主人公の、今と昔に関する短編です
ブー、ブー、ブー
「ふぁぁっ……んー、電話か。誰からだ……?」
高校も無事卒業し、大学へ進学して一年と一月ほど経ったある日。単位の都合上今日は二限目までしか授業を入れていなかった俺は、授業が終わるや否やその授業後の昼休みにおかしなほど混む食堂へと急いで向かうと、お決まりのから揚げ定食を注文した。それを十五分ほどで食べ終えてから大学内のいつもの場所にて昼寝をしていたところ、スマホから電話を知らせるバイブが鳴ったため、確認してみると……
「え、松井先生から……? はい、もしもし」
意外にも、高校時代三年間担任としてお世話になった先生からの電話だった。時々メールなどで連絡は取り合ってたものの、電話というのはほとんどしていなかったせいで少し驚いた。
「おお、声を聞くのは久しぶりだな。この時間は昼休みだったと思うが、問題はないか?」
「えぇ、大丈夫ですよ。しかし、電話をかけてくるのは珍しいですね」
「今日は夕食でもどうかと思って、夜は暇かの確認をするためだ」
メールでもいいような内容だとは思うのはスルーすべきなのだろう。この人にそういうツッコミは効かないのは過去のクラスメイトとのやりとりで分かっている。――などと考えていると
「ちなみに、メールじゃないのはお前からの返信が遅いからだからな?」
と、少しお茶らけたような感じでそう告げられた。
「……いや、なんでさりげなく心の中を読まないでくださいよ」
「いや、しっかりと返信をするならいいんだが、次の日に返信する事なんかよくある事だろう。むしろ分からないとでも思ったか?」
はて、何のことやら。自分には心当たりが……あるな、一回二回ではないか。今後は直す努力はしてみよう。あくまで努力だけだが。
「すいません……で、今日の夜でしたっけ?」
「っと、そうだったな。危うくあらぬ方向に行くところだったな」
全く、調子がいい……しかし、こういうところが接しやすく、学校が楽しかった一因ではあるけれど。中々愉快な先生ではあったな。
「ええ、大丈夫ですよ。待ち合わせの場所はどこにします?」
「そうだな……じゃあ、〇〇駅に〇時にするか。大学からも近いから、問題ないだろう?」
確かに大学からは近いけど、今から待つのは大変だな……一旦帰るのも面倒だから、その駅付近を散策しつつ待つとするかな。
「分かりました、その時間に東口で待ってますね」
「よし、じゃあその時間にな。卒業以来だから、面白い話を期待してるぞ」
そう言うと、先生は電話を切ってしまった。……いや、それを期待されても何を話せばいいかさっぱりだ。結局のところ、どうなるのだろうか分からないけど、決まった話である以上は割り切るしかないか……
その後は昼寝をすることなく身だしなみを軽く整えると、荷物を持って最寄り駅へと向かう。何を話すかはその時の流れに任せればいいだろうな、と思いつつやってきた電車に乗り込み、先程指定された駅まで向かった。
「あー、そういえば、お金は残さないといけないか……銀行に寄ってお金をおろしてから散策するか」
そうと決めれば、まずは銀行に寄ってからお金をおろす。きっかけは予想外なことではあるものの幸いお金に余裕があるから、この際だから散策中に欲しいものをいくつかを買ってくとしようかな。
「ふぅ、思ったより買ったな。さて、時間は……あ、意外と経ってるな。待ち合わせまで少し休憩しようかと思ってたけど、この時間なら仕方ないかな」
スマホの時計を見ると待ち合わせ時間まではさほど残ってはいなかった為、その足で指定された場所へと向かっていく。その場所までは横断歩道を渡るだけの所で先生の姿をとらえると、そのすぐ近くに見知った顔をいくつか見かけた。
「おいおい、そんなの聞いてないぞ……」
と言いつつも、恐らくにやけていただろうな……と思う。
「まぁいいか、それなら皆との会話も楽しまないとするか……!」
愉快な元クラスメイト達にこんなところで会えるとはな……そう思いながら、俺は信号が青に変わった横断歩道に一歩踏み出した。