パチモノ勇者の成り上がり   作:雨在新人

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放浪(さまよ)える目

「……起きたか?」

 近付かずそう尋ねる

 

 あれだ。でちは兎も角、普通に女の子に近付くと下心ありとみられるからな。その対応だ。リファナなら多分気にしない、ラフタリアはちょっと気にする、キールは男だと思ってるから反応無し、サディナさんなら……からかうにはまだ子供よねされるな多分。だが、知らない相手には気を付けるべし。自分しか居ないならまだ良いが、他に任せられるでちでち言ってる悪魔が居るしな

 

 なんて、彼女を見ると服装をメイド服からラフな洋装に変えつつせっせと髪飾りしていた。それをどっから出したお前。悪魔ってかなり自由だなおい

 「元々は旦那様の気分に合わせるための機能でち」

 「要らんな。適当によさげな服になっとけ。ってかメイド服止められたならもっと前に止めてろ」

 「お気に入りでち」

 「……でも目立つから今後は控え目にな」

 

 なんてやっているうちに、フィロリアル枕にして寝かせていたレンが目を見開いた

 「あ、あの光は……」

 ぼんやりと、焦点のちょっと合わない眼で呟くレン。顔立ち可愛いけどちょっとアレだな。元康とかが嫌いそうだ、眼に光がなくて。いや、瑠奈もちょっと光薄かったから俺は気にならないけどさ

 ってか関係ないな、眼がちょっと眩んでるだけだろうし。流石に事前説明なしは不味かったか

 「勇者のスキル。ってか魔法だな」

 「まほ、う?」

 「リベレイションって言う勇者専用魔法だよ。勇者にしか使えないから気にしなくて良い」

 素直に答えておく。マスターは勇者じゃないでちとじとっとした目を……出来るはずもないので真顔で見てるでちは無視

 「勇者って……そんな強い……のか?」

 疑問げに聞くレン

 「ん?疑うのか?」

 「剣の……勇者は、あんなに強くなかった

 レベルだけで、あそこまでの差は」

 「つかないな。魔法とか併用してるし」

 「だ、だよな……」

 うーんボーイッシュ。あんまり喋りが女の子っぽくない。声は普通に少年声、つまりは女でも違和感無いんだが

 

 「ってか剣の勇者について良く知ってたな

 あれか?あのガエリオンを倒すのを見てたとかか」

 「あの、ドラゴン……」

 きゅっと体を抱くように防御反応。何と言うか、トラウマにでもなってそうだ

 「悪い、変なこと言ったな」

 「気を付けるべきでちね」

 「お前が言うなゼファー」

 

 「ってか、レン

 お前はどうしてあそこに居たんだ?言いたくないなら、いっそ言わなくて良いが」

 その上で一歩踏み込む

 「あのドラゴンに、『孕め!竜帝の仔を!』と言われて、それで……」

 少しずつ焦点の戻ってきた眼を閉じ、絞り出すように呟かれる声

 「ゼファー、後で見てやれ」

 「セクハラでちね」

 「煩い俺がどうこう出来る問題じゃないだろうそれは

 だから任せるぞゼファー」

 にしてもガエリオンは本当に……。いや、ドラゴンなんてそんなもの、それこそほとんどどんな相手でも異性なら襲うぞ特に雄はってえっちなゲームのオークみたいな奴等だが。亜人どころか獣そのものすら襲うので超オークと言っても良い。ってか村を出て放浪していた半年の間に、大きな魔猪を押さえ付けて致している地竜の一種を見たことがある。お盛んだなと後ろから首を狙うも当時の俺では火力が足りずにキレられて暴れられた上に逃げられたんだが。あの時は剣は折れるし散々だった。正に、二兎を追って返り討ちにあうだ。ウサピルでも複数いると脅威でありたかを括ると鎧やら武器やら命やらを落として損して帰ってくる堅実に行けという教訓的な諺のアレ

 

 「い、いや、襲われてはいない」

 「……なんだ、そうか

 悪い、気を遣わせたな

 

 それで、レン」

 「な、何だ?」

 きょどるレン。どうした不安か

 「これからお前はどうするんだ?」

 「どう、する……?」

 不安げに何もない虚空で手を握るレン。武器なんかも持ってなかったしな。それでも元々レベルがかなり高いし、かつては持ってたんだろうか

 「どう、しよう……」

 「おい!」

 ずっこけかけた

 

 「故郷に帰るなら送っていく。どこかに拠点なりがあるならそこまでか」

 「どちらも、行ける場所じゃない」

 行ける場所じゃない、か。無い、でも無くなった、でもないのか。いや、もう無いから行けないのかもしれないが

 「なら今まで何してたんだよ

 レベルは高いんだろ?」

 「あんまり追い詰めちゃ駄目でちよ」

 「冒険を、していた」

 「それは、終わったのか?」

 「終わった

 この手には、何も残っていない。だから。何をして良いのか、分からない」

 その眼は、とても静かで

 確かに色々なものを喪ってきたのだろうということを理解させた。この眼は見たことがある。瑠奈の葬式の朝、鏡から俺を睨んでいた目そのもので。ルロロナ村に戻った日に砕いてしまった映像水晶に反射していた目にも良く似ていて、けれども違うもの。それが良いのか悪いのかと言われれば微妙だが、やり場の無い想いを抱いた者の目。あの目はやろうと思って出来るものでもない。ならば、良いか、多少は信用したとしても

 

 少しだけ考えたのだ。何でこいつ此処にいるのだろう、と。タクトが襲撃したならばその時にどうこうならなかったのかと。或いはレン……いや剣の勇者の方の錬がガエリオンを倒した際にとも。タクトが置いていった罠では?と

 だが、あの目は違う。罠の出来る目でもないだろう。だから、信じてみるか

 「何をして良いのか分からない、か

 それでも、何かをしなければいけないと思うなら、俺と来るか?

 いや、何もしたくないって言われてもじゃあなと金だけ与えて放り出すくらいしかやること無いんだけどな」

 「僕の事は放って……」

 また僕、か。でちと被るなおい。まあ、あいつの場合は制作者の趣味か外見は完全に胸盛られたロリでボーイッシュさなんて髪が短めってくらいしかないから全く似合わないがレンはスカートじゃなければ男に……いや線細すぎるが見えなくもないのでそれなりに似合うな

 

 「……頼む」

 一度断りかけ。けれども瞳は揺れ。暫くして、少女は頭を下げた

 「おし、分かった

 後で武器でも買いに行くか、レン」

 「そこは服じゃ、無いのか?」

 「欲しいなら後で買うぞ?まずは自力で自分の身くらい守れるようなものだろ?」

 「マスターはそういう馬鹿でちよ

 お粥作ってきたでち」

 ゼファー、居ないと思ったら食事作ってたのか。気が利くな

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