パチモノ勇者の成り上がり   作:雨在新人

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フィロリアルの群れ

「マスターマスター、大変でち!」

 なんて、レンと話しているとダチョウ二羽……ではなくフィロリアル二羽を引き連れて悪魔が戻ってくる

 

 あいつ酔わないんだよな、酔う機能なんてないでちよだとか言って。なかなかにズルい。いや俺もあまり酔わない質だがそれは昔っから三半規管を酷使してたので慣れてるだけで酔うときは酔う。まあ、相手のロングパスをオーバーヘッドで前で待ってるFWに蹴り返したりしてたからな中学時代。でもフィーロに乗ったら多分酔うぞ流石に

 「どうしたゼファー」

 「大変でち大変でち!フィロリアルが攻めてくるでち!」

 『ピィ?』

 あ、ムゥが首を傾げてる

  

 「フィロリアルなこいつが攻めてくる?って首を傾げてるぞ」

 『ピィ!』

 帰ってきたその頭を軽く撫でてやる。機嫌取りだけどな

 「ホントかよゼファー」

 『ピィピィ』

 『グア!』

 あ、フィロリアル出てきた。こいつは野生だな

 

 フィロリアルはそりゃ魔物だ。危険なものかというとそうでもないが。雑食で肉も食べるが、だからといって野良フィロリアルが人を食ったという話はまあ聞かない。その辺りは流石は人と共に生きる魔物として昔の勇者が作った魔物ってだけはあるな。普通の雑食は弱い人間がうろちょろしてたら割と普通に食うんだがな。って言っても放し飼いにしてたペットが行方不明になり首輪がフィロリアルの巣から見つかったとかその程度のトラブルは野生フィロリアルの生息域近くの村とかでは時たまあるんだとか

 

 「フィロリアルが、沢山だな」

 『グア!』

 『グアァァァッ!』

 次々と顔を出すフィロリアル達。ダチョウが一杯だ

 いや、あえて言うならばチョ○ボの森か何かか。ダチョウって言うにはカラフルだしな。といっても、カラフルなだけでクイーンみたいなのは居ない

 「こんなに今日出てくるのは可笑しいでち!攻めてくるに違いないでち!」

 「いや落ち着けゼファー」

 

 『『『『『グアグアグア』』』』』

 「……歌?」

 「歌でちね」

 「確かに歌だな」

 『ピィ!』

 眺めていると口を揃えて歌うフィロリアル達。まあグアグア大合唱でしかないんだが

 「ムゥ、お前何いってるか分かるか?」

 『ピィ!』

 「そもそもそのフィロリアルの言葉だって分からないでちよ!?」

 「すまん取り乱した」

 フィーロじゃないんだからフィロリアルに通訳任せても無意味だったわ当たり前だが

 だが、まあ歌っているなら攻めてくるってのはでちの杞憂だろう。実はあの歌がフランス国歌みたいな好戦的な奴で戦いの前の士気上げでもない限り

 

 「まあ良い。何かは分からないが行くぞ皆」

 「放っておいて良いんでちか!?」

 「波が明日にも来るっていうのに構ってられるか!ムゥ、リヴァイ!走るぞ!」

 とりあえずでスカイウォークを詠唱。二人の少女はフィロリアルに乗せて駆け抜ける姿勢でも

 

 「ちょ、ちょっと待ってくれ」

 だが、黒髪の少女がそれを止める

 「どうしたレン。酔うかもしれないが……」

 「違うんだ

 い、いや……今言うことじゃないのかもしれないけど、もう一つ変なことがあって……」

 「変なこと?」

 何だよレン勿体ぶるな

 「フィロリアル見かけるようになった少し前から、経験値が入らない」

 

 ……oh

 俺の経験値はレベル40上限のせいで一時カンストしてたからな。気がつかなかった。レンのレベルはカンストしてないからな、それで気が付いたのか

 クソナァァァァイフ!どうなってんたクソナァァァァイフ!

 

 ん?ちょっと待てよ。この辺りでは珍しいフィロリアルの群れ?そもそも経験値が入らない?

 ……経験値が入らないとなると勇者武器の干渉か転生者の神受スキルかシステムエクスペリエンスのどうこうだが、でちが何も言わないという事は最後の可能性はまあ無い。真ん中は……システムエクスペリエンスに確認したところ、確かにそういう女神メディア以下略から与えられる特別な力ってのはあるらしい。勇者がスキルを使うのと同じような特異能力(俺は勝手に神受スキルと呼んでいる)の中には発動中は周囲で発生する経験値を全て自身への経験値に変換する『息しているだけで(他人の努力で)レベルアップ』だってあるらしいからな。因みに俺は元々持ってる異能力が樹達と違って超S級と高い特例であり聖武器にも手出し出来複数持てるのが神受スキル扱いらしい。奪う力を与えたら勝手に進化した上に魂のキャパ埋まったからそれが神受スキルってことで、だそうだ。勝手に奪う力が進化するわ元々の異能力が強いわって端から聞けば正に勇者武器を奪うためにあるようなものだ女神から特別な転生者として言われるのもまあ当然か

 

 閑話休題。だがその息しているだけでレベルアップも0じゃあ怪しまれるから1:9くらいで元々の人にも入るらしい。近くに居るだけで9割上前跳ねてるとか可笑しいがそれが転生者だ。だから経験値0ならば恐らくは原因は1つめ。勇者武器の干渉だ

 だが待て。勇者武器の干渉は基本的に元々はそれそのものが一つの世界の神のようなものであった四聖におけるどうこうだ。七星……ってか眷属である投擲具にはあまり関係ない話のはず

 あ、ポップアップ出た。何々……他の正規七星が近くに居ると経験値送ることでSOSを送る?

 ……ホントかクソナイフ?嘘ついてないか?ヘルプじゃなくてポップアップな辺り怪しいぞクソナイフ?

 ……転生者が勇者ぶってる時のヘルプなんて用意してあるはずもない?ごもっとも。だが一応見せろ

 

 ふむふむ、眷属器に関しても一応制限があり、同時に3種以上だと干渉するのか。まあ、聖武器1に対して眷属器2が基本の世界だからな、3以上は流石に干渉発生するのか。まあ、関係ないな今居るのは投擲具(パチモノ)と恐らくは馬車。2しか居ないから無関係だ

 というか、他の眷属器が居るはずもないな。タクトに干渉が発生してなかったのを見るに転生者にパクられてるのは半端に使えてる俺を特例としてそれ以外は眷属器として扱われないので除外。とすると無事な眷属器が杖と馬車とあって斧。鞭爪と槌はタクトの元にあるし小手は推定タクトでない転生者の手元だしな。斧の勇者がメルロマルクにわざわざ出向いてきてなければあの亜人嫌いのクソ王が此処に居るわけもなし干渉があるはずない。別世界の眷属器?刀も扇も向こうに帰ったのを確認したし居残りは無いから考慮に値しない。他の向こうの眷属器が潜んでる?この世界終わってるな。いや波が明日って時点でかなり終わってるが

 

 まあそんなではクソナイフのポップアップを信じるしかない。さて、行くか

 

 「行くぞ、ムゥ、リヴァイ。走るぞ

 だけどさっきとは逆、フィロリアルに突っ込むように!」

 『ピィ!』

 『ピヨオォォッ!』

 おいごねるなリヴァイ!

 「信じて……良いのか?」

 「泥船にのった気でな!」

 「駄目じゃないか!」

 「船すら無しで当てもなく動くよりは泥船でも船があるだけマシだ!」

 『ピィ!』

 「って、うわっ!」

 迷っているうちに小柄な少女の体は生後1週間経ってないけど体は大人なフィロリアルに咥え上げられ

 「よし、ムゥ!突っ込むぞ!

 以下省略ファスト・ライトニングオーラ!」

 『ピィィッ!』

 素直な方のフィロリアルと共に、色とりどりのフィロリアルの群れに突っ込んだ!

 

 一瞬だけ視界の連続性が途切れ、次の瞬間には俺達の姿は深い深い森の中らしき場所にあった

 ……あの辺りに森はない。転移させられたなこれは

 と、辺りを見回すと大量のフィロリアル。40羽ほどか。そして、目をしばたかせて辺りを見回しているレンと、それを乗せたムゥ。そしてリヴァイ

 ……あ、でちの奴ついてきてない。一人だけ招待されずに弾かれたなさては。まあ、本来悪魔なんて世界の敵まんまだし此処に招待される方が可笑しいだろうから当たり前か。自棄になってフィロリアル狩りとか……やるような悪魔じゃないか。今のラフタリアなら尚文だけ此処に飛ばした日にはナオフミ様を何処にやったの!と辺りのフィロリアル締め上げるくらいはやりそうだがそんな感じにあのでちに惚れ込まれて無いだろうしな俺。あくまでも監視者と監視対象、それが悪魔と俺とだ

 

 「転移、したのか」

 「もっと驚けよレン。転移なんて勇者くらいしか出来ない芸当だぞ?」

 いや、悪魔や転移の神受スキル持ち転生者も出来るが。逆に言うとそれくらい特異な奴だけが出来る芸当だ

 「いや。ポータルで何度も飛ばされて……少しだけ慣れた」

 「慣れちゃったか」

 なんて遠巻きにフィロリアル達が見守ってるだけなので世間話をする中

 

 『ピィ!』

 警告のような鳴き声

 瞬時、迫る巨大な影。狙いは……

 「レン!」

 こういう時は!

 「満月扇!」

 扇を奪って使ってた時に扇から覚えたスキルを使用!本邦初披露、扇の中にも投げるものはありそれは投擲具扱いでクソナイフに引き継げる裏技である。いや、スキルだけだからそのスキルを覚えられる武器の解放すっ飛ばして未入手ながら使えるようになるってだけなんだけどさ。最終的にその武器手に入れて解放したら無意味に成り下がる

 円形に広がる扇が、突撃してくる何かを受け止め……

 

 デカイ!そして重い!このスキルじゃ無理か!

 「伏せてろ、レン!」

 投擲具を何時もの偽・フレイの剣に変化。出し惜しみしてられる圧じゃない

 「っらぁっ!」

 円形の扇を打ち砕いて突っ込んでくる重戦車。それを剣で受け止め、火花を散らす

 鍔迫り合い……ではないが、堅い鉄と噛み合う感触。漸く一応止められ、その何かの姿が見えてくる

 

 ……巨大な砲を積んだ馬車を引く巨大なフクロウだ。うん。そうとしか言えない

 ……フクロウ。正確にはフクロウみたいなもこもこフィロリアル。つまりそれが俺の言ってたフィロリアルクイーンの姿

 「何やってんだフィトリアァァァッ!」

 押し切られかけ、アヴェンジブースト!覚醒は当然不可能だが……第二段階は行ける!幻覚張ったままでも充血して真っ赤な目も半端にスパークで青白く逆立つ髪も幻覚貫通して見えてしまうらしいが知らん!後で言い訳でも考える!

 今は……突然レンを襲ったこのバカ鳥を止める事だけ考えろ!

 

 そして……

 砲頭に灯が点る

 「撃ってくっ!?」

 咄嗟に迎撃を考え

 「フロートダガー!チェンジダガー(攻)!ブレイズドリル!」

 とりあえず砲口にドリル突っ込めば止まるだろうの精神でぶっぱ

 だが、間に合わず

 砲口から溢れた風の奔流が、俺を貫いた

 

 ………

 ……

 …

 あ、無事だ。特に何もない

 そして、馬車引きフィロリアルも何時しか停止している

 

 「……ネズ、ミ?」

 ぽつりと、顔をあげたレンが呟いた

 

 ……フィトリア、てめぇ!幻覚剥がしかよさっきのあれ!はた迷惑な!


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