灯火の星 〜The One Story of Ours〜   作:蘭沙

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ここのゼルダはまだ長髪のイメージです。




五十三話 同じ名を冠する者

動かない太陽は常に大地に光を届けていて、草むらに落ちた剣と盾を輝かせていた。しかし、それには目もくれず精神体の彼女を気遣う。触れられないにも関わらず、体を支えようと手を出すことはやめられなかった。

 

 

『あうっ… ここは確か…』

 

「ゼルダ様、無事でございますか?」

 

『リンク…? 確かあなたを送った後に…』

 

 

体を起こし、座った体勢になる。それに合わせてリンクの腕も動く。

 

 

「…大変申しにくいのですが俺たちは一度キーラに敗北しました。貴女の身が今この状態なのも全て俺の力不足が原因です…」

 

『いえいえ! 謝ることはありません。また助けられましたね。ありがとう、リンク。』

 

 

気にするなと伝えつつも、彼の性格上それは無理だろう。百年前の記憶を失う前の彼もストイックだった。姫と護衛という関係が消えても尚こうして自分のために戦ってくれる彼には感謝してもし足りない。

 

 

『私も何かあなたの役に立てればいいのですが… これではどうしようもないようです。私はまたあなたに託すしかない。』

 

「ゼルダ様…」

 

 

ゼルダは立ち上がり、残る彼の方へ振り向く。リンクも放っていた剣と盾を持ち直し同じ方向を向いた。実体のないゼルダをすり抜けて、風がリンクの髪を揺らした。

 

 

『大海原をかける風の勇者─ あなたと同じく勇者で、偶然か否か同じ名を冠する者』

 

「…はい」

 

『その英雄譚をここで終わらせてはいけません。彼を…お願いします。』

 

「はい、かしこまりました!」

 

 

当然だと言わんばかりに、気さくにウインクする。過剰に感じるほど真剣な表情に少し不安もあったものの、口角を上げた顔に安心する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ウーフーアイランド』の火山。その頂点の火山口すらもマスターハンドにとっては戦場の一つにできる。

 

 

「熱いし… つか、戦いにくっ!?」

 

 

山に申し訳程度についている金網型の足場と火山口に半端な蓋をするかのように設置させられた二つの足場。隙間から火山内の溶岩が見え、体感温度を上昇させる。ぐいっと額の汗を拭った。

 

 

「!」

 

 

視界に、こっちへ向かってくる一矢が見える。防御に回ったマスターソードの刃に勝てるはずもなく、勢いは完全に死に、矢は火山に吸い込まれていった。

 

 

「まったく… ゼルダ様に心配させないでくれよー」

 

『…』

 

 

大きな目が赤く光る。リンクとは違う時空で勇者と呼ばれた緑衣の勇者。体に対して大きな弓矢を構えながらこちらを睨んでいる。トゥーンと呼ばれるリンクだった。

 

 

「もー… ここでこいつ相手に戦うのはちょっと辛いな…」

 

 

自分も決して動きの鈍い方ではないのだが、体躯が小さなトゥーンリンクと比べると見劣りするのは確かだ。

そんな彼を相手に、足場の悪いこのフィールドで戦うのはきついものがある。ましてや相手にはその身の軽さも備わっており、小さな足場を生かして戦うことができる。相性がいいとは言えない。

 

 

「………でも、ゼルダ様直々に頼まれたんだ。負けるわけにはいかないんだよ!」

 

 

投擲された『ブーメラン』を跳ね返した。矢とは違い、歪な回転を加えながらもなんとか身を乗り出したトゥーンリンクの手に収まった。

 

 

「チャーンス♪」

 

『…っ!』

 

 

お返しとばかりにこちらも『弓矢』を射る。反撃したいが、トゥーンリンクは身を乗り出したことで体勢が崩れていた。左手の盾でどうにか矢を弾くが、連鎖的に立ち直りにくい体勢になっていく。

 

 

「たああっ!!」

 

『…ぃっ!』

 

 

その隙を逃さず、向かいの、トゥーンリンクが立つ足場に跳んで『ジャンプ斬り』をしかける。反応こそできたものの、防ぎきれる体勢ではなく退魔の刃による傷が直接伝えられた。

仮に、剣の防御が間に合っていても、互いに使う武器はマスターソード。時こそ違えど振るう得物は同じもの。同じものであるならば、基本的にパワーのあるリンクに軍配が上がる。

 

 

『…!』

 

「…!? あぶっ!」

 

 

飛ばされた空中からこちらに向かって『バクダン』を投げられる。咄嗟に腕で鼻と口を塞いだ。爆風は気管に入って火傷する方が危険だ。

 

 

「けほっ… !?」

 

『…っ!』

 

 

煙が晴れると、右腕に『フックショット』の鎖が巻きつかれており、復帰のために利用されようとしている。

 

 

「このっ…!」

 

『…』

 

 

順手で持っていた剣を逆手に切り替えて、マスターソードで鎖を斬ろうとした。

その瞬間にトゥーンリンクが自分を引き上げ、互いの額が正面衝突、お互い頭突きが決まった。

 

 

「いっつー!」

 

『…っ!』

 

 

また最初の足場に飛ばされた。手を離してしまったマスターソードは『ブーメラン』を投げて巻き込むことでなんとか火口への紛失は防いだ。しかし、未だに『フックショット』の鎖は巻きついたまま。

 

 

「けどここまで来たらこっちのもんだ!」

 

 

鎖を手繰り寄せ、思いっきり引っ張る。すぐにトゥーンリンクは抵抗しようと引っ張り返すも、パワーで負けている上に踏ん張れるような足場ではない。すぐに引っ張り上げられ、慌てて腕の鎖を解き、フックショットをしまった。

 

 

『…っ!!』

 

「はあああっ!」

 

 

空中から体ごと振り下ろされたマスターソードと腰辺りの位置から振るわれるマスターソードがぶつかり合う。

 

 

「…んん…! ぎい、い…!」

『………っ……!』

 

 

刃が擦れ合い、火花が飛び散る鍔迫り合い。

単純な力ではリンクに分があるが、落下による勢いと体重全てが剣にかかっているので互角の領域に持ち込めていた。

 

 

「こ、のっ!」

 

『…!』

 

 

それでもなんとか小さな体を弾き飛ばした。向かいの足場に着地し、右の道具をしまって盾を構え直す。

 

 

『…!』

 

「っと…」

 

 

『下突き急降下』に対して後ろに引いて避ける。足場が限られている故に避ける場所も自ずと絞られやすい。

 

 

『…っ!』

 

「…! たっ…!」

 

 

続けて斬り込まれた『スマッシュアッパー』に足を踏み外し、

 

 

「…くっ…!」

 

 

体が投げ出された。

足場にかかる左手が最後の支えだ。

 

 

「…っ」

 

 

すぐにトゥーンリンクはここに着く。位置的に圧倒的にこちらが不利だ。右腕はまだ下がっている。剣を防御に向かわせるにはギリギリ間に合うかもしれないが、この状況ではちょっと時間稼ぎが出来るだけだ。

 

 

「だったら!」

 

 

自ら左手を離した。

風が吹き、自分の体が落ちていくのがわかる。

 

 

『…!?』

 

 

流石に虚は突かれただろう。だが、あのままではジリ貧だった。盾を持つ彼の意表をつくための布石。

 

 

「くらえっ!」

 

 

空中で引き絞った一矢は、

 

足場の隙間を通って、

 

 

 

トゥーンリンクの右足に突き刺さった。

 

 

『ー!?』

 

 

驚く場所からの狙撃に傷以上に姿勢を崩す。

その間に空を跳び復帰する。

 

 

「悪いなっ!」

 

『…っ!』

 

 

戻ってきたリンクに対して乱暴に剣を振るうが、荒れた剣は当たらない。悠々とトゥーンリンクを飛び越え、背後に立つ。

 

今更顔だけ振り向いても何もできない。無防備な背中に『二段スマッシュ斬り』を仕掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは誰かの顔だろうか。ぼんやりしていて何も見えない。そのまま微睡む本心に任せて意識を眠らせる…

 

 

「こらー! 起きろぉー!」

 

「うわあああああああああああ!?」

 

 

なんてことはなく、両肩を掴まれてぐらんぐらんと揺さぶられる。

 

 

「あれ!? リンク? どうしたの?」

 

「どうしたも何もぐっすりなお前を起こしにきたんだよ!」

 

「えっ、嘘、また!? またやっちゃった!?」

 

「? また? 何が?」

 

「え、あ、うん、大したことじゃないから…」

 

「???」

 

 

ハテナマークを浮かべるリンク。恥ずかしいことではあるが、別に話さなきゃいけないことじゃない。

 

 

『リンク! そんな乱暴な起こし方…』

 

「うえっ!? キミ誰!?」

 

「指指さない!」

 

 

人差し指で指す左手を下げられる。

そういえばこの姿に関しての知識は解放されたばかりのトゥーンリンクにはないことを思い出した。

 

 

『ごめんなさい、名前をまだ… 私、ゼルダと言います。』

 

「? ゼルダ? テトラ?」

 

「お前のとこの姫とは別人だぞー」

 

「あ、そうなの。ボク、トゥーンリンク! トゥーンでいいよ!」

 

『ええ、よろしくお願いします! 事態に収束が着いたらそちらの時代の話も是非聞かせてください!』

 

「あれ? そういうのいいのかな?」

 

 

古物や歴史の研究を異時間からの知識に頼ってもいいのだろうか。でもそれを取り締まる創造神は生憎とっ捕まってる。

 

 

「ちょっといいですかー? ってあっ! トゥーンさん、無事でよかったです!」

 

「しずえさんだー! 無事だよー!」

 

 

しずえが登ってきた。当然道を通ってきた。崖を登る能力は誰しもが持っている訳ではない。

手を振るしずえに振り返すトゥーンリンク。

 

 

「何かあった?」

 

「はい、ここにいる人達を全員助けたらあつまろうとなりまして!」

 

「もうここはいないし… オッケー今から行く!」

 

「はーい! わかりました!」

 

 

戻っていくしずえを見送る。

 

 

「…ここにはまだ敵がいます。倒したら戻りますので安全な場所にいてください。」

 

『…わかりました。二人とも無事でいてください。』

 

「おっし! いくぞトゥーン!」

 

「おー!」

 

 

それぞれパラセール、デクの葉で空を飛んでいく二人の背中を眺める。

気持ち的には自分だってリンクの役に立ちたかった。だが今のこの体。非力な今では何もできないどころか足を引っ張りかねない。

 

 

『どうか… 無事でいてください…』

 

 

両手を合わせる。空へ祈り、大地に願った。

 





ソード「はい!パンはパンでも食べられないパンとはワッツ?」

しずえ「わかりますよ! フライパンですよね! 」

オリマー「パンモドキか? 食べるものでは… ルーイくんはなんと言っていたか…」

リンク「食べられない… 食べられない…?」

トゥーン「乾パンとか…? ずっと海にいると虫がたかってたりするし…」

ソード「随分とインタレスティングなアンサーがいっぱい! リンクはハーリーね!」


ソード「ネクスト!『大空の王』!」


ガンナ「コテンパンだろ? もしくはパンチ。」

ソード「バイオレンス…」
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