「……決める!」
覚悟と共に目を見開く
何時もならば此処で視界の端にスパーク走るんだが、今はそれは無い。そこが調子狂うからこそ気合いを入れ直す
少し危険だが、仕掛けるならば……
こいつを使う!
「イグニション!
サイクロンッ!ストリーム!」
放つのは俺がクソナイフを手にして以来何かと放っている設置技。今回のエアストスロー用武器に選んだのは次元蛇牙片。俺が片を付けた波の敵の素材……ではなく、フィトリアが何とかしてた昔の波の魔物素材だ。次元と付いているのはまあ、魔物使って攻めてくるにしても機械使って攻めてくるにしても神どもが送ってくるのには大抵のものに冠として次元がつくというだけだ。性能的には……4回目の波ででてきたよーらしいので中々に高い。レベル差はある程度無視して毒を仕込めるだろう。選んだ理由は簡単、波のボスの牙ほぼそのままダガーにしたものなのだ、これ。当然のように牙に仕込まれていた神経毒が残っている
致死性は実は低いが、神経を燃えるように熱く過敏にさせる変態毒。感度150倍だかそこらまで行くんだっけか。それとダガーそのものの傷とを合わせれば、大抵の人間は無力化出来る。小さな傷だとしても、感度150倍の前には異様な痛みだ。普段ならば無視できるような傷ですら、地面に転がってのたうち回るしかなくなる大怪我にも思えてくる卑劣な毒
これで無力化を狙う!
「食らうか!」
「当たりません!」
「見え見えなんだよバカが!」
と、
そして……
「あぶない!」
避け損ねたのだろうシュサクを庇い、ニンジャな格好のゲンム娘に、空から降り注いだダガーが突き刺さる
「ユー!」
「タクト、ユー、じょうぶ」
ゆっくりと奴は首を振る。大丈夫だと言いたげに
確かに、胸元に当たった……のだが、ロクなダメージは無い。うっすい胸に朱色のラインが軽く入った程度。服は切れて胸元が露出し……
「てめぇは見るな!」
いや、見たくもないぞ別に。と、いきなりゲンムの娘と俺との間に割り込むタクトに白い目を向けて
結構硬いのかあいつ。まあ、ゲンム種だしな。亜人の割にケモ度合いが低いが。ってこれはタクトのところに居る亜人共通だけど耳とか尻尾くらいしか獣要素がない人に近い亜人ばっかだ
でも、だ
だから適当に無効化出来る武器を選んだと言ったろうが!
「……あ」
とさっ、と軽い音と共に、タクトの向こうでゲンム娘が倒れ伏した
……そうとも。これが感度150倍。死にはしないが、胸で受けたってことは心臓辺りの感度すら上がっている。普通に心臓が鼓動しているってそれだけの当たり前が、今のあいつにとっては全力疾走した直後を遥かに越える異常な鼓動にも思えるだろう。当然、意志の力でそれを押さえ込めるバケモンでもなければ、立ってられる筈もない!
「フラッシュピアース!」
「きゃっ!」
気を取られたシュサクを一撃。選んだ武器は次元蜂針。弱めの毒ピック
そして……
「チェンジダガー(援)!」
そのまま翼に突き刺したピックを次元蛇牙片へと変化!チェンジシールドは受ける盾を途中で変えてもなぁとあまり利点が分からないスキルだが、チェンジ系のスキルの本領はこういった攻撃特化の勇者武器でこそ発揮される!ぶっ刺した後に好きな毒を叩き込めるって形でな!
「マーシュ!」
「タクト……こんな、もの!」
「飛べるならば飛んでみせろよ
羽ばたく激痛に耐えられればな!」
「てめぇ!ユーとマーシュに何をした!」
「感度を150倍にしただけだぞ?死にはしないさ」
「てめぇに、そんなことをする権利は無い!」
「お前に許される必要もない!」
……少しだけ、タクトのハーレムを殺さないように叩きのめしてからタクトを倒すと決めたときから考えていた事がある
ひょっとして、もしもタクトのハーレムが、タクトのチート能力によって精神を弄くられているが故に形成されているものならば
精神に対しての干渉さえ出来れば、チート能力の解除だって効くのではないかというもの。そして俺には……
そういったことの為の技がある!流石に1vs5で使う気にはなれなかったが、数が減った今なら使う隙もあるだろう
「アストラルシフト!」
そう、これである。物理的な干渉力をほぼ失う代わりに魂に作用する神滅の神鳴なる状態へとクソナイフの姿を変えさせるスキル。魔法は半分くらい物理ではないので何とかなるが使用中は物理的なものに滅法弱くなる(そりゃそうだ、物理的な形が無くなるんだからな)からある程度自身の安全がなければ使いたくはなかった。だが、サイクロンストリームは発動してしまえば俺の制御下から離れるからアストラルシフトしても消えることはない。セカンドダガーとかで出してたものは消えるし効果中は新しくセカンドダガーとかを使うことも出来ないので、物理的に俺を守れる貴重な何かとしてサイクロンストリームは役立ってくれるだろう
魂を穿つ雷鳴、それでタクトによる支配を砕けるならば
「はあっ!」
とりあえずといったように、フィールドのように雷を広げる
「レベル350の俺にそんなものが!」
「レベル120でも効きません」
ちっ、反応無しかアトラ。いきなり正気に戻ったと裏切っても浅すぎて笑うが、少しくらい効いてる素振りがあるくらいの影響は欲しかったな。ってかクソナイフ、お前原作で樹の使ってる洗脳を解けたりしてなかったか?
……あれは勇者がかけたものだから解けただけ?転生者に掛けられている呪いと同種のアレを解けるのは女神くらいで、自分達にも魂で結び付いた正規勇者を影響から守るのが精一杯?おいおい、タクト・アルサホルン・フォブレイ様は立派な鞭の勇者とされてるだろ?つまり条件はおな……馬鹿言うな?流石に強引すぎて無理?ごもっとも
……ってかこいつら、原作と俺が呼んでいる竪藍阿寅氏の小説の内容知ってるのか?
あ、誤魔化した
ってそんな漫才やってる場合か!
「アストラル!ノヴァァァッ!」
と、とりあえずでスキルぶっぱ。放つのは大きなプラズマボール。それを炸裂させて精神に働きかけるって訳だな。多少は効くと良いんだが。因みに、アストラル的なプラズマを叩きつけている為当然のように精神的ショック効果もあるので、洗脳に効かなくても足止めにはなるはずだ。その止まってる隙に感度150倍を食らって貰おうか
だがそれは、メキメキと音を立ててブランとかの西洋な方ではなく細長く神秘的さのある東洋竜に姿を変えたネリシェンに受け止められる
……ってか、あいつが自分の体を肉壁にして他の皆を守ったというべきか。受け止めるというよりは、炸裂したが巨大なアオタツに阻まれタクト近くまで届かなかったというべきだろう
「ネリシェン!」
「タクト……勝っ、て」
ドサァァッと。土煙を巻き上げ軽く振動を俺の所まで伝えて、巨体が地面に倒れ伏す。死んでないけどな!単に意識飛んだだけだ。これから止めを刺すけ……って刺しちゃダメだろ
ってか邪魔だなこいつ!障害物かよ
とりあえず起きられても面倒だなーと思っていたら、死んでないからか続々とサイクロンストリームからナイフが飛んでってその青い鱗に突き刺さっていっていた。これはもう起きても全身感度150倍でのたうつだけだろう無力化完……いやこの巨体で苦しい苦しいと暴れられてるだけでも迷惑極まりなくないか?
????「感度150倍のなおふみ様……」
?????「好感度150倍のナオフミ様……」
???「尚文様への感度と好感度3000倍の私……」
パチモノ勇者の成り上がり外伝 対魔忍ナオフミ 決戦アリーナ(R18指定)
大不評連載開始(しません)