「……さま……しゅさま」
酷い夢だ。今一番見たくない夢。今一番見るべきであろう夢。
彼女を傷つけた過去。俺の我儘。
あれから随分と月日が経ったが今でも鮮明に思い出せる程、記憶に刻まれている。それは罪悪感からか。
「ほこ……しきごしゅじん……」
質素な部屋の隅っこで膝を抱えて泣いていた彼女。
そんな彼女に対して俺は___
「ご主人様!!」
「うわっ!!」
急な大声で慌てて身体を起こす。見慣れた自室内では見慣れない彼女、シリアスはその赤い瞳を心配そうにさせながら俺の様子を伺っていた。
「……シリアス?」
「おはよう御座います。誇らしきご主人様。貴方様の永遠の秘書艦で御座います」
一礼と共に秘書艦の話題を朝から降る。ここ最近その話題ばかりで気が滅入ってくる。
「珍しくシリアスの方が早く指揮官室に来たため、様子を伺いに来たのですが……珍しく寝坊ですね」
「ほんとに?」
壁に掛かった時計を見ると何時も見る時間よりも数十分後を指していた。指揮官という立場上別に遅刻という概念はないが、遅れて仕事に行くのはいけない。示しがつかない。そしてそれが知られれば、今度会う彼女にこれでもかと注意をされてしまう。
「うなされていましたが、悪夢でも見たのでしょうか?」
「え? あー、うん」
誤魔化すように苦笑しながら肩をすくめる。シリアスの夢を見てた、なんて気恥ずかしくて言えない。
「そうですか。シリアスの名を何度も呟いていましたので、助けを求めていらしたのですね」
「寝言? というか、聞いてたの?」
「はい、それだけ長く起きて下さらなかったという事です」
恥ずかしいな。少し顔が赤くなるのを感じる。そんな姿が面白いのだろう。彼女は楽しそうに微笑んでいた。
「大丈夫ですよ。
このシリアス、何時でも貴方様の傍にいます。
たとえどれだけ傷つけようとも、貴方様の傍から離れることはしません。
シリアスからは、絶対に。
たとえ、貴方様が手放そうとも……
シリアスのこの手は決して貴方様と絡んだ手から離れることはありません。
ですから、そう気にしないで下さいませ。
貴方様と出遭った時から、この身朽ち果てるその時まで永遠に傍に居続けます」
「ですから」そう続けながらシリアスはポケットからよく目にする鍵を取り出すと、それを俺に手渡してくれた。
「気にしないで下さい。
私が傷つく事に、傷つけた事に。
ご主人様の選択がシリアスの選択。
ですので、傷ついたのではなく自らを咎しめているのです」
「……ありがとう」
彼女の気持ちが嬉しく感じるのは昔を思い出したからか、それとも昨日の件の直後だからか。何れにせよ、彼女に甘えてばかりはいられない。俺も自分を律しながら歩まなければ。
「私は後数日で秘書艦から降りる身。
この鍵は一時ベルファストさんにお預けください」
「そうだね、預けてた事も忘れてたよ」
今日のような寝坊した時もそうだが、俺の身に何かあった時のためにシリアスに自室の鍵を渡していた。秘書艦として持ってもらっていた。それが変わるのだから、当然持つべき主も変わる。一時的に。
預かった鍵を机に置くと足元に着替えが置いてある事に気づく。俺を起こしながら用意してくれたのだろうか。こういう気が利く所が彼女の良いところ。苦手な事が多いだけで、良いところだって一杯あると思わせてくれた。
「では、シリアスは先にお待ちしています」
そう言うと彼女は部屋から出て一礼をする。
それを終えたその時、上げた顔を珍しくいたずらっ子な笑みを浮かべて
「少し残念になったご主人様」
と冗談めいた口調と共にその珍しい顔がドアによって隠された。残念になった、っか。
なったんじゃない。初めから残念なご主人様だよ。っと言ったところできっとわかってくれないだろう。
それでいい。
俺の事を誇らしきご主人様と言ってくれる彼女のために、今日も指揮官として振る舞う。
隣に立ってくれている彼女からの期待に背かないように、今日も頑張ろうと思えてくる。
だから、それでいいんだ。
「指揮官様〜貴方の大鳳が来ましたわ〜」
甘さと共にどこか幼さを感じる声の主は、その声とは裏腹に立派に育まれた局部を隠す所かより際立たせる様な赤い着物を着こなす。しかもそれを俺に見せつけるように少し屈みながら何かを誘うような瞳で大鳳は指揮官室に訪ねてきた。
「大鳳? どうしたの?」
今日も今日とて予定あり。もちろん、今日の予定ぐらいは何も見なくても口に出来る。だからこそ彼女がここに訪ねてきた理由は見当いったがそれでも確認をする。何故なら、その理由であればおかしな点があるからだ。
「決まってますわ〜指揮官様を迎えに来ましたの」
嬉しそうに自分の両指を絡めながらその腕で立派な胸を圧迫する。余りにも緩やかで開放的だったのが急に狭苦しくなったからか、その部位は今にも着物から飛び出そうな変化をした。辞めてくれよ。見ていたい……いや、注意したい欲求を必死に堪えて机に並ぶ書類に視線を移す。服装なんて個人の自由だ。俺が口を挾む権利はない。俺の趣味かと言われたら言葉を濁すけど。
ともかくとして、今日も今日とて最重要な書類とそうでない書類に分ける所から仕事は始まっていた。
そう、始まったばかりだ。シリアスに起こしてもらってからまだ数十分しか経っていない。だからこそ、おかしい。
「重桜に行くのは午後からのはずだけど?」
今日は重桜の長である長門との話し合いをする予定。演習についてと、重桜でトラブルがないかを確認する定期的に行うミーティングのようなもの。
重桜と鉄血はトップが自らを陣営の長として型にはまった振る舞いをする。だからこそ、我が強くはあるが身内に甘いエリザベスや明確な長がいないユニオンと違って朝に会いたいと伝言を伝え、昼には叶うような簡単な方々ではない。それだけ責任を感じ取って長として取り組んでくれている。だからこそ、それに合わせたい。
その2陣営は定期的に日取りを決めてミーティングと称して会うことにしている。俺の事を母艦の長として丁重な扱いをしてくれており、わざわざ歩いて行ける距離なのに迎えまで用意してくれるような手厚い歓迎をしてくれる彼女達に応え、俺がここの長として改めて自分自身に向き合う切っ掛け。それが今日。長門に会いに行く予定日。なのだが……
早い、早すぎる。迎えが来るにしてもだ。時計の針はまだまだここに来てから長い針が半周もしていないのだから。
「大鳳、大好きな指揮官様に一刻でも早く会いたくて我慢できませんでした〜」
詫びる様子は全くなく、それどころか部屋に入っで扉を少し強く閉めた。ここから出る気はないという意思表示を感じ取れた。
「いや、でも……」
「それに〜指揮官様の秘書艦も今日はお留守と聞きましたから、大鳳が貴方様のお世話をと思ったわけですわ〜」
「なんで知ってるの!?」
思わず驚いて手を止めてしまった。
今日からシリアスはベルファストに秘書艦の仕事の引き継きとして、仕事を教える。という建前だが、実際は逆にメイド業の訓練日。悲しい話だが、シリアスからベルファストに秘書艦として仕事を引き継げる事など無いだろう。……いや、無いに等しいだろう。
とにかく、2人にはついさっきこの場で説明とお願いをした。それこそ、大鳳が訪ねてくる数分前の事。
そう、これを知ってるのは俺を含めた3人だけ。エリザベスだって今日はベルファストが秘書艦の引き継ぎと聞いてるから、指揮官室に居ると思っているだろうに。なのに、何故目の前の彼女は知っているのだろうか。
「ふふふっ……。大鳳はぜんぶぜーんぶ知ってますもの~、だって大鳳の目に映るのは指揮官様だけですよぉ~」
何故だが恥ずかしそうに応える彼女。この返答の何処に恥ずべき事があったのだろうか。
「指揮官様のあ〜んな事やこ〜〜んな事まで大鳳は全て知ってますわぁ〜」
「……そ、そっか」
どこから問い詰めるべきだろう。意味深な発言か、俺の事を監視か盗聴でもしているのか。ツッコミ所が多々あるが何処にも突っ込みたくないのはきっと、どの会話に入ってもその穴の中は深い闇がありそうな気がしたからだ。気と場を取り直すように軽い咳払いをした。
「何にせよ、今から重桜へは行けないよ? まだ仕事があるんだ」
「知ってますわ〜。
だ〜か〜ら〜
この大鳳、あんな無能な子達ではなく指揮官様の大切な艦船である大鳳がお仕事の手伝いに参りましたぁ〜」
待ってましたと言わんばかりに食い気味な反応をして机上に積まれた書類を手に取り目を通していく。
達っとわざわざ複数形にするのだ、その中にはベルファストも入っているのだろう。大鳳のさっきの発言からして、秘書艦を一時的にベルファストにする事もきっと知っているのだろうから。まぁ、隠すことではない。むしろ皆知っていてほしい。しかし、ベルファストを無能と言うなんて……凄い子だ。思わず苦笑する。
重桜とロイヤルでは陣営が違う。だが何も双方の仲が悪いわけではない。陣営間の艦船達の仲は基本良好だ。そして、陣営が違うからと互いに睨み合う事もない。陣営と括ってはいるが、皆同じく同じ母艦の仲間なのだから。和気あいあいとは言わないが、それなりにどの陣営も良好な関係だ。
「……ふふふっ、大鳳でも出来そうなお仕事が一杯ありそうでよかったですの〜」
俺が分けた後でもいい書類から更に選別してソファ前のテーブルに分けていく。試しにチラリと大鳳が持っていった書類を見る。確かにそれは俺がやらなくてもいいような物だ。サインを書く責任者がわからないから俺の所に舞い込んできたような仕事。
「指揮官様の確認が必要な事は大鳳が尋ねますから、指揮官様は大切な書類を頑張ってやって下さいまし〜」
そう選別を続けながら言う大鳳。
……そうか、秘書艦もこんな風に手伝ってくれるのか。思わず感心と感謝で「あぁ」と口から漏れた。
おっとりとした口調で語る大鳳だが、意外と面倒見が良く手先も器用だ。頼んだらきっと、期待した仕事が出来るに違いない。そう思う。
それでも、大鳳は秘書艦ではない。だが、手伝ってくれると言うなら助かる……。彼女の進む手を止めるか止めないか悩んでいると彼女の方から手が止まる。
不思議に思って顔を見上げると、シリアスに比べて少し暗く赤い潤んだ瞳と視線が会う。その口元は何故だがニヤニヤとしていた。
「あぁ、愛くるしいですわ〜」
「ちょっ!?」
余りにも唐突な言葉と共に大鳳は横から飛びついてきた。勢いに歯向かえないまま椅子から飛ばされ、床へとその身を打ち付ける。背部全体がじんわりとした痛みと自室のベッドとは真反対な硬い床が俺を包む事を凄い勢いで拒むように反発的な感覚をくれる。
「あぁ〜何時見ても可愛いいですわ〜。
机に向かって張り切る姿、本当に愛くるしくて素敵ですよぉ。
大鳳はぁ〜、食べられたいけど、指揮官様なら、大鳳から食べちゃいたいぐらいですわ〜。
本当に、ずっと大鳳の傍にいれば指揮官様に何不自由なくさせてあげますのにぃ。
何であのロイヤルメイドを秘書艦にするのか、大鳳には理解ができませんの。
他の艦船達よりもぉ、大鳳の方が指揮官様を愛していますのにぃ〜。
大鳳が指揮官様の最高最愛のパートナーですのぉ〜」
言いたい事を言いながらもやることは確実にやる。それが器用な大鳳らしさを感じた。ただ、それが仰向けに横たわる俺の両足の上に足を乗せ、手は手首下を軽く掴んで動きを封じ、全身で俺の上に横たわりながら耳元で囁くというのだから嫌になる。胸の上にある柔からな感覚も俺の意識を奪うのに十分な効力を発揮している。
大鳳は意外と背が高い。並んで立つと俺の頭の先が肩よりすこし下ぐらいだ。身長差を考えても男女差を考えると俺の方が力はあるはず。そう思って必死に抵抗するもびくともしない。……非力な自分が嫌になる。
「必死な姿が可愛いいですわぁ」
横にある顔は微笑ましく笑みを浮かべる。まるで愛玩動物を眺める様に。辞めてくれ、泣きたくなるから。
「指揮官様、何でこの大鳳ではなく他の艦船を秘書艦にするんですか?
シリアスはまだ、指揮官様の最初の艦船だからって言われてたから泣く泣く諦めたのに〜。
誰でもいいなら、なんで大鳳を選ばなかったんですの〜?
なんで、大鳳を選ばなかったんですの?」
やばいこれは凄くやばい。この状況もだが、彼女の童顔な顔つきが少し険しく、甘く幼い声が低いそれに変わる。掴まれた手に入る力がかなり強くなるのも緊急事態を文字通り肌で知らせる、それどころか肉と骨で告げるサインだ。大鳳は初めて会った時から俺に執着してる節がある。
この火照り、そしてこのときめき……やっと会えましたわ、指揮官様! 大鳳、不束者ですが、よろしくお願いします
そう嬉しそうに笑いながら抱きつこうとしつつ放れたこの言葉こそが彼女が着任して直ぐの第一声だ。何も言えずに呆然としていたら抱きつかれたてしまい、直ぐにシリアスが離してくれた。でも、今は彼女がいない。
……いや、いなくてもなんとかする。シリアスにこれ以上心配事を増やしたくない。彼女は彼女で、出来ない事を出来るように努力している。誇らしきご主人様として、何事もなくやり遂げる。
大きく息を吸う。花のような安らぎを感じるいい匂いが彼女の長い黒髪からした。大鳳のおかげで大鳳にされている事態に対して、大鳳が落ち着きをなくし機嫌を悪くしている事に対して、少しだけ落ち着きと事態に直面する勇気をくれた。
「大鳳」
「指揮官様の隣は大鳳で十分。
大鳳だけの特別な席。
他の誰かが座ることも、触れることすら許さない。
潰したいのに、優しい優しい大鳳の指揮官様が少し許してるからって調子に乗って大鳳の席をうろちょろする害虫……
どうして指揮官様は止めないのですか?
指揮官様がこのまま大鳳に意地悪をするならぁ〜
全部ぜ〜んぶ大鳳が壊しちゃいますよ〜
大鳳と指揮官様の間にあるもの全部
大鳳が壊しちゃいますよ」
「大鳳!」
「指揮官様の純潔も、身体も、その血1滴すら大鳳の物なのに……
大鳳から指揮官様を遠ざけるようなもの、邪魔だと思いませんか〜?
邪魔ですよね??
指揮官様、大鳳に邪魔な害虫駆除を早く命じて下さいませ」
「……大鳳!!」
自分の世界に入りこむ彼女を何とかこの世界に引き戻せたのだろう。その口が止まって暗い瞳が俺を真っ直ぐ捉えている。
「……大鳳の気持ちは嬉しいよ。でも、シリアスもベルファストも他の皆も頑張ってる。
皆仲間なんだから、壊すとか駆除とか……辞めようよ。そういうのは嫌いかな」
「指揮官様が大鳳の事が嫌い?
嘘ですよね……??」
「大鳳の事じゃないよ、そういう風に言うのが嫌なだけ。大鳳の事は好きだよ」
「……大鳳の事好きですかぁ?」
「好きだよ」
「……ふふ
…………ふふふ……
ふふふふふふっ」
冷や汗が1つ首筋に垂れるのを感じた。その不快感がなくなると一泊置いて来た笑い声に吊られて俺も笑う。
やっぱり助けてシリアス。そう思いながら口元だけ精一杯の笑みを浮かべる。目の前と未来に来そうな恐怖にも吊られて。
「そうですかぁ、指揮官様は大鳳の事がだ〜〜い好きで、ついつい意地悪をしてるんですねぇ〜
そうですか〜……
大丈夫ですよ〜大鳳は指揮官様の事を何でもな〜んでも知ってるんですから〜
ついつい好きな子をイジメたくなるんですよねぇ〜
ふふふっ年頃の指揮官様の意地悪」
満面の笑みを見て大きく息を吐いた。突っ込んだ言葉はどうやら正解の穴だったようだ。深い闇ではなく何時もの明るい笑顔で少しだけ安心した。
口元を隠すように手を運ぶのを見て、ようやく俺の手が開放された事を知った。鈍くくる痛みがまだあったから離された感覚がなかった。もっとも、まだ自由になった感覚もないのだが。
「だ け ど」
今度はその手を俺の首横に置くと自らの身体を俺に重ねる。着物から開放感を感じる胸部が俺の胸の上に思いっきり重なる。悩ましく形ずれて少し溢れてたそれを見て、感じて何かを思う余裕はない。そんなものよりも再び俺の横に来た顔に意識を全て持っていかれたから。
一瞬前まで嬉しそうに笑っていたとは到底思えない真顔が目前にくる。思わず息を飲み込んで黙り込む。
「あんまりおいたがすぎると、大鳳は誑かしてくる他の子に怒ってお仕置きに行きますからね指揮官様」
その言葉を伝え終わると、満足したのだろう。再び嬉しそうに笑いながらに机の傍に立ち書類の整理を始めた。
…………
彼女の場合は俺やシリアスの努力でどうにか出来る問題なのだろうか。
…………
いや、久々に会えて今まで寂しかった鬱憤が爆発した。そうだ、そうに決まっている。そう思うことにしよう。定期的に会って話してすればもう少し落ち着きを……
そこまで誤魔化す言葉を並べて先日話題に上がった他の艦船の顔が思い浮かぶ。彼女もまた、大鳳のような存在だ。
…………頑張ろう。
皆頑張ってるんだ。皆ともっと接していけば、きっとこんな風に感情を爆発させないはず……だろう。爆発する前に抑えれる……はず。
自分自身に言い聞かせながら立ち上がり、俺を突き放した時の衝撃でか、倒れ込んでいた椅子を見る。俺もあんな封に何も出来ずに横たわっていたのか。溢れ出る情けなさを溜息で逃しながら椅子を直す。
「さぁ指揮官様〜大鳳と一緒にお仕事を終わらせましょう〜」
これ以上何かを言う気力はない。大人しく椅子に腰掛けて書類の選別を再開した。
どうしてこうなったのだろう。
日が落ち始めた頃に大鳳と共に訪ねた木を主とした大きな建物。和を強調した寮に予定より早めに来れたのはよかった。それだけ大鳳が頑張ってくれたんだ。やっぱり秘書艦の存在はでかい。そう感じさせてくれた。感謝の言葉を伝えると満面の笑みで返してくれたのは彼女が持つ本来の優しい面を感じ取れた。普段は過激な発言はあるが、話せばしっかりとわかってくれる良い子。今日もあの後は俺の言う事をしっかり聞いて手伝ってくれたぐらいなんだ。本当は良い子なんだ。
そこまではよかった。
……どうしてこうなったんだろう。
目の前にいる
黒い長髪をした彼女と白い短髪の彼女。
黒いインナーと白いインナー。
黒い尻尾と白い尻尾。
黒い獣耳と白い獣耳。
その人間ではありえない耳と尻尾をふるふると小刻みに震わせながら俺の腕に両手を絡めながら挑発めいた事を言う大鳳。その姿でそらに怒声が飛び交う事になる。
あぁ、本当に
どうしてこうなったんだろう。今日だけで何度目になるかわからない溜息をついた。