灯火の星 〜The One Story of Ours〜 作:蘭沙
可愛い名前してこのヤクザ口調よ。
『オラッ! 人なんか乗せたことないから、振り落としちまっても文句言うなよ!?』
「流石にこれは無理ですぅぅ…!」
「うぐぅ… 流れに…身をっ、まかせてっ…!」
「それどころじゃっ、ない…!」
搭乗者を取り戻したワイルドグースは音速を超えるのではないかと錯覚する程に高速で走り回る。狭い場所なのに事故をしないのは流石のテクニックといったところか。
『おめえらに任せるしかないってわかるからこんなことしたんだ。礼はいらんぞ。』
「ありがとう! 助かったよ!」
『いらんと言ってるだろ!』
「うう… マリオさん、元気ですね…」
「体を貸してたら割と楽だったよ!」
「……ぁっ…」
「うっ……」
「…マルスとシークは無理だったか〜」
乗り物といえば、精々馬車程度の彼らにとっては、F-ZEROマシンは未知の領域。まともに返事も出来ない程に消耗している。
「すみません… 私も乱闘は無理です…!」
「ええ… この数どうするのさ…」
『私も助太刀しよう。』
追ってきたのはルカリオだった。コースの車道を通って追ってきたのだ。
「あれ? ルカリオだ。無事だったのかい?」
『先程リンクに助けてもらった。この数を一人でさばくのは至難だが、二人なら早く終わるだろう。』
「いやー、助かるよ! ありがとう! トレさん、二人を頼むよ!」
「わかり、ました… まさかキャプテン・ファルコンさんはこれを乗りこなしているのですか…?」
未だ酔い中の三人を残して近場のスピリットから解放していく。
「これで最後か…」
レースに残ったのはファイターの誰か。他とは少し違う戦いの予感に、再び覚悟を決めて物体に触れた。
今回のフィールドは、『ポートタウン エアロダイブ』。キャプテン・ファルコンの出身であるポートタウンをベースにサファイアカップのエアロダイブを再現している。ただし、例の如くというべきか、ここも『終点』の地形と化していた。
『…』
通称、キャプテン・ファルコン。超敏腕F-ZEROパイロットだ。普段、戦禍の中に身を置いているような他ファイターと比べても、その筋肉は劣らない。
普段は頼もしさすら感じる威風堂々の姿も、敵でいれば厄介な物だ。
『はあぁぁ……』
『はどうだん』の力を溜めていく。キャプテン・ファルコンは遠くを攻撃する技を持っていない。それだけで勝敗が決まってしまう訳ではないのだが、有利不利を分ける一つの要素には間違いないのだ。
『…』
キャプテン・ファルコンが勝つ為には、単純に近づいてインファイトに持ち込むしかない。敵の防御すらも砕く攻撃を与えるのだ。
『ハアッ!』
『…っ!』
キャプテン・ファルコンの膝とルカリオの腕が交錯する。そのままルカリオは足払い。だが、キャプテン・ファルコンも跳び上がってかわす。ルカリオの腕を足蹴にして、宙で一回転して一時、距離をとる。
『…!』
再び戦闘体勢を構え直すと、またルカリオに近づく。一方のルカリオもキャプテン・ファルコンの戦法を理解しているため、相手から近づかせて反撃するカウンター戦術でいく事にした。
相手に近づかせないのも一つの案だったが、ルカリオが出来る遠距離攻撃の『はどうだん』は連続で撃てるものではない。
『…はっ! ふっ!』
手刀を顔を動かしてかわし、続くローキックも跳ねてかわす。空中に浮いてるままにキャプテン・ファルコンの体に手を当て、『はっけい』をくりだす。密着して撃たれた攻撃が外れる筈もなく、仰け反り、大きな隙となった。
『…っ!』
『逃さない!』
思いっきり大地を蹴り出して、跳び蹴りを放つ。
『くっ…』
『…』
キャプテン・ファルコンのはったシールドが、ルカリオの攻撃を耐えきった。今度はルカリオに大きな隙が生まれる。
『ぐっ』
左肩と右腕を掴まれる。あばれて脱出しようとするも、腹部に強烈に打撃が入る。膝で腹を蹴った訳なのだが、ルカリオの体が同時にキャプテン・ファルコンの方に引っ張られたので、威力が上がっている。
二度三度同じことが繰り返され、掌底で突き上げられた。
『がはあぁぁ…!』
連撃の打撃のダメージが厳しく、体勢の立て直しが出来ていない。ピンチをわざわざ見逃してくれる筈もなく。キャプテン・ファルコンが迫ってきている。体勢が整わなければ回避もカウンターもできやしない。
『ぐふっ…!』
ようやく立て直しかけたルカリオに向かってキャプテン・ファルコンは膝を突き出した。低いベクトルで飛ばされ、ステージの外に投げ出される。
『…!』
ここで頭が少し冷静になった。恐らく、まだ追撃を仕掛けてくるだろう。それをみきり、対処して反撃をしなければならない。
そっと目を閉じる。視覚が無くとも見るべきものは見える。真下のレースをしている機体の存在を忘れ、ただ戦いの大地だけが見える。まだ動いていないのか、彼の姿は見えない。
まだ。
まだ見えない。
見えない。
『…ッ!』
見えた。
更なる追撃に来たるキャプテン・ファルコンの姿が。『しんそく』で、相手のアウトレンジを回ってフィールドに復帰する。
『………』
後ろに振り返らずともわかる。キャプテン・ファルコンは、『ファルコンダイブ』で復帰してくる。
『はあぁぁ!』
浮き上がった最高点。その地点に向かって『はどうだん』を放った。波導を感じて、予測もしたルカリオのはどうだんが外れる訳がない。
『…っ!』
キャプテン・ファルコンの動きに、なんとなく焦りが見えた。いや、確実に見えた。今のルカリオに誤魔化しは効かない。
『…カゥ!』
『…っ!』
『まだだ!』
同時に駆け出し、キャプテン・ファルコンの回し蹴りを腕で弾いた。そして、『はどうげき』をくらわせた。
『キーラを倒すまで負けるつもりはない! 相手が同じファイターとてな!』
ルカリオの心は折れない。
身体の傷が、自らの波導を高めてくれる。それ以上に冷静な己の心すらも湧き立たせる程の熱さを感じる。劣勢でも諦めぬ強い意志が、ふくつのこころが負けてたまるか。
『…っ!』
キーラの呪いで本来の思考が出来なくとも、伝わるルカリオの波導。感情の高ぶりに呼応するように膨大になっている。
真正面から受け止め、少し後ずさりした。その隙すらも見逃さない。
『…ゆくぞ。』
静かに攻防が始まる。いや、攻防と言えるほど拮抗していない。
『はぁ!』
『…く…あっ…!』
『しんそく』から始まった一連の連撃は、今のキャプテン・ファルコンには決して追いきれぬもの。見切ることも出来ず、気づいたら体に衝撃が走る、といった始末だった。
限界まで追い詰めてしまったルカリオと、ただ至上の命令だけを聞き戦うキャプテン・ファルコン。諦めるな、という声も今は聞こえないだろう。
『(ならば至急勝たなければ…)』
ダッシュの跳び蹴りがヒット。相手の肉体をステージ上に投げ出させる。
『…っ!?』
『…カゥ!』
『はどうさい』を撃ち放つ。最後まで相手はルカリオを見きれぬままだった。
『…くっ…!』
「ルカリオ! 大丈夫かい!?」
『…ああ、なんともない。』
「嘘です、戻ってくるなり膝をついて…」
空想の世界に戻った瞬間、ルカリオは膝から崩れ落ちた。確かにルカリオはダメージが多くなるほどに、波導を高めることが出来るが、ダメージが無くなる訳ではない。乱闘の場では気にならないが、終えた瞬間緊張が解けたのだ。
『それより、そちらが心配だ。酔いは覚めたか?』
「まるでお酒を飲んでいるような言い方だね… キミたちが時間をくれたから今は平気さ。」
「取り敢えずこの辺りは制覇したかな?」
「見渡す限りはもう誰もいないかな? 他のみんなは合流して、もう先に行っているみたい。キミがいたところをまっすぐ先にいったところ。」
『なるほど… ならば早く彼を元に戻して後を追うべきか。』
「あ、キャプテン・ファルコンさん。」
「だからここの辺りレース場になってるのかな?」
「…そう考えるとなんだか腹が立ってきたね。」
「その話は後にしよう。その道のりは…シーク、ルカリオ、案内してほしい。」
二人揃って力強く頷く。
「ああ。」
『了解した。』
ルカリオ『追いついたか… 無事だった… 無事ではなかったか。』
フィットレ「マルス、さんも… シークさん、も、喋れない…程には…」
マリオ「大変だねー!」
フィットレ「うっ… 他人事のようにっ…!」
マリオ「次回!『溶岩城へ』!」
フィットレ「どうやら…っ! キーラの前に、倒すべき相手が… いたようですっ…!」
マリオ「そんな味方側で暗躍させていた相手にいうようなことを!?」