灯火の星 〜The One Story of Ours〜   作:蘭沙

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未プレイ出身ファイターを調べて驚いたことはリヒターが闇堕ちしていたことと、2次創作でよく見るスネークの段ボール愛に女好きが割と原作通りだったことです。


十六話 伊達じゃない

「………」

 

 

もしも止めていなかったら。そんな仮定が頭に浮かんでは消えていく。フィギュアの世界だから全員無事だった。でも、もしこれが現実の世界だったら? フィギュア化の力がきえていたら? 誰を失っていたとしても後悔していただろう。

 

 

「…どうして誰も責めないんだ。」

 

 

ピチューの意向を無下にした。インクリングの知り合いを後回しにした。自分が知っている中でもこれだ。実際はもっとあるかもしれない。

 

もしも、なんて道はマルスにはない。白の道、黒の道、狭間の道。マルスにそこまでの選択の余地はない。誰が死ぬか誰が生きるかだけ。それだけがマルスの道なのだ。

 

 

「あっ…」

 

 

電子の壁が消えた。ここに来た目的を思い出す。機械を動かさなければ。だが、それは相変わらず自分の頭の中から消えなかった。

 

 

 

 

「ふう… 無事勝利です!」

 

「いえーい!トレさんナイスゥ!」

 

 

マルスが動かした機械に対応した壁が消え、先に進めるようになったファイター達。囚われているファイターの目の前に立ち塞がるようにいたスピリットを解放した。

勝利したWii Fit トレーナーをねぎらうように笑いながら跳ねるインクリングとその真似をするパックマン。

 

 

「ぽょ…?」

 

「これ、どう見ても機械なのだが… 魂?」

 

「あるって思った方が楽しいよ?」

 

 

このスピリットはどう見たって機械なのだが、魂という概念があるのだろうか。ロックマンは自分がロボットということもあり、あまり気にしていない。

 

 

「マルス…遅くないかい?」

 

「んー、たしかに。なんでだろ、わかる?」

 

「ピチュチュ。」

 

 

ピチューは首を横に振る。

 

 

「…私が行ってこよう。少し気になることもあるからな。」

 

「気になることかい?」

 

「何でもない。こちらの話だ。」

 

 

首を傾げるマリオの隣で、いいよ、と言わんばかりにサムズアップをするパックマン。それを了承と受け取った。

 

 

「では、行ってくる。」

 

「はいよ〜! それで次誰が戦う?」

 

 

オリマーは元来た道を戻っていく。その後、インクリングが目の前のファイターの話に軌道修正した。

 

 

「はーい、ぼく行くよ!」

 

「んー? でもさっきマリオと一緒に行ってなかったっけ?」

 

「大丈夫、十分休めたから!」

 

 

とはいえ、一戦しか挟んでいない。万全とは言いにくいだろうに。

 

 

「本当に大丈夫ですか? 無理のしすぎは健康によろしくありませんよ?」

 

「健康? ロックマンに?」

 

「けんこー?」

 

「ピーチュー?」

 

 

この人、天然なのか。ロボットに健康という概念があるかどうかは、本人か製作者ぐらいにしかわからないのではないか。

 

 

「ま、本人が大丈夫って言ってるなら大丈夫じゃない? いざとなったら別の人が行けばいいじゃん。」

 

「キミはお気楽過ぎないかい?」

 

「割とマリオさんもそうですよね?」

 

「強い反対意見はなかったから、ぼくが行ってくるね、じゃ!」

 

 

パックマンが手を振っているのを見届げて、フィールドへ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薄暗い空間であった。とは言え、不思議と目は通常通りに見える。それは、ロックマンがロボットである故か、それともこの世界による加護のためなのか。極寒の孤島『シャドーモセス島』。『終点』化されたこのステージは、雪が降っている。ファイター達の体温を奪う筈の寒さは、同じ理由なのか全く感じない。当然、キーラに用意されたこのフィールドの影響を眷属が受けることもなく。

 

 

「あ、スネーク。なんか久しぶりな気がするよ。いや、まだこの言葉は早いかな?」

 

『…』

 

 

伝説の英雄、不可能を可能にする男、ソリッド・スネーク。彼も例に違わずキーラの支配を受けていた。

 

 

「とおっ!」

 

 

『メタルブレード』を発射。ただ、これは普通に防がれるか躱されるかするだろう。続いて『リーフシールド』を展開し、ダッシュで近づく。

 

対してスネーク。鉄の刃はその場で回避した。近づいてくるロックマンを見て、『ロケットランチャー』を取り出し、目の前の地面に向かって撃ち放った。

 

 

「わわっ! あぶない!」

 

 

咄嗟に身を引き対処する。そして距離を置いたところで、展開していた『リーフシールド』をスネークに対して発射する。

 

 

『…』

 

 

スネークは『手榴弾』を投げる。飛び道具のぶつかり合い。勝ったのは、

 

 

「うん!」

 

 

『手榴弾』は爆破した。『リーフシールド』も威力こそ落ちたが、まだ死んではいない。そんな高性能な葉はスネークに襲いかかる。

 

 

「ていっ! やあ!」

 

 

さらに懐まで近づいて『フレイムソード』を振るった。追撃はくらったが、流石に場数が違うのか。空中に飛んだまま『リモコンミサイル』を発射した。

 

 

「えっ、うわわわっ!」

 

 

正確なコントロールでロックマンにヒットさせ、さらには『手榴弾』もおまけプレゼントだ。

 

 

「ん… ! まだくる!」

 

 

倍返しだ、と言わんばかりに懐に入り込み、足を上に開脚させて蹴り上げる。

 

 

『…!』

 

「うう、ラッシュ!」

 

 

さらに浮き上がったロックマンに、空中で上下反転して蹴るも、緊急退避したロックマンには当たらなかった。

 

 

「んー… やっぱり隙ないよね…」

 

 

ふとぼやく。英雄の名は伊達じゃない。潜入作戦がメインといっても、彼は20世紀史上最強の兵士のクローン。その戦闘能力は桁外れなのだ。

 

 

「じゃあ、こうだ!」

 

 

爆弾には爆弾を。『クラッシュボム』を発射する。スネークは体を伏せて避けた。

 

 

「まだまだ!」

 

 

走って近づき、『タップスピン』を試みる。伏せた状態ならどうしようも出来ないと感じた上での行動だ。

 

 

『…』

 

「えっ! 嘘!?」

 

 

即座に立ち上がり、シールドを展開させた。スネークを巻き込むことなく通り過ぎたロックマンは攻撃がくると察知し、無意識に距離を取る。実際、それは当たっており、爆発物を使用したのか、スネークのすぐ下の地面から黒い煙が上がっている。

 

 

「うわあ… ってまだくるよ!」

 

 

近づいてくる。これは格闘技で畳み掛けてくるのかもしれない。どちらかというと、遠距離戦の方が得意なロックマンには辛い展開だ。

 

 

「(なら…!)」

 

 

攻撃は先制させてもらおう。『スライディング』で相手の足元を崩す。足を蹴りながら通過し、思い通りスネークの体勢を崩した。

 

 

「ていっ!」

 

 

そのまま背後を斬り込む『スラッシュクロー』だ。スネークはこれを躱せはしなかったが、身を引いて退避。ロックマンの攻撃は続かなかった。

 

 

「やあ! わっ」

『…っ!』

 

 

『ロックアッパー』と『膝蹴り』が互いにぶつかる。結果としては痛み分けだが、スネークの技は吹っ飛ばすような技ではなかったので、ロックマンはすぐに地面に着地出来た。だが、スネークは上方向へぶっ飛ばされる。

 

 

「チャンス!」

 

 

ダッ、と地面を蹴った。追撃に向かうつもりだろうが、ただ単純に技を出しても避けられるだけだろう。頭をフル回転させる。どうやって決着をつけるか。

 

 

「(よし、じゃあ…!)」

 

 

スネークは宙に浮いている。ならば、と思い、軽い作戦を組み立て、実行する。

 

スネークの真下に行き、『エアーシューター』。突き上げる起動で動く竜巻を発生させた。それは避けられるだろう。だが、問題はない。この技をくらっても、場外へ追い出される。次に何が待っていようと勝負を捨てない限りは、ここを避けるしかないのだ。

 

 

「そうして… こうっ!」

 

 

両手を電極にして、頭上で電撃を放つ『スパークショック』。スネークの着地点を予測し、強烈な電撃を浴びせた。吹き飛ばされ、大乱闘の勝敗が決したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スネーク、おかえりー!」

 

「おかえりー!」

 

「おう、なんか世話になっちまったみたいだな。悪いな、手間かけて。」

 

「気にしなくたっていいよ。」

 

 

フィギュアから元の姿に戻ったスネークは、まずマリオとカービィのお出迎えに応えた。キーラに操られて戦っていたことについてはあまり気にしていないようだが、ファイター達にとってはその方が気が楽だ。

 

 

「で、状況はどうなっている? 今、お前らだけか?」

 

「今離れてるけど、マルスとオリマーもいるよ! あとちょっと探索してないところがあるから、合流してそこ行こ!」

 

「なるほどな…」

 

 

懐から煙草を取り出し、口に咥え、ライターで火をつける。

 

 

「…煙草は程々に。そして、副流煙がくるので遠くでお願いします。子供もいるのですよ。」

 

「…あっ、子供ってあたしのこと!?」

 

「まあ、今回は勘弁してくれ。ヤニが切れてると落ち着かねえんだ。」

 

 

静かに、それでいて強く注意するWii Fit トレーナーの子供扱いに、あうー、と困惑しながら続けた言葉が、

 

 

「あたし大人だからっ! どんどん吸ってくれたまえ!?」

 

「お、おう…」

 

 

大暴投した。

 

 

「よーし、では次行きましょう!」

 

「うんうん、そうだね、合流しよう!」

 

「待って二人とも! まだスネークとの話は終わってないの! 絶対わかってないのに! しっかり説明するからよく聞いてね!」

 

「歩きながら聞くぞ。」

 

「いやいや、早急にお願い! ああ、ピチューもカービィもパックマンも! ちょっとだけ! ちょっとだけでいいから話聞いてよー!」

 

 

離れたところから聞こえるインクリングの声が寂しく反響する。どうせ、都合のいい時は子供認定するのに。だが、彼女も戦士。戦うと決めたからついて行く。先に待ち受ける脅威。それはとある彼にとっては驚愕のものであった。




スネーク「なんだ、なんだ? ロボットに健康? 魂?」

ロックマン「あるよ! ロボット差別ですよ!」

スネーク「あ、いや、悪い」

ロックマン「あなたを詐欺罪と器物損壊罪で訴えます!」

スネーク「どこに詐欺と器物損壊が」

ロックマン「ちかいうちに訴えます。裁判も起こします!」

スネーク「話聞けよ!」


ロックマン「次回、『狡猾な知能を持つ機械』!」


ロックマン「貴方は犯罪者です!」

スネーク「え・ん・ざ・い・だ!」

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