パチモノ勇者の成り上がり   作:雨在新人

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フィトリア視点で見たネズ公の今までの行動
転生者側に奪われた投擲具と邂逅して覚醒。転生者を撃破し正規勇者として選べるほどに候補が育っていない投擲具を勇者が育つまで保護。そのまま本来は多大な被害が出る最初の波を投擲具の勇者として単独で叩き潰し、多くの国々でやはり勇者こそが波を止めてくれる神であると勇者支援の機運に火を点ける
そのまま杖の勇者のせいで死にかけた未来の盾の嫁兼槌の勇者及び本来は死ぬはずの投擲具の勇者候補を生きたまま確保。最低限育てた上で盾の勇者に託して勇者足り得るように更なる成長を促し、空いた時間で敵の前線司令官をだまくらかし世界全体を活性化
第二の波の後、活発に動く波の尖兵のせいでより拗れたのか槍に殺されかけた盾を守って盾と共に脱出。そのまま盾に同行し所詮盾は攻撃してこないしと盾狙いで寄ってきた本来より多い転生者を排除しつつ活発になって早めにちょっかいかけにきたタクトをフォーブレイに嘘で追い返す
そのまま後の小手の勇者を早めに盾に引き合わせて盾の戦力を整えつつ、弓の勇者のゲーム気分を異能コンプレックス刺激して叩き潰して眼を覚まさせる
転生者が増えた影響で向こうの世界が終わりかけ第三の波に乗じて此方にまで転生者出張ってきた末期状態から一人で奪われた扇と刀を取り戻して転生者全員を撃破、そのまま一時的に剣を喪った結果ヘタレてどっかで野垂れ死にそうな剣の勇者を保護して今に至る

……なんというか、これを実はこれこうこうこういう理由で巡りめぐって女神様の為なんでちマスターはそこまで考えてての行動で決して裏切り者じゃないでちとシステム経験値に報告するでち公の胃が心配になってくるほどに清々しいまでの勇者側っぷりである。忘れるなネズ公お前一応転生者だぞしっかり波の尖兵しろ


手抜きと武器

「というかフィトリア」

 「んー?なにー?」

 と、首を傾げるフィトリア。ノリ軽いなおい!

 

 黙ってたとは思えないほどに饒舌だ。あれか?お前の勇者の為を思うなら普通に話せと言ったのがそんなに効いたのか?ってか効きすぎだろ大丈夫かおい

 

 「何で突然レンを襲ったんだ?そして、何故俺の幻影を剥がしたんだ?」

 「えっとね、幻影はお話しするのに邪魔!」

 「意味があってやってたんだけどな……」

 「んー?ばちばちはばちばちじゃなくて?」

 「……というか、ばちばち出来なくなったんだが……」 

 「フィトリアしらなーい!」

 お前のせいだろ!と言うのは止めておこう、今さら言っても何も始まらない。寧ろ折角ご機嫌なフィトリアが気を悪くするかもしれない。……アホ毛って、ひとりでに動くんだな……

 ちょっと集中してみるが俺の中の雷はうんともすんとも言わない。ってか、あれがある程度使える前提で魔法とか組み上げてきたからな、それらが使えないとなると……ヤバい、一からよく使う魔法とか組み直しだ。リベレイション・ホログラフィックプラズマどころかファスト・スカイウォークすら多分出来ないぞ今の俺

 改めて思えばどんだけアヴェンジブーストに頼ってたんだ俺。クソクソ言いつつこれとか情けねぇ

 

 「僕を、襲ったことについては?」

 あ、レン。それ自分から聞いていいのか?

 「ねぇねぇ、なんで?」

 「な、何が?」

 「何で本気出さないの?もっとつよいよね?」

 ねぇねぇ、とレンにずいっと近寄る白い少女

 

 何だろう。似た場面を読んだことがあるような。って樹相手じゃんそのシーン無関係にも程がある

 

 「い、いや、僕は……」

 「ねぇねぇ、なんでなんで?ばちばちに庇われなくても、一人でフィトリア止められたよね?」

 「む、無理……だよ」

 「ぶー!フィトリア知ってる、出来るって」

 『ピヨ!』

 レンを守るように一羽のフィロリアルが前に出る。女王で勇者相手とか勇気あんな……ってリヴァイじゃんあいつ

 

 「フィトリア、ストップ」

 あ、素直にそこは止まるのかお前

 「少し待ってくれ。色々と付いていけないが

 フィトリア、お前はレンが手を抜いているから襲ったって言うのか?」

 ……いや、レンが怠けてる様子はないぞ?俺が見てる限りあれで精一杯だ。いや、ちょっと動きは固いぞ?でもそれはレンが今まで一人で戦ってきたかのような感じだからでフォローを他人に任せる戦いに慣れてないからだろう。背中を預けて戦えといきなり言われてはいそうですかと出来る一匹狼はそうは居ないのだ。居たらそいつは仲間と喧嘩して一匹狼気取ってるかなんかのフカシでしかない。それがやれる奴は一匹狼なんてならないってのが本当か

 

 「そうだよー!ばちばちが庇うか、その娘が本気を出すなら受けられるように」

 「どちらも無かったら?」

 「ばちばちだからだいじょーぶ!」

 ……待て。何の信頼だおい

 「でも、万が一そうだったら、死んじゃうけどしかたないよねー」

 「うぉいっ!」

 びくっ、とレンが震える。死んでも仕方ないとか言われたらまあそりゃな?俺も言われたら怖いわ

 

 「……四聖にもそんなことしかけたりしないだろうな……?」

 ふと気になる。突然レンを襲ったように、突然尚文に襲いかかる可能性。それにラフタリアとかが巻き込まれて……ってのが最悪の事態で

 「フィトリアそんなことしなーい」

 あっさり否定される

 可笑しいな。俺の読んだ原作ではいざとなれば四聖を殺して再召喚も視野に入れてたりしてたらしい覚えがあるんだが。因みに恐らくだがうまくやらないとフィトリアが四聖殺した時点で再召喚出来ずに詰む。そうしてでもいがみ合うままの四聖が嫌か、と思ったような

 

 「ん?四聖がまとまらないなら手遅れになる前に殺すとか」

 「でも今回はだいじょーぶ!そのうちあのなおふみの元でまとまるってフィトリア知ってるー」

 ……うん、原作だとまとまるな。盾以外の三人が散々やらかした後に。今の時点ではその片鱗もないのに信じていいのかよ。ってか、何で原作だとそうやってまとまること知ってるんだお前。未来でも見えるのか

 

 「そ、そうなのか?」

 「俺が知ってるはず無いだろうレン」

 「そ、そう……だよな?」

 ってか、四聖の話だぞ名前が似てても別に四聖皆殺しがあってもレンに関係はないから……。いや、下手したら世界終わるから無関係じゃないが当事者じゃないからそんなに怯えるなって。ネズミさんの背丈はそう高くないから隠れるには向かないぞレン

 

 「……ひとつ聞いていいか、レン?

 お前、本当にフィトリアの言うような何かがあるのか?」

 「あるよー!」

 「……すまんフィトリア、今はレンの口から聞きたいんで少しだけ待っててくれ」

 いや、バカっぽいがこれでもフィトリアは勇者だ。しかも遥か昔の波から既に居る。恐らく何かレンにはあるのだろう。妙に強いし、その割には文字読めないし

 だが、だからといって何だ。俺なんて実は勇者じゃなくて勇者武器奪った波の尖兵だぞ。それに比べれば多少の隠し事がそんな重要なことかよ

 

 「無い、と言ったら?」

 揺れる黒い眼。嘘だな、よく分かる

 「信じるよ」

 「そう、か」

 静かに、黒髪の少女が眼を伏せる

 

 「んー?」

 『ピヨ?』

 おいこら、頭をつつこうとするな遊ぶなフィロリアルズ。ネズミの耳はそう楽しい遊び道具じゃない

 ……うん。気が散る。フィロリアルの周囲は実に真面目な話に向かないな。とっとと終わらせよう

 

 「……実は、ある」

 暫くして、黒髪の少女はそう切り出した

 「あるのかよ」

 いや、多分フィトリアが言うからあるとは思ってたぞ?言うとは思ってなかったが。あっても言いたくないなら気にしない、そういう意図で信じる、と言ったんだが通じなかったろうか

 「……今は、持っていない。けれども、手にすればきっとという力」

 なんだろうか、クテンロウ出身……じゃないかと疑ってるし家宝の刀とかだろうか。そんな気がする

 実はフィロリアルの聖域に三勇教の神具こと四聖武器のレプリカ(劣化勇者武器もどき)の試作品が転がってたりするし、勇者武器でなくともバカみたいに強い武器はたまーに現存しているのだ。まあ、大半のそういう武器は今や悪魔に回収されてプラド城で意図的に死蔵されてるんだがたまーに悪魔が持っていってないそれらのブツがあるのだ。そのうちあの死蔵されてる武器こそっと……いや名分つけて正面から一部パクってこないと

 

 「武器か?」

 「一……応は」

 「そうか。それを使う者として、自分はあれている気がしない?」

 「……使うのが、怖いんだ」

 ……怖い、か

 ネズミさんにはちょっと理解しがたい感情だな。昔からだ。使いたくても使えないこととかの方ならあったがそんな想いはついぞ抱いたことがない

 

 「与えられた力か」

 「願ってもないのに、勝手に託された」

 沈んだ声。本当に悩んでそうだな。茶化すのは止めようか

 

 「んまぁ、勝手にすればいいと思うぞ?

 背負い込むことはない。お前がそんな悩むなら、いっそ暫く忘れてしまえばいい」

 適当なアドバイス。真面目にやろうと言ったとたんにこれかとなるが、そもそも願ってもないのに得た力って俺には無いしな。もう適当なこと吹かすしかないのだ

 

 「んでもまあ、俺もどんなものかは気になったりするしな。それに、お前に託したってことは、お前に受け継いでほしかった想いがあって、それは自分でも分かってるんだろう、レン?

 自分の意思でその武器を手に取って受け継ぐ気にもしもなったらちょっと見せてくれ。それまで、俺はゆっくり知らんぷりでもしてるよ。その気にならなければ永遠に」

 「それで……良いのか?」

 「良いだろ。お前が納得して、自分から手に取るまで。嫌だと思いつつ持ってても無意味だ、ロクに使えないだろ?」

 

 「そう、か

 悩んでて、良いんだな」

 ちょっとだけ晴れた顔で、少女は呟いた

 

 「おわったー?」

 だが、雰囲気なんてものはない、だって此処はフィロリアルの巣だからな




尚文「俺の時と違うぞ男女差別だ」(聞きたくなかった言葉参照)
まあ、ネズ公が勇者の剣使いたくないしてるレン相手に優しいのはそうと知らないからです。知ってたら尚文相手と同じお前しか剣の勇者出来ないから戦えな態度取って立ちかけた信頼フラグをばっきばきに折ってたことでしょう

???「可笑しいですぞ、ネタ選択肢には票が集まるはずが大きなフィロリアル様が愛の狩人とラブラブになる未来に票が入らないですぞぉぉっ!」
うん。フィトリア尚文のヒロイン説には票数勝ってるだけマシな気がする

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