中々に酷い思考ですが幼馴染の座に潜り込んだネズミに毒され過ぎたんだ……
「いやぁ、流石は槍の勇者様
良い足止めです」
その言葉を聞くや、なおふみ様と競り合っていた男は急に距離を取った
直後、巨大な魔法のプレッシャーが周囲に充満して
それと同時に感じる、とても懐かしい魔力
「なおふみ様、構えてください!」
「ナオフミ様!」
ラフタリアちゃんが叫ぶ。でも大丈夫。なおふみ様も、フォウルくんも、誰一人として死なないから
「い、いきなり……」
「前からの攻撃に対して!」
「リ、リファナ!?」
「早く!」
ご免なさいなおふみ様。なおふみ様にはちょっと分からないかもしれない。何で前なのか、上じゃないのかって
でも、信じてほしい。彼は……絶対にわたしを裏切ったりしないから
「……分かった!エアストシールド!」
なおふみ様が盾を展開したその瞬間、上空から光の柱がわたしたちに降り注いだ
ラフタリアちゃんが、思わずといった感じで目を伏せるけど、わたしは気にしない
……だって
「アストラルシフト!
迸れ、アストラルッ!ゲイザァァァァァッⅣ!」
聞き覚えのある声。ちょっと忘れられない人の声。わたしの……なおふみ様を守ると約束させた幼馴染の叫び声。どんな魔法だって関係ない。だって、わたしの知る彼が、そんなものに負けるはず無いから
なおふみ様達を消し飛ばそうと降り注ぐ光の柱を、突然何処かから飛び出してきた白いネズミ耳の男が、その掌の間から溢れ出す更に大きな雷光の柱で押し返していた
「は……?」
「……え?」
良い足止めと言い放った男も、それを聞いて光の柱が降ってくる前に逃げた勇者も、一様に口を開けてフリーズ
……あれ?ならなおふみ様に盾を出して貰う必要も無かったかも
そんなわたしの疑問は他所に、降ってくる光の柱を雷光の奔流で跡形もなく粉砕し、彼はわたしの前に降り立つ
投擲具の勇者、わたしの勇者、
「お、おやおや
流石は盾の悪魔の仲間……といったところでしょうか。あの高等集団合成魔法『裁き』とまさか正面から撃ち合うなんて」
呟くのは、薬作りの最中材料として聖水が必要になった時、ぼったくりに怒っていたなおふみ様にしっかりとした値段で譲ってくれた神父さん
でも、あの時の微笑は無く、驚愕の顔が顔面に貼り付いている
「……ったくよ、SP勿体無いから止めてくれよな」
SP?なおふみ様も言ってる事があるけど、わたしには分からない概念
「ごめんね、マルスくん」
「リファナには言ってないよ」
珍しく普通の目で、彼は笑う
わたしに向けてフォローしてくれるのは何時もだけど、何時もならこの時眼は何かに怒ったときの充血しきって真っ赤……なはずなんだけど。最近どうかしたのかな
けれども、それでも彼はわたしの良く知る幼馴染で
「……で?各地で聞いた盾の悪魔だなんだって吹聴してるバカどもの親玉か、お前が」
うん。相変わらず嫌いな人には言動が酷くて好き嫌いが激しい。嫌いな人相手なんて、話すらする気がない
「ば、バカの親玉……
こほん。自己紹介が遅れましたね。私は三勇教会の教皇です」
「教皇……ね」
自嘲ぎみに呟くなおふみ様
そしてマルスくんは……
「いや、バカなのってバカだから三勇教会なんてやってるに決まってるだろフィトリア」
と、虚空に話していた。どうしちゃったんだろう
「ってか今も話しかけてくるくらいなら協力してくれ」
と、不意にマルスくんの前に一人の少女がふっと現れる。前触れもなく……っていうか、虚空に話してたのがそれかな
銀の髪。割と可愛い顔で、年は……わたしとそんなに変わらないくらい?でも、マルスくんもわたしとひとつしか違わないけどわたしの倍近い年のなおふみ様とほぼ外見の年変わらないし、正しくは分からない
「……マルスくん
その娘は?」
「協力者のフィトリア」
「フィトリア……って、神鳥様と同じ名前だね」
「背中に羽根が生えてたからな。居るだろ、勇者の名前付けられる子とか」
因みにマルスくんもだ。勇者様の名前……じゃなくて昔の剣の勇者様が名乗ってた渾名らしいんだけど。意味としてはその時の勇者様の世界における戦いの神様の名前……なんだって
「……なあリファナ。緊張感が無さすぎる」
と、なおふみ様
「そのうち、なおふみ様の名前をつけられる子供も出てくるかもしれませんね」
「いや、だから集中しろよ」
「ナオフミ様の息子のナオフミ様……」
「ラフタリア、ごっちゃになるから孫か曾孫の代までナオフミと付けるのは取っておけ」
うん、もう滅茶苦茶だ。緊張感なんて無い
……でも。だって
幾ら槍の勇者様達と、教皇って人が敵でも
負ける気なんてしないから。此処にはなおふみ様と、マルスくんなら本物連れてくるかも……って事でちょっと期待してるフィトリアさんと、そして何よりマルスくんが居る。たった一人……じゃなくて二人わたし達を逃がすために波の向こうから来た良く分からない人々を足止めし、そして何事も無かったように帰ってきた投擲具の勇者が
だから、大丈夫。マルスくんとの再会を、やっぱりなおふみ様の為にも戻ってきてくれたって喜んでいても
「ちょっと!どうなってるの」
付いていけないのはメルティちゃん
「……俺はマルス。リファナとラフタリアの幼馴染だよ
ネズミの勘で助けに行くべきかと思ったら、めんどくさそうなところに間に合った……って感じだな」
うん。怪しい返事。でもこれがマルスくん。本当にわたしが必要としているときは、何時だってふらっと現れる。あのルロロナ村の波の時も、あの後捕まってた時も、なおふみ様が謂れの無い罪で貶められてた時も、そして……それより前からもずっと
「そして、俺に奴隷紋を刻んでご主人様をやっている」
フォウルくんの補足で、メルティちゃんがきっ!とマルスくんを睨んだ
あ。そういえば……ってくらいなんだけどね。フォウルくんを奴隷にしているって事実だけで、メルティちゃんからの評価が地面の下に埋まるには充分すぎた