「にしても、随分と余裕だな」
流石に出し惜しみなんぞしてられる相手じゃない。俺はクソナイフの姿を偽・フレイの剣に変えて前に構える
基礎性能面で言えば神鳥の投剣とかフィトリアウィング・ジャベリンとかある程度拮抗した性能の武器は増えた。まあ、フィロリアルシリーズ全解放の恩恵だな。とはいえ、強化が足りてないのでこいつだ。タクト相手に自動迎撃効果は寧ろ自爆となるのであまり過信は出来ないが
「だから、お前等は俺を強くする為に投擲具を持ってきてくれたんだろう?クソ相手にも死に際の慈悲くらいはするさ」
「おいおい、その慈悲気取ってる時間で、お前の大事な大事な皆との別れは済ませたのかよ」
「何を言っているんだ?」
「タクト・アルサホルン・フォブレイ
お前を此処で殺す、と言ったんだ」
虚勢だ。ぶっちゃけ原作で尚文達がタクトに挑みかかったとき、タクトに対しての確実な勝算があった。だが俺にはそんなものはない
勝てなくもない……んじゃないか?って思いはあるが、そこまでだ。不正な手段で捕縛している勇者武器を解き放つ眷族資格剥奪は四聖特権だからな。同じ眷属器かつ同じく不正やってる俺には無理な手段。タクトに不正にパクられてる槍を俺が又借りして使えないかな
クソナイフに駄目だしされた。まあそりゃそうだな、それが出来るのは正規だけだ、盗んだ槍でイキりだしても無駄か
「お前こそ此処で死ね!ヴァーンズィンクロー!」
タクトが表に出している勇者武器を槍から爪に変え、閃光を放つ
原作時代から何時もこれだなコイツ!スピード信者か何かかよ!直線的な攻撃だから対峙した状態から当たる訳もないだろうに!
「避けた!?」
「当たると思ってたのかよライトニングピアース!」
意趣返しのように、雷光纏って閃光のように輝くピックで良く似た攻撃をやり返してやる。幾ら神鳥の骨針とはいえピックに姿を変えさせているからか火力全然出ない速度だけのスキルなので倒すことだけ考えれば良策とは言えないのだが
「うげっ!」
右目でも潰すかと投げたが、咄嗟に顔を庇った二の腕に突き刺さる……ってか浅いな、ほんの1cmくらいか、刺さったの
ちっ、外したってか防がれたか。反応は悪くない!堅さも嫌な感じ!
結論は一つ、火力高めのものでなければロクに通らなくてめんどくせぇ!
「くそっ!みんな!」
「来ねぇよタクトぉぉっ!」
視界の端に映るタクトハーレムの戦い
割と怪獣決戦の様相を呈していた。巨大竜の周囲を駆け回る二つの影、という感じで
「忌々しいフィロリアルめ!竜帝の恐ろしさを知るが良い!」
「空飛ぶフィロリアル……過去に先祖達が滅ぼしたはず!絶滅していなかったの!?」
なんて、魔物姿で喋るハーレムメンバー二人。因みに知っているのだろうか
お前等が対峙しているのが、その空飛ぶフィロリアルの長であり完全体であった竜帝をばらっばらにした当フィロリアルだって事を
「レールディア!アシェン!みんな!
その子はネズミ達に騙されているだけなんだ!殺さないように」
「分かってる、けどしぶとそう!」
「タクトが言うのならば仕方ないが……」
因みにハーレムメンバーから煽られてもフィトリアは無視を決め込んでいる。あれか?俺相手には何か良いやとばかりに普通に話しだしてたが、自分は威厳とかごしゅじんさまとの約束とかで人前で話さないようにしてた事でも思い出したか?
『そだよー』
思考を読むな。いや、思考をコールで自分に横流しするなフィトリア
『ごめんねー!ばちばちー、向こうはそんなできないこと言っちゃってるけど、フィトリアはころして良い?』
随分と物騒な事をおっしゃるなこの馬車の勇者は
いやまあ、本気出せば確かにさくっと殺せるんだろうなグリフィンくらいはさ!竜帝当人……いや当竜を引き裂いたのに欠片には勝てないってのもあまりなさそうだし
だが……迷うことはない。返すべき答えなんて最初から一つしかないのだから
『フィトリア、殺さずに頑張ってくれるか?』
『うん、いいよー
でも、どうして?』
『どうせあいつチート転生者だからハーレムメンバーを殺したらリスクとか反動とかチートでガン無視してラースランスとかラースクローとかでカーススキルを乱射する発狂モードに入る!
そんなあいつをカースの合間をぬって殺しきるのはとても面倒!よって発狂させずに倒す!それが理想形。だから、殺さなきゃ自分が危ないってならない限り、出来ればで良いから止めを刺さないように頑張ってくれないか』
『うんわかったー!馬車使わないでてかげんするねー!』
何とも酷い会話である
……いやでも、原作での力関係的に、資質向上だとかをしっかりしていないし仲間を強くする鞭の強化を一切知らない状態でレベルキャップが100だった頃の原作の皆が戦えてたレベルの性能だと思うと、まあフィトリアならほっといても良いだろう
「なによそ見してんだぁぁぁああっ!」
飛んでくる流星槍。またもや直線的なのでひょいと避ける。横に飛ぶだけで避けられるからなー、直線的なのは狭くもなく足が自由ならそう怖くない
「お前もだろギガスロー」
今度の意趣返しは投槍。槍には槍で返す。いや、向こうのと違って投げ槍なんで外見こっちの方が短くて貧相だが
と
「タクト様、加勢します」
「大丈夫だアトラ
鞭、斧、爪、槌の4つの七星武器に槍の聖武器を持った勇者にあんなネズミが勝てるものか!」
「いやぁ、虚仮にされてるけどな」
「タクト様は本気ではないだけです」
ああ?
いやそうだな。あいつの最初の勇者武器は鞭。仲間使いのってか魔物使いの勇者武器だ。一番結び付きが強くて、俺がおい俺に従えと転生者特有の勇者武器強奪使っても微動だにしないくらいには支配されてる。因みにだが、かるーく試しておいた結果だが、前の波で転がしておいた元康に使ったときにも、マガバイオロチだかなんだかを片付けた後に樹に使ったときも、強く干渉すれば不安定ながら奪えそうってくらいには強いんだよなあの強奪。まあ原作からして尚文キチな盾はタクトの鞭より更に強固に抵抗してきて殺さなきゃ奪えない段階だったが
そこまで支配されているのだ、鞭の強化方法くらいは使えると見て良いだろう。他の武器?知らん!強化の中で後ろに数字がつくからされているかどうかが分かりやすいスキル強化や魔法強化はあいつの持ってない小手と杖由来だからな。小手も杖もあるのにヴァーンズィンクローがⅡにすらなってなければ鞭以外の強化知らねぇなこいつ!と判断できるのだが……不安要素として頭の端に置いておこう。実はこのタクトが鞭槌斧爪の4つの強化を完全にマスターしてるが手加減して遊んでいるとかいうヤベェオチも無くはないのだから。流石に今の俺のレベルは転生者特有の経験値ブーストあっても80無いくらい、パチモノ12/12から更に3/10くらいまで落ち込んで、そこから多少持ち直した形だ。謎の弱体化を加味して今の性能を語ると4/12くらいだな恐らく。正規勇者の1/3の強さが今の俺だ。1/12なのに他の武器のステータス補正だけを受けて勘違いイキリをやってるバカなら兎も角、4/12のレベル350のパチモノ勇者に勝てるかって言われると無理だ。何たって強化状況が似たようなモンってことになるからな!普通にレベル差で無理。極限まで資質向上だとかしててもレベルの4倍差は無理だ。強化段階に4倍差があればレベルの4倍差も割と行けるんだが。向こう神滅シリーズとかの要求レベル頭可笑しい武器を持ってなさげだしな
「タクト様に万一の事があってはいけません」
「ハクコの言葉を肯定するのは癪ですが
タクト様、得体の知れない相手に一人は危険です」
と、更に何かやってくる東洋風の女。ネリシェンとかいうアオタツだろうなこいつ
ハクコにアオタツか。ついでにゲンム種の娘とかシュサク種の娘とかも来たら笑い転げるぞ
「ハクコに良いカッコさせない!」
「タクト、みんなでかつ」
と、更にタクトの加勢にやって来るニンジャな格好をした幼そうな女と、派手な赤い服を着た女
いや、ホントに来てんじゃねぇよ笑うわ
『はーい!シュサクとゲンムー!』
ってかフォウルそろそろ復帰しねぇかな。面倒になってきた。後フィトリア、案外弱いからって俺の思考を横流ししてゲンムとシュサクの娘を足止めるのをサボるんじゃありません
「皆……
皆の思いは嬉しい!一緒に投擲具を手に入れるぞ!
でもアトラ、君のレベルは120しかないんだから無理せずに、あいつは何故かレベル350の俺の攻撃を避けられるチートを持ってるんだ」
いや、お前が避けやすい攻撃してるだけだぞタクト
あとフォウル?まだか?このままだと何か仲間が次々来るタクト相手にたった一人の最終決戦するハメになるぞこのままだと、いい加減立ち直れ