「さてと。レン
とりあえずまずはお前の力を見せてもらうぞ。防具に関してはそれからな」
「それからでち。金属鎧が良いのかとか皮で良いのかとか分からないとファッションも決められないのでちよ。マスターは……もう勝手にするでち」
『ピィ!』
「お前らはまだ早い。まだ成長するだろ1日2日で使えなくなるものに払う金はないぞ」
なんて、何か欲しげなフィロリアルどもに釘を刺して。ってまともに理解してるんだろうかこいつら。所詮は生まれたての鳥頭(物理)だしな。まあ、そんなことを言ったら俺もドブネズミ(物理)なんであまり言っても仕方ないが
ポータルでもう一度飛んでゼファーと合流。そのまま向かうのは分かりやすい稼ぎ場所。といっても開けた野原ってだけなのだが。道が引かれていない未開の……と言うにはちょっと開けた原っぱ。では何故そのままかというと、この辺りではかなり強めの魔物が出るからだ。わざわざ他にもっと安全な場所があるのにここに馬車道を通そうとかそんな事にはならなかったという訳だな。なのでレンの実力を見るにはちょうど良いとここに来た。生息魔物的には此方のレベルとしては……30台ないと辛いな。囲まれればクラスアップ済のパーティでなければあっさり壊滅もあり得る。ってかそんな死骸見たぞ前に
つまりは、俺なら勝てる相手である。何も言う必要はない
「一人で、戦えば良いのか?」
「いや?ゼファーの奴とムゥにリヴァイはまあ居ないものとして」
「酷いでち」
「いや、後衛だ何だまで考えたらろくに戦えないだろう。ってかお前弓持ってるならお前が寧ろ当てないように気を付けるのが基本だろ」
抗議するでちはそうやって封殺しておいて
「とりあえず俺の武器は勇者の投擲具。投擲具ってもナイフや投げ槍だからな、勇者の力であるスキル以外は近接も十分行ける。半前衛な中衛ってところだな。それを覚えて、ちょっと自分なりにやってみてくれ」
「わ、分かった。やってみる」
言って、黒髪の少女は剣を構える。細身のグリフォン製の剣……フェザーソードを
自分で買っておいて何だが、オーバースペックだよなあの剣。グリフォン素材とかこの辺りの敵に向けて振るには強すぎる。力を見るも何もフォロー要らずに勝てるぞ多分
何て思いつつ見守ってみる
「はっ!そこっ!」
うん。普通に強いわレン。当たり前か、レベルにして50以上あるんだものな。強くないと可笑しい。剣の軌道にも迷いはあまりない。時折……というか一息つく度に少しだけ気分悪そうに鞘に剣を戻して額を抑えるのだけが気掛かりだが、俺の出る幕はなかったな
「……なるほど。良く分かった
お前ソロだろ」
暫くして、俺はそう結論付けた
ソロ。ひとりぼっち。つまりはそういうことである
「ソ……ロ?」
「いや、お前は確かに強いよレン。俺が出る必要なんて何もなかった」
「そ、それじゃあ駄目だった……のか?」
「いや、別にピンチになって助けられろって話じゃない。でもな、俺が介入する間が無かったって事は、一人で全部片付けようとしたって事だ」
背後に回ったダストフロッガー等の魔物を、スカート翻してそちらに向き直り早めに処理していた。だから出る必要はなかった訳だが
「逆に言おう。俺が後ろに居るって事を覚えてたなら、あいつらを倒すために向き直る必要なんて無かった。だって、お前の背は仲間が守るはずだろ?
だけど、レン。お前はそうしなかった。背後の敵は危険だから先に処分しようとした。それは、仲間なんて居なかった奴のやり方だ」
昔の俺みたいに、な!
自分を特別な存在だと思い込んでいつか全部の勇者武器を手にしてと思ってた頃、リファナは特別だけど他の人間とか仲間と呼ぶような対等の存在だと思うかと言うと……いや、キールとかはまだ幼馴染だしそこまで酷い感じじゃなかったぞ?でも仕事で組む相手とか基本無視してた。別れた日にはそいつが男だったか女だったかすら覚えてない程度には興味無かったな
「だ、駄目だった……か?」
しゅんと俯くレン
「いや、別に?昔の俺もそうだったよ。一人で出来るってな」
それは、サッカーやってるうちに一度なりを潜めたんだが……転生して調子乗ったのかまた出てしまっていたのは否定しない
「でもさ。それじゃあパーティで戦う意味がない。もうちょっと、俺を信頼してくれ
って言っても難しいか。そのうち、な」
押しても駄目だろう、この少女には。押して意味がある奴と、押すと逃げる奴がいて、多分レンは後者だ。押し付けられるのは嫌いそう
『ピヨ!』
なんて思ってると、背後でフィロリアルが鳴いた。リヴァイの方だな
「何だ?」
『ピヨピヨピィ!』
とてとてとレンに近づく饅頭鳥。割とデカイから威圧感はあるな
レンは逃げず、寄られるに任せていてる
「多分、パーティで戦うというなら自分をって事でちよ」
「女相手には調子良いなお前。そのうちエロリアルになるんじゃないかこいつ」
「どうでちかね」
「い、いや。鳥だしそれは無いんじゃ……ないか?」
レンも困惑気味だ。いやでもこいつら勇者が育てるとキングやクイーン化するしなぁ。その状態まで成長すると喋るし人間の姿にもなる。現状は俺が勇者としてはパチモノだからか兆候は無いけれども、万一の事を考えて服を買っとくべきだろうか
原作尚文の育てたフィロリアルはフィーロで雌だから幼女の姿になったのだが……。突然そうなられると全裸の女児連れで絵面が不味い。それはそうだが、俺の場合はリヴァイって雄も居る。全裸の少年が突然まで追加とか絵面は更に悪化だ。人型が少年でなく成人の姿だとその絵面のヤバさはもう筆舌に尽くしがたいな。特にムゥと同時に人型になられた日には犯罪現場でしかない。どんな変態だこのパーティ
「どうだろうな?
そもそもこのフィロリアル、ひとつ不思議な伝承を聞いてたから育て始めたものだしな」
「伝承?」
こてん、と首を傾げるレン
「四聖勇者が育てたフィロリアルは、特別な姿になるって話。まああくまでもお伽噺だとは思うけどさ
折角聞いたし俺だって勇者なんだ。七星勇者でもそういうのがあるかやってみようかという感じだ」
「四聖勇者が育てると……」
「そうそう。七星でどうなるかってのは知らないし、そもそも昔の七星勇者だってフィロリアルくらい育てたりして確かめてそうなんだけどさ
ってどうしたレン?」
ちょっと遠い目してるぞ
「い、いや
なったら面白いなって」
「そんな表情には見えなかったでち」
「こらゼファー、疑うなよそんな害の無いところを」
ぶっちゃけた話、無理だろと思ってても構わない。俺もパチモノに反応するってどうなんだフィロリアルどもって思う。勇者の武器の存在にのみ反応するなら仕方ないが、ならば勇者でなくとも武器が安置されてる辺りで育てば変異するのかってなるしな
『ピヨ!』
おお、リヴァイの奴燃えていらっしゃる
「レン。何かこんなんだしリヴァイはお前に預ける」
「い、いや。預けられても困るんだが」
「適当に遊んでやってくれれば満足するだろ多分。生後二日にしてこいつ俺のことを無視しだしてるからな」
『ピィ!』
こっちの鳴き声はムゥの方だ。こいつは無視しないのでその主張だろうか
そんなこんなで、とりあえず稼いでおいた。解放できるものは前に通りがかった時に一通り解放しておいたので俺の収穫はほぼゼロだけどな。いい加減クラスアップの道でも探るべきか。因みにだが、フィロリアル二羽のレベルは30まで行った。レベルに合わせて急成長し、ほぼ成体の大きさまで行った。大体の魔物や亜人は30越えでほぼ体が完成するしこれで成長はほぼ終わりだな。饅頭っぽさが薄れてきて、普通のフィロリアル体型にも近づいてきた。一晩たてばほぼ普通のフィロリアルになるだろう。それ以上変化するようなら特異種への変異だ
尚文の時はもっと前に孵ってたしラフタリアしか居なかったからレベル上げにも変化にも時間かかってたが、俺の場合はさっくさくだな。フィーロが人型になるかどうかって暫く解らなかったがこっちは明後日くらいには分かるだろう