〝勝利〟は誰の手に   作:幻想の詩人

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ナイアが余計なことをしたりする回。もう全部コイツのせいにしたくなってきた。
誰も見てないだろうけど投稿。


暗躍する道化

「紹介するわ。新しい妹キャロルよ。そしてシスター・クローネ。ママのお手伝いに来てもらったの」

 

 来た。予想通りだ。……それにしても何だか扱いやすそうなのが来たね。

 

「さ、シスター・クローネ」

「はい。今日からここで一緒に暮らします。どうぞよろしく」

 

 さあ、どうする? エマ、ノーマン、レイ。キミらの敵は増えたよ? 同時に情報源(・・・)が増えたことに気づけるかな?

 気づいてくれよ、そうじゃないとつまらない。……あぁ、レイは気づいているかな。図書室の本。フクロウの蔵書票。さすがに気づいてるよね。モールス符号になってることにも気づいていると思いたい。

 ウィリアム・ミネルヴァ……ジェームズ・ラートリーだっけ? が名乗ってる筈だけど……もう死んでるんじゃないかな。ボクが最後に確認したときにはもう既に当主が変わってたし。協力者はまだ残ってるとは思うけども。……そういえばエマたちはどうするんだろう? 〝約束〟を壊すのかな? それとも鬼を滅ぼし尽くすのかな? 或いは〝約束〟を結び直すのかな? 約束を結び直すならアイツのところに行かないとだけど……エマたちに〝七つの壁〟の謎が解けるかな?

 

「……あ、悔しがってる」

 

 ノーマン貧弱なのに木を殴って大丈夫かな。……さすがに大丈夫か。

 エマたちはシスター・クローネをどう対処するのかな? ちょっと気になる。

 ……お、さすがレイ。情報源が増えたって発想は出てきたみたいだね。だけど残念。最後に勝つのはボクだよ。

 

「やっとエマと遊べるよ──!」

 

 そんな誰かの喜んでる声が聞こえてきた。残念だけど、エマとは遊べないよ。

 

「いない…」

「ギルダ達だぁ」

 

 あ、凹んでる。……まあ仕方ないか。

 

「……ドン。何してるの?」

「レイの真似」

「ヒマなんだね。いいよ、遊んだげる」

 

 ……キミはそれでいいのかい? どっちが年上なのかわからなくなる会話だよ? あとかっこつけるならもう少しレベルの高い本を読もう。それあまりレベル高くないのじゃん。

 

「エマは?」

「さぁ…どっか行ったみたい」

 

 ノーマン大好きっ娘が眼鏡──名前が出てこない。誰だっけ──に聞いてるけど、そりゃ知らんだろうね。

 

「ノーマン達と?」

「うん、多分」

 

 あ、金髪の……誰だっけ? が返答した。

 

「チェッ、遊びたかったなぁ~。最近全然一緒に遊べてない」

「……」

 

 ……? 眼鏡をかけたのが何か心配するような表情を浮かべてる? ……少し気にしておくか。

 

「そうね……。どこ行ったのかしら、エマ達」

 

 森の中にいるよ。……とはさすがに言わないけども。

 そろそろ一石投じるべきかな? ……うん、シスター・クローネの行動次第では一石投じるか。

 

☆☆☆☆☆

 

「……よし。行け」

 

 星の精をシスター・クローネにつけることにした。

 バレないように監視するように命令したから、問題はないだろう。血を吸わない限り透明だから見えないし。

 ……今頃レイとノーマンは食器を洗いながら作戦会議でもしてるんだろうか。

 何かシスター・クローネは意外と馴染んでるけど、どうするのかな?

 ……あれ? なんでボクはこんなにエマたち側になるように行動してるの? おかしいな。ボクはあくまでも第三者でしかないはず。……もしかして人間(ゴミ)に対して情が移った? ……うん、ないね! あるはずがない。

 

「貴方がナイアね」

 

 ……シスター・クローネか。今のボクはちょっとだけ気が立っているんだけど……まあいいか。有り得ない可能性を考えて苛立っても意味ないし。

 

「……そう」

「テスト満点(フルスコア)なんですってね」

「……」

 

 何を考えている? もしかして何か探っているのか? ……あぁ、秘密を知っている食用児を探してるのか。

 

「よろしくね。仲良くしましょう」

 

 穏やかな笑みを浮かべながら手を差し出してくる。

 ……握手くらいはいいか。って、握手したらどっか行ったよ。……やっぱり探っていると考えるべきか。ならイザベラはシスターに秘密を知っているのが誰かを教えていないと考えていいね。

 イザベラが知らない可能性もなくはないけど……十中八九レイが内通者だろうし、ほぼ確実に知ってるだろう。

 もしレイが内通者じゃなくても最近のエマたちの自由時間の行動を見てればわかる。まあ、そんなことはどうでもいいさ。

 

「……ボクを愉しませてね」

 

 お前たちはその為に生きているんだから。

 

 

☆☆☆☆☆

 

「……鬼ごっこ?」

 

 エマたちが鬼ごっこで逃走の訓練を始めた。……べつにそれ自体は構わないんだけど、なんで……

 

「みんなと仲良くなりたいの。鬼ごっこしましょう」

 

 シスター(コイツ)が誘ってきた? しかもキモ……いい笑顔で。

 まあいいか。遊んでやる。

 

「……いいよ。やってあげる」

 

 みんなやる気のようだし、ボクだけ参加しないのもあれだろう。

「勝負の時間は二十分。私が〝鬼〟よ。みんな逃げ切ってね」

 

 ……あの顔で追いかけられたらトラウマになるのもいるのでは? 別に良いけどね。

 

 

 

 

「……さて、どうしてくる?」

 

 シスターの背後──とは言ってもある程度の距離は取ってる──で見てるけど……あ、発信器で場所は探らないっぽいね。

 ……あぁ、葉っぱに細工して年少組を捕まえることにしたのか。ボクには気づいてないらしい。これは最後まで気づかない可能性もあるかな。

 

「あれっ?」

 

 あ、年少組が引っ掛かってる。……これで五人捕まったね。

 んー、あんなんでも流石に頭は悪くないか。完全に動きを読んでるし。……でも悪くないだけだな。シスターが思ってたより面白くない。

 

 

 あ、何だっけ。……今度みんなの名前をちゃんと覚えておくか。まあ今はそんなことどうでもいいや。誰かがシスターに追いかけられて必死に逃げてる。頑張って逃げてね。トラウマにならないことを祈るよ。……お、木の中に隠れた。

 

「フンッ!」

「ギャアアアッ!?」

 

 ……シスター。木を殴って破壊すんなよ。自然は大切にって習わなかったのか? それ以前に仮にも売り物を傷つけかねないことをするべきじゃ……いや、そんなことはどうでもいいね。これで後は……ボク含めて六人。

 

「エーマー‼」

 

 エマ大好きな子ともう一人がシスターに見つかって……エマが二人を抱えて走り出したね。……どういうつもりだろう。

 さて、ボクも追いかけようか。

 

 

 

 

 いや、ジャンプにダッシュに動きすぎでしょ。まあ、ここは大きな岩がそれなりにあるから、隠れるにはうってつけだけど。……てか、まだ気づいてないのか。

 

「二人抱えて走り続けて…疲れたでしょう。エマ」

 

 シスターが話し出した。……どういうつもりだ?

 

「休まなきゃ動けないわよね。こんな追われ方したこともないでしょうし」

 

 シスターは余裕そうだね。……何のつもりで話し出したのかまるでわからないや。本気でどういうつもりだ?

 

「知ってる? ノーマンの弱点は〝体力〟。昔、体が弱かったんですってね」

 

 イザベラからの情報だな。……それを今言う意図が本気でわからない。早く本題に入らないだろうか。

 

「レイの弱点は〝諦めが少し早いところ〟。判断が早い分、切り捨ててしまうのも早いのね」

 

 ……ほんと本題に早く入ってほしいな。弱点なんてべらべら喋っても意味ないだろうに。

 

「ナイアの弱点は〝無関心なところ〟。殆ど他者に興味がないのね。だから誰がどうなってようと気にしないし、あまり協力もしない」

 

 ……そう思われてるんだ。これは使える……かな? いや、使えないか。

 

「そしてエマ。あなたの弱点は〝甘さ〟。追われているのに他の子抱えて逃げちゃうような〝甘さ〟…よね」

 

 確かにエマは甘いよね。その甘さが面白いし、それが存外バカにできないこともある。

 

「諦めて出て来なさァーい。悪いようにはしないわ」

 

 悪いようにはしないって言葉は正直信用ならないよね。……そろそろ意図が見えてくるかな?

 

「もしあなたがあの日〝収穫〟を見たのなら」

 

 ────は? コイツはいま〝収穫〟と言ったか? バカか。何を考えている⁉ その言葉だけでも充分な情報になることくらい理解してるはずだ! していないとは言わせない! しかも聞いているのはエマだけじゃないんだぞ⁉

 

「私はあなたの味方よ」

 

 ……ふざけやがって。修正しないといけない可能性が少し出てきたじゃないか。余計なことをしてくれた。……おっと、いけない。冷静にならないと。

 

「見ぃつけた」

 

 これでエマと抱えられていた二人が捕まった。残りはボクとレイとノーマン。……あの抱えられてた二人、シスターがトラウマになったりしない? まあいいや

 

「……まだバレていない」

 

 ノーマンとレイをシスターは追いかけてる。……残りは何分だろう? 十分かそのくらいかな。と言うか、シスターもしかしてボクのこと忘れてる?

 

 ……? あれは……何かのハンドサイン? ……あ、レイとノーマンが別れた。

 シスターはノーマンを最初に狩ることにしたらしい。圧倒的体力差で追い詰めれば良いとでも思ったのかな? 確かにノーマンは身体が弱かったけど、それを補う頭脳がある。それを理解できてないようじゃノーマンには勝てないよ。

 

 ……なんか思ったよりもノーマンを追い詰めれてないぞシスター。ボクには追わされてるようにしか見えない。これはもうシスターの敗けだね。

 

 あ、レイがシスターの背後を取った。つまり……

 

「二十分経過」

 

 ゲーム終了か

「俺達の勝ちだね。シスター」

「僕達の勝ちだね。シスター」

「……終わり」

 

 そう言って姿を見せたら三人に驚かれた。……もしかして本当に忘れられてた?

 

「……あなた何処にいたの?」

「? シスターの背後にいた。……ある程度離れてはいたけど」

 

 何かシスターから訊かれたから素直に答えたけど、なんでそんなことを訊いて──あ、一度も姿を見せてなかったからか。

 ……まあいいや。もうゲームもおしまい。エマと一緒にいた二人にはイザベラに訊かないように細工を施した。これで少しはマシかな。

 シスターには情報源としての役割が終わったら死んでもらおうか。……いや、ボクが殺すよりイザベラが切り捨てるのが先かな。そのほうが有難いけど。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「お待たせ。三人とも」

「……あ、来た」

 

 何かノーマンたちに呼ばれたから待ってたんだけど……ドンとギルダもいたし、話すのかな。

 

「何? 話って」

 

 ドンがなにも知らない顔で聞くけど……さて、どうなるかな。

 

 

「え、人身……売買?」

「……」

 

 なるほど、そう言うんだ。

 

「うん……今までの兄弟みんな悪い人に売られてたの…」

 

 まあ、確かに売られてたね。食べ物として。

 

「プッ。だーはっはっはっ‼ 何深刻に話し始めるかと思ったら…アハハないないないない‼」

 

 何も知らないとそんなもんだろうね。……くだらない。

 

「でも塀に扉…出て行った兄弟達から手紙の一つも来ないのも」

「またまたァ! で? オチは? 一体コレ何の遊び⁉」

 

 そんなドンに誰も何も言わない。まあ、当然だね。だってオチなんてないし。

 

「ん? えっ本当とか言わないよね?」

「本当」

 

 むしろ嘘だと思える要素が何処にあるのか。

 

「ちょっ………え? 待って、じゃあママは?」

 

 ……コイツこんなに察し悪かったっけ? そんなの一つしか答えないでしょ。

 

「……その悪い人にボクたちを売っている。……違う?」

「そう……」

「は⁉ バカ言え‼ ふざけんなよ…。ありえねぇだろ、あんなに優しい……。取り消せナイア! エマ‼」

「……? なんで取り消す必要があるの?」

「ナイア……‼」

 

 ドンが掴みかかってきた。……あぁ、邪魔だし潰してみようか──

 

「ドン。ハウスのこと、ママのこと大好きなエマがそんな嘘つく理由ない」

 

 ギルダが唐突にそんなことを言った。……待って、ボクは嘘つくって思われてるの? ねぇ、待って酷くない?

 

「それにね…。変だと思ってた…。あの日…エマとノーマンが門へ行って」

「えっ」

 

 あ、ドンが離してくれた。

 

「いつもの二人ならたとえ規則を破っても、すぐに正直に謝って元通り──なのに」

 

 確かにそうだね。……結構おかしなところはあった訳だ。

 

「謝るどころか二人には口止めされるし、ママは本当〝罰ゲーム〟みたいなお手伝いさせてくるし。エマすぐどこか行っちゃうし、なんだかすごく真剣だしどんどん聞けなくなっちゃって……うっ……」

 

 あ、防音しなきゃだこれ。間に合うかなぁ? いや間に合わせないとなんだけどさ。

 ……ギリギリだったけど間に合った。いきなり泣くのやめてほしい。せめて予告しろ……というのは無茶振りか。

 

「ごめんね…ごめんギルダ…」

 

 ……ところでボクに関してのフォローはなし? 嘘つきそうって共通認識なの? ちょっとショックなんだけど。

 

見た(・・)の? エマは。コニーも売られて行ったの? 悪い人に……」

「ああ。でも間に合わなかった」

「えっ、待ってコニーまさか…。無事だよな? 大事ないんだよな⁉」

 

 ドンがノーマンに訊いた。

 残念もう死んでます。……なんてぶっちゃけれないよね。どうすんだろ?

 

「わからない」

 

 ……ふーん、そうするんだ。

 

「そんな……何だよそんな……‼」

 

 また随分と残酷な嘘をつくね。ドンのこの様子じゃ助けようとするだろうに。

 

「ここから逃げて、コニー達助けに行こう」

「!!!」

「……」

 

 死人をどう助けるつもりなのかな。あとで訊いてみようか。

 

全員(みんな)で一緒にここから逃げよう」

 

 本当に残酷な嘘だよ。ありもしない希望なんて与えないほうがいいのにね。

 

 

 

 

 

 あのあと、ノーマンがスコアの記録を見せてきたり、エマが〝一緒に逃げて‼〟なんて言ってきた。……話を聞き終わったあとに、ギルダとドンにちょっと先に行ってもらった。……よし、盗み聞きもしてないね。

 

「……ねぇ、一つ訊いていい?」

「なに?」

どうやって死人を助けるの(・・・・・・・・・・・・)?」

「⁉」

 

 おお、三人とも驚いてる驚いてる。

 

「……どういうこと? 僕達もコニー達がどうなったのかわからないんだよ?」

 

 惚ける気かな? でも甘いよノーマン。

 

「……鬼、発信器、農園、食用児、収穫、高級品」

「!!!」

「……反応しちゃったね」

 

 やっぱり素直だね。そんなんじゃすぐにバレるよ?

 

「どうして──」

「──知っているのか? 答えるつもりはない。……あ、ボクは内通者じゃないから安心してね」

 

 ……表情の変化がないのはノーマンとレイかな。エマは安心したような表情だ。……素直すぎない?

 にしてもノーマンとレイね。……レイは予想通りだとしても、ノーマンは内通者が誰なのか予想できてると考えていいのかな。

 

「あ、ドンやギルダには言わないでおくよ。……すぐにバレると思うけど」

 

 もう話すことはないね。もう部屋に戻ろうか。

 部屋に戻るときに何か訊かれた気がするけど、ボクの知ったことじゃない。

 あ、ボクってエマと同室じゃん。……魔術で時間稼いで寝たふりしよう。

 

 

 

 

 さて、どうしようかな。そろそろエマたちが不利になりかねない一手を投じておくかな。今までエマたちに有利になるようにしてたし。

 使うならドンにしようか。ドンに隠し部屋を教えれば必ず食いつく。そのあとどうなるかは知らないけどね。

 あとでエマにそれっぽく隠し部屋のことを伝えておこうか。エマのことだから教えるでしょ。

 ……楽しみだな。ノーマンはこの脱獄をどう成功させるんだろう? レイは全員というのに反対だろうし、敵はイザベラとシスター。下手したら三方向から邪魔される訳だけど、どう対処するのかな。何ならボクも引っ掻き回すし四方向か。

 頑張れノーマン。キミなら出来ると信じているよ? ……いや言うほど信じてないや。

 そういえばエマたちは本当にどうするんだろうな。

 鬼を滅ぼすのか、〝約束〟を壊すのか、〝七つの壁〟を越えて〝約束〟を結び直すのか。……いや、考えるまでもなかったか。エマが選ぶとしたら一つだね。エマ以外は微妙かな。全員〝約束〟を壊しはしないだろうけど。

 うーん、脱獄したあとは〝七つの壁〟を越えた先で待っていることにしようかな。……そもそも何て言って離脱しようか。

 ……あ、そうだ。誰か切り捨てよう。そしたら真実を知っている奴等の精神に多少のダメージ入るし、レイは自分の命を捨て石に使ってエマたちを脱出させることを選ぶだろう。そのときにボクも離脱しよう。

 切り捨てるなら……ノーマンがいいかな。あとシスターも死んでもらうか。用済みの役者には退場願わないとね。ノーマンは運が良かったらまた出る幕があるかもしれないけど。

 よし、そうと決まればちょっと本部の奴等に細工だ。本部に無貌の神(ボク)の信仰者がいたら手っ取り早いんだけど、現実はそう上手くいかないよね。

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