〝勝利〟は誰の手に 作:幻想の詩人
ちなみにこのタイトルにした理由などは特にないです。
最後に一言。約ネバ面白いですから是非見てね!
母と慕う彼女は親ではない。共に暮らす彼らは血の繋がった実の兄弟ではない。
ここグレイス=フィールドハウスは孤児院で、俺たちは孤児。
☆☆☆☆☆
「みんな起きてー! 朝ごはん遅れるよー!」
朝の6時、
「……まだ眠いし、寝よ」
そう言って、布団の中でモゾモゾと動いて二度寝しようとした……んだけど。
「ほら二度寝しようとしないで起きてー!」
……二度寝の邪魔をしようとするエマの声が聞こえる。
なんでエマやみんなは起きれるんだろうか。俺にはさっぱりわからない。
「……もう少し寝かせてよ」
まだ眠くて仕方ないんだから。と言おうとしたときだった。
「今日はコニーがハウスを出る日だよ!」
そう言われて、ハッとした。今日はコニーがいなくなる日だった。ならこうしちゃいられない。
怠さと眠気を気合と根性でねじ伏せて起き上がる。
「おはよう、エマ」
「おはよー! 朝ごはん遅れちゃうから急いでね!!」
そう言うと、エマは走って下に降りていった。
言われた通り急いで着替え、食堂に向かう。まあ、案の定と言うべきか、俺が一番最後だった。
「おはよう」
「ほはよー」
「おはようノーマン、レイ。……レイはなにその挨拶?」
何故か知らんけどレイが変な挨拶してきた。
「エマがさっきした挨拶」
「あー、なるほど」
思わず納得してしまった。
「なんで納得してるのー!」
エマが怒った表情をしながら言う。
そりゃエマくらいしかレイはそんなことしないだろうし。それにしてもエマは怒ってる顔も可愛いな。
そんなことを考えながら膨れたエマを笑って見ていると、
「ほら、席について」
ママにそう言われた。ちょっと遊びすぎたらしい。そう思って席についた俺を見てママは満足そうに頷き、「いただきます」と言った。
そんなやり取りはすべて俺の、俺たちの変わらない日常。……あ、でも睡眠の邪魔をされるのは日常じゃないほうが嬉しいや。それでもこれは当たり前の日常だった。
フカフカのベッドに、美味しいご飯、首筋の
ママはこのテストを〝学校の代わり〟とか言ってたけど、実際のところはどうなんだろうか。ちょっと不思議には思っていた。でもテストは嫌いじゃない。何故か? 決まっている。
「ノーマン、レイ、エマ。すごいわ三人とも! また300点!
ママに褒められて喜んでるエマが見られるのだ。それだけでも俺は幸せだ。……うん、あと少しのところでフルスコアだったのに凡ミスしたけど、悔しいなんてことはない。……いや、ほんとはかなり悔しい。喜んでるエマを見ればそんな悔しさなんて忘れられるだけだ。
それに、テストが終われば思いっきり遊べる。もし忘れられなくても全力で遊べば悔しさも吹き飛ぶし、コニーと遊べるのは今日が最後なのだ。悔しんでばかりもいられない。
「うげ、ノーマンが〝鬼〟だ」
……鬼はノーマンになったらしい。ドンの嫌そうな声が聞こえた。
「数えるよー!」
あ、ノーマンのカウントダウンが始まった。コニーは……ドンと一緒に逃げるらしい。まあいっか。どうせノーマンが全員を捕まえたあとにでもドンが何か提案するだろ。……さすがにノーマン以外鬼とか変なこと言わないよな? ないとは言えない気がするのは何故だろうか。まあ、コニーにとって楽しいものになるなら構わないけどさ。
「っと、そんなこと考えてねぇで逃げるか」
ノーマンが鬼だとエマとノーマンの一騎打ちになる未来しか見えねぇけど、頑張って逃げてみるか!
~10分後~
「……うん、やっぱりノーマン強いわ」
結構呆気なく捕まっちったぜ。……眠いし、少し寝よう。
「ってことでレイ。エマが捕まったら起こしてくれ」
「どういうことだよ」
レイから何か言われた気がするけど知らね。おやすみ。
☆☆☆☆☆
「……い。……おい。起きろ」
「! ……おはようレイ。エマは捕まったのか」
「あぁ、それでドンが〝次ノーマン以外が鬼〟って言ったところだ」
……マジか。せこいな。
そんなことを考えていると、「いいよ。捕まらないから」というノーマンの声が聞こえた。……マジかお前。いや、ノーマンならいけるかもしれないけどさ。
「……まあいいか」
大変なのノーマンだけだし。
「コニーもいよいよ最後かぁ……」
「また僕ら先を越されちゃったね」
エマとノーマンのそんな会話が聞こえた。
そう、
12歳までにはみんな里親を手配され巣立っていく。
それもまた
……そういえば、里親を手配する順番とかってどう決めてるんだろ? 今度ママに聞いてみようかな。
☆☆☆☆☆☆
「そろそろコニーは里親のところに行ったかな。……結局、全然遊べてねぇや」
俺はいつも誰かが里親のところに行くときの見送りはしない。寂しいから。家族の巣立ちは嬉しいけれど、同時にとても悲しくて寂しい。自分の手の届かない場所に行ってしまったように感じるから。
そんな寂しさに襲われていたとき、
「コニー!!!?」
エマの叫び声が聞こえてきた。
「……? え、どゆこと?」
コニーはもう里親のところに行ったんじゃねぇの?
どうしよ? 様子を見に行くべきか。それとも行かずにいるか。
「…………見に行くか」
散々悩み抜いた結果、行くことにした。
「あれ? エマは?」
エマはいなかった。代わりにと言ってはあれだけどレイがいたので聞いてみた。
「ノーマンと一緒にリトルバーニーをコニーに渡しに行った」
「……まあいいや。それじゃあ二人を待とうかな」
コニーはリトルバーニーを忘れていったのかー。そっかー……。あれほど大切にしてたものを……? いくら何でも大切にしてたものを忘れるか? ……でもフワッとしてるしなぁ……。有り得るか……?
そんなことを考えていたら、玄関が開いた。
「おかえり。どうだった?」
レイが二人にそう言ってたけど、何だか様子が変だ。
エマは表情が暗いし、ノーマンの表情は険しい。リトルバーニーは持ってないから、コニーに渡せた──というわけでもないだろうな。渡せたならあんな表情にはなんないだろうし。
「間に合わなかった」
……? 間に合わなかった。いま確かにノーマンはそう言った。ならなんでリトルバーニーを持ってないんだ? それを問い詰めるか? ……いや、止めとこう。だけど、
「エマ、ノーマン。俺はいつでも二人の──ハウスのみんなの味方でありたいと思ってる。だから、何かツラいことがあったらすぐに相談してくれよ?」
二人を呼び止め、そう伝えて俺は部屋に戻った。
出来れば、二人の──みんなの助けになれたらいいな。お前たちが笑ってくれるのならば、この命を使い潰してもいい。
まあ、もっとも──
「二人が頼ってくるより俺がハウスを出る方が早いかもしれないけどさ」
その言葉は誰に届くこともなく、虚空へと消えていった。
これは
大切なものを守るため、