魔道士リザの冒険譚(星のドラゴンクエストStory冒険日誌)   作:ジョギー

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アタシは魔道士リザ。
そして新たな・・・冒険王姉弟の一人です。
祖父である初代冒険王ガイアスの
意志を継ぎ、日々、冒険の旅をしています。
さて本日の冒険日誌。



エピソード3.「邪悪な気配の正体!?」

宇宙王の末裔オリオリが率いる義勇軍には

大義がある。

圧政を強いる宇宙政府を倒し平和で平等な

世の中を取り戻すという、ね。

 

アタシは義勇軍の大義こそ真理だと信じて

義勇軍に参加した。

ここ惑星クラウドに来てから、義勇軍と

行動を共にして来た今、その想いは

更に強くなり、間違いではなかったと

信じてるわ。

 

けど、冷静に大局を見て、客観的に

自分達の勢力の立ち位置を考えれば、

やはり義勇軍は体制に逆らう革命集団、

反逆者でしかない。

 

人は、少数派に味方するのは

なかなか難しいと考える生き物。

多勢、強き権力に靡くもの。

たとえそれが、悪しき権力だとしても。

 

それをまざまざと思い知らされる、

そんな出来事だったわ、この地で起きた事は。

 

「お久しぶりです、マタセ国大臣殿。」

 

「こ、これは!

オリオリ様、お久しゅうございます!」

 

人の良さそうな年配の大臣さんが

マタセ王への謁見を取りなしてくれた。

 

この大陸へと向かう飛行船の中で

「マタセ国は義勇軍へ密かに支援

してくれている」とオリオリに聞かされていた

ものの、タァコ王の一件もある事だから

アタシは少し警戒心を持ちながら

謁見の間へと続く廊下を歩いていた。

 

その証拠に、アタシが感じた邪悪な気配。

この城に到着してから、それが一層濃く

感じられるわ。

残念ながら城内に魔物が潜んでいる

可能性があるわね。

いつでも迎撃できるよう警戒は

しておかないといけないわね。

 

謁見の間に通され、平伏しながら

王の入室を待っていると、

コツっコツっコツっと足音が聞こえてくる。

マタセ王が部屋に向かっているのだろう。

 

・・・・!まさかっ!

邪悪な気配が濃くなってくる!?

アタシは思わず顔を伏せてしまった。

 

ギギィ~。

扉が開く音がし、足音の主が玉座に

着座した。アタシは顔を伏せてるけど

気配でそれがわかった。

 

「よくぞ参られた、オリオリ殿、

そして義勇軍の諸君。

表向き、宇宙政府への服従を示しておるゆえ

大きな声では言えぬが、諸君らの参内、

心より歓迎するっ!」

 

「お久しぶりです、マタセ王。

お目通りをお許しいただき感謝します。」

 

「ふむ、我らは同志、堅苦しいのは

抜きにしよう。

ほれ、供の者らも顔を上げるが良い。」

 

オリオリが一通りの挨拶を済ませると

マタセ王がアタシ達にも顔を上げるよう

促してきた。

 

アタシは恐る恐る顔を上げ、王に視線を向けた。

 

・・・・!!

やっぱりっ!!

 

王とアタシの視線が交錯する。

かなり・・・・混じってる・・・・。

 

アタシは彼の瞳の奥に宿る邪悪な炎を

見つけてしまった。

なんてこと!

邪悪な気配が近いどころか、此処が

その根源だったなんて。

 

【挿絵表示】

 

「見かけん顔だな、新入りかな?

オリオリ殿。」

 

「はい、苛烈さを増す宇宙政府の力に

対抗するため、私自ら参軍を願い出た

強力な助っ人です。

彼女らがいれば必ずや宇宙政府を倒せると、

私は信じております。」

 

「ほぉぉぉ!

そなたにそこまで言わせるとはな、

これは頼もしい援軍ではないか!

また一歩、打倒宇宙政府に近づいた

というワケだな。」

 

このマタセ王という男の邪悪な炎の根源が

何なのか、今はわからないけど、

彼は腹のうちでは義勇軍を支持していない

んじゃないかしら。

宇宙政府に服従しているのは表向き、

と言いながら政府と義勇軍とを天秤にかけ、

時流に逆らわず旗色が悪いほうを斬り捨てる、

そんなところかしら。

 

彼の口から出てくる言葉全てが白々しく聞こえ、

アタシはどんな顔をしていいかわからず

再び顔を伏せた。

オリオリが本題に入る。

 

「ところで王、ここ最近この島で、

新しい、今までとは違った邪悪な存在・気配を

感じたことはありませんか?

もしくはそのような報告が届いていない

でしょうか?

私達はその気配の正体がなんなのか探るため

この島にやってきました。」

 

「新しい邪悪な気配??

はて、そのような話は聞いておらぬし、

ワシにもそのような覚えはないのぉ。

・・・・!

そういえば!」

 

「何かお心あたりでも!?」

 

「邪悪な気配と関係しているのか

わかりかねるが、つい最近、

星屑魔法団がこの城にやってきたぞ。

彼らは『新しい魔星王を誕生させた』と

申しておった。」

 

「・・・そうですか・・・・

やはり夫、いえ、魔法団は魔星王を!

信じたくはなかったのですが・・・。」

 

「新しい魔星王は魔法団の面々ですら

想像できないような姿をしているらしい。」

 

「魔星王誕生に立ち会った政府の上級執行官も

そのようなことを申しておりました。

・・・・。

この島に忍び寄る邪悪な気配の正体は

その新しい魔星王かもしれません。

魔星王の姿や所在、その他てがかりは

星屑魔法団に確かめるほかないと

考えております。

王、ここにやって来た魔法団は、その後

何処へ向かいましたか?」

 

「この城の北方にマタセ山という山がある。

その麓に塔が建っておってな、

そこへ向かうと言っていた。

魔法団、そなたの夫セアドに会いたければ

その塔へ向かうといいだろう。」

 

「承知しました、情報提供ありがとう、

感謝いたします、マタセ王。」

 

「うむ、諸君らの旅の無事を祈る。」

 

会見は終わった。

気がつくとアタシはじんわり汗ばんでいた。

マタセ王から発せられる邪悪な気配は、

それほど巨大なものではなかった。

それ自体に恐れおののいたわけじゃないわ。

けど、邪悪な気配を放つ者が一国の主として

何食わぬ顔で玉座に鎮座している、

その事実が恐ろしかったのだろう。

 

城を出、北のマタセ山へ向かうことにした

アタシ達。

城門を出てしばらく歩いたのち、アタシは

周囲を見渡し警戒しながら小声で

オリオリを呼んだ。

 

「オリオリ・・・・驚かないで聞いて。

塔へ向かうのは罠かもしれない。

マタセ王は・・・。」

 

「リザさん、さずがです、気づかれましたか。

大丈夫、わかっています。

けど今はそれ以上口にしてはいけません。

いつ、どこから、誰が私達一行を

見ているかわかりませんからね。

とにかく今は、魔法団が向かったという

マタセ山の塔へ向かうしかありません。

他に手がかりは何もないのです。」

 

オリオリ!

さすがアタシ達のリーダー、宇宙王の末裔だわ。

オリオリもマタセ王が普通ではないと

気づいてるみたいね。

そうね、今はとにかく魔法団に会って

確かめるしか方法がないもの。

 

新しい魔星王はどんな姿で、どれほどの力を持ち、

そして何処にいるのか。

そもそも何故、宇宙政府に加担し

魔星王誕生に力を貸したのか。

何よりセアド、あなたは妻であるオリオリの

気持ちをどう考えているのか?

聞きたいことは山程あるわ。

 

アタシ達は抱えきれないほどの疑問や不安を

抱えながらマタセ山へと歩いていた。




★★★登場人物★★★
・魔道士リザ
本編の主人公、つまりアタシ。
職業は賢者。
偉大な魔道士を目指すべく
日々、冒険を通じ修行をしてるの。

・ジョギー
アタシの弟。
職業はバトルマスター。
得意な武器は剣。

・レイファン
末の妹。
職業はスーパースター。
回復行動に優れ、オンステージという
スキルで味方をサポートする役割が多い。

・モガ丸
モモンガ族。
おっちょこちょいで時に空気を読まない
発言が多い。けど憎めない、アタシ達の
一番の友達であり理解者。

・スラッピ
モガ丸といつも一緒にいるスライム。
言葉を話すわけじゃないけど
モガ丸だけはスラッピの話している
ことがわかるらしい。
実はスラッピが人間の言葉を話すと
関西弁だということが判明。

・オリオリ
冒険王の書に似た『宇宙王の書』という
本から現れる謎の女性。
その正体はかつて全宇宙を平和に治めていた
宇宙王の末裔。
かつ宇宙政府打倒を目指すレジスタンスグループ
『義勇軍』の総司令官。
実は既婚者だという事が判明。
これにはアタシもビックリ!

・コッツ
義勇軍3番隊の女性隊長。
3番隊と星屑魔法団の一行は
「星屑サーカス団」として身分を偽り
宇宙政府から身を隠していた。
ある時現れた白いスライムナイトの
調略により星屑魔法団は3番隊の元から
姿を消してしまう。
消えた魔法団と宇宙政府の上級執行官
との接触を阻止するため3番隊は
奮闘するが返り討ちに遭いコッツ以外の
隊員は捕虜となってしまった。

・マタセ王
マタセ島を治めるマタセ国の国王。
表向き宇宙政府に忠誠を誓っているが
陰ながら義勇軍を支援している人物。
しかし何やら不穏な気配を振りまいている。

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