パチモノ勇者の成り上がり   作:雨在新人

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ネズミとでち公

食べるもの食べて、道に戻る

 気儘な転生者道中。さて何処に行こう、というのはある程度決まっていて。簡単だ、目指せ東の山である。一応義理立てとして樹の言ってたアレを見てこようかなという感じだ。向こうには見たことが無い魔物が……いや村出て半年の間に一応顔だしたな。クソナイフ手にしてからは初めての魔物、つまりは吸わせて強化可能な魔物が割と居る。安定強化も含めての形だ。実際素ステの高さって色んなところでものを言うからな。クソナイフの一個のスペックがどれだけ高かろうが、使う俺のスペックが低すぎると生かせずに終わる

 

 その他は……あれだな、剣は送り返したし、錬の奴が来てたりしないかなという話だ

 無いか。樹は俺が……御門讃が居たせいかゲーム気分さっくり抜けてたっぽいが錬はな……。元康?諦めた、駄目だあいつは

 ポータルでまた尚文と進んだ地点まで飛んで、そして尚文もう居ないなと暫く歩いて眠る

 

 ふと、眼が覚めた

 青白い月。満月……というにはちょっと欠けてる、綺麗な月

 あんまり月なんて眺めることも無かった。リファナ達も、あんまり空なんて見なかったからな。まずは生きていくこと、或いはサディナさんの影響か近くに海があったからか、空に関しては皆あまり興味がなかったのだ。その分海には昔から興味があったっぽいが、海難事故で両親死んだ俺が居たからか、ちょっと遠慮がちだったんだよな……。別に、あんまり気にしてないってところまで来てたんだけどな、そりゃ1ヶ月くらいは堪えてたけどさ

 

 閑話休題

 クソナイフで張っておいたトラップスキル、ワイヤーシュートⅣを解除し、立ち上がる。反応型のトラップだ。それが投擲具スキルに含まれるのは……誰かがワイヤーに引っ掛かると撃たれるだから分かりやすいな

 買った卵は未だに静か。そりゃ買った当日に孵ったりはしないだろう。ちょいと貰ってきた孵化容器のリングに尻尾を引っ掛けて……いや、持っていく必要ないなと下ろし、ちょっとだけ辺りに出る

 「ほいよ、ファスト・プラズマフィールド」

 とはいえ、放置している間にどっかの鳥の魔物とかに卵を狙われても面倒なので軽く魔法でトラップ仕掛けて。寝込みを襲うクソならまだしも、原生魔物に対してスキルは殺意が高すぎる。オーバーキルだ

 

 少しした石の上、妖精が踊っていた

 髪の色は明るい赤。そして背には透き通った六枚羽根。それが月の光の下、幻想的な光景を産み出している

 ……って何だ、ゼファーか

 「……マスター?」

 気が付いたのか、でち公も羽根をはためかせ、降りてくる

 デカイな、羽根

 「ああ、この羽根でちか?言ってたと思うでちよ、ボクはずっと羽根仕舞ってるだけでちって」

 「言ってたなそういえば」

 広げてるところ、最初に会った時以来無くて忘れてた

 「まあ、羽根から魔力を取り込むことでボクは本来の力を出すでちが、マスターと居て本気を出さなきゃいけない事が無かったでちからね

 何であんなに強かったんでちか……と、暫くは思ってたでちよ」

 「今は?」

 「あの雷挺があるなら強くて当然でちマスターが負けるはずないでちね

 

 ……あんなものあるなら早く言ってほしかったでちよ」

 はあ、とでち公は息を吐く。その背の透き通った羽根が震えた

 一気に幻想的な感じが無くなったな、おい

 「……そんなにか?」

 そこまでの力じゃないだろうアヴェンジブースト。少なくとも、覚醒前は

 「マスターの正体に関わる重要なものでち。有無で180度ボクの取るべき行動が変わるでちよ……」

 「で?今のお前は、ゼファー?」

 「決まってるでち。契約で縛られたボクはどんな思いを抱こうともマスターから逃げることは出来ないのでちよ

 つまりは付いていくでち」

 「……変わったのか、それ?」

 「変わってないでち。変えるべきは、マスターに対してじゃなくてボクの繋がってるシステムに対してでちから」

 システムに対して?まあ、どうせ悪魔なんだしシステムエクスペリエンスと繋がってる事は知ってたが

 「まあ良いや、任せる」

 「任されたでち

 ……って良いんでちか?」

 「お前は悪魔っぽさがあんまり無いからな、ゼファー

 そう悪い方には行かないだろ」

 俺の正体だ何だ言って、まさか裏切り者だって分かってる……程でもないだろ。裏切り者だと思ってるならば、あの口から出任せで納得するとも思えないしな

 

 「それはもう。ボクは高性能なお嫁さんとして作られたでちからね」

 「そうか

 まあ良いや。羽根を伸ばすのも程ほどにな」

 と、戻ろうとする俺に、背後から声がかけられる

 「疑問でちマスター

 マスターは何でボクをベールって呼ばないでちか?」

 「それは……」

 何でだっけ

 あ、思い出したわ。ずっとゼファーゼファー呼んでて忘れてたけど

 「最初に呼んだときだよ

 普通のAIならゼファーって呼んだらそのまま返すはずだ。その前に、自分の個体名をベール・ゼファーとして登録していたんだからな

 なのにお前はベールがいいと思った言った。それは悪魔は心の無いAIだろ?としてた俺からしたら面白くてな

 だから、ゼファーって呼んでる。そうすれば、お前は普通の悪魔じゃない返しをしてくれるから、な」

 「成程でち」

 と、笑顔になって

 「ってちょっと待つでち!」

 あ、真顔になった。ホント、怒り顔覚えろゼファー

 「それって今もずっとボクをゼファーって呼ぶのは単なる嫌がらせでち!?」

 「……そうだが?ってか今のその反応が面白くてやってる」

 「やーめーるーでーちーっ!

 ボクはベールの方が可愛くてボクにぴったりだと思うでちよ」

 「ゼファー」

 「……もう良いでち」

 あ、飛んでった。その羽根飾りとか魔力吸収用とかじゃなくて普通に使えたんだな

 

 まあ、すぐに帰ってきたんだけどなあいつ。家出は1時間持たなかった

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