灯火の星 〜The One Story of Ours〜   作:蘭沙

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社長も社長で屑でした。




七十七話 同じ筈だ

『───ッ!!!!』

 

 

悪意の咆哮が戦場全体に響き渡る。鼓膜そのものに怨嗟の念が伝わり、それだけでほとんどのファイターが立っていられなくなる。

 

 

『─ッ!』

 

「あの巨体で跳び上がるのか…!?」

 

 

レッドが驚愕する。

高貴な服を捨てた怪物はより巨体となったというのに先程より身軽だった。本気ではなかったというのか。それでも流石は未来のチャンピオン。リザードンに乗ってそらをとぶことで先に回避していた。

 

 

「…あっ…!」

 

「むらびとっ!」

 

 

先の悪意を間近に浴びて、それでも動けるような胆力をむらびとは持っていなかった。トゥーンリンクが動くが、彼の足では間に合わず、ただ被害が増えるだけ─!

 

 

「─ッ! くぅ…!!」

 

 

そんな二人の体をさらい、二転三転と転がる姿があった。シモン。ドラキュラの悪意を受け慣れているのは間違いなく彼だ。動けないなんてことがある訳がない。

 

 

「つぁ! 流石ご先祖様だぜ!」

 

「人を褒めている場合ではありませんよ!」

 

 

緑の肉を鞭で打つリヒターが尊敬の言葉をあげ、隣に並んで剣を構えるルキナが叱責する。

なぜなら相手はあの巨体。あの力。あの素早さ。ファイター達のような小さな体では数人程度で前線を保つことなどできない。簡単に後衛に攻撃される。

 

 

「さっきのような魔力もあるはずだ。隙がない…!」

 

「どうしよう…!」

 

 

『メタルブレード』、『ギガファイアー』を足に当てるが、敵にとってはあまりにも矮小な反逆だった。

ドラキュラの能力を見て、それを表すように表情を歪めるルフレ。数の利を活かしてダメージを蓄積していくしかないが、それをどこまで許してくれるのか。

 

 

「させるかッ! リザードン、『かえんほうしゃ』!」

 

「フグオオォ!」

 

「レッド! 深追いは駄目だ!」

 

 

低空を飛ぶ二人。せめて目を潰そうと顔面へと火を吐く。

レッドには多対多の知識が劣っていた。だから前線を維持するのが困難なのだと理解できなかった。

 

 

「グワウオッ…!」

 

「うわっ…」

 

 

鋭い爪がリザードンの翼を切り裂いた。苦痛に目を細め、だがなんとか端へ行こうと落ちていく体を鼓舞して翼を動かす。

 

 

「…っ!」

 

「うぐっ…」

「わっ…!」

 

 

そして流れるように二連爪を振るう振るう。

ルフレのローブを裂き、ロックマンとリュカの身をまとめて切り裂く。

 

 

「リザードンッ! しっかりしろ!」

 

「グウオ…! フガウゥ…!」

 

 

きゅうしょにでも当たったのか。なんとか主の離脱に成功したリザードンの体力は限界のようで、立つのも難しい。

 

 

「…っ 休んでてくれ。まだおまえの力が必要だ。」

 

 

リザードンをモンスターボールへ戻す。あの巨体を倒すためにはパワーのあるリザードンが必要だった。その時まで他の手で耐え切る。

そう考え、リザードンのボールをバックに戻し、ゼニガメの入ったボールを取り出す。

 

 

「頑張れ、ゼニガメッ!」

 

 

体ごと回転させて投げたボールからかめのこポケモンゼニガメが出てくる─

 

 

「はっ…!?」

 

 

ことはなかった。地面に落ちたモンスターボールは軽い音を立てて転がるだけだ。

 

 

「ゼニガメ…? なにやってんだよ!? 出てこいって!」

 

 

声を張り上げ、怒気を含めても懇願するように言ってもボールは開かなかった。

 

 

「レッド! 危ない!」

 

「…!?」

 

 

リュカの焦りを含めた声にハッと我に帰る。眼前に広がるは炎の矢。身を守る術のないレッドにはどうしようも無い─

 

 

「ごめん、レッド…! 『PKサンダー』!」

 

「んべぇ!?」

 

 

電撃のPSIを見に纏ったリュカが勢いのままに突撃してくる。ふいうちに近い形になり、受け身一つ取れなかったレッドはまともに受けてしまうが、肝心の炎の矢は誰もいない地面を焼くだけで済んだ。

 

 

「ご、ごめん! だ、だ、大丈夫!?」

 

「ない、ぞうが… ごほっごほっ…」

 

 

手加減したらレッドを飛ばせない可能性があったとはいえ、味方に向けるような攻撃ではなかった。頭もクラクラしている。

 

 

「『エルウインド』! レッド! 考えてる暇はない! ポケモンを出すんだ!」

 

「…っ! フシギソウ!」

 

「フシッ…!」

 

 

風の魔法で炎の軌道をズラすルフレの声が響き、反射的にフシギソウを出した。

フシギソウとて、先程のダメージが完全に回復している訳ではない。だが、ゼニガメが出てこず、リザードンも満身創痍であっては出て来ざるを得なかった。

リザードンとゼニガメの喧嘩に巻き込まれ、彼女は二人の仲介役と尻拭い。いつものことだが、今回のはいつも以上に根が深いとフシギソウは何となく感じ取っていた。

 

それでも今は自分しか戦えない。

だから戦うしかない─

 

 

「…っ、はあ!」

 

 

火の矢をかわし、股の下に潜り込んだルキナは潜りながら内側からドラキュラの右足を斬りつける。足を奪えればという判断だったが、結果は芳しくなかった。

たったの一撃では楊枝を刺した程度のダメージなのか。

 

 

『──ッ!』

 

「ふぐぅっ!」

 

 

それでも相手が気づかない訳がなく。

緑の尾が可動域全体に振るわれ、乱雑な攻撃がルキナを襲う。どうにかファルシオンで防いだものの、勢いは収まらず壁に激突した。

 

 

「…! やーい、カモーン! こっちだよー!」

 

 

小さな風の勇者が弓矢を敵の顔面に射りながら両手を振ってヘイトを稼ぐ。

視野を潰されそうになっては無視も出来ず、ルキナにとどめを刺そうとした視線は彼の方へ向く。その隙に、ルフレが壁に埋まりかけていたルキナを救い出す。

 

 

「さあ、行け、ピクミン達!」

 

 

統率のとれた連携で、赤黄青のピクミンが離れていく。尾の反撃も届かない、角に近い場所へ黄、赤の順番で投げる。高さが足りず貼り付けなかった赤を黄が手伝い、後頭部へ攻撃する。

 

 

「─ッ! えっ、ピクミン …?」

 

 

足元についた小さな手形の感触にふとレッドは視線を落とす。青ピクミンが持ってきていたのは投げたままになっていたゼニガメのモンスターボールだった。

 

 

「あ、ありがとう…」

 

 

何も誰かを指揮して戦うのはレッドだけではない。オリマーはピクミンを指揮して戦うし、ルフレの戦術の才能は今も遺憾なく発揮されており、うまく動けていない子供達のカバーをしている。

 

彼ら二人は他者を使って戦う者。それはレッドも同じ筈だ。

 

なのにどうして、上手くいかないのだろう。ゼニガメはからに閉じこもっているのだろう。

レッドにはわからなかった。

 

 

『─!』

 

 

二匹のピクミンが送る攻撃の一つ一つは矮小な威力であったものの、塵も積もれば山となるし、それでも気の一つは散らすことができる。後頭部のピクミンに危害を加えようとしたら、他の人がその隙を狩れる。

 

 

「やーい、やーい! デカブツー! ヴァルー様の方がよっぽどカッコいいやーい!」

 

「えぇ…」

 

 

如何にも子供らしい煽りにむらびとが引き気味である。トゥーンリンク、妹がいるとは思えないぐらいには子供らしい。子供からもそう思えるぐらいには。

 

 

『───!!!』

 

「トゥーン、君なら上手くかわせる筈だ!」

 

 

雷書に魔力を込めながらルフレが言う。

ドラキュラが頭上から振り下ろした腕を叩きつける。全身を使った攻撃。当たったらひとたまりもない程に強力な。

 

 

「うわあぁあぁ!?」

 

 

 

大きな振動と風圧が発生するが、風圧で軽い体が吹き飛ばされた程度で済んだ。最もそれのせいでやたら響く悲鳴が聞こえるのだが。

 

 

「いや、よくやったよ。充分過ぎる… 『トロン』!!」

 

 

ルキナを背後に庇い、魔法を発動させる。雷の上級魔法、肉体すらも貫通するほどの雷の槍!

 

 

『──ッ!?』

 

 

振り下ろした後の右腕に突き刺さる雷撃。消耗していたドラキュラの体を刺し貫いた。激しく動いた影響でピクミンの攻撃が止む。

 

 

「僕を使うんだからっ、後で給料お願いねっ!」

 

「手持ちからで悪いけど!」

 

 

貫通した魔法をむらびとが『しまう』。互いに軽口をかわしつつ、もう一本の腕に向かって『トロン』を『とり出す』。

 

 

『──ッ!、』

 

 

二度貫通した魔法は、壁にぶつかり、ようやく掻き消える。その時ドラキュラは両手を地に置き、我をなくした獣のような眼で前方を睨んだ。更に閃光が走る。

 

 

「『PKフラッシュ』! ゴメン、遅れちゃった!」

 

「思わぬ援軍…!」

 

 

シュルクの離脱に付き合っていたネスがようやく戻ってきた。予想外の一手であったが、彼らにとっては幸運だった。腕に加えて、視界も潰せた。

 

 

「覚悟はいいかッ! ドラキュラ!」

 

「─ッ!」

 

 

リヒターのヴァンパイアキラーが項垂れた頭蓋へ。

シモンのヴァンパイアキラーが内に隠された心の臓へ。

 

決して並ぶはずのなかった二対の妖鞭が血族の宿敵へ突き刺さる。

 

 

『────────ッ!!』

 

 

赤い蝙蝠が霧散し、苦しみの声が音にもならずに聞こえる。緑の巨体は破裂し、霧のように消えていった。

 

 

「イエイッ!」

 

「勝った…でいいんですよね?」

 

「…ああ、これでダーズを守る牙は一つ消えた筈だ。」

 

 

一度形を変えたからか、ルキナが恐る恐る確認するように声を漏らした。

 

 

「ふう… 流石ご先祖様だな! 一緒に戦えて光栄だぜ!」

 

「……」

 

「シモン?」

 

 

健闘を称え合う言葉を出した一方、無言でこちらを見つめるシモンに困惑するリヒター。

 

 

「…いや、なんでもない。」

 

「ん? そうか。さて、次は誰が相手かな〜?」

 

 

気分上々で去っていくリヒターの背中をシモンはじっと見ていた。

 

 

「…シモン。気づいていたのか?」

 

「先程、アルカードにリヒターを見ていて欲しいと言われた。その意味がわかった気がする…」

 

「あれは… 多分気づいていなかったよね。」

 

 

シモンだけではなく、オリマーとルフレも気づいていた。二人は視野が広いからノーヒントでも気づけたのだ。

 

リヒターの武器が振るわれるその瞬間。まだ後頭部には赤ピクミンと黄ピクミンがいたのだ。それにも関わらずリヒターは頭を狙った。彼がピクミンの命を軽視したのではない。単純に気づいていなかったのだ。平和以外の、別のものを享受するかのように。

 

 

「(いや、リヒターにとっても同じ筈だ。ドラキュラは宿敵なのだから。…考えすぎなのか?)」

 

 

あの大きな背中が、まるで戦いそのものを楽しんでいただなんて。

 

 

シモンの予感は的中する。

彼の手の届かない未来で、リヒターは戦いを求めるがあまりドラキュラの復活に手を貸してしまうのだ。

 

しかしそれはまだ、彼にとっても未来のお話。






現ファイター


カービィ
マリオ
マルス
ピクミン&オリマー
パックマン
Wii Fit トレーナー
Dr.マリオ
インクリング
ピチュー
ロックマン
スネーク
むらびと
シーク
リンク
ルカリオ
キャプテン・ファルコン
ピーチ
クッパ
フォックス
シモン
ピット
リュカ
しずえ
Mii 剣術タイプ
ヨッシー
プリン
リュウ
ドンキーコング
アイスクライマー
ダックハント
リトル・マック
ファルコ
ピカチュウ
サムス
ネス
Mii 射撃タイプ
トゥーンリンク
Mr.ゲーム&ウォッチ
ポケモントレーナー
ディディーコング
シュルク
ゼロスーツサムス
デデデ
ルキナ
デイジー
ワリオ
リドリー
ケン
ブラックピット
ルフレ
リヒター
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