〝勝利〟は誰の手に   作:幻想の詩人

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わかる人にはわかる奴をぶちこんだだけ。ヒントは冒涜的な奴等が出てくる神話(正確には小説群)
俺は何を思ってこんなの書いたんだろう。絶対ろくなことにならないじゃん。
ちなみにベルくんの世界線とは違う世界線です。


■貌の■ in 約ネバ
貌なき道化


 やあ、初めましての人は初めまして。久しぶりの人は久しぶり。無貌(ボク)だよ! ……え? わかんない? いやわからないならわからないでいいさ。

 それにしてもボクが演者になるなんて世の中わからないもんだね。

 ……あぁ、ボクが話してるだけじゃつまらないよね。それじゃあ、ボクの混じった彼女たちの物語をご覧あれ。

 その筋書きはありきたりで、役者も良いとは言えない。だけど──彼女たちの思いだけは一流の役者にも負けはしないとボクは信じている。

 いや、負けててもボクとしては構わないんだけどね。ボクを愉しませてくれれば満足さ。

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 ふと目を開いた。ボクは寝ている間も意識がある。だから何かあったらすぐに反応出来るけど、別に何かおかしなことが起きた訳じゃない。あえて言うならもうすぐ6時だってことかな? きっと今日も彼女──エマが6時ぴったりに起きるんだろう。

 そういえば今日はコニーの出荷の日だっけ。

 ……もし家族思いのエマがハウスの真実を知ったらどうなるんだろうか。あぁ、考えただけでも──

 

「──ゾクゾクする」

 

 口角が吊り上がっているのがすぐにわかる。

 エマはどんな顔をするのかな。絶望するかい? 絶望してくれよ。そして希望を見つけて抗おうとしてくれよ。そうじゃないとつまらない。絶望を希望にするため抗い続けてくれよ。ボクたちは人間のそういうところを見て愉しみたいんだから。

 ……おっと、いけない。そろそろ6時なんだし、いつも通り無表情にしないと。感情に変化のない無口な男の子としてボクはここにいるんだからね。

 さっきの表情は誰にも見られていないし、呟きも聞かれてもいないだろう。だって、みんな寝てるもの。

 ……って、そうこう考えてたら6時になっちゃった。鐘の音が聞こえる。

 

「みんな起きてー。ご飯遅れるよー」

 

 エマも起きたらしい。さて、ボクも身体を起こそうか。先に下に降りていよう。ボクの気配遮断スキルは……どのくらいだろう? まあ高くはないよね。擬態なら得意だけど。

 あ、ノーマンとレイがいた。

 

「……おはよう。ノーマン、レイ」

「おはよう。ナイア」

「おはよー。ナイア」

 

 うん、やっぱり挨拶は大事だよね。それにしても無口で無表情キャラより無邪気キャラのほうが面白かったかなぁ?

 

「お前たち……食ってやる──ッ‼」

 

 背後からいきなりそんなエマの声が聞こえてきた。……何してんの? いや、どうせ誰かがイタズラでも仕掛けたんだろうけど。

 

「ほっはよー。ノーマン、レイ、ナイア」

「おはよう。エマ」

ほはよー(・・・・)。エマ」

「……おはよう。エマ」

 

 何か口を掴まれてるらしく上手くおはよーと言えてないエマに挨拶された。仕方ないから振り向いて挨拶したけど、ほんとに何してんの。……まあ、どうでもいいか。

 何かイザベラにまで笑われてショックを受けてるっぽいエマは放置しておく。まだボクが関わったところで面白くも何ともない。どうせ関わるなら……うん、コニーの出荷をエマと……ノーマン、レイに見せてからにしよう。

 さて、どうやって見せようか。……リトルバーニーを使うか? でもさすがにおかしいと思われるよなぁ。いくらコニーがふわふわしてると言っても、有り得ないと思われる。まあ、考えるのはあとでいっか。

 

「時間通りね。いただきます」

 

 そんなイザベラの声も聞こえたし。

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 いつものテストの時間。正直、この程度なら簡単なんだよねぇ……。最低でもこれより十倍は難易度を上げるか、時間をもっと短くしてくれないと暇すぎるよ。今日も満点(フルスコア)にするけどさ。

 

「ノーマン、レイ、エマ、ナイア。すごいわ四人とも! また300点! 満点(フルスコア)よ!」

 

 エマは褒められて喜んでるけど……ボクは素直に喜べないなぁ。いや、ボクからしたら手抜きでもこの程度は余裕っていうのもあるけど。……それより自由時間をどうしようかな。

 自由時間に遊びながら三人に出荷を見せる方法を考えよう。それは退屈しないだろうし。……あぁ、愉しみだよ。絶望してよ? そして絶望の中から希望を見出だしてよ? 叶うはずもない夢想を口にして実現させてみてくれよ? そしてその夢想を実現させようと努力してくれよ? 勿論、その夢想をそのまま実現しろとは言わないけどさ。

 

「ナイア?」

 

 おっと、いつの間にか目の前にエマがいたよ。危ない危ない。自分の世界に入ると周囲に意識が向かないのがボクの弱点だね。まあ、そんなことは気にしないけど。

 

「どうかしたの?」

「鬼ごっこするんだけど、ナイアもどう?」

 

 エマがそんなことを訊いてくる。うーん、鬼ごっこか。……よし参加しよう。

 

「……やる」

 

 やっぱ無口の無表情キャラとか面倒だ。もし次があるなら無邪気なはっちゃけキャラにしよう。

 

「OK。数えるよ!」

 

 それにしても鬼はノーマンか。……ちょっと手強いかな。それじゃあ──

 

「ちょっと遊ぼうか」

 

 みんな森のほうに散ったね。いやボクもだけど。

 気配を感じながら、痕跡を消して誰とも会わないように移動する。たまにダミーの痕跡を残すけど……たぶん無駄かな。そう簡単に引っ掛かってくれるとは思えないし。

 ……んー、残りはエマとボクで他は捕まった感じかな。森の中に感じる気配の数的にそうとしか考えられないし。

 

「……エマとノーマンの観察でもしよう」

 

 エマの身体能力は高いからね~。ノーマンなら身体能力での勝負はしないでしょ。

 やるなら騙しかな? エマって家族思いだし、転んだふりでもしたら簡単に騙せるだろ。

 

「あ、やった」

 

 予想通りエマを騙したね。……よし、そろそろ捕まろうか。

 

「……や、ノーマン」

「! ナイア」

 

 ノーマンの背後に移動する。そこでドジった演技をしたら……無口で無表情のショタのドジって転んだ絵面の完成だ! 怪しまれないようにちょっと距離を離しておくのもポイントだね!

 ……何してんだろうね、ボク。

 

 

 

 

「で」

「また捕まっちゃった~っ」

「……次は頑張れ」

 

 何かエマがじたばたしているけど、スカートでじたばたするのってどうなの? いや気にしないならいいけど。

 

「くやし~‼ なんで⁉ なんでノーマンあんなに強いの? 私かけっこじゃ負けたことないのに鬼ごっこじゃ勝てたことないよ!」

 

 その答えはレイが教えてくれるんじゃないかな。

 

「問題。現状ノーマンにあってエマにないものなーんだ?」

「え⁉ いっぱいありすぎて…」

「戦略だ。確かに単純な身体能力ならエマの方が上だろう。でもノーマンは(ココ)が強い。ハンパない。そしてこれは鬼ごっこ。まさに戦略を競う遊びなんだよ」

 

 普通の鬼ごっこはそうじゃないと思うんだけどなー。いや、そんなツッコミは厳禁だけど思わざるを得ない。

 

「標的がどう動くか。鬼がどう攻めてくるか。状況を観察・分析し、常に敵の()を読んで利用する思考が必要になってくる。身体をフルに使ったチェスみたちなものだ」

「……鬼ごっこが?」

 

 ほんとそれ。エマに同意するよ。鬼ごっこをそう評価するとか絶対おかしいって。……いや、ボクがおかしいと評価するのもおかしいのかな? まあいいや。

 

「少なくともこいつがやってんのはそういう遊び」

「そこが鬼ごっこの面白さでしょ?」

「な? だから強いんだよ」

「──で当然レイとナイアにも(・・・・・・・・)あるんだ。〝戦略〟ってヤツが」

ある(・・)どころか二人は僕なんかよりずっと策士だよ」

「オイ。買いかぶんな」

「……買いかぶりすぎ」

 

 何かボクまで戦略があるとか評価されてたから口を出してしまった。見てるだけのつもりだったんだけどなぁ。

 

「やっぱ(ちげ)ぇな。あの四人は」

「あのレベルが四人…ハウス史上初だって」

「あ~、そりゃママも喜ぶわ……。じまんの子」

 

 そんな会話が聞こえてきた。……いやボクの場合は人間(おまえたち)とはそもそも根本から違うから。

 

「……本を読んでくる」

 

 何だかドンが変なことを提案しそうだったから、本を読むという名目で離脱することにした。返答を聞く前に離脱したから特に何も言わないで離脱しても良かったかもしれない。

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 しまった。何も考えてないじゃん。もうコニーの出発の時間になる。……どうしよ、マジでどうしよ。この機会は逃せないんだけど。仕方ないから魔術使うか。あまり不用意に使いたくないんだけども。

 

「…私。ハウスを出てもがんばる…。大丈夫。この子が……リトルバーニーがいるもん。あのね、リトルバーニーはね、世界に一つだけしかないんだよ」

 

 幸せそうな顔だなぁ。貰ったときのことを思い出してるのかな?

 

「ママが私だけのために、作ってくれた──宝物なの」

 

 自分がもうすぐ死ぬなんて欠片も思ってない顔だなぁ。……それも当然か。

 

「私トロいし、みんなみたいにユウシュウじゃなかったけど、大人になったらママみたいな〝お母さん〟になりたいんだ」

 

 なれると良いね。なってみるといいさ。来世くらいでさ。いや、死ななければ今世でもなれるかもしれないな。……死ぬだろうけどね。

 

「それでね。絶対子供を捨てたりしないの!」

「コニー…」

 

 感極まったらしいエマがコニーを抱き締めてる。……まあ、ボクも抱き締めてあげようかとは思ったけどね。それにしても……笑いを堪えるのってかなり大変なんだよ? 口角が今にも吊り上がってしまいそうなんだ。これはあまり長く我慢してられないかなぁ……。

 

「元気でね」

 

 気づいたらエマたちがそう言って手を振っていた。みんな寂しそうな表情をしてるなぁ。

 まあ、ここに用はないし戻ろう。いや、その前に掃除か。うーん、食堂からやろうかな。

 ……あれ? なんでリトルバーニーがテーブルの上(ここ)に置いてあんの? 誰が置いた? それともコニーがうっかり? だとしたらコニーはボクを笑い殺すつもりらしい。我慢し過ぎて身体が震えそう……‼

 

「……あれ?」

 

 エマたちがいつの間にか扉を開けてた。我慢するのに集中してて聞いてなかった。……一応言っておこうかな。

 

「エマ、ノーマン。気を付けてね(・・・・・・)

 

 ボクの言葉に不思議そうな顔をしていた二人だけど、すぐに走っていった。……これでよし。いや良しじゃないな。何故ならレイに怪しむような表情で見られて──ん? 怪しむような表情(・・・・・・・・)

 なぜ怪しむような表情なんだ? ……もしかして知っていたのかな? だとしたらリトルバーニーを置いたのはレイか。

 まあ、いま訊くようなことはしない。レイもボクに訊いてくる気配はないし。まあ、ボクは〝気を付けてね〟としか言ってないからね。それだけで訊いてくるのはさすがにね。

 ……早く帰ってこないかな~。無言でいるのも暇なんだよ。さすがのボクでもそろそろ飽きちゃうんだけど。

 ……あ、帰って来た。

 

「……おかえり」

「おかえり。どうだった?」

「間に合わなかった」

 

 ……間に合わなかった、ね。手ぶらだしこれは気づかれたかな。

 まあいいさ。明日からはもっと愉しくなる。さあ新しい物語を始めようじゃないか。まずは脱獄の物語をね。

 せいぜいボクらを愉しませてくれよ? エマ、ノーマン、レイ。これでも期待してるんだぜ?

 さて、みんないなくなったし、防音の結界を展開して時間をずらして……

 

「……あは、あはは、あははははははは──!!!」

 

 これで漸く嗤えるよ。我慢するのはとてもツラかった。

 

「なかなか愉しかったよ、コニー! 来世はお母さんになれたらいいねぇ? 此方の世界じゃなれないけどさぁ‼ あっちの世界に転生出来ることを祈ってあげるよ‼」

 

 あぁ、愉しいな。嬉しいな。腹が痛くなるほどに笑い転げて、どのくらい経っただろう。十分? 二十分? 或いはそれ以上? 何にしても気が済むまで笑い転げた。思う存分嘲れたよ、満足だ。……さて、そろそろ寝よう。

 

「明日はもっといい日になるといいなぁ……」

 

 そんなことを呟きながらベッドに戻って瞼を閉じた。

 ……恐らくノーマンはレイを最初に引き入れる。少数で脱出にしろ、全員で脱出にしろ、レイの協力は必要不可欠だ。だけどボクはどうなるか。……正直、ボクがどう評価されてるのかわかんないんだよなぁ。引き入れられるか、引き入れられないか。

 どちらでも問題はないけど楽なのは引き入れられるかな。……あー、でも引き入れられないほうが楽っちゃ楽か。イザベラに誰かが出荷を見たことはバレてるだろうし。まあ、どう転ぼうと最後に勝つのはボクだ。

 人間(おまえたち)など所詮はボクらの掌の上で踊っているだけの玩具に過ぎない。ボクらの予想を超えられなどしない。ボクらによって踊らされてるのがお似合いさ。

 それでも万が一ということもあるし……細かく修正する準備くらいはしておこう。まあ、何かあっても魔術とか使えば解決するし、準備する必要なんてないんだけど……そこは気分ってやつだね!

 さて、暫くはエマやノーマンたちとイザベラの戦いを見ていようかな。ボクがつまらなくなったら引っ掻き回してみよう。……どう引っ掻き回そうか。いや、つまんなくならないのが一番なんだけどね。そこはイザベラの手腕に期待しよう!

 それじゃあ、おやすみ。良き悪夢(ゆめ)を。エマ、ノーマン。この農園からキミたちは脱獄出来るかな?




たぶん続かない。気が向いたら続きを書くけど、そんな可能性はきっとない。
あ、コイツの正体がわからなかった人は、無貌 ナイアとか検索かけたら出てきます。
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