村★5 討伐クエスト 目的地:荒野の決戦場
報酬:銀貨15000枚 契約金:銀貨1200枚 条件:なし
メインターゲット:バシレウス1体の討伐 サブターゲット:盾の悪魔1体の討伐
優しそうな顔の女神
大変よ。かつてこの世界に現れたという邪悪な神の遺産を名乗る全世界の脅威が現れたの
奴を倒し私の世界を救えるのは貴方だけ。全ては貴方に託されたわ、槍の勇者
生態も不明、正体も不明。分かっているのは赤いオーラを纏って強化されることだけよ。気を付けて
ふっ、と
浮上するように、意識が覚醒する
「リファナ!」
……
で、何処だ此処。と、暖かい何かにくるまれる感触と共に、天井を見上げる。そこそこに豪華で、けれども豪華すぎない天井。薄暗く、灯りも……あるにはあるがそう煌々と照らされる形ではない
流石に天国やら地獄という感じではないだろう。天国にしては暗すぎる上にそもそも俺が天国になんぞ行ける方が可笑しい。地獄ならばこんないっそ熱いほどの柔らかな何かに沈んでないわ針山とか煮えたぎる血の池とかだろ周囲
そうだ、リファナ!リファナは……
と、その右腕が(因みに左腕は二の腕の中程から消し飛んでた。って傷口……の焼け跡そのままじゃん誰か包帯でも巻いててくれ)しっかりと抱き締めているものに気が付いた
……リファナ?良かった、無事か……
きゅっと抱き締めて、その体の熱を確かめる。胸元に手なり耳なり当てて心臓の鼓動を聞けば一発で分かるのだが、それはセクハラだろう
ん?きつく抱き締めている時点でセクハラ?その通りだよ程度の問題だ
……って、どうしたクソナイフ、何時もならそんな感じの事言って(正確には喋る訳ではなくポップ出して)くるだろう?何で今は……
と、視界の端の虚空を眺め
「逃げやがったなクソナァァァァァイフ!」
そこにあったのは赤い砂時計のアイコンのみ。勇者武器を保持していることを意味するナイフのアイコンは、其処から痕跡すら残さず消え去っていた
いや、寧ろ良く良く考えれば当たり前の話すぎるんだけどな!元康によってパチモノ勇者である俺は投擲具を縛る不正な力を砕かれた。その後わざっわざ投擲具が……この世界を護る勇者の力の一つがそれを邪魔する
それでも、何だかんだ残ってくれたりしなかったのかなー、なんて、変なことを思う。意識を喪ってた事は今までもあった訳で。その時は目が覚めたとしてもクソナイフは残ってくれていた。何だかんだ、転生者ではあるが俺の事を多少認めて残ってくれていたんじゃないかって、虫が良すぎる話だが
だが、今回はそんなことは全くない。クソナイフは飛び去り、俺の手元には痕跡すらも無い
「エアストスロー!」
……うん、やっぱり無いな。唯一名残があるとすれば、SPというゲージが可視化されたままという点だろう。満タンだなと思ったらクソみてぇな量がMaxだったとかいうオチはありそうだが、一応未だに俺はSPを保有している。本来は勇者特有のスキルを撃つためのリソースを、だ。まあ、勇者武器自体は持ってないのでそのSPを消費してなにかを起こす手段は……ってあるわ。そもそもリベレイション魔法がそれだ。勇者ではなくなっても(元々パクってるだけで勇者ではないというのは置いておいて)、リベレイションだけは撃てるのかこれ。置き土産として悪くは……いや悪いわ
「ってか、そもそも何で生きてるんだよ俺」
と、最もな疑問。俺の覚えてる最後は転生者への罰か何かで雷に撃たれたその光景だ。北村元康を全く止められず……
そうして、何故か此処に居る。ああ、これが原作の三勇者が感じた事か。二度目(世界的にはメルロマルクで三度目だが四聖勇者が参加したのとして二度目)の波で干渉してきたグラスに負け、そしてベッドの上で覚醒する。確かにこれは……ゲーム的だ。負けても死なない、あれは敵の幹部か何かの顔見せ負けイベントだった、俺達は勇者で此処はゲームの世界だからこうして負けてもペナルティがあるだけでリスタート出来るから大丈夫。そう思ってしまっても、この世界の真実を知らなければ無理もない
だが、それは有り得ない。此処はそんな優しいゲームの世界なんてものではない。ならば、誰かがあの後元康を止めたんだ
……でも、誰が?誰なら止められる?
フィトリアなら止められたはずだ。だが、それはあくまでも馬車の勇者である、と冠が付く。あの時のフィトリアでは無理だ。馬車を取り戻しでもしない限り
「……フィトリア?お前だったりするのか?」
「ちがうよー?」
その声は、下から聞こえた
ってこの謎のふかふか!お前かよフィトリア!
「そだよー!」
つまり俺は、フィトリアの背中に寝かされていた事になる。ベッドですらねぇ!どうりで柔らかいが無駄に深く沈んでると思った
「ばちばちー、フィトリアの上、いや?」
「いや、そういうことじゃないが」
……ってか、フィトリアは今更俺と居て良いのかそれ
「?馬車のスキルだからおはなしはSPフィトリア持ちだよ?」
「いや俺にも残ってるけどさ」
……ってかフィトリア、馬車は?あと、聞きたいのはそこじゃない
「あるよー?」
……だからほいほい思考を横流しするなと。ってか馬車は残ったのか
「うん。盾と弓もだいじょーぶ」
「他は?」
「剣はどこでサボってるのかなー」
辛辣な言葉。原作的には錬より元康嫌いそうなんだが……何でだろうなこれ
いや、錬何処行ったってのはある。実際死んでなさそうだけど姿を結局見せなかったしな。原作では樹と共に救援に来て……あんまり役に立たなくて何しに来たんだお前らと言われてたんだが
「いや、他の七星武器だよ」
「けんぞくきー?」
「そう。四聖はまだ分かるからな、死んでたら波が頻度ヤバいだろ」
「えっとね、ばちばちのナイフが何処か行っちゃって、爪は持ち主が居なくなったってー」
……つまり、アレか。世界的には爪の勇者のみが不在という扱いになっているのか今は。ってことは、突如目覚めた爪の勇者が不意討ちで倒してくれたって話でも無さげだ
「……?投擲具は?」
「フィトリアしらなーい!あのヘンな人みたいな誰かがもってっちゃったのかなー?」
転生者にパクられたと。抵抗しろクソナイフ。と、言ったら俺の場合も抵抗しろという事になるから何とも
……そもそも、何で俺は生きてる?
「えっとねー
けらうのすのいさん?」
「は?」
「ヘリオス・
その声は、腕の中から聞こえた
「……リファナ?」
「ひっ……
は、離れて……」
ぐはぁっ!
「……ご、ごめん
まだ……タクト様って言うのが抜けてなくて……
えっと、確か……多分……マルスくん、だよ、ね?」
おっかなびっくり聞いてくる少女
……合ってる。合ってるんだが……今の体の状況にアレは、ダメージキツ……い
おまけ
ヘリオス・V・C・レウスとは誰なのか
彼はケラウノスの遺産(自称)である。ケラウノスとは恐らくコード:ケラウノス(ゼウス・E・X・マキナ)の事であると思われるし、その証拠として命名法則(神名+英字2文字ミドルネーム+ラストの全てでその存在が何者なのかを示す言葉となる)が一致している
で、あるならば、彼の命名規則に則ればヘリオス・バシレウスという言葉こそが彼が何者なのかを現しているはず
名前を分解するとヘリオスとは太陽神の名前、バシレウスとはギリシャ語で皇帝を意味する言葉という二つの単語から成り立っている。よってその名前は合わせた場合、太陽神たる皇帝、即ちオレはエジプトのファラオだと言っているのである
因みに言葉遊びするとサン・ミカドとなる
我が名は遊戯王とか我が名はオジマンディアスとか我こそジュリアスシーザーとか言いたいのだろうか
エセファラオ……一体何者なんだ……
当然だが正解は上の言葉遊びである