「さて、と」
村にポータルなんぞ取っていない。なので尚文道中のあそこに飛ぶ。王都にまで飛んでもな。レンの元々居たのは間違いなく王都辺りじゃないし。だってそうだろう?レベルもステータスもクソザコ竜帝には勝てなかったんだろうけれども高い謎の女の子なレンを撃退されかねないそんな遠くまで拐いに行くような気概があの最弱竜帝にあるものか
「というかでちよ?何か色々と知ってるみたいなのは何ででちか?」
「……?タクトだって色々と知ってそうだろ?」
「タクトって誰でちか」
「タクトはタクトだろ、この世界最強の転生者」
……そういやタクト追い払うのはソロでやったな。でちが知らなくても仕方の無いことなのか
因みにだが、タクト……というかその幼馴染のエリーに撃ち込んでおいたビーコンはフォーブレイからろくに動いていない。多分幼馴染置いて単独行動しやがったなあのタクト。お前エリーが大切なんだろ放置すんな
『称号解放、ブーメランの勇者』
……リファナを尚文に任せてる俺が言うことじゃ無かったなクソナイフ。すまなかった。で、ブーメランって投擲具だよな?つまりは俺は偽ネズミじゃなく投擲具の勇者だから全能力使わせろ
……あ、オーバーカスタム値上げしやがったこいつ
「……薄々思ってたでちが、マスターって未来でも見えてるでちか?」
「いや?見えてないぞ」
「その割には色々と変なこと知ってるでち」
原作こと、竪藍阿寅による連載小説『盾の勇者の成り上がり』基準でやってるからな……。あれが何なのかって言われると……何だったんだろうな。現状それっぽい進行はしてる訳だが。差?俺が居るせい……にしては転生者による侵攻度高すぎるんだよな。俺からすればはいはい雑魚雑魚って片付けた白蛇召喚の転生者だって、原作尚文があの時期に襲われていたらかなりの危機だったのではなかろうか。フィーロ買ったよってくらいの時期だろ?尚文が耐えられる……とは思うけどレベルは低く、産まれてすぐのフィーロとラフタリアしか味方が居ない。火力足りなくて倒せないんじゃなかろうか。つまり、彼はあの小説的にはそこに居るはずの無い転生者だ。更にはタクトの行動も早すぎる。転生者があの波でやって来て剣を奪っていったりと原作通りだろうと思っていたら俺が出張らないと詰んでたんじゃないか?な事態も起きている。その割に、転生者から殺してから奪い取るした扇はもうグラスの所に帰って良いの?と聞いてきてたりしたからな、扇の本来の持ち主はグラスだとか原作と符合する点も多い
にしても、竪藍阿寅って誰だったんだろうな。この世界の辿る出来事を割としっかり書けてたけど。阿寅……アトラ……いやフォウルの妹は関係ないか。多分作者が連載前に書き貯めた時にアトラを気に入ってペンネームにその名前を使ったとかそんなんだろうな。本人な訳はないし本人だとしたらどうやって俺の世界にまで小説書きに来たんだという問題が生じる
いや、盾の精霊みたいなものと化した原作アトラなら異世界でもその世界の勇者或いは今から呼ぼうとする盾の勇者候補になら四聖武器書を尚文に読ませたように干渉出来なくもないんだろうが、だとすると竪藍阿寅の連載どおりの事が既にあった事になってしまう。ならばリファナは死んでいるしラフタリアと尚文は神になっているはずだしアトラも死んでいる。ってかその有り得ないだろう仮定だとアトラが自分の死の場面をせっせと書くってシュールだな、いや尚文から想われてる場面だし案外筆がのるのか?
四聖武器書みたいなシミュレートだとすると盾の勇者が俺ではなく尚文の時点で何で俺に読ませたんだ尚文に送りつけろで終わるしな。アトラが書いたとすると女神を倒した後に今更何で作品としては序盤の時期にネズミさんが介入するような事態になるんだその時期は当の昔に過ぎ去っただろで矛盾しまくる
というか第一、だとすると俺が実は盾の勇者候補だとか向こうの勇者だとかってのも仮定の前提に組み込まれてしまうしあれ読めてたのは実は俺だけって事にもなる。それは有り得ない。ネットでの声はまあ俺が見る限りにおいて偽造出来なくもないんだろうが、俺ではないもう一人の超S級異能力持ち日本人と肉声で会話した時にあの作品の話通じたからな。他に知ってる人が居る以上この仮定は成り立たない
じゃあ何なんだと言われたら……知るか、で終わらせよう
「そもそも扇の勇者じゃなくて扇もちの転生者だったでちが知るはずの無い事知ってるでちからねマスター
何でなのか、ボクにも教えて欲しいでち」
……でちが知りたいというか、システムエクスペリエンスからの探り、だろうかこれは。まあでちは悪魔だからな、あいつと繋がってる。その事は、一度たりとも忘れていない。どれだけ普通っぽかろう俺を手伝ってくれようが、こいつは何時か敵になる悪魔で、転生者側の存在だ
言うべきか?どこまで誤魔化すべきか少し悩む
「んまあ、俺は特別な転生者だからな」
「知ってるでち」
「だからさ。知ってる……というか勇者武器を使ってある程度見えるんだよ。俺達転生者が手を加えなかった場合にどんな事態になるのかってものが、さ」
選んだのはある程度の誤魔化し。未来を見てるわけじゃないぞしつつ、でもある程度は知ってるぞという中庸。半端ともいう
「マジでち?」
「マジ。そりゃもう、この世界の元々の神は勇者武器だからな、ある程度の事は出来るんだろう」
盾の精霊が勇者になる前の尚文に四聖武器書を送り付けたようにな
「ホントでちか?」
「尚文の奴に聞いたんだけどさ。残りの三人の勇者は大体こんな奴でこんなやらかしをして……って割と今の自分の境遇と合ってる物語、四聖武器書を読んでた時に召喚されたらしいぞあいつ
つまりは、召喚するための器具にある程度合ってる未来を書ける程度には未来のシミュレートが出来るんだよ、勇者武器ってのは」
「ふむふむ、だからそれに合わせてマスターはどう動くべきか決めてるんでちね」
「そういうこと。別世界……といっても波で融合しかけてるあっちで扇が不穏な事言ってたから波に乗じて攻めてくるんじゃないかって未来予測があったのが前の波だな」
「その不穏な事言った後に転生者の手に渡ったんでちね……」
「恐らくな」
「で、マスターが苦々しい表情してたって事はあの消し飛んだ犬耳とドラゴンについても何かあったんでち?」
背が低いので見上げる形ででちが尋ねる
「ああ、あいつらは……何も無かった場合の盾の勇者の仲間だ」
言葉を探りながら、俺は話を始めた
女神『Re:ゼロから始める異世界侵略』
槍直しみたいな世界ならばアトラが盾の精霊だが序盤ってのはあり得るのである。ネズ公はそんなことは知らないが