パチモノ勇者の成り上がり   作:雨在新人

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ハーレムチート

「マスター!」

 そんな声と共に駆け寄ってくるでち公

 ……で?レン達はどうした

 

 「……一人かゼファー」

 「残りはあのドラゴンが神官に襲われてたから残ったでちよ!」

 「ドラゴンとフィロリアルを同じ場所に残すなオイ!」

 絶対に喧嘩するぞそれ

 だが、止めてる時間はない

 「そう言われると思ったから偉いボクはブランの方は連れてきたでち!」

 あ、そうだったのか……姿が見えないが

 

 「……文、漸く戻れましたわ」

 ……って何だそのちっこい角の生えた白ドレス女

 「お前、ブランか?」

 「見て分かりませんの?」

 人化出来るのかよこいつも。割と予想外だった。まあ、そんな話は後だ後!

 

 「皆!分かってるとは思うけれども、悪いのは盾の悪魔とあの投擲具を占有するネズミだけだ!女の子達はあの二人に操られているんだ!」

 「ハイ、タクト様!」

 「分かってます!」

 「タクト様の素晴らしさをまだ知らないから敵対出来るだけです」

 元康と同じこと言ってんなこいつ。ってか、フォウルも男なんだがあいつは操られてる側に入るのか。何か意外だ

 そして、それに追随して礼賛するハーレムメンバーwithアトラ。というか良いのかそれ。ハーレムメンバーが増えれば増えるほど自分の恋だ愛だ性欲だロマンスだのライバルが増えるって事だぞ自分との時間はその分だけ刻まれて細かくなっていく。そんなものをマジで良しとして良いのかよ

 お互いに仲が良くて、関係性を進めたいけれども今の関係を壊したくない……とかならまだしも、適当に際限無くハーレム拡大狙ってるだけだろこれ。そんなもの礼賛してどうすんだよ本当に、狂ってんなこいつら

 「ふざけたことを抜かすな!アトラ!そんな所に居るな!」

 礼賛に混じる虎娘に、その兄であるフォウルが吠える

 ハクコの特徴である黒が縞のようにメッシュではないが差し色として入った綺麗な白髪に、フォウルとほぼ同じで、光の無さから少し暗い瞳。うん。外見はアトラだなあいつ。竪藍阿寅氏直々の書き下ろし挿し絵で見た外見そのままだ。作者名に使うくらいにはアトラを気に入ってたからか挿し絵の枚数が無駄に多かったので容姿はよーく覚えている。その割に肌色さがある挿し絵が無くて、人気取りとしてはどうかと思ったが。いや、見たかった訳じゃないぞ?時折作品コメント欄で脱げと言われてたのに最後までそんな絵書かれなかったなって思い出しただけで

 

 「……誰ですか」

 「アトラ!分からないのか!」

 うわ、凄くつれない反応。心底興味ないって感じ。いや、何だかんだ尚文キチしてた原作アトラでも兄への愛情は……それより尚文優先とかでちょーっぴり歪んでたがしっかりあったと思うんだが。このアトラはそういうのが無い。本気で無い

 「タクト様、知らない人に馴れ馴れしく呼ばれました気持ち悪いです」

 心底嫌そうに身震いする虎娘

 「……あ、アト……ラ?」

 助けようと言っていた妹の変わり果てた姿に、茫然とフォウルが呟く

 「アトラ、知り合いかあのちょっとだけ似た虎」

 「タクト様。恐らく向こうが勝手に知っているだけですわ

 私はあんな人知りません。タクト様しか知りませんしそれで本望です」

 「うがぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 勝手に精神ダメージでも食らってるのかふらつくフォウル

 

 「あ、アトラ……何で……」

 「フォウル!しっかりしてよ!」

 メルティの奴に背をばしばしと叩かれて、それでも虚ろな目

 いや、まあ、俺も瑠奈に同じ事されたら虚ろな目をする自信がある。だからなにも言うまい

 

 「そうだよなアトラ!お前はマルティみたいに裏切らないよな」

 「当然ですわタクト様

 私の全てはずっとタクト様と共にあります」

 「手遅れじゃないか、ネズミ……」

 「……どうなってんだこれ」

 

 「今です、流星剣!」

 「うるせぇ邪魔すんな!」

 空気の読めない教皇が性懲りもなく撃ってきたスキルはもう面倒なので右足で蹴り返して

 

 「話してられるのも限界か!俺達はあのふざけた乱入者を止める!」

 「お、俺も」

 「腑抜けが治るまで寝てろフォウル!」

 言って、でち公と駆け出す

 「はっ!まずは弱そうな盾から槍の試しう」

 「良いこと教えてやるタクト!盾持ってる間は一切攻撃出来ないぞ!」

 「ちっ、使えないなら後で良いか」

 よし、盾から興味失せさせることには成功。強いんだけどな盾。特にタクトみたいなハーレム野郎……というか仲間が多い奴が使うと

 

 「フィトリア、頑張れるか?」

 「がんばる!」

 「マスター、ボクもハーレム止める側に行くでち」

 と、でちが意外な事を言い出した

 いきなりどうした?遠くからマスターを手助けするでちとか言うかと思ったが

 

 「どうした?」

 「どうしたもこうしたも無いでち

 マスター、ボクみたいな優良物件をタクトと戦わせちゃダメでちよ」

 優良物件?いや、そこは突っ込むまい

 「どういうことだ?」

 「マスター、ってとっとと行くでちそこのフィロリアル!」

 「ぶー!」

 と言いつつ、フィロリアルの姿化して駆け出していくフィトリア

 

 「マスター、神受スキルって知ってるでち?」

 「俺がそう呼んでる転生者に与えられたチートで良いのか?」

 「タクトに与えられたそれは、可愛い異性に対する絶対的なカリスマでち」

 「……は?」

 カリスマ?

 「本人の意思も想いも何にも関係ないでち

 あいつのスキルによって、どんな強い恋心も盲目的にタクトを愛するようにねじ曲げられてしまうでち」

 ……は?

 「アトラも、か?」

 「あの虎娘もそうでちよ」

 「強すぎんだろ!」

 ふざけてんのか!いや、ふざけてんのかって性能だからこそチートスキルなんだけどな!

 「神が転生者全員に与えている絶対に神を裏切らない呪いと本質は同じでち。それの劣化版でちから」

 ……ん?不穏な言葉が聞こえたような

 「だからマスター、もしもあのイタチが大切なら絶対に近寄らせちゃダメでちよ。もしもスキルをしっかりと受けてしまえば、マスターの大好きなあのイタチはタクトを愛することだけを考えるとんでもなくつまらないイタチに変えられてしまうでちから」

 「治す方法は?」

 「ハーレムを作る力でちからね

 マスターみたいに性格悪いとハーレムに要らないでちから割とあっさり解けるくらいの効力でち。ボクみたいな優良物件は……」

 「リファナとかだと?」

 「愛する対象をこの世から消し去るしか能動的な解除手段は無いでち」

 「簡潔だな!ってか俺もそれを食らったら不味いんじゃないのか?」

 「あ、マスターは性格悪いから症状軽いはずだし第一同性には一切効果が無いでちよ」

 「ホモは無し!安心安全だな!」

 マジでハーレム作るチートじゃねぇかよ。支配者を目指すためのチートだとすれば寧ろ同性相手に効かないとか欠陥過ぎるからな。同性との交遊こそ重要なんだし

 「ってことは、フィトリアにも近づけちゃいけないんだな!」

 「所詮女神による転生者への拘束と原理は同じでちから問題無いでちよ」

 ん?どういうことだ?

 「正しく精霊と結び付いた勇者には神の暗示への耐性があるから無意味でち」

 へぇ、そんなものが。つまりはフィトリアには効かないと。他?無理だな勇者じゃないし。クソナイフ?いっそリファナを今からでも投擲具の勇者に……

 レベル低いからまだ嫌か。仕方ないな

 というか、俺はパチモノ勇者で転生者だ。表面上だけ従ってるよと言い張ってるだけで……と、俺は思っているのだが、この思いすらも実は女神の掌の上なのだろうか。騙せてるも何も、こうしてリファナの生きる世界の為にって転生者に反旗をこっそり翻していると、女神の計画の上で俺は思い込んでいるだけなのだろうか

 んなこと考えてて勝てるか!と、舌の先を軽く噛みきって痛みで眼を覚ます

 「ってお前は効くのかよゼファー、悪魔だろお前」

 「向こうの力は特別なもの、ボクの上位でちから

 マスター、マスターと対をなすこの世界の特別な転生者のチートは伊達じゃないでち」

 「じゃあ俺の神受スキル……チートってなんだよ」

 「そんなものねーでち!

 神受スキルを与える隙間も必要もない異能力の強さ、その圧倒的初期完成度がマスターの特別性でちよ」

 知ってた

 

 「……話は終わったか?」

 「待っててくれるとは随分とお優しいな」

 「どうせ直ぐに死ぬんだ、心残りくらいは無くさせてやるよ」

 にやにやと笑みを浮かべ、タクトの奴は槍を撫でる

 「事情は分かった、離れてろゼファー!」

 「えっと……こうか、大風車!」

 ……タクトよ、そのスキルは防御スキルだ。知らずに使うな

 

 思わずずっ転けそうな珍事に先制攻撃も忘れ、離れてく悪魔の気配を背に感じながら、俺は金髪の転生者と漸くまともに対峙した




因みに竪藍先生がアトラの肌色挿し絵を書かなかった理由は簡単です
挿し絵という形でアトラのそういった姿を尚文様以外に見せるなんて事は竪藍氏にとってはアトラはそんなことしない!と我慢ならなかったのです
好きなキャラであればこそエロ探してる際にエロ絵を見つけてもこいつはこんなんじゃない!とあまり受け入れられないようなものですね
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