そしてこのままではフィトリアがネズミのヒロインになってしまうのですぞぉぉぉっ!ごしゅじんさまに負けるのならば仕方ないですがネズミに負けるのは嫌ですぞぉぉっ!うぉぉぉっ、大きなフィロリアル様ぁぁぁっ!(アンケートの愛の狩人のところだけ『である』ではなく『であって欲しい』である事からわかるように、元康が勝ってもフィトリア元康のヒロイン説は叶わぬ願いです)
「おはなし終わったー?」
そう問い掛けてくる空気の読めないフィロリアルの少女の胸には、ふっるいリボン。さっきまであんなもの付けてたか?いや、今にも崩れそうにぼっろぼろで少なく見積もって数百年前のとかそんなレベルの古さだし付けてた筈がないな。ずっと付けてたら今頃空中分解してる。いや物持ち良いなフィロリアルなのに。百年ものの布とかとうに無くなってるものかと。いやでも魔力糸とかあるし、フィトリアも人化する時にそれを使ってるからしっかりフィロリアル状態では何も着てなくても人化時に全裸ってのを回避してるんだしな。割と物持ち良くないと魔力糸による服だって破れてなくなるしな……実際昔俺が編んだ魔力糸による服はプラズマ魔法を至近距離で撃ちすぎて大穴空いたので捨てた
「ん?どうしたフィトリア、古いリボンなんてつけ……」
ふと、クソナイフが震える。一つのスキルが使えるよと点滅している
スキル、ソウルテスタメント。
「そういうことか。ソウルテスタメント!」
スキルを使用した瞬間、一瞬だけ俺の視界は真っ黒になり……
ワインレッドの空。どす黒い雲。亀裂の走った大地。波の最中特有の見てるだけで不安になる風景のなか、俺はファスト・スカイラインウォークも使わず空中に立っていた
……何だろうか、不謹慎だが映画でも見てる気分?確かに俺の体はフィロリアルの聖域の中にあって、その感覚はしっかりある。ってかふわふわの羽毛に埋もれている。だけれども視界だけはその世界にあって、それをちょっと引いたカメラ……というか俯瞰視点から眺めている感じ。いや、これ感覚としては映画と言うよりも人のプレイしているRPGの画面見てると言うのが正しいか。俯瞰視点だし
きょろきょろと見回すことは出来るのだが、それ以外の動きは不可能。あくまでも記憶を見ているだけだ、介入は出来ないという事だろう
見回した世界には、ちゃんとした風景な部分と、雑な部分がある。それっぽいだけというか何というか
あれだ。オープンワールドのゲームで割とある、プレイヤーが近づくまでそれっぽい荒いポリゴンおいて処理を軽減しているようなアレ。記憶にもそんなものあるんだなーと思うが、逆に当たり前か。俯瞰視点の真ん中に居る馬車を引いた大きなフィロリアルが動くに合わせ俺の視点も動く。要はこれ、恐らく昔のフィトリアの記憶を俯瞰視点で見ているのだ。あの古いリボンに関係する頃のを。しっかりと見えている場所がフィトリアが見ている部分で、雑なのは多分こんな感じだったんだという推測による補完
ワインレッドの空から湧き出て来るのは次元ノ魔物達……という訳ではない。あんな化け物化け物した者達ではなく人型。黒光りするボディ、響き渡る駆動音。厨二心をくすぐるようなポーンという音と共に地面に降り立つや否や灯る蒼いカメラアイ。そう、ロボットだ。大体は全長が人間の倍ほど。成体のフィロリアルと比べても尚大きいが人が乗り込んで動かすタイプにしては小さな恐らくはAI式とかそんな奴等
そんなこの世界には似つかわしくない奴等が数百、ワインレッドの空の向こうからブースターを噴かせて降り立ってはその腕に持ったマシンガンの弾をばらまいている。フィトリア(確信)な大きな白いフィロリアルが馬車からビーム等を撃って応戦してはいるが、戦況はかなり悪そうだ。たまにマシンガンを受けて痛そうに飛び上がっているし、ビームで撃破は出来ていても次から次へとやってくるロボット兵は増える一方。撃破速度が増援速度に追い付いていない
フィトリアの回りに居るフィロリアル達も応戦はしているが……そっちは更に駄目だな。数羽がかりで一機を蹴り壊し、近くの二機目のマシンガンで位置の悪かった何羽かがミンチにされていくというのを繰り返している。波の向こうから無尽蔵かどうか知らないが湧き出てくる敵に対し、限りある仲間が毎回のように犠牲を払いながら何とか各個撃破しているのは過酷が過ぎる。すぐに全滅してしまうだろう
……だが、見てるだけの過去なので何一つ出来ることはない。見守るだけしか出来ない
ってか、波だろ他の勇者とか居ないのかよ、とフィトリアから視線を外して見回すと……居た
「トォォォル、ハンマァァァッ!」
と、巨大なハンマーを振り回す中年近い男と
「ヒートロッド!」
蛇腹剣、ガリアンソードというのだったろうか。蛇腹状になっており伸ばせば鞭になる剣でロボットの腕を絡めとっては破壊していくロン毛の男
……二人だけかよ。残りの勇者何処行った
と見回してもこの波に応戦している勇者はその合計三人だけで。明らかに分が悪くて
この過去の映像何時終わるんだろうな、と、思ったその時。映像時間かと思っていた視界左端の黄色い砂時計の砂が落ちきった
世界が震え、どす黒い雲が消えていく
そして……亀裂の先から、緑の残光を残して、ひとつの白い機神がこの地に降り立った
ロボットの迎撃をやっていた、鞭の勇者らしき男を踏み潰して
鞭が光となって飛んで行く。それは良い。俺に出来るのは見てることだけだ
ロボット兵達が騎士の礼っぽい体勢を取ったまま動きを停止する。あの白騎士、さては利よりも派手な演出好きだな?
「あいつが親玉か!馬車!もうあいつをぶちのめすしかない!一緒に仕掛けるぞ!」
槌の勇者らしき男がフィトリアに近付き、叫ぶ
そのまま、一人と一羽は全長15m級の白いロボットへと向かい
「相転移砲、発射!」
ロボットの胸のクリスタルから放たれた巨大なビームに撃たれ、消し飛んだ
いや、フィトリアだけはとっさにフィロリアルの姿から小さな人間の姿になることで避けたようだが、槌らしき光が何処かへと飛んでいく
「ビット!」
けれども、反撃には至らず。見映え重視だろう半透明なクリスタル製の機体の明らかに過剰な大きさの翼の一部が自立稼働して、人化したフィトリアを地面に撃ち据える
「……神には、勝てないよ」
語る声は若い男のもの
そんなロボットの無駄に精悍なフェイスに、砲弾が突き刺さる。フィトリアの抵抗
だが、それも微かにツインアイを揺らすのみに止まる
「おや、生きている。死の力を軽く付与した一撃だ、普通なら死んでいる一撃の筈だけど、神に少し近付いた存在だったのか
ちょうど良い。鳥になる少女、この世界を手に入れた後で飼うのも良いかと、殺したことを後悔していたところ。生きていたならば都合が良い」
ロボットが膝をつき、倒れ伏すフィトリアへと手を伸ばす
……勇者3人しかいなかった上に負けてんだけどフィトリア?この記憶本当にあってんのか?それとも
だが、その時
「敵前逃亡2、内紛自滅6、裏切者1。真っ当な勇者が3人だけかつ聖武器の勇者が逃亡者1のいがみあって殺しあった自滅3。全く崖っぷちだな
でも、今までよく頑張った」
そんな声と共に、フィトリアと神を自称する機体を隔てるように、一条の雷撃が降ってきた
雷撃が消えた時、其処には一人の若い男が立っていた。20……3、4ほどだろうか。明るい黄金の髪、輝く赤い目。服装は……トーガ、いやキトンというのだったか、御門讃時代に歴史の本で見た古代ギリシャの彫刻の男が着てたような右胸出すように白い布を巻いた感じ
「何者だ!何故神の前に現れた!」
「おれか?おれはゼウス。ゼウス・
お前が世界に降り立ったから、おれも精霊に呼ばれたのさ」
にやり、とフィトリアの前に立ち、不敵な笑みを浮かべる男
「ゼウスエクスマキナ?名前など聞いていない
何者だ、貴様!」
「まだ分からないか?じゃあ、見せてやるよ、はぁっ!」
声と共に、周囲に5つの光が集まり、男の髪が赤く染まる。そして、揺らめく時折スパークの走る赤いオーラ
いや、あれ周囲の空気が赤熱してるのか。それで髪が真っ赤に見えるようだ。俺のアヴェンジブーストも似たような原理でオーラ纏うな、色は赤くないが
……ってか、あの周囲を飛んでる5つの光、勇者武器だ。剣、槍、弓、槌、そして鞭。さっき勇者が死んだばかりの槌と鞭が居るということは、前の四聖持ってた三勇者もやっぱり死んでるのかよ、どうりでひでぇ戦いになってる訳だ。頑張れ盾、お前だけが頼りだこの時代の盾。何か敵前逃亡と聞いたけどならば終わるまで隠れて生きててくれ盾。お前に求められてるのは多分それだけだ
「この姿なら、分かるだろう?」
「こ、こ、コ……コード:ケラウノスゥゥゥッ!?」
コード:ケラウノス?なんだそりゃ。勇者じゃなさそうだが。ってか神を名乗る今回の波を起こしたろう奴の前で余裕ぶっこけるようなならお前もメディア相手に戦ってろよ多分十分に戦力になるだろお前。原作では全く出てこなかったが
「……誰?」
これは、フィトリアの声
「ああ、おれを呼んだのはキミとその精霊か、かわいこちゃん
おれは、敢えて言うならば……」
「第一級の
「長文解説御苦労!
んでももっと分かりやすく言うならば
精霊に呼ばれて世界を侵略するバカを狩るのがお仕事な、神から世界を守る神なんてやってる一夜のロマンスを求める恋の旅人ってところさ」
……ああ、元康二号だったか
因みに元康二号はネズ公なのであえて言うならばゼウスを名乗る彼は元康三号です
更に正確に言えば彼が元康二号でネズ公が元康二号`ですがまあ過去の記憶にしか出てきませんからねそんな無意味な正確さはどうでも良いのです