劇場版 -ハイスクールD×D- 補講授業のイミテーション   作:ユウナ

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一誠「よーし、前回はイケメンに主役を取られたが、今回は俺が————」
サイラオーグ「今回は俺が主役だ」

一誠「えええええぇぇっ! サイラオーグさんがっ! 俺またイケメンに主役取られますか!?」
サイラオーグ「本編では主役を張ったことがないからな。少し緊張もしている。皆、よろしく頼むぞ」
一誠「サイラオーグさんみたいな男前なイケメンに主役取られたら……ハーレム王の夢がぁぁ……」

サイラオーグ「(木場祐斗、もしかして兵藤一誠は……)」
木場「(はい……グレモリー眷属女子のほとんどから好かれている自覚があまりない……いや、薄いらしくて)」
サイラオーグ「(なるほど。だが、それもまたこの男の魅力の一つなのだろうな)」
一誠「何こそこそ話してるんだよ?」
木場「な、なんでもないよ。イッセーくん」

サイラオーグ「さて、気を取り直して————本編開始だっ!」



修行、開始だっ!

聖魔剣の木場祐斗とデュランダル使いのゼノヴィアとの訓練を終えたばかりの初代がこちらにやってくる。

「初代、俺たちにも訓練をつけてほしい」

「おおぅ、バアルの獅子王か。ええぞぃ。ただ……後ろにおるのもまとめて面倒をみたほうがいいのかぃ?」

そう……今俺たちは兵藤家地下のトレーニングルームにいる。

 

 

俺はここに初代がいると聞いて、眷属を引き連れて兵藤家を訪れていた。どうやらあの二人の稽古をつけた後らしい。

今回俺たちがわざわざ兵藤家を訪れたのには理由がある。

それは初代の滞在だ。

いくらチーム「D×D」を結成したとはいっても、皆にはそれぞれの生活がある。

特に初代は忙しい身で、今この時を逃せば稽古の機会は少し先になる可能性が高い。

つまり、初代が滞在している今このときに、二天龍だけではなく俺たちも鍛えてもらおうという算段でやってきたのだ。

 

「眷属の者たちも前回のリアスとのゲーム以来、自分を磨きなおしたいと意気込む連中ばかりで……俺と共に初代の修行を受けさせられればと思いまして」

「なるほどのぉ……いいぜぃ。まとめて面倒を見てやろうさね」

煙管(キセル)を吹かしながら、初代はうなずいた。

「礼を言う」

頭を下げようとする俺を初代が止める。

「堅苦しいのは苦手さね。それに若手を育てるのも老人の役目さね。それこそわしがこのチームにおる理由じゃしのぉ」

このチームの最大戦力にして、指南役。それが初代孫悟空の立ち位置だった。

 

「あと数日は儂はここの町に滞在するでの。その間、お前たちの面倒は見てやるつもりじゃから、急いで駆けつけてこんでもよかったんじゃぞ」

どうやら俺たちが急いでここに来たのを見抜いていたらしい。

そのおかげで眷属の皆を招集しきれずここについてしまったのだった。

招集できたメンバーは『兵士』のレグルス、『女王』のクイーシャ、『騎士』のフールカス、そして『戦車』のブネだけだ。

「そうですか。ならば俺たちもここに滞在して、その間初代に稽古をつけてもらうとしましょうか」

俺がそう告げると、初代は満足そうに笑んで続けた。

「そうかぃ。向上心があっていいことさね」

初代がここに数日滞在するのなら、あとで残りの眷属も呼ぶとしよう。あいつらも強くなってもらわんとな。

 

「ではそろそろ修行を開始しようかのぉ。おっとその前に————」

そう言うと初代は棒をコツンと地面にあてた。

何をしたのかと一瞬考えて……感じ取った気配から理解した。

「あの二人を地上に送ったのですね」

尋ねると、初代はうなずいた。

「うむ、リビングに転送しておいたわぃ。邪魔になっても困るし、巻き込まれてもいかんからのぉ」

わざわざ離れた二人を転送するということは修行はかなり広範囲に影響を及ぼす規模になるということだ。

 

修行の内容は察するに、実戦形式か。

それも当然だと思われる。

例えるなら誰かに勉強を教える場合だ。教師が教える対象の学力を知りたいと思うのは当然だ。

つまり、私たちがどこまで戦えるかを測るつもりなのだろう。

修行の最初からこうした実戦方式でやるのは、そういった意味合いもありそうだ。

「そっちは……5人かね。ふぅ~む、どうしたものかのぉ……」

なにやら悩んでいる様子の初代。

 

考えがまとまったのか、初代はニヤリと口元を笑ませて俺たちを見上げて告げた。

「二対五でやろうかのぉ」

そういって初代は、自分の髪の一部を抜き取り息を吹きかけると————。

 

「「さぁ、かかってきなさい」」

初代の分身が作り出され、二人の初代が左右対称にポーズを決める。

「俺が本体のほうとやろう。お前たちは分身とやれ」

『っ。サイラオーグ様、しかし————』

反論してきたレグルスを俺は諌めて告げる。

「伝説の妖怪である孫悟空とは、一対一で戦ってみたいのだ。それに神滅器を持つ眷属の主たちは、神仏と戦えるまでに強くならなくてはいけないのだろう?」

俺が初代に確認すると、その通りだとうなずいた。

「そういうわけだ。下がれ、レグルス」

俺はそう言いながら、黒い戦闘服を着込む。

『……はっ』

それを見て、しぶしぶといった様子でレグルスは下がった。

まったく、主思いの眷属だな。俺はお前のような眷属を持てて幸せものだよ。

 

 

さて、戦闘開始だっ————。

まずは、両手足に負荷をかけていた枷を外す。

ドンッ! と大きな音をさせて、両手足の枷の紋様が消えていく。

周囲に力を解放した影響で、風圧が巻き起こり、足元の地面が大きく抉れ、クレーターができた。

解放した闘気を身にまとって初代の本体に向かい飛び出す俺。

初代は如意棒を構えて、こちらの拳と打ち合わせてきた。

ドンッ! ガンッ!

俺たちの攻撃が打ち合うたびに、このトレーニングルームに轟音が響き渡る。

「おぉ、やはり凄まじいパワーじゃのぉ。若いもんにしては、充分さね」

初代が俺を褒めるが、それを俺は一蹴する。

「ですが、邪龍やリゼヴィムたちと戦うなら、この程度ではいかんでしょう……あなたから出来るだけ技術を吸収させてもらうっ!」

「いい心がけさね」

俺の答えに満足したのか、口元を笑ませていた。

 

 

そこから俺と初代の激しい攻防が始まった。

まず、初代に上から拳を落とすように打ち込む————それを初代は横にずれて躱し、こちらに棒を伸ばして突こうとする。

顔を狙ったその一撃は首を傾けることでなんとか回避し、今度は初代を蹴り上げようと右足を上げる。

すると今度は初代は飛び上がり、上から棒をたたきつけるように振り下ろしてきた。

それを後ろに跳んで回避してから再度拳を打ち込む。

初代は着地してから、その拳を棒で易々と受け止めて横に流した。

俺は流された体ごとあえて前に倒れこみ、そのまま慣性を利用して回し蹴りを繰り出す。

それを初代は棒を支えにして飛び上がることで避けて、そのまま棒を横薙に振るう。

これは躱せないと判断し、闘気を全開にし両腕をクロスさせて防御しようとした。

ガァァアン! と凄まじい音をさせて地面とぶつかりながら吹き飛ばされた。

 

……なんてダメージだっ……! リアスの『騎士』が持つ聖剣デュランダルの聖なる波動すら防いでみせたこの闘気をまとっていたというのに……。

棒の横薙を庇った腕が痺れて、力が少し入らなくなった。

俺は驚愕しながらも空中で体勢を立て直し、初代と向き直った。

 

「生身で受けてそのダメージとは……さすがだねぇ、師子王の。赤龍帝と並ぶだけはあるわぃ」

「それはどうも。俺は今度こそ兵藤一誠を倒したいのでね」

そうは言ったものの、今までの打ち合いで俺はこう感じていた。

 

戦いづらい、と。

 

こちらの速さに簡単についてこられる上に、打撃も容易く打ち合わせてくる。

しかもそれをあの小柄な体でだ。

初代の背は小さく、人間に例えるなら幼稚園の年長児くらいの高さしかない。

あの小柄な体で飛んで、跳ねてを繰り返しこちらの拳を受け止める様はまさに驚愕の一言に尽きる。

こんなにも体格差のある者と戦ったことはないので、戦いづらいことこの上ない。しかも相手のほうが強いのだ。

 

それにこちらは全力で打ち込んでいるが、向こうはまだかなり余裕がありそうだ。

俺の力に合わせてくれているのが分かる。

……悔しいものだな。やはり初代孫悟空クラスの敵と戦うにはバランスブレイクをするしかないのか。だが、いつかはこの拳だけで————。

俺は最強の形態となるべく、自身の最強の眷属兼神滅器を呼び出す。

「レグルスゥゥゥゥッ!」

 

一方、分身と戦う眷属たちはどうなっていたのだろうか。

その様子をあとから聞くとこんな感じだったらしい————。

 

「さて、来ないのならこっちからいくぜぃ」

初代の分身がこちらに向かってくる。

『ベルーガ殿、クイーシャ殿、ラードラ殿足止めをお願いする』

レグルスが彼らに頼む。

「はい。おまかせを」

「私とアルトブラウの神速で翻弄して差し上げましょう」

「我が火炎で焼き払ってくれよう」

それぞれが自分の役割を理解し、動く。

それはレグルスが戦闘力を解放するまでの時間稼ぎだ。

 

まずはフールカスが初代を足止めするために動く。

「いざ、参る」

愛馬のアルトブラウの神速で初代に詰め寄る。

「おぉ……なかなか速いのぉ。じゃが————」

分身初代はなんなくそれを躱し、フールカスに対して棒の突きを入れる!

「くぅっ」

初代の猛烈な突きをなんとかランスで防ぐフールカス。どうやら分身とはいえ、その身のこなしは青ざめた馬(ペイル・ホース)の速さに並ぶようだ。

「分身でありながらこれ程の速さだとは……」

苦々しく顔を歪めるフールカス。それもそうだろう。自慢の愛馬の足と初代のとはいえ分身の速さに並ばれたのだから。

「生憎と儂は分身にかなりの力を託せるほど鍛えておるでのぉ。若いヒヨっ子の相手くらいは分身の儂で充分さね」

「舐めるなっ!」

 

その挑発に乗ったのか、幻影を複数出現させて高速戦を仕掛けるフールカス。あの幻影は本物と同じ気配を放っており、見分けることはほぼ不可能。しかもそれぞれが本物と同じくらいの速さを持っている上、攻撃を仕掛けることも可能だ。

「これはこれは。儂と同じように分身で攻撃してくるか。じゃが————」

幻影を一体、一体冷静に打ち倒して処理していく分身初代。

「分身の使い方は、儂もよーく分かっておるさね。序盤に突っ込んでくる者の中に、まず本物はおらんのぉ」

 

分身は初代の十八番だ。フールカス以上に圧倒的に使い慣れている。故にその特性や使い方も完璧に見抜かれているようだ。

「分身の完成度は、若いもんにしては充分さね。この調子で精進せい」

そう、フールカスの幻影はいわゆる質量をもった幻影で、分身とほとんど同じような効果がある。

しかしその幻影を蹴散らされて、劣勢に立たされていくフールカス。援護をしたい味方の眷属も、高速で動く両者を前に手出しがしづらい状態が続いていた。

「お褒めの言葉、ありがたく頂戴いたす! しかしこれで終わるとは思わんでくだされ」

 

幻影を次々を消され、追い詰められていくフールカス。

それもそうだ。速さは両者ともにほぼ並んでいるものの、初代にはフールカスにはない豊富な戦闘経験や妙々たる洞察力がある。この高速戦がどうなるかは目に見えていた。

 

予想通り高速戦を制して、先に一撃を入れたのは分身初代だった。

しかも、その一撃で馬と分断されてしまった!

「馬との息はピッタリじゃのぉ。じゃが、馬なしでは高速で動けない点はいかんの……聖魔剣の『騎士』を見習うんじゃの」

 

その通りで、フールカスは馬なしでは高速で動けない。『騎士』の駒で自身の速さも底上げされているものの、分身初代の相手をするには不足が過ぎた。

「ぐぅ!」

苦しそうなうめき声を上げるフールカス。馬なしでも分身に立ち向かおうとするが……。

「遅い」

一言で一蹴され、棒の横薙を喰らい吹き飛ばされてしまった。

「ぐぅあぁぁぁぁあっ!」

 

仲間がやられる様子をただ見ているわけではなかった『戦車』のブネが前へ出る。

「次は俺の火炎を食らわせてやる!」

巨大なドラゴンに変身したブネが大質量の火炎を吐くが……。

「ほーれ、ほーれ」

仙術の応用なのか、火炎のなかをものともせず突っ込んでいく分身初代。

「馬鹿な! 我が炎がきかんというのか!」

「赤龍帝の火炎と比べると、まだまだじゃて」

そう言うと、初代はブネに対して棒の突きを入れた。

「ぐうあぁぁぁああ!」

ドラゴンと化したブネを棒の一突きで倒すと、次の狙いをクイーシャに定める。

 

 

「なら、これでどうです!」

『女王』のクィーシャが様々な属性の魔力の波動を乱れ撃つ!

物理攻撃で歯が立たないのなら、魔力による攻撃ならばどうか。

「ふむ、なかなかに練られた魔力じゃ。……しかし」

分身初代はクイーシャの乱れ撃った魔力攻撃を、飛び跳ねて回避や棒で弾き返したりを繰り返し、防ぎきってみせた。

「格上の相手に対して生半可な魔力攻撃が通用すると思ったのかねぃ。アバドンの者ならば『(ホール)』を使ってこんか」

「くっ……」

 

確かにクイーシャの力の神髄は『穴』にある。前回のリアスとのゲームでも、それを使って『雷光の巫女』である姫島朱乃に勝利しているのだ。

それを重々承知しているのだろう……その時のクイーシャは悔しそうな顔をしたものの……やがて、笑んでこう告げた。

「しかし、時間は充分に稼げました」

「むっ!」

異変を察知した分身初代は、後ろに下がる。

 

ガゴォォォォォォォォオオオオオンッ!

 

少年から巨大なライオンへと変身を遂げたレグルスがそこには立っていた。

金毛が全身をおおい、腕や足は元の体の数倍に太くなっていて、その口には鋭い牙が生え揃っており、額には宝玉が飾られている。

金色のオーラまでも放つ堂々たるライオンの姿に、分身初代も賛辞の声を浴びせる。

 

「さすがは神滅器の一つさね。凄まじいパワーを感じるのぉ……しかし不安定じゃな」

そう、所持者がすでに死亡しており、神滅器のみの状態で動いているレグルスは力が不安定で、暴走の危険性を考えるとおいそれと戦闘に参加させることもできない。

ライオンの姿となるに少々の時間を要したのも、暴走の危険を避けるためであった。

「おぬしらが同時に突っ込んで来れば、今とはまた戦況もまったく違っておったろうに……その力を安定させることがお主の課題さね」

『……仰る通りです』

 

「全力でかかってきなさい。ただし、暴走せぬようにな」

『ハッ! いざ、参るっ!』

金色のオーラを迸らせ、光の放流の如くとなって分身初代に詰め寄る!

その凄まじい様にクイーシャも容易には両者の戦闘範囲に踏み込めずにいた。

両者が全力でぶつかり合う。その体格差を想像していただければ分かるだろうが、小さき者が巨躯を圧倒する様はまさに圧巻の一語に尽きる。

 

『ぐぅう!』

分身初代の猛攻に、徐々に勢いを失いつつあるレグルス。

俺も経験したから分かるが、あれほど小さな者が自分より素早く、そして力強く攻撃してくるというのは戸惑いと困惑を抱かせるものだ。

それにレグルスは巨大であるため、なおさら小さき者に攻撃が当たらぬことにいら立ったに違いない。

さらにその戦い方もこちらの攻撃をすべて躱し、そのあとの隙を的確に攻撃してくるというなかなかに厭らしい戦い方を繰り出していたそうだ。

 

「どうした、どうした。戦闘中に冷静さを欠いていてはいかんぞ」

『チイッ!』

分身初代の言う通りその時のレグルスの体からは過剰で無駄と言えるほどのオーラが迸っていた。

聞いていて思うのは、レグルスがいら立っても力を暴走させてはいけないと、あえてそのような戦い方をしたのかもしれない。

感情が高ぶればその分、力のコントロールは雑になるものだからな。

 

 

その様子を見かねたのかクイーシャがレグルスの隣に立つ。

「レグルス、相手に呑まれてはいけません。落ち着くのです!」

その一喝に冷静さを取り戻したのか、レグルスは過剰なオーラの迸りを収めた。

『すみません、クイーシャ殿』

「落ち着いたのならば、それでいいのです。私に考えがあります、レグルス。あなたは前に出て初代の攻撃を誘ってください。私が隙を作るので、あなたはそこを狙って全力の一撃を入れてください」

クイーシャの作戦の内容を悟ったレグルスは、

『ハッ!』

と気合を入れ直し分身初代へ向かっていく。

 

 

『はあぁぁぁっ』

獅子の爪が振り下ろされる。当然ながら分身初代は避けるが、地面に当たった爪が生んだ衝撃波の風圧でその小さな体が吹き飛んでいく。

「くぅう! ならば、これでどうじゃ」

吹き飛ばされながらも、初代は棒を伸ばしてレグルスを突こうとしたが————。

「その瞬間を待っていました!」

クイーシャがレグルスと彼を狙う棒の突きの間に、アバドン家にのみ使える特殊な技である『穴』を出現させた。

その『穴』に吸い込まれていく分身初代の棒。

「————っ」

その様に驚く分身初代。

 

クイーシャの『穴』は、すべてを飲み込む文字通りの円形の穴を空間に生みだし、そのなかで相手の攻撃分解したり、別の『穴』から放つこともできる。

つまり、その時のクイーシャの狙いは————。

 

「後ろかっ!」

分身初代の後ろに出現した『穴』から棒の突きが放たれるっ!

『穴』たちは異界を通じて繋がっているからな。相手の攻撃をうまく吸い込めれば、別の『穴』から放出可能なのだ。

自らの攻撃に当たるわけにはいかないと、身を捻って躱す分身初代。

そこで生まれたわずかだが、確かな隙を逃すはずもないレグルスは————。

『ゴガァァァアアアアア!』

唸り声とともに相手の体に覆いかぶさるようにして、猛烈な打撃を繰り出す。

ガン! ドガンッ! ガガァァァンッ!

その連続攻撃にたまらないとばかりに、その猛攻の波から逃れる分身初代。だが、いくつか打撃は当たったようで……。

 

「うーむ、さすがに痛いさね。分身とはいえ、儂にこれだけのダメージを負わすとは……さすがは物理攻撃力に特化したバアル眷属じゃのぉ」

分身とはいえ、初代の防御力を貫通してダメージを与えることに成功していた!

『仕留めきれなかったか……ならば、もう一度っ————』

「二度同じ手が通用すると思っておるのか? 舐めるのもいいかげんにせぃっ!」

そう言って分身初代が狙ったのは————クイーシャだった!?

「っ!」

 

咄嗟に『穴』を出して防御しようとするものの間に合わず————。

「きゃぁぁぁああああ!」

棒による突きをモロに食らってしまった。

その攻撃で完全に気を失ってしまったクイーシャ。

「これで『穴』を使ってのカウンターはできんぞぃ」

『クイーシャ殿っ!』

『穴』の出現は間に合わなかったものの、防御の陣は組んでいたはずのクイーシャを一撃とは……やはり初代の攻撃力は凄まじいものがあるな。

「彼女の弱点は、反射神経さね。いくら『穴』を使って防御しようともそれよりも早く攻撃を繰り出されれば、間に合わん。それではいかんさね」

 

確かにクイーシャは前回のリアスとのゲームでも、防御の反応が間に合わず兵藤一誠に敗けた。

相変わらず、的確な修行のポイントを戦闘中にも関わらず教えてくれるものだな。さすがは初代だ。

俺がレグルスを呼んだのはこのようなタイミングだったらしい。

 

 

「レグルスゥゥゥゥッ!」

『ハッ!』

俺の呼び声にすぐさま応え、推参するレグルス。

俺はそれを確認してから、獅子の衣をまとうための呪文を唱えていく。

 

「我が獅子よッ! ネメアの王よッ! 獅子王と呼ばれた汝よ! 我が猛りに応じて、衣と化せェェェェッ!」

レグルスから発せられる金色のオーラを体にまとわせ、兵藤家地下のトレーニングルーム全体を振るわせるっ!

ドォォォォォオオオオッ!

俺の足元にクレーターができ、周りに生じた塵やほこりが衝撃波で吹き飛ばされていくっ!

 

禁手化(バランス・ブレイク)ッ!』

禁手化(バランス・ブレイク)ゥゥゥゥゥゥッ!」

 

神々しい金色の輝きの中から出現した俺は、その身に獅子の全身鎧(プレート・アーマー)を身に着け、その場に立っていた。

……極力パワーは抑えたつもりだが、家に影響が少しは出たかもしれんな……。あとでリアスに修理費を出すか。

そのようなことを考えつつも、頭部の兜のたてがみをなびかせて初代に向かうッ!

 

 

「ここからは一対一じゃな」

そう言って、分身を消して一対一の勝負に持ち込んでくれる初代。

「本気で参るっ! いくぞぉぉぉおおお! レグルスゥゥゥゥッ!」

『ハッ!』

胸の獅子の顔からレグルスが応じてくれる。

そこからはさきほどの攻防を超える凄まじい打撃戦が始まった。

 

ドンッ! ガンッ! ガガァァァアン!

俺たちの攻防で次々とトレーニングルームの地面にクレーターが出来ていく。

だが、どちらの攻撃もいまだクリーンヒットしていない。初代はその身のこなしでこちらの攻撃を華麗に躱し続け、俺は初代の攻撃を拳で真正面から打ち返していたからだ。

「さすがじゃのぉ。打撃力だけなら赤龍帝以上じゃな! 魔力による攻撃などお主の戦闘スタイルには必要ないと感じるほどさね」

「俺には肉体しかありませんからね!」

凄まじいまでの速さで繰り出される棒の突きや横薙を躱しつつ、答える。

 

だが、今までの攻防で初代の棒の間合いは掴めた。次はギリギリで避けて、カウンターを入れるッ!

初代が飛び上がり、棒の横薙を繰り出してきたっ!

ここだっ!

ギリギリで後ろに下がって避けて、カウンターを入れようとしたその瞬間————、

 

ガアアァァァァンッ!

顔面に棒の横薙が直撃した! 何故っ……と一瞬考えて、答えに辿り着く。

「間合いを見切ったと思ったかぃ? この如意棒は伸びるんじゃぜ? それを忘れてはいかんのぉ」

そう、あの棒は如意棒だ。初代の意思で変幻自在に伸びたり縮んだりするのだ。

あの棒に間合いなど、あってないようなもの。それを今までの横薙の攻撃で織り込んでこなかったから、失念していた。

 

やはり強いッ! 全力で打ち合いながらもこちらの隙を作ろうと、頭を冷静に働かせている。

初代自身の熟練した力の強さもさることながら、その冷静な思考こそが強さの所以だろうな。戦いながら、俺はそう実感していた。

 

「また、こうすることもできるさね」

さらに上空に飛び上がった初代が棒を極太にして、突きおろしてきた!

太くなった棒の直径はざっと見積もっても7~8メートルはある。

ぐっ……これはとても避けられたものではないっ!?

 

「レグルスゥゥッ! 全力防御だァァァ!」

『ハッ!』

上からくる巨大な突きを受け止めようと、防御にありったけの力を込めるッ!

 

ガアアアアアァァァァァァァァァンンッ!

受け止めた瞬間、凄まじい爆音とともにとてつもない衝撃が俺たちを襲うッ!

 

これは……あと何秒も受け止められ続けるものではないッ……!

足が地面にどんどんめり込んでいって、埋まっていく。

なんとか脱出しようと四苦八苦するものの、足が埋まっていてはどうしようもなく……押し潰されそうになる俺たちだったが————。

フッ、と今までかかっていたとてつもない衝撃が消えた。

棒の突きを止めた?……いや、次の攻撃がっ————。

ドガアアアアァァァァァァァンン!

初代が突きを止めてそのまま払いの動作に入ったことは分かったが、反応できずにモロに攻撃を食らってしまった————

 

 

 

 

うぅ……初代の薙ぎ払いを喰らって俺は……。

横を見ると初代が傷の治療をしてくれていた。

「大丈夫かい? 一応、手加減はしたのじゃが」

どうやら俺はあの攻撃を喰らって気絶し、兵藤家のリビングに運ばれて治療を受けているようだ。

『大丈夫ですか? サイラオーグ様』

レグルスやほかの眷属たちが心配そうな視線をこちらに向けてくれる。

「いや、大丈夫だ。いい修行になりました、初代。さすがは伝説の妖怪。今のおれたちではまるで歯が立たない」

それを聞いて初代はニヤリと口元を笑まして言う。

「いやいや、まだまだそなたらには伸びしろがあるさね。儂のトレーニングでこれから実力をどんどん高めていってやるかのぉ。安心せぃ」

修行はまだまだ始まったばかり……そう気を取り直す俺たちだった。

 




今回はサイラーグとその眷属の修行回です。
更新が遅れて申し訳ありません。しかし、やはり先月はいろいろ忙しい日々が続いており、
なかなか書き上げることができませんでした。

しかし、忙しさだけが理由だったわけではないのです。
その原因の一つに……バアル眷属の戦闘描写の少なさというものがあります!
彼ら、十巻くらいでしかまともに戦っていくれていませんからね(泣)。

ですから、これから書いているうえで、彼らの戦闘描写はオリジナルの要素が
多分に含まれていくかもしれませんがご容赦ください。

他にも、彼らの間での名前の呼び方はどうなっているのだろうとか……色々気にしてしまって……。
誰かご存知の方がいらっしゃったら教えてください(笑)。
しかも今回は原作では未だないサイラオーグ視点で話を進めたのも書きにくさを増長させたと思います。
今回出てこなかった他のバアル眷属も後々出てきますので、ご安心を。

今回で修行回は終わりです! 次回からはいよいよ物語を進めていきますよ~。
シトリーの修行回はないのかって? ハハハッ、知らないな~(すっとぼけ)。
彼らの修行回はカットです。期待していた方々、すみません。
話のテンポを優先させていただきます。

実は最近怖くなっていることがありまして……
それは、畏れ多いのですが原作とのネタ被りです!

オリジナルの必殺技や神滅器の設定は被らないと思うのですが(そんなこと言って被ったらどうしようw)、初代孫悟空との修行で皆それぞれ若干強くなっていきますので、そこらへんがもしかしたら被るんじゃないかなー? とヒヤヒヤしています。

ですので、ネタバレを承知で一つだけ3話の下に書いておきます。
見たくない人は3話のあとがきの下をあまりスクロールしないでください。
(これは作者の活動報告のほうに移動しました)

感想、評価やご意見等を送ってくださると、作者は喜びます!
では、ここまでお読みいただき、どうもありがとうございました!
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