〝勝利〟は誰の手に   作:幻想の詩人

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タイトル通りです。気合と根性で覚醒します。シーンは鬼にヴィダを刺される瞬間くらいから始まります。時系列は……エマたちが脱走する前くらい? ベルの誕生日は本編と違ってエマたちが脱出するちょっと前とかだと思っていてください。あと細かいことは気にしないで、脳を溶かして読んでください。
知り合いに書いてと言われたので書いてみました。これ需要あるか? そして完結したのに俺は何してんだろう?


もしもベルが光の奴隷もどきだったら

 鬼がベルの身体を右手で掴み、左手に持ったヴィダをベルの胸に突き刺そうとする。すぐそこに迫る死。鬼の力はベルの抗える程度のものでは断じてない。故にベルの人生はここで終わり──

「──いいやまだだ!」

 ──ヴィダがベルに突き刺さる刹那、ベルを掴んでいた右手が内側から力任せに開かれた(・・・・・・・・・・・・)

「───っ⁉」

 驚愕して動きが止まる鬼。だがそれも当然だろう。ベルでは絶対に不可能だったはずだ。抗うことなど出来なかったはずなのだ。なのに、ベルは力任せに鬼の手から脱出した。そんなもの誰でも動揺するに決まっている。

 しかし、その動揺はこの場において致命的だった。ベルは動きが止まった鬼から一瞬でヴィダを強奪する。

「お前たちに恨みがある訳じゃない。きっとお前たちも生きるために人間(おれたち)を喰らっているのだろう。だけど──」

 ──それを許せばエマが泣いてしまう。だからお前たちの存在を許す訳にはいかない。

 そうベルは鬼に告げた。

「だから我らを殺すだと⁉ そんなこと──」

 ベルの言葉に吼えようとした鬼の仮面が奪われる。そして、ベルに奪われていたヴィダが鬼の目に刺された。ベルは一片の躊躇いもなく、ヴィダを目の奥まで刺したのだ。

「グ──ギャアアァァァァアァァアアアア───!?」

 鬼が悲鳴をあげる。その叫び声は尋常ではない。何故なら目は鬼にとって重要な器官だ。いや、人間にとっても重要ではあるのだが、鬼にとっては一番重要と言っても過言ではない。何故なら目の奥には命を維持するための核があるからだ。それは鬼の弱点。そこにヴィダを刺された。

 鬼の弱点をベルは知らないが、仮面が奪えた──より正確には外せた時点でそこが弱点、あるいは弱点に関係する場所であると判断していた。

 故にベルは目を刺した。奥まで届くようにぐっさりと刺した。鬼に目が大量にあったことに驚きはしたものの、だからどうしたと一番突き刺しやすい場所を狙った。そして、鬼の叫び声を聞いて確信した。

「なるほど、お前たちは目が──より正確には目の奥にある〝何か〟が弱点なのか」

 ベルはそう言ったが、そのときには鬼はもう息絶えていた。それに気づいたベルが、目を閉じて手を合わせた瞬間──

「おい、どうした⁉」

「何があった‼」

 鬼が数体奥より現れる。先ほど死んだ鬼の叫び声を聞いて駆けつけたのだろう。どう考えてもピンチだろう。これをピンチではないと言えるものがどれだけいる。

 だが、目を開いてそれを見たベルは笑いを受かべて宣言する。

「どれだけ来ようと無駄だ。エマを──家族を守ろうとする限り俺は無敵だ。来るがいいッ! お前たちに家族(みんな)未来(あす)は奪わせないッ!」

 単騎(ひとり)で複数の鬼を相手する。無謀にも程がある。しかも鬼がどれだけいるのかわからないのだ。誰に聞こうと〝それは無謀だ〟と答えるに違いない。

 しかし、それでも(・・・・)とベルはどれだけいるのかわからない鬼と戦う。すべては大好きな女の子(エマ)の涙を拭うため、家族(みんな)笑顔(しあわせ)を守るため。愚かだと嘲笑うものもいるだろう。蛮勇だと言うものもいるだろう。逃げてと叫ぶものもいるかもしれない。だが、それらすべてをベルは一蹴するだろう。

 ベルは本気で鬼を殺し尽くすつもりなのだ。何処までも本気で、全力で鬼を滅ぼすつもりなのだ。それも、家族の未来を奪わせないという理由だけで。

 ベルは狂人だ。まともじゃないと10人中10人が言うに違いない。だが、それでもベルは良かった。たとえ狂人と呼ばれようと、悪だと糾弾されようと止まらない。否、止まれないのだ。精神が突き抜けすぎていて、自分でも止まることを許せない。例外はエマや家族が止めたときだろうか。しかし、それでも止める理由に納得出来なければ止まらないだろう。

『頭は傷つけるな! それ以外の部分は傷つけても構わん‼』

 一体の鬼がベルには理解の出来ない言葉で他の鬼に命令を下す。そして、それと同時に一斉に武装した鬼が動き出した。

 それを見てベルは告げる。

「──〝勝つ〟のは俺だッ!」

 ベルに武器などない。あるのは自分の肉体だけだ。だが、それで充分だと笑みを浮かべて無数の鬼に突撃した。気合と根性、そして自分の肉体だけを頼りにして、鬼と戦うのだ。勝算などありはしないとわかっていながら、鬼に喰われるために育てられた少年は、いま鬼にその牙を剥いた。

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 どれだけの時間が経ったのだろうか。

「ゲホッ……! ゲホッ……‼」

 ベルの姿はボロボロだった。左腕や右足は鋭い爪に貫かれて穴が空いていたし、あちこちに切り傷や打撲傷があり、身体で無傷な部分を探すほうが難しいだろう。無傷なのは頭部くらいのものだ。

 そんなベルの周囲には鬼の死体が無数に転がっていた。その光景はまさに屍山血河と比喩するに相応しい。

「……まだだ」

 そんな光景を作り出しても、まだだとベルは言う。血みどろの地獄を作り出しても足りないとベルは言う。

「エマの涙を拭うためには……家族(みんな)笑顔(しあわせ)を守るためにはまだ……!」

 ベルは本当にこれでエマの涙を拭えると思っているのだ。本気で家族の笑顔を守れると思っているのだ。どう考えてもそんな訳がないと思えるような惨状を作り出したというのに、そう本気で信じている。

「必ず鬼を全滅させてみせる……! それまで俺は絶対に止まらない……‼ 止まれるものか……‼」

 武装した鬼から奪い、自分が扱いやすい長さに刀身を折った剣を二本持ちながらベルは歩き始めた。鬼を滅ぼし尽くすために──

「……違う、そうじゃない」

 ベルがいきなり止まる。

 ───みんなはどうなったのか。それを確かめないといけない。鬼どもを滅ぼすのはそのあとでもいい。俺が出荷されてから、ある程度の時間が経っていることは確実だ。鬼どもを殺しながら奥に来てしまったこともある。戻るのにどれだけ時間をかける必要があるのかもわからない。さすがに長くても数時間くらいだと思うけど……そもそも今は何時だ? やはり一度外を確かめないとか。

 そう考えたベルは、すぐに門のほうに向かった。

 

 

 

 

 

 

門に着いたベルが見えたのは、何かが燃えている光景だった。

「……はぁ?」

 門が開いていないのはベルも予想していた。と言うよりも、開いているほうが驚いただろう。だが、ハウスのある方から火の手が上がっているのは予想していなかった。ハウスのある方で火の手が上がっているということは、つまり──

「ハウスで火事でも起こったか……⁉」

 そうじゃない可能性もあるかもしれない。だが、空は暗いことから、おそらくは夜。……もしも、今日がレイの誕生日なら? ……レイならそれくらいやるかもしれない。

 ベルはそう考えて焦る。

「無事じゃなかったら許さない……!」

 ──お願いだから生きていて。

 ベルはただそれだけを思って、門に対して剣を振るって力任せに破壊し、ハウスに走っていった。

 

 

 

 

 ハウスに走っていく最中、いきなり警報音が鳴り響く。

「チッ! まだ残ってたか!」

 全滅させた、とは思っていなかったベルだが、これには痛烈に舌打ちした。

 だが、同時に安心する。エマたちが脱走したのだと思ったからだ。ならハウスに向かう必要はない。

 そう考えたベルは近くの塀を登る。塀に剣を一本だけ力任せに突き刺し、それを足場にして登る。どう考えても無理だろうとしか思えないことを気合と根性でやってのけた。もし誰かがそれを見たら驚きで動きを止めることだろう。誰もいないのでそんなことはなかったが。

 

 

「見つけた……‼」

 数分ほど全力で走った先にエマがいた。それを見て安心した表情を見せるベル。

「ベル……⁉」

「お前、生きてたのか⁉」

 そんなベルを見て、塀の上にいるエマだけではなく、崖の向こうにいるレイも驚く。ベルは出荷されたのだから、生存しているのに驚愕するのも無理はない。

 崖の向こうにいた他の子供たちはベルの姿を見て絶句していた。身体はボロボロで血塗れの姿。しかも折れた剣を持っているのだ。絶句もする。何人かは涙を堪えてすらいる。トラウマにならないことを祈るばかりである。

「逃げるんだろ? 早く行きなよ。あまり時間はない」

 ベルはそんなエマや崖の向こうの子供たちに気づいてはいるが、自分が血塗れであることからすぐに鬼が来るかもしれないと考えた。故に早く逃げろと言う。

 エマからしたら聞きたいことはたくさんあっただろう。話したいことだってあっただろう。だが、

「……ママ」

 ベルがエマの背後を見て、そう呟いたのが聞こえた。

「……!」

 エマが背後を見てみると、確かにママがいた。恐らく走ってきたのだろう。息を切らせてエマから少し離れた場所に立っていた。

「行け! エマ! 絶対に後から俺も向かう‼」

 ベルが絶対に追い付くという意思を込めてエマに言う。その言葉で決心したのだろうか。

「……絶対に追い付いてね。約束だよ!」

 エマがそう言いながら、ロープにハンガーを掛ける。

 それを見たママが消え入りそうな声で言った。

「行かないで……私の愛しい子供たち……!」

 それを見てベルは理解する。あぁ、ママは──本当に子供たちを愛していたのだと。……だからこそ悔しく思った。ママも逃がせないことを。それには時間も道具も足りないのだから。

 エマも一瞬躊躇うような様子を見せたが、すぐにロープを滑って崖の向こうに行った。

 崖の向こうにエマがたどり着いたのを見ると、早く行けという意思を込めて見る。

「……っ!」

 そんなベルの目を見て理解したのだろう。エマたちは歯を食い縛る。そして、少し経ってから森の奥に走って行った。ロープをほどいて行かなかったのは、ベルが崖を渡る手段をなくさないためだろうか。

「……私の負けね」

 そう言うと、結んでいた髪をほどくママ。

「そう、ママの負け。そして、エマたちの勝ちだ」

 そんなママに話しかけるベル。

「貴方は行かなくて良かったの?」

「まさか、もちろん行くよ。そしてすぐに追い付く」

 笑顔でママに言うベル。すぐに追い付くと確信しているのだろうと思えるような声音だった。

「それじゃあ、ばいばいママ。いってきます」

 ベルはそう言うと、残っていたロープを素手で掴んで渡っていった。そして、崖の向こうに着くと結んであったロープをほどいてエマたちの向かった方向に全力で走っていく。

「──いってらっしゃい。気を付けてね」

 ママは穏やかな表情でそれを見送ると、ロープを回収して、フィルたちのいるところに戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

これは英雄譚でもなければ逆襲劇でもない。ただ、理想を実現しようと努力する子供の物語。家族を──みんなを救おうと、必死に努力して歩む子供たちの軌跡(じんせい)の物語。




これは続かない。(断言)
続いたらレウウィス大公がまだだっ! する気がするし。ベルくんもそれに応じてまだだっ! するだろうし、レウウィス大公もそれを見て歓喜してまだだっ! して、ベルくんも(以下略)
そもそも俺が戦闘シーンを全然書けないという問題もあるけど。
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