〝勝利〟は誰の手に 作:幻想の詩人
ベル(来世?)くんとエマの話です。
登場人物はベルくんとエマともう一人だけだったり、内容が意味不明かもしれませんが、細かいことは気にしないで脳を鬼に食べられながら読んでください。(!?)
ベルくんとエマ
「僕ね! おっきくなったらエマおねーちゃんとけっこんするの! そしてエマおねーちゃんを守って幸せにするんだ!」
あの子はいつもそう言ってくれた。でも──もうあの子は……!
☆☆☆☆☆
あの日はいつも通りの朝だった。
「エマおねーちゃん!」
ベルが私に抱きついてくるのも、それを微笑ましそうに見てくるみんなも、何も変わらなかった。みんなが何処か複雑そうな表情をしていたのもいつも通り。……もしかしたら私もそんな表情だったのかもしれない。
だけど、そうなるのも無理はない。だって、この子は
黒髪で、肌は白く、とても綺麗な赤色の目。昔のベルにとてもそっくりだった。そして、この子の名前もベル。
「……? どうしたの?」
「……! 何でもないよ。どうしたの?」
いつの間にかベルが私の顔を覗き込んでいた。そんなに長い時間ボーッとしていたのかな。
「……エマおねーちゃんは誰を見ていたの?」
「……え?」
誰を見ていたのか? ……そんなの君を見て──
「エマおねーちゃんは僕を通して誰を見ていたの?」
ベルを通して……私は……!
「ごめんね……‼」
「わぷっ⁉」
ベルを抱き締める。ベルが変な声を出していたけど、気にする余裕はなかった。
「ごめんね……! ベルはベルだもんね……‼」
こんな私を見たら〝ベル〟はどう思うんだろう。呆れるのかな、怒るのかな……。会いたいよ……! もう一度会いたいよ……‼ あのとき助けられなくてごめんね……!!!
「エマおねーちゃん。泣かないで?」
……! ベル……?
「エマおねーちゃんが悲しいと僕も悲しいよ……」
ベルが私を抱き締め返してくる。
「……ありがとう。元気出たよ!」
「ほんと⁉ やったあ!」
ベルは無邪気に喜んでいた。そんな姿を見ると、自然と笑顔になれた。この大切な日常を守りたいと思っていた。みんなと一緒ならば守れると思っていたんだ。あの鬼が来るまでは。
☆☆☆☆☆☆
突然、轟音と共に私たちのいた拠点の入口が破壊された。
「──なっ!?」
あまりにも突然すぎて、全員が動きを止めてしまった。そして──それが致命的だった。
次の瞬間、破壊された入口から火の手が上がる。異常な速度で拠点を燃やし始めた炎にみんなパニックになった。炎に巻き込まれて、死んでしまった子供たちもいた。
そんなとき、それは現れた。それ──鬼はまるで地獄から来た怪物のように見えた。巨大な鎌を持ち、歪に裂けた口。身体は三メートルくらいだと言うのに──その威圧感は今まで出会った何よりも強かった。
鬼は大地を呑み込めるとさえ錯覚させるほどに大きく口を開け、焼けて死んでいった子供たちを喰らっていく。
ある程度喰らって満足したのだろうか。
首をコキリと鳴らしながら
そして──鎌を持った腕を無造作に振るった。それだけで、凄まじい突風が吹き荒れ、私たちは突風によって吹き飛ばされたあと、辛うじて無事だった壁や地面に叩き付けられた。
「エマおねーちゃんっ!! 大丈夫⁉」
自分も吹き飛ばされたというのに、ベルは自分のことより私の心配をする。私よりボロボロなのに……。
「私は……大丈夫。ベルは……?」
鬼は私たちを見つけても口を歪ませて笑っている。強者の余裕とでも言うべきだろうか。いつでも私たちを殺せるということなんだろう。
「僕はだいじょーぶ!」
そんな訳がないと思った。ボロボロの姿で涙を堪えながら言われても信じられる訳がない。でも、
「なら逃げてッ! みんなと一緒に急いでここから離れて!」
ベルに叫ぶ。生きてほしいから。また見捨てるようなことはしたくないから。その瞬間だった。
『ク───ハハハ、ハハハハハハハハ! 面白いなァ、人間。それは自己犠牲というやつか? いや、結構。お前たちの
鬼が言葉を話した。奇妙なノイズのようなものが混じっていた声だった。その声に顔をしかめると──鬼はいつの間にか私の前にいて、ベルを掴んでいた。
「ベル!」
「エマおねーちゃん!」
『ふむ、このガキはお前にとって特別なのか? ならこのガキを俺が喰らったらお前はどんな表情をするのだろうなァ』
……この鬼はいま何て言った? 喰らう? 誰を? ガキ? ……ベルを……喰らう? そんなの許すわけ……‼ でもこの鬼に抗う手段がない……!
『だが、ただ喰らってもつまらん。……人間。これはお前たちの武器だろう? 抗うことを許す。俺を楽しませろ』
鬼はそう言うと、銃を投げてきた。……弾丸は入っているみたい。
『そら、いま俺を殺さねばこのガキは死ぬぞ? 俺に喰われてな。それが嫌だと言うのなら──俺を殺してみせるがいいッ! ……あぁ、
せせら笑うように言う鬼。そして、鬼は言ったとおり仮面を外し、素顔を晒した。
「──ッ!」
嘗められている。それがよくわかる。そうじゃなければ、自分の弱点を守るものを外したりしないだろう。だけどこれはチャンスだ。この鬼を殺してベルを救う!
そう考えて銃を構えたときだった。
「エマおねーちゃん逃げてッ!」
ベルが私に叫ぶ。……どうして? 私が逃げたらベルが死んじゃう。そんなの──そんなのもう嫌だよ……‼ ベルをもう一度見捨てるなんて……‼
「みんなまだ生きてる! エマおねーちゃんたちが生き残れば──!」
『……なんだお前も自己犠牲とやらをするのか? 互いに自分を犠牲にしてどうする』
鬼が呆れたような声で言う。
「僕はエマおねーちゃんたちに生きてほしいのッ! ……ねぇ、僕を食べたらエマおねーちゃんたちを食べないでくれる?」
……え? ベルは何を言って……?
『ふむ……そうだな。お前が大人しく俺に喰われるなら、一月ほどコイツらを見逃してやる』
「……わかった。ならそれでいいよ」
「何を言ってるの⁉ そんなのダメ‼」
またベルを犠牲にして生きるのなんて私は……!
『……良いだろう。俺はお前を喰らったあと、人間どもを一月だけ見逃す。約束してやる』
ダメ……私は──私たちはまたベルを……!
「ダメぇぇぇぇぇぇぇぇ‼」
「ばいばい、エマおねーちゃん。絶対に生きてね」
手を伸ばすけど、ベルは笑顔を私に見せて──鬼に食べられた。
「あ──あああああぁぁぁああああああああぁぁぁぁぁ……!!!」
私はまたベルを……! どうして──どうして自分を犠牲にして私たちを守ろうとするの⁉
鬼の咀嚼音が辺りに響く。ベルの骨が、肉が、全身が噛み砕かれる音が聞こえる。そして、飲み込む音が聞こえた。
『その命。大切にすることだな。ガキの死を無駄にしたくはないだろう? 俺はお前たちを一月だけ見逃す。それがあのガキとの〝約束〟なのだからな』
鬼はそう言うと、何処かに去って行った。
「ベル……! うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ───‼」
……私はまた……何も出来なかった。ごめんね……ベル……! ごめんね……私は──私たちはまた……ベルに助けられたよ……‼ ベルを犠牲にしちゃったよ……! 私たちは……何も変わってない……‼
☆☆☆☆☆
あれからもうすぐ一月が経つ。
あのとき、私は何も出来なかった。だけど、もう二度と誰も失わない……‼ 誰一人としてみんなは死なせない……!!!
「……待っててね。ベル」
絶対にあの鬼を殺して、ベルの仇を取ってみせるから……そして生きてみせるから……。生きて、生きて、生き抜いてみせるから……‼ 私が死ぬまで待っていて……!
これは家族を愛していた女の子が大切な家族の一人を失った物語。失いたくないと思っていたものを失ってしまった女の子のお話。
書いてて良心が痛んだので続きは書きません。
なんで俺はこんなの書こうと思ったんでしょうね。
そして番外編のネタも尽きました。