灯火の星 〜The One Story of Ours〜 作:蘭沙
KH3のリミカを続けております。
今ちょうど折り返しってところなんですけどアライズ発売までに間に合うかな…
クラウドをあまり知らない人は意外に思われるかもしれないが、彼は人見知り気味である。クールな印象ゆえに向こうから話しかけてくる人もなかなかいない。故にスマッシュブラザーズの中で彼が自分でどうしても助けたい、と思うほど親密な人はいなかった。いたとしても、そういう人には大抵もっと仲の良い友人がいるもの。声を上げることもせず譲っただろう。
ならば、どうしてクラウドはベヨネッタの相手に立候補したのか。
「(…スピリットとダーズとしか戦っていない。救われておきながらこの体たらくはまずい。もう少し活躍しないと…)」
助けられた負い目ではなく、どう思われているのかわからない、という人付き合いの無さからくる怯えだった。
仲間や友人とならばもっと砕けた対応ができるが、まだスマッシュブラザーズとはそこまで打ち解けていない様子。単純に皆には冷静な自分の印象が強いだろうという理由もある。
「それにしてもクラウドやるのね、ベヨネッタちゃんプライド高いから、私みたいなのが相手しちゃうと気にしちゃいますもの。あなたなら口が硬そうですし、ベヨネッタちゃんも少しは気も収まるかしら」
「…そんなつもりはなかった」
「あらそうなの?」
この状況下でるんるんと隣を歩くのはピーチだ。戦うスピリットがいればすぐに離れるだろうが未だに見つからない。というか、この空気をはやくなんとかしてほしい。恋人がいる女性と二人っきりとかどうしていいのかわからない。ピーチから一方的に話している時間がしばらく続く。
「ちょっとピーチー! 手伝って欲しいのだけどー!」
「あらデイジー。ということなので、私は抜けます。頑張ってください♪」
「…ああ。」
救世主。ちょうど囚われたファイターの前でピーチが呼び止められて離れていく。できればもっとはやく呼んで欲しかった。クラウドは図々しかった。
「………」
特に会話することもない。ただ戦闘準備だけ整える。バスターソードを背から抜き、左手で大乱闘へのチケットを手にした。
『終点』型の崩れた時計塔が落下していく。そんなところで戦うなんてと最初は思ったが、模造品ゆえに永遠に墜落することはない。落下していると思わされているだけだろう。高度に従って落ちていっているのは地形だけだ。
『アンブラの時計塔』だが、時計の円盤を周りの建築物ごと崩れてバトルフィールドになっている以上、初見で時計塔だと気づくのは難しい。辺りにはまるで魔物のような姿をした天使が飛び回っていた。
「はあ!」
『……』
見た目にそぐわぬ大剣の大振りがかわされ、ベヨネッタに側面へ回り込まれる。二丁の銃撃は防いだ。巨大な得物がこんなところで役に立った。流れるように体ごと横一直線に切り裂く。確かな手応えを感じたクラウドの目には、大きく映る銃口。
「…ッ!」
咄嗟に首を後ろへ逸らして回避した以上、反射的に回避を選択した以上、クラウドには続く攻撃に対処する方法がない。崩れた体勢に容赦なく体術を叩き込んだ。
「容赦なし、か!」
五度目のパンチで首を戻すと、大振りで相手を引かせた。目論見通りヒールの音が離れた場所から響いた。遠く離れた相手に『破晄撃』を撃つと、ベヨネッタの姿は無数の蝙蝠になって消える。その蝙蝠の群れがクラウドに向かってくることに嫌な予感がした。
「(このまま攻撃!!)」
『…!!』
クラウドの予感は当たる。元の姿に戻った時には既に『ヒールスライド』の狙いを定めていた。シールドで受け止めていたクラウドは、攻撃が止まると同時に『凶斬り』をくり出していた。吹き飛ばす時に銃撃をくらってなければ完璧だった。両手だけでなく、両足にもつけられた銃を完璧に防ぐのは無謀であった。
再び距離の離れた相手に接近していく。空中を滑るように移動し、半端な攻撃をかわしていく。しかし、牽制としては機能していた。クラウドは飛び上がって剣を振り回す。ひらりとかわして放った回し蹴りを腕で受け止める。そこから蹴りを放つが、上体を逸らして回避された。
「……ッ」
『…』
ベヨネッタはその自信あり気な言動に違わず強い。思わず睨みつけるも、返ってきたのは冷たい瞳。元より口で語るタイプではないので仕方がないだろうと動じることはなかった。
「はぁ!」
地面に着いたままの左足を軸にして体ごと剣を振り回した。回転する都合上峰での攻撃だが、重さがあるのでかなり手痛い。タダで帰すのは趣味ではない。きっちりツケは払ってもらわなければ。
『……─ッ!』
「…! ならば…!」
ベヨネッタが飛び上がっていったのを見ると、クラウドも遅れて飛び上がる。バスターソードを回し、構えながら。
右から左へと一線に振われた剣は手に持っていた二丁の銃によって弾かれる。見た目の頑丈さは圧倒的に上回っているのに、刃を真正面から受け止めた。
「(これは一度引いて… いや、手数を減らしては逆に攻め込まれる! 比較で劣っていても降りてはいけない!)」
想像以上の守備に驚いたクラウドは引くことも考えたが、強力な一撃をくらわせることに固執していては向こうの攻撃をくらうだけだと感じた。故に斬り続ける。
『……っ』
実際に当たった攻撃は僅かだが、相手側は攻めあぐねている。身の丈ほどの剣を扱うクラウドは体全体で剣を振り回している。そしてそれを自覚しているため、一ヶ所に留まらないのだ。大きく動いて、攻撃が終わったら違う場所にいる。それでも完全に予測できない訳ではなかった。
「ぐぅっ…!」
攻撃の終わりを狙って2、3発くらったクラウドは反射で動いた防御の構えのせいで地上へ落ちる。着地の時は動けない。クラウドの脳天を揺らすほどの踵落としが決まった。ふらつく敵に手加減する理由はなく。
空中から連続の拳にクラウドの意識は一気に戻ってくる。彼がシールドを貼ったことでベヨネッタは引いた。
「(…強い)」
孤高の強者。クラウドが受けたそんな印象はクラウドの理想そのものだった。そうやって嘘で固めて自分自身も騙していた。相手がそんな理想だった存在だと考えると、途端に負けられないと思えるようになってきた。今のクラウドに足りなかったのはそれだったのかもしれない。
「はああっ!!」
『──ッ!』
走りながら振るった剣と振り上げた足がぶつかり合う。ギリギリと拮抗しあう。あまりクラウドはいい顔ではない。そもそも支えの足りないキックが剣と拮抗している時点でおかしい。しかし、相手がクラウドの理想に近い存在ならば、いわば過去の自分と近い相手と戦っているようなもの。それならば、クラウドは限界を超え更に向こうへ行ける。
───『画竜点睛』。
「はああッ!!!」
『─ッ…!』
剣を振り回し、生まれた風がベヨネッタを吹き飛ばす。これは決定打。過去の自分と決別した時のような決定打だった。
「なるほどねぇ… 随分あいつらにはお世話になってたのね…!」
「…ああ。」
これは付き合いの浅いクラウドでもわかる。ベヨネッタは目が笑ってない。怒っている。誰だ、理想に近いとか思っていたのは。
「そういえば、あなたでラストなんじゃないの?」
「あら、そういえばそうなのね」
そしてお姫様二人。キレてる人に対してその談笑でも始めそうな態度はなんだ。とてもクラウドにはできない。
「そうね、私がラストってことはキーラとダーズの他にいるのはこのいけない神サマ達ね」
「…好きにしてくれ」
「あら、ありがとう」
まあいいか。どうせ誰かが戦うことになる。止める理由もなければ止められるとも思わなかった。そこでふと考える。
「マスターハンドの方はどうなっている?」
「そういえば…」
「どうなってるのかしら?」
対局にあるチャレンジャーの姿はここからでは見えない。だが、誰かが戦っているはず。もうすぐ、届く。
遂に欠けていた全員が揃ったスマッシュブラザーズ。後救うべき者は─支配人たる化身とその対となる化身だけだ。
ピーチ「────だから、」
ベヨネッタ「────ね。」
デイジー「───────よ!」
クラウド「(何か話している…? 揉めてるのか? それとも…)」
デイジー「だ、か、ら、急所はダメージが大きいけどこっちにもダメージがくるのよ、精神的に!」
クラウド「(急所? キーラとダーズのことか? だが、精神的?)」
ベヨネッタ「蹴ったとしたらダイレクトに感触が伝わるものね。」
ピーチ「でも、咄嗟にはそこ以外狙えないと思う。余裕があればなんとか… なのかしら?」
デイジー「それでも嫌よ、正当防衛でも男の急所を狙うなんて!」
クラウド「(っ!?)」
クラウド「じ、次回、『恐るるに足らずですよね』ボソボソ」
ベヨネッタ「まあ、私はそれほど気にしないけど、もしそれ以外がいいなら目がいいわね。」
ピーチ「脛はどうかしら?」
デイジー「蹴ったらこっちも痛いわよ」
クラウド「(聞かなかったことにしよう…)」