灯火の星 〜The One Story of Ours〜   作:蘭沙

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この章の主軸になる子が登場です。
ポケモンスナップ超楽しい一生遊べるってこれ前回も言ったなようなそうでもないような


百二話 規格外だっただけだ

リンクは戦慄する。冷や汗が滝のように止まらない。腰を抜かした老人の如く座り込む姿が、戦士として無様で見苦しいにも関わらずそんなことを考える余裕もない。一緒に戦っている筈の二人を勘定に入れる暇もない。

剣技の腕の差ではない。見た目は自分より遥かに若いのに自分よりも明らかに戦い慣れている。

何が起きてる? 目の前の人間は本当に人間なのか?

 

剣の質は明らかにこちらに分があるのに、それでもなお自分を圧倒する彼はなんだ。

絢爛さと動き易さを併せ持つローブドレスを着た姫が自分にかけていた声がようやく届いた頃には短い刃が振り下ろされていた─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえり。どうだった?」

 

「かんっぜんに戦力過多だった。あいつ一体しかないとか聞いてない。」

 

「そういえばゼルダは角の隅の方にいましたね…」

 

「あっ! 同じ場所だったのか!?」

 

 

ルフレとルキナが池から上がってきた仲間を出迎える。ゼルダがいたのは三角の左下の方だった。だったら同等扱いの勇気は右下の隅にいるのが道理だ。

 

 

「他のみんなはどうしてる?」

 

「中央にあった山に登ってる。そこにもスピリットはいるし、頂上なら不思議な力で見えない北の方も見えるかもしれない。」

 

 

移動しながら他のみんながどうしているのか気になったシークが聞いた。先に捜索の範囲を広げていくとルフレに伝えたのはマルスとフォックスだった。

 

 

「さて、こどもリンクがいるんだっけか。どう戦うつもり? 彼は強いよ。普段は手を抜いてるようだけど」

 

「え? そうなのですか!? 全然気づきませんでした…」

 

「ルフレもこどもリンクの本気を見たことあるの?」

 

「そういう訳じゃないかな」

 

 

人の能力をステータスのように数字でわかるルフレにはお見通しだった。トゥーンリンクはこどもリンクの実力をどこかで見たことがあるらしい。

 

 

「でもあれは敵を舐めているというよりは興味がないというべきかな… 敵自身も勝敗もどうでもいいって思っているような…」

 

「ん〜、兎も角油断は禁物ってヤツだな! よし、決めた! ゼルダ姫、俺も一緒に戦う!」

 

「えっ? 本当? 助かるわ、ありがとう!」

 

「キミも行くのは心配だな… ボクもついてこう」

 

「ちょっ、どういうことだよソレ!」

 

「へえ… 手ェ抜いてたのか気になるなあ」

 

「まあまあ、ここはトリニティで任せようよ」

 

 

戦う相手は決まる。ちょうどそのファイター、こどもリンクの元へ辿り着く。三人でそれに触れるが、これでも戦力が足りなかったのだと間もなく知ることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして冒頭に至る。

空の開けた『神殿』の『終点』。ここにいたのは予想通りこどもリンクだった。覚悟の上だとはいえ、小さな子供相手に数で攻めるのは少し気が引ける。そう思えたのは一瞬だった。

 

数を増やして撃った『仕込み針』は数瞬のうちに全て斬り落とされ、『フロルの風』で姿を消しつつ奇襲を行なったゼルダは盾でガードされた挙句蹴飛ばされた。

それを見て即座にリンクは斬りかかるものの、木の皮ごと剥ぎ取ったような盾で流され柄で柔らかい脇腹をぶん殴る。怯んだ隙に背後へと回り込まれて背中を斬り刻まれた。

 

 

「(なんだこれ…)」

 

 

リンクが感じたのは恐怖だけではない。

 

 

「(なんなんだこれ…!?)」

 

 

深淵、のようなもの。ダーズの支配下にあるという理由だけでは納得できない程の深さ。十にも満たない子供がどうやってこれを育ててきたのだろう?

 

座り込む形となって下手人を見上げる。確かに勇者の証たる勇気は左手の甲に光っているのにそんなこと考える余裕はない。意識を少しでも逸らしたらそれだけで決着がついてしまいそうだ。決して彼らは油断していない。彼らが警戒する以上に相手が規格外だっただけだ。

 

 

「っ! 立って!」

 

「ああ…!?」

 

 

振り下ろされるコキリの剣を叱咤されたシークが小刀で受け止める。それに従って立ちあがろうとするリンクがようやくそれに気づいた。

いつの間にやら足元に設置してあった『爆弾』。こどもリンクがバックステップで退避する中リンクとシークは二人まとめて吹き飛ばされた。

 

 

「ダメだわ…! 近づいたら負ける!」

 

 

二人の援護に向かわなければならない。しかし、背中に這い寄る恐怖がゼルダの思考を後ろ向きにする。『ファントムアタック』で遠距離から狙うことを選ぶが、

 

 

『…!!』

 

「い…!? いち、げき…!?」

 

 

大きく振りかぶっての一撃で幻影は崩れ落ちた。幼い体躯もあってか力は決して覆せない差があるわけではない。力の使い方が上手いのだ。そして技と速さ。レベルが違う。ルフレが漏らしていた、手を抜いていたというのは事実だったのだ。ファントムをも両断する剣士相手にどうすればいいのか。こちらへ迫ってくる。

 

 

「やめろッ!」

 

『…ッ!!』

 

「ゼルダ姫さぁ…! 友達になりたいんじゃなかったのかよ…!? ここで折れていいのかよ!」

 

「…!」

 

 

横から入ってきたリンクの一太刀をこどもリンクが抑える。鍔迫り合いはリンク優勢だ。こどもリンクの力が見た目にそぐわないと言っても、体躯の勝るリンクを上回るほどではない。リンク自身も腕力は鍛えているからだ。

 

パキンと距離をとって双方相手へ剣を向ける。勝てるのが単純な力だけなんて認めない。

それこそ記憶がない時から守る為に磨いてきた刃なのだから。

 

 

剣先を横に振るう。服に掠れる程度に最小限の動きで回避したこどもリンクは連続で突き攻撃を繰り出す。首を傾け体を捻らせ盾を前に構えて防ぎきる。

 

 

「(深追いしてこない… そう簡単に隙を見せないよな…)」

 

 

突きと言っても身を引いたリンクへ押し込んだりはしていない。かわされたらすぐに次の技にいくのだ。ならばと今度はこちらが突きを繰り出す。リーチが違う攻撃は避けきれないと判断したか、盾で守られた。

 

 

「チャンス!」

 

『…!』

 

 

剣を突き刺した盾を封じ、右足で回し蹴りを放った。個人的な勝ちより全体の勝利を狙った攻撃だったが─

 

 

「!?」

 

「あの技…!」

 

 

回転する足の下を転がって通り、後ろへ回られた。そして背中を斬られた。リンクには何が起きたのかわからない。だが、他の二人にはどのような攻撃なのか見えた。

 

 

「折れない… ええ、わかったわ! やってみせましょう!」

 

「ちょ…!? 俺ごといく!?」

 

 

 

『ディンの炎』を技終わりのこどもリンクに当てる。近くに居たリンク諸共だ。だがようやくまともに攻撃が通った。

 

 

「(ゼルダ様とは別ベクトルでアグレッシブだな…)いや、やっぱ気にすんな! 俺ごといけェー! シークもな!」

 

「…! それは…!」

 

 

咎めようとする言葉をシークは飲み込んだ。良心が痛むが、まともにやっても埋められない差があるのだ。

防御を捨てて盾を背にしまうと、こどもリンクへ組みついた。初手のように数を重視して撃った『仕込み針』はリンクの肩にも突き刺さるがそれ以上にこどもリンクに刺さった。

 

 

『…ッ!』

 

「いっ… この!」

 

 

脇腹の脆いところへ肘打ちされるが、気合で耐える。攻撃は二人に任せ、押さえつけるのに専念する構えだ。

 

 

「このまま押さえつけてて!」

 

 

ゼルダが駆け出す。足に稲妻が走り、速度も上げていく。

 

 

「はあ!」

 

 

こどもリンクへ跳び蹴りを放った。リンクがいるというのに一切の躊躇もない。完全に仕留める気のゼルダにリンクは早くも先の発言を後悔し始めた。

 

 

『…!!』

 

「ちょ… 外して…!?」

 

 

青褪めているリンクを正気に戻したのはボキッという音だった。こどもリンクの右腕がスルリと抜けていく。肩の骨を外して拘束を解いたのだ。そう理解できたのは一瞬だった。

 

 

「どわっ!?」

 

「嘘ッ」

 

 

まだ動く左手を使って巴投げをしたのだ。無防備なままポーンと投げられたリンクの背中に、やめられない止まらないイナズマキックが突き刺さった。リンクには致命傷である。

 

 

『…ッ』

 

 

後ろへと跳び上がって窮地を脱したこどもリンクだったが、最後の一人が立ちはだかった。

 

 

「悪いけど…! ここまでやってくれたらボクも応えない訳にはいかない…!」

 

『ッ!!!』

 

 

咄嗟に振るった剣はシークが体を張って止めた。短い腕に絡みつく。シークの自重が軽めでもこどもリンクの力が強くとも、この状態でなんでもないように得物は振るえない。ダメ押しで刃部分をシークが覆った。剣としての攻撃は無理だ。右手は肩を脱臼したままで使えない。

 

 

「はあああああああ!」

 

『…』

 

「(…! 力が抜け…?)」

 

 

リンクの意志を踏み台として高く高く舞い上がる姫。稲妻を帯びたままのキックがシークごとこどもリンクを撃ち抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ…」

 

「お疲れ様。辛勝ってところかな。」

 

「やっぱりこどもリンク強いでしょ!」

 

 

ルフレが彼らを労い、トゥーンリンクはまるで自分のことのように胸を張った。三体のフィギュアを前にゼルダは座り込んでしまった。

 

 

「でもゼルダ、これでこどもリンクを助けられましたよ!」

 

「そういえばまだ光ってる… ってリンクとシークを戻さなきゃ!」

 

 

左手を見続けたトゥーンリンクだったが、仲間外れは寂しかろうと慌てて二人を元に戻した。

 

 

「うー… ここはどこ?」

 

「ボクは乗らないからね」

 

「なんでェ!?」

 

 

そんなどうでもいい漫才が頭に入ってこないほどゼルダは落ち着きなく歩き回る。

 

 

「なんて声かけたらいいのかしら? 大丈夫? いや、助けたのは私よ? これはダメ!」

 

「なんだコイツうぜえ」

 

「ガンナ、シッ!」

 

 

恥じらいか戸惑いかなかなか手が進まないゼルダに対して短気なガンナが待てる筈もなく。

 

 

「おっせえわ」

 

「待ってまだ心の準備が!」

 

 

傍から台座に触れて元へ戻すことにした。静止は完全に間に合わず、幼い勇者は鼓動を取り戻した。左手の光は収まっていく。

ビクッと跳ね上がり、何を話していいかわからなくなる。

 

 

「えと、あの、その」

 

「………何?」

 

 

こどもリンクは怪訝な目でゼルダを見ている。目が覚めたら目の前でまごついているのだから怪しむのは当然かもしれない。見かねてルキナが助け船を出した。

 

 

「ゼルダがあなたを助けてくれたんです。」

 

「えっ、ちょっと待って」

 

「リンク、シッ」

 

「………そう。」

 

 

それを聞いてもこどもリンクはそれまでの対応を崩さない。

 

 

「あの、こどもリンク」

 

「これどういう状況なの?」

 

「…ゼルダに何か言うことあるんじゃないの?」

 

「………」

 

 

こどもリンクの、言葉を意図的に遮る態度にシークが苦言を述べる。だが、こどもリンクはゼルダの方を見ずに言った。

 

 

「これはこれはお姫サマ。随分とご苦労なことで」

 

「なっ…!」

 

 

慇懃無礼。流石にこの態度はない。思わずシークが立ち上がるがこどもリンクは気にすることもなくただ状況を聞いている。

 

 

「………」

 

 

唖然とするファイター一行の後ろでゼルダは少し俯いていた。

 




ゼルダ「どうしてあなたはこどもリンクという名前なのかしら?」

こどもリンク「はあ? そういうファイター名だし…」

ゼルダ「けれども、まるで悪口のようで…」

こどもリンク「………」

ガンナ「不満あんなら私が考えてやるぞ。んーと… ガキリンク!」

こどもリンク「こどもリンクでいい!」


こどもリンク「次回、『手を伸ばす為の戦い』」


こどもリンク「あんたは知らないだろうけど、ぼくがそう呼べって言ったの!」

ゼルダ「何故…」

こどもリンク「ちっ……………」
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