「我が魂の同胞よ……」
戻ってみると、何か変なのが居た
黒い髪、銀の瞳という不可思議な色合いの……うん、やけに顔が濃い。背丈は少年くらいなのに顔だけ青年越えてるぞ誰だこいつ
……その横に居るのはふわっふわに広がったボリュームの異様な銀の髪を跳ねさせる黒い目の幼げな少女。こちらは前者の黒いのと異なり顔立ちとの違和感は無い背丈
銀と黒?つまりこいつら……
「ん?お前ら……ムゥとリヴァイか?」
「否!我が真名こそはリヴァイアサン!」
「バハムート~」
「それは忘れろてめぇらぁぁっ!」
あ、こいつら本物だ
本物でなければいくらなんでも俺の呼び名から本名を特定したりしないだろう。いや、寧ろ忘れてくれその名前
ってレン!吹くなそこで!確かにアホかって名前だけど俺としてはこれは止める気だったんだぞ
「とりあえず、突然こうなったからマスターが買い込んでたセンス無い服を渡したでちよ」
「センスないは余計だゼファー」
そうか。そういえばそうだな、クイーンorキング形態にこいつらがなるならば今日だと、フィトリアから聞いていた。そして二人……いや二羽で良いやどうせ人型と言ってもフィロリアルだし。二羽も変化することを選んだという訳だな。確率低いと聞いてたけど両方かよ、ってのはまあ、そもそも同じ卵から生まれたので気にするだけ無駄か
「ど、どうなってるんだ……?」
「レン、お前はフィトリアに会っただろ?」
「あ、ああ。あのフィロリアルに化けられる女の子の勇者」
「逆だ。あいつは、女の子の姿に化けられるフィロリアルの勇者なんだよ。本来の姿、本来の種族はフィロリアル
そしてこいつらもフィロリアル。ならば、フィトリアのような成長を遂げればこうして人間の姿にもなれるって寸法。要は変異種だな。前に、勇者が育てると特別な成長するかもって言っただろ?
特別な成長をした神鳥と呼ばれたフィロリアル、フィトリアがそうだったから、多分これが勇者の場合の特別な成長なんだよ」
「そういう……ものなのか」
「正に運命」
と、黒いの、つまりはリヴァイだな。って前の発言ではちょっと気が付かなかったが声が……似合っていない……
いや、俺くらいの背丈なら分かるぞ?お前の背丈子供じゃん。その背丈で目を瞑って声だけ聞けば老境の皇帝とかかと思わせるような声色ってなんだお前存在がギャグか。ってか、見る限り体型は割と子供だ、そりゃ生後1月経ってないものな。というのは置いておいても、フィトリアからして外見少女なのだからフィロリアルの人化は基本的に幼いものになりがちなのだろう
それで声だけ老人で顔が青年を越えたくらいって、リヴァイ……お前矛盾塊でも目指してるのかよその姿
「魂の同胞、運命の君……
定めが力を目覚めさせた」
一歩、レンへと足を進める黒いの
「そう、なのか……」
困ってるなレン。いや、俺も見ててどうすんだこれ感あるけどさ、ならば逆に俺にどうしろと?
言ってることは多分こうだ、レンに運命を感じてキングになった、と。エロリアルかよてめぇ!
「エロリアル……」
「エロリアルでちか……」
って、声に出てたのか
「いや、異性に発情してそいつと同種族に化けたようにしか聞こえなかったぞエロリアルじゃないか」
「ぶー!発情期、まだなのー!」
と、抗議するのはムゥの方
「そうだ。あくまでも運命の騎士、姫を狙う下衆な盗賊に非ず」
分かりにくいが、要はオレ紳士だからと言いたいのだろう
男の俺紳士だからほど信用出来ない言葉は無い、というのも異世界共通である。男なんて基本性欲のゴミだ。俺?瑠奈の
「そして騎士は助けた姫と結ばれました狙いかよ」
「何と疑り深い魔王か」
「ネズミの魔王とかショッボ。設定練り直せ、まず魔王止めろ」
そもそも勇者は現実に居ても魔王はお伽噺の中にしか居ないぞ。多分昔の自称神と勇者の戦いの伝承が断片的に残っていて、その時の神が魔王を呼称していたとかそんなのだろう。活躍した中に剣の勇者、槍の勇者が居たから、リボンで見たあの過去とはまた別の波であることは言うまでもない。あの過去では四聖が欠片も役に立ってなかったっぽいからな
では、魔王の概念はあるのか?浸透はしてるぞ、そうで無ければ盾の魔王とかいう言葉は出てこない。勇者には魔王、寝物語とかでは分かりやすくよく出てくるのだ。俺も両親……はよく海に出てたし死んだから全然そういったことは聞かなかったが、だからこそネズミの坊主今日家来るか?で狸の親父やリファナのお父さん達からそういうのを聞いた
「魔王ネズミマスターでちか……」
「合体しすぎだろ、フュージョンでも二つの力の融合だぞもっと削れゼファー」
「どんどんと遠い人になっていくでち」
「遠くしてんのはお前らだろ
まあ良い。ムゥとリヴァイは特殊個体になることを選んだ訳だな」
「騎士でなければネズミの魔王を倒せない」
「殺す気か俺を」
いや、流石に無いだろう。無いはずだ。どれだけ知るかと魔物紋の項目を削れるだけ削っているとはいえ(これはフォウルもだ)流石に此方を殺しに来たら作動する。そこすら外すのは紋が無意味過ぎるからな。俺の心境どうこうというよりも、奴隷や魔物の管理という点からそこを外すのは禁止されている。主人を殺そうとしても尚紋の効果が発揮しないような奴隷や魔物は、持ち主が管理をする気がないという話であり、その持ち主は暴れたら危険な彼等彼女らを意図的に手綱も着けずに放置しているという扱いな訳だな。そりゃ規制も入るだろう
「とりあえず、レン
このエロリアルはお前を気に入ってるようだ」
「お、押し付けるのか?」
「嫌なら止めるぞ。或いは……お前ら元の姿に戻れ」
「はーい」
ぽん、とフクロウのような……銀に黒だから刺し色が違うミニフィトリアのような姿にムゥが変わる。リヴァイ?指示無視だ
「こっちの姿なら嫌悪感は薄くないか?」
「……嫌悪感、か」
「ん?やっぱり雄だとドラゴンに襲われかかったのとかを思い出してって話じゃないのか?」
そんな気がしたからフォローしたんだが間違えたろうか
「い、いや。大丈夫だ」
……逆に気遣われたな。ってかあのガエリオンに人化とか無いからドラゴン形態に迫られた訳で。フィロリアル姿のリヴァイだからって何の安心もないな良く良く考えると
「そうか
……とりあえず、お前らの武器とか無いぞ。買うか、或いは元のまま普段はフィロリアル姿で戦うかの選択だ」