「お、お客さん初めてだね」
「少し、知り合いから噂を聞いてたので」
「ほうほう。それはお目が高い、目の付け所が違うねその人は」
そりゃそうだ。
「それで、用件は?」
「こいつの武器を一本。いや、予備も要るかもしれないか」
「そこのボロ服の彼氏は要らないのかい?」
「「彼氏じゃない」」
お、ハモった。どうでも良いな
「良い物もってなければナメられるぜ」
まじまじと腰に下げたみすぼらしい……と言えば語弊があるが簡素なナイフを見て言う。鑑定眼は割と確かなはずだが、その辺りは無理か
「良い物なら、此処にあるから大丈夫さ」
「いや、言いにくいんだがその……粗悪ひ……!?」
店主が言葉を詰まらせる
……おいクソナイフ、勝手に変わるな。もうちょっと大げさに見せるものじゃないのか?
今の今まで簡素な初期武器の姿をさせていたダマスカスナイフを引き抜いて、竜鱗の投剣に姿を変えさせる
「これは勇者の武器だから。特に問題ないんだ」
「と、投擲具の勇者……様」
「様付けは良いよ。今は単なる客ユータ・レールヴァッツだ」
あくまでも偽勇者ユータを名乗る。手は差し出さない。幻影だからなユータ姿。実態はハツカ種のマルスそのままだ。体格は似ているから誤魔化しはきくものの、手の感覚の違いとかバレないとも限らないからな、余計な事はしない
「ユータ、ね
お客様になってくれるってなら良い話だ」
「最近のメルロマルクでの波が色々とって話が武器からあって、ちょっと見に来たついでに、そこで加えた仲間の武器を、ね」
大嘘である。あくまでも寄っただけでメルロマルクからはすぐ出てくぞという風に言ってたように記憶させる為だ。実際は……いやレン連れてどうするか考えてないが暫くはメルロマルク国境突破はしないべきだろう。フィロリアル買った以上馬車の勇者とも邂逅を狙いたいし、何より……
「ああ、盾の勇者様が偽物で、本当は悪魔だったんだってな」
そう。これである
盾の悪魔。三勇教の者と亜人大嫌いな杖の勇者による盾の勇者狩り。国境封鎖などもやっている段階だろうし、尚文の事を考えたら今メルロマルクを出るのは愚策だろう。近くに居ていざとなれば投擲具の勇者のフリして一応同じ勇者だろ勇者のよしみで助けただけだと救援対応すべきだ
「……うーん、それはどうなんだろうな
会ったこと無いし、同じ勇者としては何とも。ってか、七星勇者って本来は四聖の下だから、万一どんなゴミでも四聖勇者に対して毒吐くのって褒められた話じゃ無いんだ。理屈の上では言っちゃいけない、ほら、兵の前で王への文句垂れるみたいな感じでさ」
「いやでも、善意で手伝おうとした王女様を強姦したって聞いたぜ?実はこの店に装備を買いに来てたんだが、やるはずがないって断言はしにくい人だった」
「そうか、情報感謝する
で、他の勇者の買い物を受けた事がある分かるだろう?俺も、このナイフ以外を持つと……」
と、言いつつ近くにあった小振りなナイフを手に取る。ネズミ目利き的に、手の届く中で最も出来が良いものを狙って
バチッ、とスパークが走り、視界の端に雷撃が一瞬浮かぶと共に出っ歯ネズミのアイコン。勇者っぽさを出すべきと思ったのか、クソナイフも何時もより大げさに禁止事項だと抵抗してきてくれる。『伝説武器の規則事項、武器の所持に触れました』ってな
……?おいクソナイフ、専用武器以外のが抜けてるぞクソナイフしっかりしろクソナイフ。それだとお前も当てはまることになるだろクソナイフ。って図星ネズミの称号要らないからなクソナイフ
ウェポンコピー発動と共に、ナイフは手から弾かれて元の場所に戻る
「そ、投擲具でもこうなるから、そもそも買っても意味無いんだ」
「ああ、確かに盾の勇者も弾かれてたな」
「ってことで、こっちの子の分だけ頼む」
「防具は?」
「仲間曰く、俺には服のセンスが無い、とさ。なので別の所で買うよ」
と、会話を切り上げ、レンを見る
「レン、何が使いたい?」
剣……が扱いやすいのはあるが、剣の勇者を見てたらしいからな。憧れて剣を選ぶかもしれなければ、逆にそれは嫌だとするかもしれない。なので聞いてみる
「……武器」
「そう。此処にあるのは近接武器ばっかりだけど、弓とかの方が良かったか?」
「い、いや。それは慣れてない」
……そうだな。そういえばこいつ普通にクラスアップするくらいには戦いを経験してきたはずだ。タクトのハーレムの大半のような養殖産なら話は別だが
一応ステータスだけならパーティ組んでパワーレベリングだって出来るんだよな。ステータスだけ高くてそれに振り回されるゴミになるけど。ぶっちゃけた話、タクトのハーレムメンバーのレベルは竜帝の欠片のお陰で200越えてるはずだが、その上で1vs1ならレベル40な今の俺で殺せる。その程度にはゴミだ。いっそクソナイフ縛ってアヴェンジブースト禁止しても勝てるだろうな。あ、といってもあくまでもゴミ連中だけな、
閑話休題。今はタクトハーレムはどうでも良いんだよ。レンの武器だ
「安全に行きたいなら槍とかか?」
露骨に嫌そうにするなよレン。どうしたレン
「い、いや。槍には正直良い思い出がない」
「無いのか」
「正確には……槍を持っているのが特徴的な人間に」
元康?いや、無いな多分
槍の勇者はアレな奴ではある。だがまあ、それでも女好きであることは確かだ。レン側から逃げたりしなければ、あいつは自分のハーレムにいれたりする方向で動くはずだ。それを追い出しそうな奴はビッチってのが居るが、そうして離れたパターンならば苦手なのはビッチであり元康じゃないだろうしな
「そうか。別に強要する気はないから好きなので良い」
「資金は?」
「買ってやるって言ったんだ、俺が出すさ
店主、大体……」
脳内試算。使うべき金と残すべき金とを考えて……でも少なすぎるとろくでもない武器しか無いしな。ほいほい買い換えるのもアレだしブラッドクリーンコーティングも必須だろう。それ以上の特殊加工は何時までも使うわけでもなし額に見合わないだろうが血糊ですぐにダメになる未加工だと安物買いの銭喪いだ。砥石の盾なんかの自動研磨武器があれば自前で維持できるので別だが、残念ながら投擲具だと砥石吸わせても研ぐ効果のある武器は出なかった。砥石ブーメランはあるがあれは逆に相手の武器をかすめるように投げつけてとてつもなく意図した雑さで刃を研ぎ相手の武器のコーティング等を剥がす特殊武器だ。勇者武器の強化である○○エンチャントは流石に無理だが魔法剣なんかの一時エンチャント魔法ならば剥がせる。敵で使ってきた奴が居ないから使い所が現状無いが
「銀貨250枚ちょい」
……言っててあれだが、初期尚文と同じだな。つまりは銀鉄までか。銀なんて混じってて強度は?と思うが、そこは魔法のある世界なので問題ない。実際俺の雷とか唯一面識あるもう一人の超Sの人の炎とかの伝導率凄かったからな銀。そういった特殊な何かに関する効果は高く、ゆえに思ったより強くなるのだ
「なら……剣なら銀鉄まで、ナイフなら……」
現物を並べるには種類がちょっと多いのだろう。大体その武器種での最高ランクだろうものを店主は並べてくれる。確かに銀鉄の2ランク上だしなナイフともなると
また、素材に応じて加工も違う。刃が三角垂のように刃先にかけて絞られていっていたり、逆に刃先にかけて一度膨らんでいたりとまちまちで、単に高い方がいいとも限らない
「レン、どうする?」
なんて聞いてみると……
黒髪の少女は、それを全て無視して一本の剣をじっと見つめめていた
……素材は魔物素材。割と珍しい種類か。グリフォン素材だが、それを剣に加工するのは割と面倒だ。杖なら楽なんだろうから魔法使いの為に売ってる杖なら割とグリフォン素材製はあるが、剣では見たことがない。柄には羽の意匠があしらわれ、全体的に細身で女の子でも扱いやすそうな重さだろうと感じさせる
うん。確かに業物だろうな。だが……
「……流石に、高すぎる、だろうか」
「レン。ひょっとしてお前クテンロウだかの出身か?」
とぼけた事を言うレンに突っ込む。いや、値札ついてるぞそれ。きちんとメルロマルクの文字で書いてる、値段は銀貨820枚と。高すぎるも何もさっきいった予算の三倍超だぞレン
「……どうして?」
「いや。値札読めてないから、さ」
「す、すまない」
「いや、読めなかったなら良いんだ。最近メルロマルクの方に出てきたとかなら、それも理解できるしさ。考えなかった俺が悪い」
そういえば遠くって言ってたしな。メルロマルクから遠い場所出身だったとか考慮すべきだったか。どんな理由があるのかは……そのうち話してくれるだろうか
「820枚か……」
いや、買えなくはないぞ?予算を切り詰めれば。つまりは、レンにそれだけの金を使うことを良しとすれば。暫くオーバーカスタムはお預けだし防具も良さげなものは買えなくなるってのは……攻撃なんて当たらなければどうということは無いと言い切れば話は早いがそれ言って良いのか?
「さ、三倍超か……」
俺の言葉で値段に気が付いたのだろう、流石に無理だよなとばかりに、レンが目線を外す
「レン。しっかり戦えよ」
「……?」
「店主、キリよく800でどうだ?」
「勇者様、キリよく850で」
「30高くなるのはぼったくりじゃないか?」
「いきなり20下げろも中々」
ちっ、効かないか。原作尚文は割と強引な値切りをしてたが、やりすぎて上手く行くかどうかってかなり難しい問題だからな。流石に俺には調整しきれない
「まあ良いや。820な」
高い買い物だと自分でも思う。持ち逃げとかされたら困ったもんだ。一応ビーコン仕込んでおくか