パチモノ勇者の成り上がり   作:雨在新人

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買い出しの算段

「さってと」

 ……外に出たは良いが、ロクな武器屋は無いんだよな此処。適当に見繕うにしても本当の意味でまあ有り合わせ、無いよりはマシな方の適当だ。レンに見繕うと言った以上何か用意しなきゃいけないんだが……

 

 「ストレージの中……駄目か」

 眺めてみるが良さげなものは無い。勇者武器が溜め込んだドロップ品は定期的に売り払ってるからな、良いものは残ってないか。更には波の前日にいざとなったときのカスタム代金として大量換金までやったものな。良い武器なんてあるはずもない

 「無い、のか?」

 「ああ、無い。ロクに残ってないな」

 ストレージの中身は素材だけだ。オーバーカスタムすれば強化出来るが金が勿体ないしそもそも切り替えるものだしどうするかな、という奴だな。所謂スピリットエンチャント、魂の欠片という素材を消費して○○スピリットという素材由来の特殊効果を付けられるという……確か槍由来の強化だ。魂の欠片は一応ろ過して回復アイテムに変えられはするしそれを売れば金にもなるのだが○○特攻系が付くので切り替えて使うためにとってあるのだ。別々の武器に付加しておけば特攻に合わせて切り替えられるし残しておく意味もと言いたいが、そもそも俺って強化してるのが(かね)武器のダマスカスナイフ、扱いやすい竜鱗の投剣、伝説の武器のレプリカな偽・フレイの剣の3つくらいだしな。残りは解放だけでカスタムは最低限。流石にカスタムしてある武器とは基本性能に差がありすぎて特攻ついた他武器よりこいつら使った方が強いが頻発する。ってかカスタム無しでカスタムしたダマスカスナイフに張り合えるのが仮にも危険な武器として悪魔によって闇という名のプラド城に葬られた偽・フレイの剣ただ一つだという時点でスペック差は推して知るべし。特攻の意味とは一体。特にクソナイフ……つまり投擲具は攻撃一辺倒なエンチャントだからな、盾みたいに○○軽減のスピリットは全くと言って良いほどに付かないので耐性の為に相手に合わせて受けるときだけ切り替えるという芸当すら無意味。ピックなどの一部スキルの前提になっている武器種は強化しなくても刺さるし刺してからチェンジダガーしても良いんだから本当に一部武器以外を使う意味がない

 なので置いてある素材はあるのだが、だから何だって話だな。どうせクソナイフをぶん回す以上持ってても仕方ないとしてドロップ武器は売り払ってた事に違いはない

 

 「ってかレン、良くストレージの事を知ってたな」

 「言っていた」

 「いや、だとしてもストレージの事を知らなきゃ、謎の単語言ってるなってだけだろ?」

 その言葉に、少女は少しだけ首を傾げる。しまったって表情は……してないな。ボロじゃないのか

 「剣の勇者が、開いていた。あのドラゴンを倒した後に、ドロップは、と

 そしてどこからか剣を取り出して、取り落としていた」

 弾かれたな勇者武器の制限によって

 なるほど。筋は通る

 

 「疑いすぎても、でちね」

 「だな」

 じゃあ、どうするか

 ポータルで飛んでも良いんだが……いや、飛ぶか

 「レン。ポータルでちょっと城下町に飛ぶぞ」

 まだフィロリアルは寝ている。置いていくのも微妙だろう。ってか、宿取ったんだよな結局。そもそも厩舎なんてフィロリアルのものってか馬用だけど宿くらいしか基本は解放してない。それを使わせて貰おうとすれば当然ながら宿代くらいは払うというものだ。なので、今日は泊まりが確定。この世界は日本ほど治安なんて良くないからな。後払いなんてレベルにものを言わせて逃げられる可能性のある不安定な支払いは流行らないのだ。先払い、それが大きな街ではない場所での店の基本だ。大きな街だと常駐している騎士団とかが駆け付けてくるからと少しは緩かったりするがな。ってか捕まえた場合に逃げられて全額損より良かっただろと一部代金を仕事代としてさっ引けるから騎士団側が後払い推奨していたりするが。うん酷い話だ

 

 「ポータル、か」

 「剣の勇者はその場で飛んでかなかったのか?まあ良いや」

 すっとクソナイフの姿を変える。まあ気分だ、変えなくても使えるが変えた方が気分が良い。今は切羽詰まってないしな

 「ゼファー、留守頼むぞ」

 「任されたでち。マスターのセンスは壊滅的だから服を買うならばボクを連れていく時にでちよ」

 「信用ねぇな俺!?」

 「マスターならば絶対に変な服になる信用があるでち」

 「それは信用じゃねぇよゼファー!ポータルジャベリン!」

 口煩いでちはフィロリアル二羽の為に置いておいて。俺はスキルを発動した

 

 メルロマルク城下町。正直言ってあまり良い思い出の無い場

 っても村の残骸に飛んでも無意味だし、行く場所は此処しかない。まあ、城下町だからって何らアテがあるわけでもないんだがな!

 「……」

 ぼんやりと、レンは辺りを眺めている。物珍しげに……って感じじゃないが

 「んま、此処なら流石に良さげなものがあんだろ」

 知らないけど。……行ってみるか、本来の尚文の御用達な武器屋

 

 ……あ、そもそも俺あの武器屋の位置知らないわ。当たり前だけど小説だと詳細な地図とか無いし、腕は確かのはずだが、そんな巨大な店を構えるような勢力もお偉方が御用達なほどの知名度も無かったはずだからな。ビッチは確か尚文に買わせる鎖帷子をあそこで選んでいたが別に王家御用達ではなかったはずだ。ってか地図見ても多分場所を書いてない。どうすべきかね……いっそ奴隷商人のところにでも顔出すか?今の俺は投擲具の勇者の幻被ってる訳だし顔は出せる。いや、レンを売ろうという感じに取られかねないか、却下だ

 さてとちょっと待てよ、ネズミ式リファナレーダーは……反応なし。多分尚文等は居ないな。いや居ても困るがこれ。ってかリファナレーダーってのも単なる勘なのだが。いわゆるビビっと来たってやつだな

 

 そんなこんなで、えーっと何処だったかなと言いつつレンを連れて歩く。レンの奴、離れていかないな

 一歩離れ、けれどもしっかり付いてくる。多少距離があるのが今の俺との心の間隔だろう。いや別に良いが、慕えと言う気もないし

 「……迷った、のか?」

 「いや迷ってない。そもそも噂で聞いただけで、この辺りということしか知らないんだ」

 実はこの辺りかどうかすら知らないけどな!威張ることでは無いが。城を出て10分ほどの場所にある大きな剣の看板を掲げた店、だったか。その辺りの文章は覚えてるもんだな。っても城から10分ってかなりの場所が当てはまるんだが

 「大丈夫、なのか?」

 「そのうち当たるだろ。最悪、見つからなければ他の店だ。あくまでも良さげな武器探してるだけだからな」

 なんてやってるうち。漸く見えてくる。うん、多分あれだなという看板

 

 「いらっしゃい!」

 店に入ると、いかにもな外見の店主に声をかけられた


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