灯火の星 〜The One Story of Ours〜 作:蘭沙
ちょっぴりシリアス?
そんな感じの回です。
「ヒュー、ここの辺ややこしいなー!」
「全く! こんなに物があるのに金になりそうなものはありゃしない! どういうことだ!」
キャプテン・ファルコンが辺りを見渡す中、ワリオは価値のないガラクタを集めては地団駄を踏んでいる。
「毎日コツコツ、チャンスを逃さないは基本だよ。おっ、鉱石あるじゃん。」
「…勝手にチャンスにされた…」
小声で文句をたれたのはインクリング。高値をふっかけられたのは忘れていない。財布の中身を思い出し、しばらくナワバリバトルをやっていないという事実に絶望した。
第一問に正解した道の先は単純な別れ道だった。一方の道にあった問題を正解した先に、小島のような剥がれた土地があったのだ。
「そこにあるは一人のファイター… で、誰行く?」
やけくそ気味に始めた芝居がかった口調を即行でやめて会話する。
ここで誰も何も言い出さなかったので、少なくともここにいる誰かの同郷ではなかったようだ。
「誰も言い出さないのならば私が行こう! このキャプテン・ファルコンがね!」
「「「「おお〜っ!」」」」
「カッコいいですっ〜!」
白い歯を見せて笑い、サムズアップをするキャプテン・ファルコンに子供達から感嘆の声が上がる。しずえがどこからかクラッカーを鳴らして演出しており、まるで特撮アニメの一部分を切り取ったかのようだ。
「ヒーローならば、ヒーローショーでも開け。そうすれば世間知らずのガキからたんまりと銭を…」
「うわ〜…」
「そこはさりげなくでしょ…」
ワリオの悪どい妄想は童心の子供達には非常に受けが悪かった。インクリング、ネスは声も出さない。
「ま、まあ、確かに先立つものはお金ですよね!」
「先どころか後にも先にもカネが一番だ! ガッハッハッハッハッハ!」
「しずえさんのフォロー台無しにしてんじゃん…」
しずえの言葉も崩し、同じ女子から厳しい意見も飛んでくる。だが、その程度のことをワリオは気にしない。
「ま、相変わらずだな!」
「ブレませんね〜」
フォローを無碍にされても、しずえはほんわかスマイルを崩さない。
「それじゃあ、しばらく頼んだよ、しずえさん!」
「はい! お気をつけて〜!」
ニコニコと笑いながら、しずえは手を振り返していた。視線を戻して、対峙するべき存在を視界に認めて進んだ。黒いバイザーの奥の瞳が光った。
元凶を倒し、倒された仲間も戻ってきて完全なるハッピーエンド。陳腐でありふれた結末だが王道だ。誰もがそんな結末を目指しているのだろう。それを手にするために頑張っていた。
その頑張りが、報われればよかったのに。
とあるビル、『レッキングクルー』。その『終点』バージョンはまるでそのビルの屋上だった。でも、その足場は重力に依存しない。完全な別物だった。
『…ィ…』
「おやおや、よりによって君か。少しやりづらいなぁ…」
両腕を広げて、ため息をついた。
そのレーサーの目の前にいたのはロボット。ファイターの中では唯一だろう。この世界出身のファイターだった。最後の一機というべきの。
一方的かもしれない。
それでも今まで進展させられなかった関係があった。万が一悪い方向に進んでしまったら怖かったのだ。
『…ッ!』
「うおっと、」
ロボットの乗っ取られたその瞳から放たれる赤いビームがキャプテン・ファルコンの胴があった場所を通り抜けていく。
事情があるとはいえ、それを表に出すことをしなかった。だから誰もこの悩みを知らない。誰も解決できないのだから今の今まで全く進展しなかったのだ。
「『ファルコンキック』!」
『…ガ…!』
「(そろそろ晴らすべきなのかもしれないな…)」
この悩みは自分で考えてみても破滅的だった。こんなこと、仲間を全て喪った直後の彼にはいえなかった。当初はそれが理由だったのに。
回転するアームを両手で受け止め、後ろへ投げ飛ばす。ガシャンと嫌な音がするが、その程度で壊れないことをキャプテン・ファルコンは知っていた。なんなら、背中へビームを撃ってくるほどだった。
「そろそろ… 打ち明けるべきか、君を正気に、戻したら…!」
『…ィ!』
正拳突きを止められ、アームの殴打を止める。残った足で、回し蹴りをして頭部を蹴った。構造上、アームを塞がれてはロボットはどうしようもない。
停滞していた関係を無理やりに動かしたのはダーズだった。皮肉にもそれを進展させたのは運命という名の偶然だった。
「散っていった君達の仲間に見せる顔がないからね! このキャプテン・ファルコン、負けやしないのさ!」
『…!』
ギュッと拳を握りしめ、ビシッと指差した。それを受けたロボットが一瞬、後ずさったように見えた。
亜空軍を討ち滅ぼした。タブーはもうこの世界のどこにも存在していない。世界は平和になった。亜空間に飲み込まれたエリアは元に戻った。世界を取り戻す物語は終わったのだ。
だが、その代償のようにロボットの仲間と故郷は元に戻ることはなかった。
たまに哀愁を漂わせ、海の果てにある空を見つめるロボットの姿が忘れられない。
「(俺たちはその仲間達にはなれない。代わりにしかなれないんだ…!)」
欠けた物は別の物で埋め直す事しかできない。穴が空いている事実は消すことが出来ず、破片すらも世間という大地に呑まれ見えなくなった。
「忘れろ、とは言わないさ。一生引き摺っていても構わない。だから約束してくれ!」
火の鳥を拳に纏わせ、ロボットのアームと正面から激突する。
「もう二度と、自分の命を諦めるなッ!」
『…ッ!!!』
隼の意思と名を継ぐパンチが、相手の拳に打ち勝った。アームがひしゃげたのではないかと錯覚するほどの強烈な一撃に踏ん張り切れず体ごと吹き飛ばされる。
『…ッ!』
飛ばされて、横に倒れゴロゴロ転がる。脊髄を曲げて、人間のように手をつけて立ち上がった。
「まだ座っててもらうぞ!」
『…!』
この機を逃すまいと走ってタックルをかますキャプテン・ファルコンを滑るようにかわす。
「…ッ!?」
ロボットが背後に回ったことを認めると、即座に振り向く。その目に映ったのはジェット機構の噴出口。
「…ぅっ!?」
視界を爆炎と煙が占めた。バイザーが無ければ目が潰れていたかと錯覚するほどの熱い衝撃が飛び込む。急所にも等しい場所への攻撃にのけぞった。
『…!』
「(とりあえずシールドッ…)うっ!」
追撃を警戒し守りに入るが、人は慌てるほど単純になる。その思考を読むのは容易だった。
首元のスカーフを掴まれ、ロボットごと宙へ浮いた。その後に体に響いたのは衝撃と急変した視界。地面に叩きつけられたのだと認識したのはバウンドして体が跳ね上がった時であった。
「負けるかっ…!」
『!』
空中で体勢を変え、右手を握りしめ後ろへ引く。その拳に宿る炎。
ロボットもまた、両腕を組んで防御の体勢に移る。
「ファールコーン…!」
『…!』
炎が、青空に映える。それを纏うキャプテン・ファルコン。
「パーンチッ!!!」
『ッ!?』
不死鳥の拳が、ロボットのガードを貫いた。細い脊髄にクリーンヒットし、立っていられない。足が地面から離れて宙へ飛んでいく。
仲間と共に逝こうとするロボットを無理やり連れてきたのはドンキーコングだ。だが、彼らを救う道を早々に諦めて脱出を謀ったのは自分だった。その判断が間違っているとは思わない。ただ、正しければ万人の心が救われる訳ではないのだ─
『…ずっと悩んでいたのデスカ。』
「情けないことだがな。正しいことではあったかもしれないが、君にとっては何もして欲しくなかったのかもしれない、と。」
合流を目指し、進むファイターの少し遅れて最後尾。
ロボットはそこまで聞くと項垂れた。機械ではあるが、彼には感情が宿っている。仲間を想う気持ちは本物だった。だからこそ悪に染まるしか無かった。
『…当時はそう思ってイマシタ。彼らはワタシの迷いに巻き込まれただけなのによりにもよってワタシだけが生き残ってしまったのダト。』
キャプテン・ファルコンの悩みは真実だ、とロボットは話す。子供達の笑い声が遠のいて聞こえる。
『仲間はもう戻りマセン。そして吹っ切れることもないデショウ。』
「ロボット…」
『ですから忘れマセン。仲間達を忘れないワタシがここにいれば、今後ずっと生き続けていれば、彼らの存在は永遠になるのデス。』
「おお…」
ロボットの決意に驚愕とも呆れとも取れる声が漏れた。彼の言葉は仲間達の死を永久に引きずり続けるのと同義だ。…もう救われない。
「いいのか? それは…」
『歪なのは理解してイマス。前を向いて生きるのが正解なのデショウガ… ワタシは正しくなくとも仲間が救われる道を選びます。』
「…それなら正解の一つだな。」
誰かが報われるなら、それはそれで正解なのだ─
『まあ… ですからワタシの存在を消すダーズは許せマセン。ワタシも頑張りますのでよろしくお願いシマス。』
「おう!」
二人は上を向いた。
悩んだ上に出した答えは、この不可思議な空間のように歪で善とも悪とも捉えられるもの。
だが、その答えこそが理不尽な世界を一人ぼっちで生きていくたった一つの理由なのだ。
CF「追い討ち要員だぜ!」
ロボット『追い討ちですカ…?』
リドリー「なんか文句あるのかぁ?」
ドンキー「ウホッ、ロボットがやらないなら、オレ、やる!」
CF「働かざる者食うべからずって言ってな! 要するに働かないものにはなにしもいいんだぜ!」
ロボット『そんなコト…』
ロボット『次回、『俺がわからないとダメなんだ』デス。』
ロボット『本編のアナタはどこにいるのですカ?』
リドリー「分岐点のところで寝てる」