〝勝利〟は誰の手に 作:幻想の詩人
ちなみに番外編は基本的に何となく思い付いたネタとかを衝動のままに書いてるだけだったりします。
……え? 私から見たベル? そうだなぁ……あまり長くは語れないよ? ……それでもいい? うーん、それじゃあ短いけど語らせてもらうね。
☆☆☆☆☆
初めてベルを見たとき、怖いって思ったんだ。
何を考えてるのか、何を見てるのかがわからなかったんだ。何を話しかけても全然反応しなかったから。
それでも根気強く話しかけてたら、いつの日からか反応してくれるようになったの。
最初は無愛想で無表情だったけど、少しずつ笑顔も見せてくれるようになったんだ。あのときは嬉しかったなぁ。それからかな。ベルが私たちのことを優先するようになったのは。
少しでも様子がおかしかったりしたら、すぐに気づいてね。ケガをしてたらママのところに引っ張って行かれちゃった。……でも、自分のことには無頓着だったんだ。例えばあれは……私がベルと一緒に木に登ったときのこと。
「うわぁッ⁉」
「エマッ‼」
私が木から落ちちゃってね。そしたら、すぐにベルが私のことを抱き締めて落ちたの。私はベルがクッションみたいになって無傷みたいなものだったんだけど、ベルは直接地面に叩き付けられて、気絶しちゃった。気絶したベルを見た私は慌てて、
「ベル⁉ 大丈夫⁉」
なんて言いながら、ベルのことを揺すっても反応はなかったの。そんな私の叫び声が聞こえたんだと思う。すぐにママが走ってきてね。
「エマ! 何があったの⁉」
「ママ! ベルが! ベルが……‼」
ベルを見たママはすぐにハウスに運んだんだ。……あのときは物凄く泣いたよ。結局、ベルはその日は起きなかったんだもん。
でも、次の日には普通に起きてたの。
起きてるベルを見て私は泣いちゃったんだ。起きてよかった、って。
でもベルは泣いてる私を見て、
「エマ? 何があったの?」
とか聞いてきたんだ。無言で抱き着いた私は悪くないよね。
ベルはそんな私を不思議そうに見てたんだけど、抱き締め返してくれたの。……いま思い返すとちょっと恥ずかしい。ママはニヤニヤしながら見てたし。
……? その話はいい? なら……脱獄する前くらいの話をしようか。
☆☆☆☆☆
私とノーマンがハウスの真実を知った次の日、朝に弱かったベルが起きてたの。どうしたんだろう? って思って近づいたんだけど、ベルがいきなり、
「だとしたらショックだな」
って言っててね。何がショックだったのか気になった私は話しかけたんだ。そしたら凄く驚いてた。ベルの驚いた顔なんて見たのは、そのときが初めてかも。
それで話しかけたときに、何がショックなのか聞いたんだけど……
「いや、俺って信用されてないのかな? って思ったらさ」
って言われたんだ。私はベルがなんでそう思ったのかわかんなかった。だって、少なくとも私は信用してたから。だから、なんでそう思ったのか聞いたんだ。そしたら……
「エマたちに、気軽に相談してくれよ。って言ったのにちっとも相談してくれねぇから……」
ベルは不貞腐れながらそう言ったの。そんな顔のベルも初めて見た。
そのときの私は相談するほどのことじゃないって言ったんだ。……きっと、ベルはそのときには既に私たちの様子がおかしかったことに気づいていたんだろうね。
ベルは私たちがリトルバーニーをコニーに届けようとしてたのも知っていたし、ハウスに戻ってきたときに、リトルバーニーを持っていなかったことも知ってたんだもの。
それでもベルはなにもしてこなかった。……もしかしたらその時点でハウスの真実に辿り着きかけてたのかもしれない。だから積極的に関わろうとしなかったのかも。……今となってはわからないけどね。
……その日の夕食のとき、ベルの里親が決まったってママがみんなに言った。そのとき初めてベルの誕生日を知ったんだ。ベルの誕生日をママ以外は誰も知らなかったから。ベルが教えないでほしい、って言ったんだって。
その日の夜かな。
「どうか、エマたちの未来に光がありますように」
ベルがベッドでそう言ってるのが聞こえたんだ。だから思わず言っちゃった。自分のことを蔑ろにしないでって。……ベルに聞こえてたのかはわからないんだけどね。
☆☆☆☆☆
ベルが不貞腐れた次の日。ハウスの真実をレイになら話しても良いんじゃないか、って私がノーマンに言ったんだ。……どうしてベルに言わなかったのかって? そんなの決まってる。
どうしてそう言うことが出来るのか? ……ベルは自分のことを蔑ろにしてでも、私たちのことを優先してたからね。そう考えるのも当然だと思う。
……このときにどうしてそんなベルが関わってこないのかを考えるべきだった。そのおかしさに気づくべきだった。
でも、当時の私たちはそれに気づけなかった。明らかに異常だったのに、気づくことが出来なかったんだ。
レイにはちゃんと教えて、レイとノーマンと私で図書室で情報集めをしてたんだけど……その途中で私たちはママに呼び出された。正確には、私たちに加えてベルとドン、ギルダもなんだけど。
それで手伝いをしたんだ。食糧庫の確認、予備リネンの点検、空き部屋の片付け。三日間それをしてた。
ママが何を考えてるのか私たちにはわからなかったんだ。でも、ベルにはわかってたみたい。
それに、私たちはそのとき初めて理解したんだ。ベルがハウスの真実を知っている、或いは近づいていることを。
何故わかったのか? それはギルダがドンを引っ張って行ったときにベルが、
「俺もあっち手伝ってくる。そのほうがいろいろ話しやすいこともあるだろ?」
なんて言ったんだもん。すぐにわかるよね。
だからベルに話を聞こうってノーマンとレイに言ったんだ。……本当はあまり気は進まなかった。でも、それでも聞かないといけないと思ったんだ。
「それで? 話って?」
ベルは図書室に来て最初にそう言った。それに対してノーマンが、
「ベルならわかってるんじゃない?」
なんて言ってね。でもベルは、
「さあ? 俺はお前たちより頭が悪いからわかんないな」
って返答したの。ベルは誤魔化すつもりなんだ、って思った。でもノーマンが全部話すからベルも話してって言ったら素直に頷いたの。……いま考えてみたら、あまり誤魔化す気がなかったのかもね。あのとき聞いておけば良かったな……。
……あ、話がそれちゃったね。それでベルに全部話したあと、ベルはこう言ったんだ。
「やっぱりコニーは死んじゃってたか」
って。思わず聞き返しちゃった。私たちの様子がおかしかったから考えた可能性の一つだったんだって。あのときは、それだけで? なんて思ったよ。……でも、同時に本当に私たちのことを見てるんだな、って嬉しかった。
……なんでちょっと引いてるの? 気にしなくて良いから続きを教えて? ……うーん、釈然としないけどわかった。
そのときに、ベルに言おうと思ったんだ。〝逃げて〟って。……発信器があるから、逃げても居場所がバレるのにね。それでも逃げて欲しかったんだ。……ベルには拒否されちゃったけど。
拒否した理由はベルらしい理由だった。……逃げたら私たちの計画に影響があるかもしれないから、なんて理由だったんだもん。……そのときに気づいたんだ。ベルは自分のことなんてどうでもいいんだって。だから自分を簡単に見捨てれた。だから自分より私たちを優先するんだって。
そのあと、ベルの知ってることを話してもらったけど……まさか発信器の場所を予想してるとは思わなかったなぁ。
あと人が増えるって言ってたの。……たぶん大人が増えるってことを言ってたんだろうね。すぐに眠いからって部屋に戻っちゃったけど。
私たちもベルの言ったことを簡単に話し合ったら、部屋に戻った。
そのときに私とベルは同じ部屋だったから……ベルのベッドに忍び込んだんだ。ベルを一人にさせたくなかったから抱き締めて……いつの間にか寝ちゃってた。
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それで朝に目が覚めたときは驚いた。ベルが泣いてたから。何かあったんだと思った。だから聞いたんだ。
何があったの? って。でも、ベルは心底わからないみたいな表情で、なんでって聞いてきたんだ。
ベルは自分が泣いてることに気づいてなかった。
……私たちを頼ってほしかった。でも、ベルは頼り方を知らなかったんだ。今まで殆どのことが一人で出来てたベルは誰かを頼れなかったんだ。……ううん、きっとベルは
大切には思ってても、それは守るべき対象としてであって、
……でも、そんなベルが無意識かもしれないけれど、私たちを
だから、嬉しかったけど……逃げられないのがとても悔しくて……。
そんなことを考えてたらまた寝ちゃってたの。……あとからベルに聞いたら、ベルの服の裾を掴んだままだったんだって。
それでシスターに新しい妹のキャロルが来て、発信器の詳細な場所を確認したんだ。
その日の夜。ベルがいきなり発信器の場所の確認をしたり、フクロウの蔵書票がモールス符号になってるって言ってきて驚いた。……どういうことか聞いてもすぐに寝ちゃうし。
☆☆☆☆☆
ベルの出荷の日。私はベルと一緒にいた。ノーマンやレイと話し合うべきだったんだと思うけど、私がベルと一緒にいたいって言ったら二人ともそうさせてくれた。
ベルは木の下で本を読んでた。だから黙って近くに座った。
ベルは不思議そうにして、どうして来たのか聞いてきた。ベルがいなくなっちゃうからだって答えたらね? いきなりベルが私を抱き締めたの。びっくりしちゃった。
そして、ベルは私にこう言ってきたの。
「大丈夫だよ、エマ。俺のことなんて気にしなくて大丈夫。だから笑って?」
そんなことをベルは言ってきた。……だから笑って訂正してあげた。
ベルも大切な家族なんだって言ってあげたんだ。そしたら、ベルは嬉しそうにしてた。
……ベルが私を抱き締めて少し経ったとき。
「気になるけど駄目だね」
ベルが突然そう呟いた。何が気になるのか、何が駄目なのかを聞いてみたけれど、ベルは笑いながら「なんでもない」って言ってきたんだ。
そうして、ベルがいなくなっちゃう日は、二人でいろんな話をして笑いあったよ。
え? これくらいでいい? ……そっか。また聞きたいことがあったら来てね。いつでも話してあげるから。
☆☆☆☆☆
「エマー!」
「あ、ギルダ! どうかした?」
ギルダが走ってきた。何かあったのかな?
「エマ、誰かと話してたの?」
「え? ……
いきなりどうしたんだろう?
「そう? 何だか楽しそうなエマの声が聞こえてたんだけど、気のせいかな」
「きっと気のせいだよ!」
だって、
それにしても、何かあった訳じゃないみたいで良かった。
「……あ! そろそろ時間⁉ ならこの
「あっちにレイたちもいるよ」
「急がないと!」
ギルダを引っ張って、ギルダの指差した方向に走っていった。だからだろうか。
『いつでもおいで。そして、来たらまた僕に思い出を語ってくれると嬉しいな』
そんな声には気づかなかった。
エマに語りかけてたのは誰なんでしょうね?
やぁ、また会ったね。僕は傍観者なんじゃなかったか、だって? そのつもりでいたんだけど、当事者に話を聞きたくなっちゃったからね。そのくらいは許しておくれよ。