灯火の星 〜The One Story of Ours〜 作:蘭沙
前回大ポカやらかしたので早期投稿です。
何やらかしたかは聞かないでください。
感想欄辿ればわかるけど。
九十七話 こんじょうとばかぢからくらべ
狂気の温床を滅しても、終わらない。
まだダーズは残っている。逃亡したキーラと護衛の数が同じなら、眼前に示された三つの道が護衛の数と同じなら、あと一回。その護衛を倒せばダーズへの道が開く筈だ。
交通道路の表面を剥がしただけの道を進み、立ちはだかるスピリットを倒して進む。途中から道路を支柱が支え、辺りには崩れたビルが建っていた。荒廃した都市部のようだ。
そこを更に進むにつれて大木が侵食し続け、火山地帯が、更に先には巨大な水晶のようなものが見える。
「ピチュ」
しかし彼、ピチューが行きたいのは違う場所。所々別れ道になっているここにはそれなりにスピリットがいる。自身の興味からか、小さい体を活かしての探索を先行して行なっていたのだが。
ああ、戦いたい。
あそこにいたファイター。自分にとっては憧れの一匹。こんな状況だけど、たまには真剣勝負で横槍は一切無し。そんなルールで戦いたい。
「ピー…」
周りを見渡す。戦いたいとアピールしたいが、近くに自分が戦いたいということを伝えられる人、わかってくれる人はいるだろうか。
『腕は落ちていないか…』
「ふん、クズゴミが! オレさまの相手にはならないぜ!」
あれは解放されたばかりのミュウツーとキングクルール。どこかのスピリットを倒した後だろうか。ミュウツーはテレパシーで自分の意思が伝わるが、別に近寄りがたいところである必要はないので他をあたることにした。
「あわわわわ… あの子もいるし… バレちゃうかもじゃん…」
友達のインクリングは何か取り乱しているらしい。彼女の視線の先にはスピリットがいるが、知り合いなのだろうか。取り込み中のようなので後にしておこう。
「大丈夫? 遅くなっちゃってごめん…」
『いえ、マルス様がきっと助けてくださると信じていました! どうかお気になさらないで』
ピチューが戦いたい相手の方を見ると、毒の沼の手前でマルスがスピリットの女性に話しかけていた。
その女性はタリスの王女でマルスの婚約者シーダ。王族同士の婚姻とはいえ、二人の仲は超良好だ。インクリングが見ていれば草葉の陰で盗み見守っているところだが、ピチューはその辺りは微塵も興味無し。だからこそ二人の元へ平気で寄れるのだ。
「ピチュゥ!」
「ピチュー? どうしたの?」
しかし二人とも温厚な性格なので、その程度のこと気にしない。平然とピチューを受け入れた。
「ピチュチュ! ピーチュッ!」
「…! 先にいる子を頼めるかい?」
「ピチュチュ!」
『あ、あの!』
任せとけ、と言わんばかりに胸を張るピチューをシーダが止めた。
『どうしても戦わなくてはならないのですか…?』
「ピチュ、」
「ごめん、君には受け入れ難いと思うけど…」
『マルス様の責任ではないでしょう、私だって理解はできてますから』
その志はマルスのそれと似ていた。
成る程、番になる訳だ。根っからの野生であるピチューはその辺の考え方が妙に生々しかった。
しかし、色気より闘気。
誰が好きか? 大乱闘。
だから戦うのだった。それ以上の理由はない。
戦う場所はミュウツーの時と同じく、『テンガンざん やりのはしら』の『終点』化。
ピチューはルカリオ以上に遺跡に興味がない。ここは雰囲気にすら静謐さを感じられるが、そんなところピチューはご勘弁だ。ピチューが望むのは戦い甲斐のある障害物の多いフィールドか、歓声の響き渡る派手で熱気溢れる闘技場。
「ピチュピーチュ!」
『…ウゥ』
高らかに宣誓布告を掲げた。
ガオガエンはピチューと気の合うポケモン。ヒールポケモンという分類のガオガエンは根っからの悪役レスラー。卑怯でも使えるものは使って戦う姿勢はピチューが気にいるものだった。
趣向も似通っていて、仲が良い。はじめに子供のように思われて乱闘に気が入らなかった時には癇に障ってボコボコにしてやった。
それからは手を抜いてないので水に流した。
今だって本気で戦ってくれているのだ。操られているとはいえ、その事実があればいい。
「ピッチュ!」
『…!』
『こうそくいどう』でガオガエンの裏へ回り込み、ダッシュでずつきをくらわせた。掴まれぬように電撃を纏いながら。
だが、それはお互い様だ。ガオガエンもまた炎を纏って『リベンジ』だ。するどいめでいかくするその姿は人を怯えさせる。
それでもピチューは動じない。二匹のレベルは高水準で同程度。小さな体にきもったま。今更怯えるものか。
「ピチュチュチュ!」
地面から走る『でんげき』。数に任せた攻撃がガオガエンへあたる。カウンターが来ると知っているからだ。
『…ッ!!』
「ピチュ!?」
でも気にしない。シールドで守るでも回避でもなく、まるで何でもないように耐えている。その姿に冷静さを失い、飛びかかって『でんげきドリル』を繰り出した。
「ピッ…!」
パチンと頬を覆うように両手の感触が生まれる。掴まれたと思った時にはもう遅い。回転させられ遠心力でぶん投げられた。『タイガースイング』はピチューの軽さもあってか大きく投げ飛ばされる。
自身のスペックの高さを見せつけ、おいうちふいうちだましうち。何でもするのが彼の戦闘スタイルだ。
「ピィ…! チュウ!!」
体が回りながら飛んでいく。しかし、それより重要なのは追撃に来るだろうという事実だ。出鱈目に電撃を放ち、近寄らせないようにする。ピチューは確認できていないが、電撃に当たってはいるのだ。
しかし、そこはモンスターレスラーといったところか。電撃による不回避な攻撃相手にも耐えて格を見せつけようとするのは十八番とも言うべきか。お構いなしと言わんばかりにピチューを叩き落とそうと飛び上がった。
「ピチュ…!」
『…!?』
叩き落とされたらリタイアになる。
反射的に身を翻し、ガオガエンを下にしてしがみついた。
「ピチュウゥゥゥ!!」
『…ッ!!』
その状況を数瞬遅れて理解すると、大きく声を張り上げて『かみなり』を呼んだ。
雷霆の稲光が質量を持ったように、ガオガエンに重量を与えた。空間が揺れるほどの一撃でピチューはガオガエンを足場に大地へ跳び乗った。
「ピチュ…」
体を起こしたピチューは大きく息を吐いた。体の小ささを活かして攻撃は食らっていないが、自身の電撃の反動は大きかったのだ。
そうやって気の緩んでいたピチューを何者かが掴んだ。
「ピチュ…!?」
『─ッ!』
崖に掴まっていたガオガエンがピチューを片手で掴んだのだ。小さな体をキリキリとにぎりつぶす。電撃を放つも想定していたガオガエンはそれで手を離すことはない。
掴んだ手は大きく挙げられる。思いっきり突き落とそうとの判断だ。ピチューは身のある抵抗もできず、振り落とされ─
「チュゥ…!」
なかった。短い足の爪でガオガエンの毛を掴み、尻尾は指にまきつく。ギリギリのところでピチューは投げ落とされていなかった。振り落とそうとするも、ピチューは離れない。
「ピヂュウッーーーー!!」
『…ッ!!』
今度こそ全力全開の電撃だ。電撃以外に良い戦法のないピチューは電撃を放つしかない。電撃がくると予想できるガオガエンは初撃で手を離すことはない。つまり持久戦だ。
「ヂュッーーー!!」
振り回された反動で、両手も赤い腕に届きしがみつき、持てる限りの電撃を放つピチュー。
『───ッ!!!』
フィールドに使っていた地形にピチューをぶつけて落とそうとするガオガエン。
「ヂューー…!!!」
こんじょうとばかぢからくらべの、
『──…ッ!!』
その結末は。
『…ッ…!』
崖から赤い手が離れた。体力の限界で落ちていく体を伝い、こねずみポケモンは足を踏み外しながらもなんとか大地に上がったのだ。
「ピチュ!」
「ガウ…」
ガオガエンの意識が戻った時、真っ先に目にしたのはボロボロのピチューだった。本人が気にしていないとはいえ、自分の預かり知らぬ所で自分がここまでさせてしまったことに罪悪感を感じる。
「ピチュ、ピッチュ!」
気にしていないと、とびはねてアピールする。ガオガエンは納得しきれていないようだが、非常事態であることは理解していた。複雑な表情で立ち上がる。拳を差し出したピチューに対して難しい顔がようやく崩れ、拳を合わせた時、遠くから大きな声がした。
「ちょっと待ったぁ!」
「ピ…?」
どこかで聞き覚えがある声だ。どこだろうか。それを確かめるように飛び出し、ガオガエンもそれを追った。
ルキナ「ルフレさん、ルフレさん、もしかしてあの方は…」
ルフレ「マルスのお嫁さんかな。ということは」
ルキナ「私達のご先祖様…!」
ソード「そーとも限らないんじゃない?」
ルキナ「っ!? どうしてそんなことを言うんですか…!」
ソード「だってイフ、ウワキしたら…」
ルキナ「とおっ!」
ソード「ングベッ!?
ルフレ「顔面ストレート…」
ルフレ「次回、『憧れたんだ』。」
ソード「いやいや、オレが言ってるのは確率のプロブレムで…」
ルキナ「せぇい!」
ソード「ングドバッ!?」
ルフレ「鳩尾にクリーンヒット…」