚文が睨んでくるが気にしない。気にしていたらもう付き合ってられるかしてるわ

 

 ということで、改めて尚文とフォウルを合流させるのが今日だ

 何で今まで合流させなかったか?そもそもフォウルを加えるとパーティが7人になってペナルティかかってしまうので、そうなる前に産まれたばかりの仔竜を一匹でもそこそこやれるくらいにはしておきたかったというのもある。が、何よりの理由はあそこでそのまま連れ帰ったらどうやったんだオイされるからな。奴隷商のところから一瞬で連れ帰るとかポータル必須だ、バレる

 ということで、暫く置いてから足で合流させることにしたのだ。これならしっかり日付の擦り合わせがなければ誤魔化せるからな時系列

 

 因みにだが、この一週間何してたかというと……

 尚文の奴は昼間は採取で夜はリファナに代わりに薬の中級レシピの本を朗読して貰って薬を作っていた。リファナは朗読役。ラフタリアは独学で魔法についての基礎の本を読み込んでいた

 ……なあラフタリア?目の前にほいほい魔法使ってる俺が居る訳だが、それでも独学で良いのか?良いのか

 それを俺に聞いてこないなーしながら龍脈法を練習していたのが俺である

 昼間は尚文とリファナとラフタリアが採取、俺がブランの飯調達こと狩りという分担だったこともあり、そこそこレベルは上がった。尚文が俺のおこぼれで40の大台(勇者に限りクラスアップによるレベル制限は存在しない為40を越えられる)を越え、リファナラフタリアも40まで行った。裏でこっそり資質向上を……と思ったがフォウル買ったせいでぼったくりクソナイフにぼったくられた価格を払えなかったので却下。そもそもレベル下がったらバレるしな、無理か

 俺のレベルは56まで上がった……と誤魔化してはいるが、実は俺もクラスアップ制限にかかったままだ。俺だけならと少ない残存資金を切り崩して資質向上をひたすらかけてレベルを下げては上げ直しを繰り返したが、そろそろレベル40ほどでの資質向上上限が見えてきた。あれも際限無く強くなれる訳じゃないものな。素ステは資質向上全くしてない時の倍くらいにはなったが40の壁を越えなければこの先はない。完成早いなと思うが、そこはシステム経験値野郎が獲得経験値爆増キャンペーンをやってるお陰だ。クソナイフ側はロクなものを吸えていないわ、別の武器を使っていては怪しまれるから一人の時しか他武器の解放進まないわで歩みは遅々としている。というか、偽・フレイの剣はなんなんだこいつ、システムエクスペリエンスんとこでコピーしてきたものだが未だに解放終わってないぞこれ

 でち公は知らん。ブランの奴は30まで来た。ドラゴンだからか、かなり上がりがゆるやかだ。だが、デカくなった。まだ生後一週間だというのに、もう家の中に居ない。そう、扉をくぐれないくらいの大きさになったのだ。もう小柄なリファナなら背に乗せて飛べる。アルマ種の……恐らくは純血種ではなく混血種。その特徴とされる長い尻尾と結構長い首はしっかりと自己主張するレベルになった。全体的なシルエットはかなり長い。だが、背の巨大な翼がそれを感じさせないのがアルマ種だ。純血種ともなれば人語喋るとか何とか言われてたが、流石にブランの奴はそうではなさそうだ。現状フィーロみたく突然人化して尚文のやつにごしゅじんさまー!する気配もない。って、あれはフィロリアルそのものが勇者がつくりあげた魔物だからそんな謎生態になってただけか。野生の最強魔物であるドラゴンは……タクトの連れてる竜帝を見るに一部は人になれなくもないのだろうが種族として人化する遺伝子が組み込まれてる訳ではないのだろう、フィロリアルと違って。寧ろフィロリアルが昔の勇者の変態性癖の塊というか可笑しいというかだ

 

 ……因みにだが、この一週間の間に色々と噂は耳にした。当たり前と言えば当たり前だが、波の被害のあったリユート村だ。メルロマルク各所からこれ幸い特別需要が出来たとばかりに波による被害を待ち構えていた行商人どもが押し寄せてくる訳だ

 というか、原作で波によるものではないが災害があった地域には食料や薬が売れるぞと尚文御一行も出向いていた。商売としては普通の事である。咎められる点が何もない。尚文の奴そろそろ行商でも始めるかーしているし本当に咎めようがない

 

 だがまあ、それで話は色々と聞けるわけだ。別に何も買わないが世間話はする。リユート村外ではまだまだ尚文の評価……ってか盾の勇者自体の評価低いしな

 

 一つ。槍の勇者についての噂を聞いた

 何でも、飢餓に苦しむ村を救ったとか何とか。太古の錬金術師によって封印されていた伝説の植物の種を手にし、それで飢餓を終わらせたんだとか。それが二週間ちょっと前。その後にその場を訪れた者曰く、飢餓どころか急速に緑化が進んでいたとか

 ……間違いない。そこは原作通りの進行である

 剣の勇者についても話を聞けた。何でも東の方で巨大なドラゴンと戦いそれを倒したのだとか。普通だな錬

 だが、弓については……あまり噂が流れていない。まあ、あの樹は隠し事が大好きだ。コロシアムに弓の勇者であることを隠して出場した際のリングネームがパーフェクトハイドジャスティスであったことから推して知るべし。貧乏旗本の三男坊ではないがそんな感じで弓の勇者であるということを隠しているのだろう。正直な話、勇者の武器を奪う力でもない限り、相手が勇者であるか否かは完全には分からないからな。ころころ姿を変える武器を持っていれば対応した武器の勇者なのでは?とはなるが、実はその気になれば変形する武器とか作れてしまうしアテにならない

 なので、弓を使う強い流れの人……くらいの認識しかされてなくて噂になってないとか有り得る

 盾の勇者についての噂?各地で暴れてるらしいぞ?同時に複数地域で荒らし回ってる噂が立ってて偽者が混じってるのでは?とその地域の民にすらも一部疑われているらしい。いやそりゃ自分で盾の悪魔と名乗る盾の勇者は居ないでしょう流石にと話してくれた当人も苦笑していた

 

 四聖に関してはこんなもの

 七星だが……やはりというか爪と槌に関しては全くない。そりゃタクトにもう殺されてるからな

 杖は……うん。聞くまでもない、メルロマルク王オルトクレイだ。今日も元気に亜人嫌い、以上

 斧に関しては目撃例が遠くであったよーってくらい。目立った話を聞いたことがない。どんな人物なのかも知らない

 小手は……波が本格化を始めているのに未だにうんともすんとも言わずに鎮座して……いない。流れの冒険者を勇者として選んだそうな。終わってんじゃねぇか。どうせそいつ転生者だろ?抵抗しろ小手。奪われてんじゃねぇぞ小手。フォウル来る前に転生者側に奪われててこの先フォウルどうすんだ小手

 投擲具?ロリコンケモナーの噂が立っていて、シルトヴェルトでは招待すべきか排斥すべきかの議論が持ち上がっているとかなんとか。ざまぁねぇな勇者ユータすまない勇者ユータ。俺のせいだ、甘んじてあの世で悶えててくれ

 鞭?タクトだ。他に何を言えと?と言いたいが一つ気になる噂があった。東から来た商人の話で、剣の勇者の噂を語ったのと同一人物からの話なのだが。何でも最近会ったらしい。俺が詐欺で追い返す2日前ぐらいに。四聖勇者の偉業を聞いてへー、と誉めていたのだが、何となく気になる笑みをしていたんだとか

 とりあえず、収穫はそんな感じだ


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