灯火の星 〜The One Story of Ours〜 作:蘭沙
ゼル伝関係の箸休め回。第一回目の内容はタイトルでわかりますよね?
後五月終わりから虚無感がすごい…
俺のユニオンクロス… 終わっちゃった…
自分の分身であるようなアバターキャラクターにあそこまで感情移入したのは初めてでした。プレイヤーくんちゃん、救われろ!
ルフレはルキナの手が震えているのを見逃さなかった。これから戦おうとしているのは父だ。彼女はギムレーの復活を阻止し、クロムの命を救うために過去へ飛んできたのだ。それほどに大切な存在と、戦おうとしている。
「ルキナ、辛いなら僕一人でも…」
「…いえ、私は大丈夫です。戦えます…」
強がりだ。ダーズによって支配されているという前提を知らなかったら彼女は立つことすら出来なかっただろう。
「わかった… でも無理はしないで」
そう言うので精一杯だった。ルフレが無理やり止めなかったのは、自分が他でもないルキナに解放してもらったという負い目があったからだ。今のルキナがどれだけ戦えるかはわからない。その分自分がやらなくては。
「ルフレも無理してない? 別にボク達に任せてもいいんだよ?」
「大丈夫。僕がクロムを一番知ってる。地の利は取られてるんだ。その他の利は逃せない… というか、どうして君達もついてきてるんだい?」
石像からクロムのものと思わしきヒントを聞いたルフレとルキナはすぐさま森に引き返した。そこにあった宝箱は隠し通路があり、そこを通ってようやく彼の元へ辿り着いたのだ。
そして、二人に何故かリンク、トゥーンリンク、こどもリンクが着いてきたのだ。
「あのお姫サマとばったり出くわすのが嫌だった」
「ボクはこどもリンクについてきた!」
「右に同じく!」
「そ、そうなんだ…」
緑、緑、水色の勇者達が理由を述べる。重要な戦いの前だというのに気が抜ける。
気持ちを切り替えるために大きく深呼吸をする。そしてルキナの方を見た。
「ルキナ、準備はいい?」
「…はい、いつでも。」
震える手を握る。少しでも気を楽にさせるため。悪いが、クロムはルキナの親であると同時に自分の半身で相棒なのだ。助けたいという強い想いはルキナにも負けるつもりはない。
「なあ、少し聞いていいか?」
「何?」
二人の姿が消え、少し静寂が続いた後。リンクが口を開いた。
「どうして… あんなゼルダ姫に厳しく当たるんだ?」
「…差し金かよ。」
「バレテーラ!?」
シークに大見栄張ってきたのがバレていた。慌てるリンクに偶然か否か、助け舟を出すことになったのはトゥーンリンクだった。
「でも、ボクや他のみんなも気になってると思うよ。すっごく露骨だし。だから教えて!」
「まったく… でもあんたらならいいか… ちょっと違う部分はあるけど時の勇者の話がちゃんと伝わってるトゥーンとまだよくわからないリンクなら。」
「わからないって…」
がっかりしているリンクを無視して話をしようと口を開く。トゥーンは興味深々だ。
「ぼくは… あの女を… あの女だけは認めるわけにはいかないんだ。」
ルキナは一度、父クロムと戦ったことがある。まだマルスを名乗っていた時。フィリアの王を決める一戦。元の歴史では仲間となる男剣士と父が戦うところを先回りして代表を勝ち取ったのだ。
でも、それとは違う。
何も知らないクロムを試すようなものでもなく、剣術を学ぶ為の稽古でもない。
命の危険はないけれど──代わりに思いやりもない。そんな冷たい大乱闘だった。
振り切った剣を受け、力を流しきれず後ろへ下げられる。一度戦った時と同じ『闘技場』のなんの起伏もない『終点』化。地面が土ならもう少し粘れたか。
下がったルキナに剣を刺すため、伸ばした腕に『ギガサンダー』が走る。
「しっかり!」
「…っ、はい!」
再び構える。
目の前のクロムは、たかが一度雷の魔法で焼かれたところで止まるような存在ではない。
今度は攻撃をしてきたルフレに対して剣を向けてきた。両手を柄に添えての振り下ろしに青銅の剣で体の横へ流した。
「だめっ… 駄目ですお父様!」
『…!』
あの時、ルキナが元いた未来で、自意識がないままに父を殺してしまったルフレのことを思えば、クロムにルフレを相手にさせるなんて出来なかった。
ほとんど無意識のままに振った剣がクロムの右腕を斬りつけた。その隙を逃さずルフレが隙だらけのクロムの前方に『ギガファイアー』を撃ち込む。
『…っ!』
「ぁ…っ!」
「くっ…」
焼かれる感触が反射的に剣を動かした。近場にいた二人を巻き込み合わせて斬り飛ばした。
ルフレは勢いを殺して着地したが、後のことを考えず攻撃したルキナは転がり倒れた。
「うぅ…」
「………」
起き上がれないルキナを見て、遂にルフレはポツリと言葉を零した。ルキナとクロムの間に立つ。
「下がって、ルキナ。ここからは僕が一人で戦う。」
「…! そんな…! お父様にルフレさんを攻撃させる訳には…」
「それを言うなら、クロムに君を攻撃させる訳にはいかない」
「…っ!」
ルフレが抱いていたのは、ルキナが否定した可能性と同質のもの。だからこそ何も言い返せなかった。
「君はずっとクロムの背中を追っていたんだろうけど、僕はずっとクロムの隣にいたんだ」
『……』
「さっきも言ったけど、僕がクロムのことを一番知ってる。だから負けない。」
青銅の剣を持ち替えてサンダーソードを半身に向ける。バチバチと漏れる魔力が電撃となって腕まで届くが、不思議と痛みはなかった。
駆け出し、距離を詰めてくるクロムを『エルウィンド』で牽制する。一直線に飛ぶ風の刃はひらりとかわすクロムを捉えることはできなかった。
「あぁっ!」
迫る封剣はルフレの首元へに吸い込まれる─ことはなかった。サンダーソードで受け止めたルフレは頭上を通るように受け流した。鳩尾への拳も魔導書が受け止める。
「はあ!」
『…ッ!?』
受け流しに使ったサンダーソードをクロムの胸元へ叩き込む。雷の魔力はルキナの方までその風圧が届くほどに練り上げられたものだった。
「すごい…」
長い青髪を揺らしながら、ルキナはポツリとつぶやく。サンダーソードでもそうそうイーリスの至宝には敵うまい。相手が他でもないクロムならばその数はさらに限られたものになる。
更に言えば、単純な力はクロムに劣るだろう。魔力では勝るとはいえ、魔力はぶつけられなければ意味がない。
「(いえ… 考えてみれば… 言うほどおかしくはない…)」
彼らは真の絆で結ばれた友だ。二人で一人… 半身なのだ。同じ戦場で共に戦っていた、共に稽古をしてきた、違う意見でぶつかった。
ダーズの支配がなんだ。積み上げられた過去は、思い出は、そんなもので隔てられるものではない!
「…っ」
『─!』
『マーベラスコンビネーション』が細かな傷をつける。炎の魔法を応用して起こした小さな爆発で剣筋を逸らし、ダメージを最小限にしていたのだ。とはいえ全ての攻撃に反応できたものではなかったが…
「そこだ…! 『エルサンダー』!」
『…ッ!』
少し距離を取ってルフレが放ったのは雷の上級魔法。 相手の顔スレスレに放たれた魔法は腰を沈めて剣を構えたことで彼方へ飛んでいく。
『─ッ!!』
「いけぇー!」
低い体勢から放ったファルシオンがルフレの腰辺りへと振り払われる中、サンダーソードもまた相手を捉えていた。
ルフレの気迫に押されて、爆発するような膨大な魔力が刃を駆け巡る。まるで雷そのものが落ちたかと錯覚するほどの。
『…ッ!?』
「っ…!!」
胴体を両断するような斬撃は瓜二つの横槍によって阻まれた。競ることもなく、サンダーソードのみが相手の体を撃ち抜いた…!
そっと視界が開く。日当たりの悪い場所とは理解したが、それでもしばらく光が届かなかった眼には随分と眩しく感じる。
目に映ったのは大切な二人だった。
「ル、フレ、ルキ、ナ」
「お父様…!」
口にした名前は思ったよりも滑らかにならなかった。情けない。
記憶は朧げであっても何があったかはわかる。自分は仲間に剣を向けたのだ。よりにもよってこの二人に─
「ふふふっ、こんなところで寝ると風邪をひくよ?」
「…!」
深い海の瞳が溢れてきそうなルキナとは対象的にルフレは柔らかく笑う。右手を差し出された。激しい後悔に溺れそうなクロムは一気に引き上げられたのだ。
「…ったく、行き倒れるのはおまえだけで十分だ。」
「失礼だよ、クロム」
差し出された右手を取る。
そこにはもう運命を導く破滅の痕はない。ようやく再会できた時からその理由を聞いたことはなかった。だって、聞くまでもない。ルフレが運命に抗った結果なのだから─
「お父様…!!」
とびついてきたルキナを、開いていた左手で優しく包んだクロムの顔も優しく笑った。
ルフレ「あれ、どこに行ったんだろう?」
クロム「他に誰かいたのか?」
ルキナ「スリーリンクです! リンクいたもん…」
ルフレ「ごめん、そのネタわかりづらいと思う」
クロム「次回、『ゲームオーバーだ、地味面』!」
クロム「となりのリンクか」
ルフレ「イーリス王族はそういうのが流行ってるの…?」