灯火の星 〜The One Story of Ours〜   作:蘭沙

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百二十二話 白に染め上げられた

 

七十二のファイター達。空中で戦い合うキーラとダーズ。さらにその上では奴らが生み出した偽者達に本物のマスターハンドとクレイジーハンドが既に戦いを始めている。対なる敵がスマッシュブラザーズを認識した。こちらに敵意を向けていることも。

 

これまでの戦いでも使用してきたファイターの偽物を呼び出す。しかし、その量、数えきれるほどではない。前までの戦いで呼び出した模造品の比ではない。

 

 

「…ッ、んだよこの数…!」

 

 

普段勝気なガンナすらも思わず身を竦める。キーラとダーズが生み出した複製はスマッシュブラザーズ全員分を軽く超えるほどの数だった。それらの相手をしながらさらに二つの化身まで倒さなければならない。

 

なよ竹のかぐや姫は求婚してきた男達に五つの難題を与えたという。この戦いはその難題よりも遥かに無謀な戦いだった。

 

 

「くっ… 空中戦が得意な者は積極的に本体を狙っていこう! その他はこの偽者の対処! 決して個人で戦うな!」

 

「わかった!」

 

 

状況を把握したルフレの近くにいたリュウが共闘状態に入る。剣を剣で受け止め、拳で受け流す。遠くに小さくしか仲間が見えない。誤射を気にして大規模な魔法は使えず、取り囲む敵を少しずつ相手にしていくしかなかった。

 

 

「ねえ! キーラとダーズ、どっちが狙いやすいと思う!?」

 

「どっちもどっちでしょ! 比べることに意味なんてない!」

 

「それ本末転倒だよ! せめて倒しやすい奴から…」

 

「むらびと忘れてない!? キーラとダーズ、"同時に"倒さなきゃいけないんだよ!?」

 

 

トゥーンリンクとむらびとは絶句する。珍しく声を荒げて必死に戦っているこどもリンクの言葉。キーラを滅ぼすには、ダーズを滅ぼすには。同時に。難易度が高すぎる。奴らにたどり着くことさえ、至難の業だというのに。

 

 

「このっ…!!」

 

「あっ、待ってください!」

 

 

やぶれかぶれで飛び出したシークはリュカの静止も間に合わない。ダーズの本体を蹴り飛ばそうとして、茨の触手に遮られて弾き飛ばされる。孤立したリュカの元にはロゼッタがなんとかたどり着いた。

 

 

「…いや、違う。こんな難しい話じゃない。」

 

「カムイ? どうした…?」

 

 

呟いた言葉を拾ったオリマーを四肢の下に隠す。竜化したカムイは翼を広げて複製達を吹き飛ばした。そのまま尾で光の軍勢を二人掴み、闇の軍勢の群れへと投げ飛ばした。

 

 

「キキー!?」

 

「うわあ!? こっちに押しつけないで… あれ?」

 

「ハッ、そういやそうなるよな」

 

 

闇の複製の刃が投げ飛ばされた敵を叩き斬る。ディディーコングとルイージは驚くが、その様子を見たリドリーが自分に呆れたように言い捨てた。

 

 

『そうか、キーラとダーズが敵対しているならば… 当然その配下も、本体も…』

 

 

ミュウツーの視線を追ってパックマンが同じようにそこを見る。そこには三つに本体が分裂したキーラが火炎弾をダーズに向けて発射している。その攻撃は闇の軍勢にも向けられているし、ダーズもガトリングのような砲撃でキーラを攻撃している。

 

敵の数や最終目的の難易度ですっかり頭から抜けていたが、キーラとダーズが敵対しているのならば、狙われるのはスマッシュブラザーズだけではない。一時期白夜王国も暗夜王国も敵に回し、ニ国の戦争に乱入したことだってあるカムイだからこそ、非常事態でもその本質を忘れなかった。

 

 

「それならば、もっとやりようはあるな!」

 

 

デデデが闇の複製らを『すいこむ』と、キーラに向けて星形弾を吐き出した。キーラの目の前で元の形を取り戻した複製は翼のような物体で撃ち抜かれ消えていった。

 

と、ここでキーラとダーズに動きがあったことに気づく者がいた、レッドだ。手持ちのポケモン三体に指示を出すために状況を広く見る彼だからこそ気づけたその変化。これは確か、前兆。

 

 

「爆弾の…!?」

 

 

しかし、確信できず大声を上げて注意することができなかった。キーラの十字爆弾とダーズのX字爆弾が自分の敵のみを焼き尽くす。

 

 

「きゃああ!?」

 

「ギャアアアァァァ! やりやがったな!?」

 

 

あちこちで悲鳴や叫び声の類が聞こえる。デイジーが足を焼かれる近くで、キングクルールが反撃に付近の敵を殴りかかる。見れば、随分と敵の数が減っていた。

 

 

「さっきの攻撃で複製の大半がやられたのか!」

 

「代償は大きいが…!」

 

 

光の複製はダーズの爆弾に、闇の複製はキーラの爆弾に巻き込まれて数を減らしていた。マルスは好機が生まれたと語るが、ガノンドロフはそこに至るまでの対価だって大きいことを知っている。マルスとてそれはわかるが、それでもようやく状況が動いた。それでも、減ったとしてもかなりの数の敵がいるが…

 

 

『なっさけねえーの』

 

「あなた… クレイジーハンド!」

 

 

パルテナの驚きに、クレイジーハンドは満足そうにケタケタと笑う。登場だけで三体ほどの複製を潰した。

 

 

『オレがパチモンたちも軽く相手してやればいいか? 雑魚雑魚戦士どもが』

 

「なんだお前! ワガハイ達を舐めおって!! いいだろう! キーラもダーズも倒せばいいんだろう!?」

 

「ガアアアア!」

 

 

クッパとガオガエンが一番に飛び出す。キーラとダーズの戦いに向かっていく。

 

 

「ああ! ウエイト! オレもゴー!!」

 

「奴らの元へ行ける奴から行くぞ!」

 

 

後を追ってソードが飛び出し、後続にはアイクが呼びかけた。

 

先に飛び出した二人。ガオガエンは足の遅さのせいでダーズの闇の柱に引っかかる。見た目に似合わずそこそこ俊敏なクッパはダーズを思いっきり爪で引っ掻く。攻撃をしていたダーズは防御に回れない。はじめてスマッシュブラザーズがまともなダメージを与えることができた。それが合図になったかのように、後続もどんどん乱入していく。

 

 

「プ! ププリ!」

 

「ピッチュッ!」

 

 

プリンの上にピチュー。キーラもダーズも超えた空中からピチューが『こうそくいどう』で落ちてくる。小さな体でキーラの防御を潜り抜け、『でんげきスクリュー』をお見舞いしてやった。続いてダーズも… というところで気づく。ダーズがいない。違う? 本体だけ?

 

 

「チ゛ュゥ!?」

 

 

ダーズの触手が異空間から現れて空中にいたピチューを呑み込む。

 

 

「プリ…!!」

 

 

更に上空にいたプリンも呑み込み、フィールドを蹂躙し続ける。キーラはダーズ目掛けて大量のレーザーで触手そのものを焼こうとするが、動きが鈍重なダーズ本体には当たっても、動き続ける触手はするりするりと隙間に入ってかわしていく。

 

 

「キーラまで…! うわああ!?」

 

「キャイン…!!」

 

「くっ… これでは…!」

 

 

キーラの動きに目を引かれてしまったロックマンもダーズに呑まれ、近くにいたダックハントも巻き込まれてしまう。メタナイトは舞い上がって回避しようとするも、キーラのレーザーに翼を焼かれ、落下地点のダーズに呑み込まれた。

 

 

「危ねえ!!」

 

『わっ!?』

 

 

足をレーザーに貫かれたソニックは、自分が狙われているのを感じて、近くのMr.ゲーム&ウォッチを押し出した。触手が周りを囲って逃げ場を失う。

 

 

「くそっ… 人気者は辛いぜ…!!」

 

 

タブーの力を大きく削いだからだろうか、一人に対して執拗に迫ってくる触手に空中へ打ち上げられた。おそらく自分もあの触手に呑まれて…

 

 

「そっちに攻撃が入んねえなら、本丸叩けェ!」

 

 

遠くからのファルコの声。本体の大きなダメージに触手はぷるりと震える。そしてたまらなくなったのか、異空間から本体の元へ戻っていった。呑まれていた五つのファイターは辺りに撒き散らかされる。

 

 

「無事ですか? ソニックも…」

 

「No problem… とは言い切れないなぁ…」

 

「くそ…! 被害は大きいか…!」

 

 

ロゼッタとクロムが駆けつける中、Mr.ゲーム&ウォッチは空気を読まず、他の人を立たせている。体を労わる気はない。立たせようとしているだけ成長したと言うべきか。

 

一方、キーラとダーズはそれぞれ槍とハンマーのような物を形作り、それぞれと戦っていた。

ダーズの一振りに震え、キーラの一突きを掠め…

 

 

「ウワーオ…! ボク達も混ざった方がいいのかな…?」

 

「命が惜しかったらやめろ、潰しあってくれるならそれに越したことはねえ。」

 

 

ヨッシーがそれに混ざろうとするのを止めたのはウルフだ。コイツが混ざって矛先がこちらへ向いたら面倒だ。更に言えば、

 

 

「あの攻撃… まともに受けたらたまったもんじゃねえ… 混ざるのは無鉄砲な奴だけだ」

 

 

生存本能か。アレに混ざれば命はない。そう直感した。フィギュア化のルールで、本当に死んだりはしないが、戦力を減らしにいってどうするのだ。

 

 

 

 

 

ただ─

それで完遂できる目標ならば難しいとは考えぬ。

 

何回かの死闘の末、ダーズの槌はキーラの核をクリティカルで潰した。

 

 

綺麗な球は潰れて楕円型になる。

ハンマーの面の真ん中に当たってその様子は見られなかった。

 

 

キーラが全てを焼き尽くす太陽のように光を溜め込んでいたことも、誰も確認出来なかった。

 

 

その光の衝撃波に、スマッシュブラザーズの視界は白に染め上げられた。

 





「負けられる…か…! 諦める…もんか…!!」

「この世界で会えたんだ! だから負けるはずないよ! ボク達はスマッシュブラザーズなんだから!」

「くぅらえぇぇぇ!!」


次回、『スマッシュブラザーズ』
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