パチモノ勇者の成り上がり   作:雨在新人

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ルージュとビッチ

「……起きたのか」

 「リファナちゃん、大丈夫?」

 と、そこにやって来るのは盾の勇者とその未来の嫁、って違うか

 

 「尚文、此処は?」

 割と真面目にどこだろう此処って感じだ。フィトリア的に危険な場所ではないのだろうが……

 

 「此処か?メルロマルクの城だ」

 「帰ろうリファナ」

 「おい、逃げんな」

 止められた。いや、メルロマルクとかネズミが居て良い場所では無さすぎる

 「いや、メルロマルクと亜人とか天敵も良いところだろう俺は帰る」

 帰る場所もないが

 「リファナちゃんは?」

 「……盾の勇者のところが一番マシだろう」

 俺が連れていってもどうせろくなことにならない、だからあの時、俺はリファナ達に投擲具の勇者のフリして酷いことをしたのだから

 「そう、かな?」

 「そうだろ、きっと」

 流石に今更ずっと居ても仕方がない。俺はリファナから離れ、ひょいとフィトリアから飛び降りる

 

 

 ……さて、どうするか

 「とりあえずだが尚文、敵はどうなった?」

 「敵?」

 「槍の勇者様だよ、勿論な」

 良くわからない覚醒を遂げた彼。そんな彼がどうなっているのかは良く分からない。そうとしか言えないだろう、流石にな

 「元康か……」

 っておい、露骨に嫌そうにするなよ尚文

 

 「それは僕から話しましょうネズミさん」

 と、やって来るのは……リーシアだな。と、目線を下げると……車椅子っぽいものに乗せられた樹の姿が

 「樹」

 「彼ならば捕縛されましたよ」

 「捕縛?」

 ヘリオスなる奴によって止められたってのは聞いたが

 「ええ。この国の女王達が駆けつけたとき、大きなクレーターの中には……そこの少女を抱き締めたネズミさんと、マルテ……ビッチを守るように抱き締めた元康さんが倒れていたそうです」

 ほへー、そんな……ん?ビッチ?

 聞き覚えのある罵倒に耳をぴくりと

 「ああ、ビッチさんについてですが」

 「盾の勇者様の一言で、そんな名前に……」

 と、リーシア

 

 そういえばそんな事件も原作にあったな。帰還した女王により、やらかしにやらかした二人が裁かれるイベント。見に行きたかったんだが、この感じでは既に終わってしまったのか

 

 「杖の勇者は?」

 原作ではクズ・メルロマルクへと改名させられていたがどうなのだろうか。因みにオルトクレイ・メルロマルクというクズになる前の名前からして実は本名から変わったもの。元々はルージュ・ランサーズ・フォブレイだったかな。ランサーズ……ランス……槍。いやーな名前だな、忘れよう

 「彼はそのままです

 確かに問題行動はありましたが、勇者を下手にどうこうすると煩いので申し訳ありません。と、この国の女王が謝っていました」

 仕方ないな、うん。寧ろ杖の勇者であり、メルロマルクという国を支えているのは……血筋や権力的にはこの国女系なのだが、そんな女王達ではなく叡智の賢王と呼ばれ杖を所有する彼のはずだ。杖の勇者が居るからこそ、メルロマルクという国は他国とある程度の均衡を保てていた。一例として亜人蔑視なんてやってるのにシルトヴェルトがメルロマルクを滅ぼしに来なかったのは彼を恐れていたからだしな

 そんな彼をクズだなんだと貶めれば世界は動く。ってか七星勇者とは本来それだけの特別な存在なのだ

 まあ、異世界から召喚されたばかりだったりするとその限りではないのだが、長期に渡って武器を所有し名を轟かせた七星は存在そのものが国際的な影響の塊だ。そんな存在、下手にクズだなんだと貶められないに決まってる

 そんな話が耳に入れば多分シルトヴェルトが攻めてくるぞ。叡智の賢王をメルロマルクは捨てた。最大の敵なき今メルロマルクは脅威にあらず!とかそんな感じで

 いや、シルトヴェルトの過激派も割と大打撃受けてたんだっけか。ならばやるとは限らないか。タイミングさえあればやりそうだが

 

 「成程ね」

 言いつつ外へ

 ってかでちやレンは何処いった

 ……あ、居たわ




視界を貫く血色の光の前に、一人の少女が飛び出してきて……
 「エリィィィィィィィッ!」
 
 「……こ、ここは」
 声に違和感を感じる
 何故、こんなに高い!?
 そ、そうだ……エリーは……マーシュは、皆は……
 「タクト様?」
 ……居た
 「タクト様、良かったです」
 涙ぐむメイドの幼馴染に、ボクは……タクト・アルサホルン・フォブレイは
 「ちょっと触れていいか?」
 と、そう聞いていた
 
 ボクの記憶の最後。悪夢にも見たその光景は……
 魂だけで逃げるボクをカルヴァリークロスだか何だか言う謎の十字架で捕らえ、今正にトドメを刺そうとしてくる朱きクソ男の前に、不意に飛び出した彼女の姿だったのだから。触って無事を確かめないと
 「はい、どうぞ」
 ……なのに。何時もの感覚ならば届くはずの手は空を切る
 何故だ!?どうしてこんな…… 
 
 ふと、手の違和感に気が付く
 やけに小さい。そして細い
 「エリー、鏡を」
 「はい、タクト様」
 そうして、ボクは鏡を見て……
 
 「……は?」
 絶句
 そこに居たのは何時ものボク、タクト・アルサホルン・フォブレイの姿ではなく……
 「リトォォォォォっ!」
 思わず、ホムンクルス研究をしていた女の子の名前を叫んでしまう
 そこに映っていたのは、7歳くらいの頃のボク。白衣を着た彼女が個人的な趣味だと培養液の中で弄くり回していたことを覚えている、タクト・フォブレイ7歳の体。確かNo.7と呼ばれるホムンクルス体だった
 「どうなってるんだ!何でボクが」
 「お、落ち着いてタクト様!」
 エリーに抱き締められ、ぽかぽかと空を殴ろうとする拳を止める
 「こ、これは……」
 「タクト様。他のホムンクルス体にタクト様の魂をいれると、突然首筋に赤い線が浮かんで……」
 「ネズミぃぃぃぃぃぃっ!」
 「その呪いが発動しなかったのは、その体だけで……」
 ポロポロと、少女は涙を溢す
 「良かったです……どんな姿でも無事なタクト様を見れて……
 あのまま、全部のホムンクルスが呪われて死んでしまっていたら……」
 ……大丈夫、と幼馴染の頭を撫で……られない。腕が短すぎる
 ネズミ、後で覚えてろよ!エリーを泣かせて!
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