パチモノ勇者の成り上がり   作:雨在新人

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女神「何かネズミが色々知ってるけど勝手な事してて本当に味方なのか怪しいと報告受けてたら
ネズミの行動によってガチのマジで四聖の一人此方側に付けられた。ネズミの先見の明凄い。拾ってよかったー」


槍の祝福

リファナに近付くと怯えられるのでどうしようか、と思ったその時

 

 異様な焦燥感な駆られ

 「尚文!」

 「うわっ!」

 尻尾で盾の勇者の体を弾き飛ばす

 刹那、直前まで尚文の体があった辺りを、閃光が駆け抜けていった

 ……タクト?もう生き返ってきたとはふてぶてしい奴だな!?

 

 ……違った。閃光にも見えたのは一人の男。だが、金髪の軽薄そうな男ではない。確かに金髪ではある。だがロン毛で、それをポニーテールにしたオシャレ男、北村元康

 そんな、何時の間にやら獅子の鬣のような立派なファー付のマントを羽織り、嫌ーな予感のする豪奢な槍を持った槍の勇者が、女好き特有のちょっと下品な笑みを……浮かべてねぇっ!?異様に真面目な据わった目だ

 「……外しましたか」

 そう告げる声も、異様に冷たくて

 

 「も、元康さん!?」

 「槍の勇者様?」

 そのあまりにも異質な感覚に、リファナや樹が疑問を呈する

 「離れているのですぞ。俺が殺さなきゃいけないのは、そこのネズミと盾の二悪魔のみ。お前達まで無駄に死ぬことはないのです」

 ……うわぁ、なんだこいつ

 「……えっと、だれ?」

 と、呟くのはメルティ

 「槍の勇者、北村も」

 「モトヤス・メルロマルク」

 いやちげぇよ!?勝手に王家乗っ取んな!

 「えっ……?」

 怯えたように、メルティが自分の体を抱き締める。まあ、あいつもメルロマルク姓だしな。寒気でも感じたのか

 「違いますぞ」

 「な、なんだ……」

 ほっと息を吐くメルティ

 因みにフォウルの奴はアトラを背負うのに忙しくて聞いてなかったっぽいな。まあ良いや放っておいてあげよう折角の兄妹再会なんだから。まあ、妹は無事か怪しいけれども

 「俺はマルティ王女の真の騎士

 お前なんぞ知ったことではないですぞマルティの妹」

 た、態度が……態度が違いすぎる……

 何時もの元康ならここまで女の子に冷たくないぞあいつ

 「ですが妹が死んだとなれば優しいマルティがきっと嘆くでしょう。ですから、邪魔をしなければ殺しませんぞ」

 ……いや、たぶんあいつ妹が死んだと聞いたら笑い転げつつこれで次の王は私確定ね!と喜ぶと思う。性格ゴミカスだし

 

 「王女様の名前をその騎士が名乗っちゃいけないんじゃ」

 「煩いですぞタヌキ

 お前はロマンスは読まないつまらないタヌキですかな?苦難を乗り越えた果てに騎士と結ばれる王女はロマンスの王道ですぞ」

 ……いや、誰だこいつ

 「いや、まだ結ばれてはいな……」

 「ネズミは殺処分ですぞ!」

 ……口を挟ませてすらもらえない

 ってか危ねっ!さっきの一撃普通にタクトより速かったんだが!?どうなってんだよ戦闘力さっきの何倍だお前

 ……一旦引くか?

 

 「尚文、樹」

 「逃がしませんぞ」

 『我、真なる愛の勇者が天に命じ、地に命じ、理を切除し、繋げ、膿みを吐き出させよう。龍脈の力よ。我が魔力と勇者の力と共に力を成せ、力の根源足る槍の勇者が獅子の名のもとに命ずる。森羅万象を今一度読み解き、王の狩場に彼の者等を捕らえよ!』

 ……は、リベレイション!?

 どうなってんだ一体!?

 「ポータルシールド!」

 「転送弓!」

 「ポータルジャベリン!」

 「リベレイション・レオ・テリトリーⅣ!」

 とてつもない嫌な予感に飛ぶのを緊急停止。ガキン!と固い音と共に眼前で牙が噛み合わされる

 ……恐らく、ポータルで飛ぼうとしていたら噛み砕かれていた。そう……

 「イツキ様!?」

 眼前で左足を何かに噛みちぎられた弓の勇者のように

 って大丈夫だろうか

 「……樹。お前を殺す必要はありませんぞ。一緒に波を越え世界とマルティを救うべき勇者のはずですからな。大人しく見ていることですな、俺が盾の悪魔とネズミの悪魔を滅ぼすところを」

 大丈夫……なのか?とりあえず追撃する気は無さげだが

 

 「何なんだその魔法は!」

 「……ハートブレイズ。俺の中のかつての勇者の魂が手を貸してくれることで発動出来るスキルですぞ」

 ……は?

 「流石に常に十全とはいきませんが、今の俺では使えない勇者の真の力……貴様の言う12/12。そして勇者の魔法リベレイション。使えるのは貴様だけだと思うなですぞ、ネズミ!」

 ……りありぃ?正気で?

 あ、うん。そりゃ強いわ。言うなれば俺とほぼ同格じゃんそれ。ってかリベレイションがまともに使えない今の俺より上、十全じゃないのはパチモノな俺も同じだし

 ってどうすんだよこれ!

 

 いや、簡単だな

 とても分かりやすい解決法がある。奴の心をへし折る事。奴がマルティの騎士だというならば、消してやろうじゃないか、その守るべきものを

 それくらいしか、俺に考え付く手段はない。激昂して更に怒り狂うかもしれないが、そのまま燃え尽きるかもしれない。ってかそれに掛けるしかない

 

 『ばちばちー?フィトリアがいこうかー?』

 殺さずに止められるか?

 『むりー!』

 却下

 そう、何か言動狂ってるとはいえ、奴は正規の槍の勇者。殺すわけにはいかない

 『大丈夫ー?』

 だいじょばない。当たり前の答えだが

 ってか、フィロリアルなお前ならサンクチュアリで謎の転送妨害のあれ壊せないか?

 『さんくちゅありなら壊しながら移動できるよー?

 でも、これはりべれいしょんだからむりー』

 無理か。無茶いって悪かった

 

 じゃあ、やるしかねぇな!

 「セカン……」

 「悪いことするのはこのナイフですかな?」

 と、生成した瞬間に、その刃は元康の手にあり……そのまま握り砕かれた

 「マルティは殺させませんぞ、ネズミ」

 「アストラルシフト!

 アストラル……フラッシュ!」

 苦し紛れの精神干渉雷。強化すら出来ないし発動するスキルも弱め。搾りカスなSPでの本当の意味での悪あがき

 「……俺は、正気ですぞ」

 カウンターの槍を避けられずに受ける。尚文も盾を出して援護してくれはしたのだが、紙切れみたいにくしゃっと潰されて終わった

 当たりどころが良かったな。左腕は元々神経無くなってるので吹き飛んでも痛みもない。いや、将来的には大問題なんだが

 

 ……参ったな

 タクト相手なら勝ち筋は見えたんだが……ちょっと、何すれば良いのか検討もつかない

 「……フラッシュアロー!」

 そんな中、片足の無くなった樹は、それでも諦めずにスキルを放つ。リーシアに支えられてだが

 選んだスキルは速度重視、狙いは……俺と同じくビッチ

 

 「……樹、お前もですかな?」

 悲しげに、元康の奴は呟く

 まあ、顔は全く悲しそうじゃないが

 「……悔しいですな。こんな奴等を勇者と思っていたなんて

 マルティを傷つけようとするような、勇者失格どもを仲間などと…俺と昔の俺の見る目の無さには呆れ果てますな」

 確かに矢は倒れたままの……恐らくは気絶しているビッチに突き刺さった。だが、傷一つつかない

 「……マルティの体は基本俺とリンクしていますぞ。この世界の女神様からの祝福ですな

 マルティへの攻撃は俺への攻撃。俺を殺さない限り、何者もマルティを傷つけられませんぞ」

 ……ディフェンスリンクのパチモンまであんのかよ!ふざけんな!

 ディフェンスリンク。盾の勇者である岩谷尚文が、盾の精霊と共に神になった後に覚えた全てを守るためのスキルだ。効果としては範囲内の味方全ての攻撃を世界の理をねじ曲げて……って自分達の世界の理だからまあねじ曲げてってか正規の手段で干渉してだが、自分が受けたことにする。劣化版みたいなものとはいえ、槍が使えて良いものではない

 

 いや、本気でどうする?

 もうフィトリアに頼んで殺してもらうっていう世界がヤバい最終手段くらいしか……

 やるしかねぇ!と、鈴を鳴らし……

 

 「……天使

 君すらも、俺の邪魔をするのですかな?」

 鈴の音の前に待ってましたとばかりに現れたフィトリアの蹴りすらも、槍は受け止めていた

 ……あ、流石に耐えきれず吹っ飛んだ。でもダメージあんまり無さそうだな

 

 「……そう、ですか

 天使の姿をした君すらも殺さなければならないとは、辛いですな」

 と、立ち上がった元康は手を槍に当て……

 ん?何をする気だあいつ

 「槍の勇者が命ずる」

 ……ん?この詠唱は……

 「聖武器よ、眷属器よ

 神に祝福されし我が呼び声に応じ、愚かなる契約を解き、目覚めよ!」

 ……いや、俺が原作で知ってる言葉と違うんだがこれ

 「マルティを傷付ける悪魔ども……貴様等は勇者ではないのですぞ!

 ー汝から勇者の資格を剥奪する!」

 ……いや待てアホかこいつ。流石に聞く訳が……

 と、同時にする胸騒ぎ。この感覚は受けたことがある。ってかついさっき受けた

 そう。タクトの使った奪う力である

 

 ……クソ女神!てめぇ!そういや女神云々言ってたな元康!聞き流していたが、こんな形で仕掛けてくるのかよ!ってかどうやってこの世界に干渉したんだよホント!

 

 「あっ……ぐっ!」

 転生者の力でクソナイフを押さえ付けようとはするものの、上手くはいかない。元々対転生者の奪取用だからなあの力。変な干渉なしでも対俺の最終兵器、耐えきれるかというと……

 だが、まあ、怪しまれはしないだろう

 「ぐっ!」

 「返してください、それは……僕の……それがないと僕は……」

 「それはフィトリアのなのー!」

 口々に叫ぶ正規三人(うち四聖二人)。本来であれば転生者の束縛を破るその技では干渉され得ない者達からすら、光となって武器が浮き上がる

 マジで干渉しやがった。チートもいい加減にしてくれ

 「……があっ!」

 ……駄目だ、どうすれば良い!

 「まずは……」

 「ナオフミ様!やらせません!」

 「待て、ラフ……タリア」

 勝てる相手じゃない

 何時もは庇いに入るリファナもタクトの影響か尚文の後ろから出てこず

 「邪魔ですぞ」

 構えた剣を振ることすら出来ず、狸の少女は地面に沈む

 「……わざわざ地獄で盾と会わせてやる義理もありません。会いたければ自殺でもする事ですな」

 ……生きて、いるのか?

 だが、そんなものは無意味で。何かしようにも、クソナイフは既にほぼ俺の制御を離れて元康の所にあり

 ……応えろ!応えろよ、復讐の雷霆(アヴェンジブースト)!向こうにあんなかくし球があって、リファナを救えるとしたら……お前しかもう無いんだよ!

 あの時、瑠奈を助ける事には欠片も使えなかった……それで良いだろう!復讐の心としては十分じゃないのか!だから、片鱗だけでも見せててくれた

 応えろ!応えてくれ!お前が俺の異能力だというならば!今度こそ、大切なものを守れる力になってくれ!勝てるか分からない。それでも、せめて!明日への未来を……繋いでくれ!お願いだ!

 

 ……だが、無言

 俺の中に眠る最強最弱の異能力は、何一つ反応を返さない。いや、寧ろ……

 「ぐがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 全身を貫く痛みに、情けなく悲鳴を挙げる。全身をくまなく走る雷撃に、全身が挙げる苦痛の叫びに、押さえることすら全く出来ず

 か、体が内側から焦げていくようだ。な、なんだ……これは

 転生者がやらかした時の安全装置か!?少なくとも、俺の異能力は俺を傷付けはしないから違う

 バチが……当たったのか?此処で……終わりなのか?

 

 「ばちばち……うん、わかった」

 フィトリアが、フィロリアル姿に戻る

 大きくなったその体に、二人の勇者が跳ねられて宙を舞う

 ……お、おい。フィトリア……

 なに、やってんだ……

 

 それすらも、口には出来ず

 体の内から裁かれるように、全身から雷を垂れ流し

 ……それ、でも……

 おれ、は……ルナの、太陽で……なけ……れ

 リファ……ナ




勝ったッ!パチモノ勇者の成り上がり完!ですぞ

ほう?それで次回から誰が尚文とネズ公の代わりを勤めるんだ?

それはもちろん、マルティとイチャイチャしながら世界を救う、真・愛の勇者の成り上がりの始まりですぞ!って、お前は誰ですかな?

……オレはケラウノスの遺産、ヘリオス・V・C・(バシ)レウス
来るが良い槍の勇者。希望は……明日の光は奪わせやしない

次回、真・愛の勇者の成り上がり(パチモノ勇者の成り上がり)、『(あか)き竜陽、バシレウス』
貴様が誰だろうと、マルティの為に!俺は、勝つ!
ヘリオスとは太陽神、バシレウスとは皇帝を意味する言葉です。隠す気ねぇだろこいつ……イッタイナニモノナンダ……
因みにですが、下のアンケートで別に良いが勝った場合、世界はネズ公がはっ!此処は……するところまでキングクリムゾンされます。まあ、勇者キタムラが謎の人物バシレウスに挑むも最後には負けるだけの話で次回予告以上の新規情報無いですからね上の予告の回

この謎の人物バシレウスですが、女神の意志を受け世界を守る真の勇者キタムラvsかつて現れた神の遺産バシレウスを

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