魔道士リザの冒険譚(星のドラゴンクエストStory冒険日誌)   作:ジョギー

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アタシは魔道士リザ。
そして新たな・・・冒険王姉弟の一人です。
祖父である初代冒険王ガイアスの
意志を継ぎ、日々、冒険の旅をしています。
さて本日の冒険日誌。



エピソード5.「戦うそれぞれの正義」

コイツに間違いなかった!

星屑魔法団に心変わりをさせ、魔星王誕生を

現実のものへと導いた張本人、

白いスライムナイト!!

 

「誰です!?あなたは!」

 

「初めまして、諸君!

私は・・・そうだな、ピエールと

名乗っておこう!」

 

「ピエールっ!?」

 

「もがー!

噂の白いスライムナイトってお前の事か!?」

 

「噂?ほう、私の事が噂に!?

これは光栄だ、愉快、実に愉快だ!」

 

「オリオリ様、間違いありませんっ!

ヤツが星屑魔法団を心変わりさせた

白いスライムナイトですっ!」

 

「ほほぉ、そなたあの時の義勇軍の

女隊長ではないか、そうか、無事だったか、

それは良かった。」

 

「なんだとぉ!

誰のせいで私があんな酷い目に遭ったと

思ってるんだっ!」

 

「コッツ!

気持ちはわかります、しかし今は堪えて!

この者には問いたださねばならない事が

山ほどあります!」

 

どうやら突如現れたこの白い甲冑の戦士が

星屑魔法団を翻意させた張本人みたいね。

アタシは声には出さず呪文の詠唱を

心の中で始めた。

いつ何時でも戦闘を開始できるように。

 

「マタセ王に宇宙政府へ協力するよう

説いたのはアナタですか?」

 

「質問に答える前に!

そこの女魔道士よ、物騒な真似は

やめていただきたい。

オリオリ、上官であるそなたからも

注意してくれないか?」

 

「え!?リザさん?」

 

クッ!コイツ!!

アタシは完全に殺気を消しながら

呪文の準備をしていたのに!

アタシの行動を見破るとはっ!

只者じゃないっ!!

 

「リザさん、どうやらこの者は

我らと争う気はないようです。

戦闘準備を怠らないのはさすがですが、

ここは彼の話を聞くため警戒を解いて

いただけませんか?」

 

オリオリにそう言われては仕方ないわね。

アタシは読み終わった呪文を一旦解除した。

ここはオリオリを信じて任せよう。

 

「よぉし、お利口さんだ、さすがだな、

義勇軍のリーダーにして宇宙王の末裔

オリオリよ。

・・・いかにも!

マタセ王を説得し宇宙政府側に付くよう

仕向けたのは私だっ!

そもそも彼は諸君ら義勇軍にも、

そして宇宙政府にも良い顔をしていた、

実に計算高い男だった。

そんな彼を宇宙政府側に引き込むのは

容易い事だった。

魔星王誕生の事実を伝え、情勢は宇宙政府に

傾きつつある、と伝えるだけで

あっさり宇宙政府への恭順を示したのよ!」

 

「そして魔法団の秘術を用いて魔物へと

改造したのね!」

 

「その事については私も誤算だった。」

 

「え?」

 

「彼は自ら魔物化したいと願い出たのだ。

それが宇宙政府への恭順の交換条件だと

言ってな!」

 

「そ、そんな!」

 

「まぁ、所詮、彼はそういう男だったと

いう事よ。

こちらの足元を見て、それに乗じて

自分の願望を押し付けてくる。

一国の主として富も権力も地位も

手にしている人間が、次に欲するもの、

それは力しかないだろう?

まぁしかし、結局は己が欲望のために

手に入れた邪悪な力、信念なくして得た力だ。

そんなものは真の力ではなかったという事だ。

末路などたかが知れている。

それはそこに居るブルリア星の冒険王に

よって証明された。」

 

・・・この男、かなりキレる!

全くアタシと同じ事を考えているっ!

 

「星屑魔法団を説得し魔星王誕生の計画を

進めたのも私。」

 

「何のためにそのような愚かな事を!?

貴方は宇宙政府の悪事を知らないのですか!」

 

「知っているさ。

知りすぎて、理解し尽くしている。」

 

「知っていながらのその所業!

貴方も所詮はマタセ王と何も変わりませんっ!」

 

「これは手厳しいな。

オリオリよ、貴女が義勇軍などという

雑兵集団を率い政府に対抗する気持ち、

私もよぉくわかる。

宇宙政府の圧政は確かに宇宙の星々の民を

苦しめている、私もその事には

心を痛めている。

しかし政府は邪悪な上にとてつもなく強大だ。

義勇軍ではとても叶わぬのだ。」

 

「だから宇宙政府の手先となるのですか?」

 

「今はな。

しかし私には考えがある。

宇宙政府に力で対抗しても無駄なこと、

外側から政府を変えるのは不可能なんだ。

であれば内側から、内部変革によって

政府の方針を変え、平和で平等な世の中を

目指す、私はそこに活路を見出したいのだ。

わかるかオリオリ、無用な争いは避けるべきだ、

戦いの度に払う犠牲もなくなる。

貴女はただちに武装を解き義勇軍を解散し

私と共に宇宙政府に参入し

幹部となり革命を起こすべきなんだ。」

 

・・・こんな!

こんな甘ったれた考えが!

 

白いスライムナイトの理論だというの!?

こんな安い考えのためにオリオリの旦那様は

心変わりをし、タァコ王が悩み、

新しい魔星王が誕生し、そしてマタセ王が

魔物と化してしまったというの!?

 

こんな安っぽく甘ったれた己を過大評価した

理論を!

一時でも聞いてみたいと思ってしまった

アタシ自身に怒りを覚えるっ!!

ムカッ腹が立ってきたわ!

 

宇宙政府の強さ、巨大さ、邪悪さ、卑劣さ、

腐る程見てきたアタシ達からすれば

とんだ甘ちゃん野郎だわ、この男!

 

一旦はしまった拳だけども、怒りのあまり

無意識のうちに再び、アタシは呪文の

詠唱を始めてしまっていた。

 

「ピエール・・・残念ながら貴方のその

考えは徒労に終わる。

宇宙政府を内側から変えるのは無理です。」

 

「ほぉ、言い切るとはな。

何ゆえそこまで言い切れる?」

 

「宇宙政府は貴方の言う通り、とても巨大な組織です。

いかなる善意も、その巨大な邪悪さと卑劣さで

飲み込んでしまいます。

かつて私の両親も宇宙政府に抵抗していました。

しかし無駄な争いを避けようと、

そう、貴方と同じ考えを抱き政府の一員となり

内側から政府を変えようとしました。

しかしやがて宇宙王の末裔だということが

発覚してしまい容赦なく処刑されて

しまいました。

そして私も命を狙われる事に。

夫のセアドは私の身を守るため

宇宙王の書の中に私を封印しました。

それが私の今の姿です。」

 

そうだったの!

オリオリが本の中に居るのはそういう経緯が あったのね。

そして!

ご両親を宇宙政府に殺された・・・!

親の仇でもあるわけね、宇宙政府は!

謎だったオリオリの過去が、ようやく

語られたわ。

 

アタシは怒りのあまり、戦闘準備を

始めていたけど、オリオリの過去を

知るにつれ、そちらに意識が向くようになってしまった。

それほどに壮絶な過去!

詠唱を完了していた呪文は、

再度霧散していたわ。

 

「いいですか、ピエール!

宇宙政府には戦って勝つしかないのですっ、

内側からの変革を許すほど彼らは甘くない!」

 

「はっはっはっは!

頑固なお嬢さんだ。気に入ったぞオリオリ。

しかしこれ以上のお喋りを続けても

無駄なようだな、お互い平行線を辿る

だけだろう。

ひとまず此処は退くことにする、

いずれまた会おう!

その時こそ貴方を説得してみせるぞ!」

 

「ピエールっ!」

 

「あぁぁぁ!ピエールに逃げられたぞ!

もがぁ!いいのかリザ!?」

 

「追いかけますか?オリオリ様。」

 

「いいえ、今追わずとも彼が言っていた通り、

いずれまた対峙することになるでしょう。

それより、マタセ城に戻り様子を

伺いましょう、王が居なくなり、

きっと大騒ぎになっているでしょうから。」

 

「はっ!承知致しました。」

 

「もが〜、あの大臣さん、

優しそうだったもんなぁ、言えないよな〜、

マタセ王が宇宙政府の魔物になってしまって

リザ達が退治してしまった事・・・」

 

うぅぅ、仕方のなかった事とはいえ、

残された人々の事を思うと、たしかに気が重い〜。

けど、待っていてもマタセ王は帰ってこない、

王の死はいずれ国中に知れ渡るだろう。

少なくとも大臣さんには伝えるべきね。

アタシ達はモガ丸のルーラでマタセ城に

戻る事にした。

 

「あぁぁ、これはオリオリ殿!

大変です、王が居なくなってしまったのです、

忽然と姿を消してしまいましたぁぁぁ!」

 

「・・・。」

 

「星屑魔法団と面会してからというもの、

どうも様子がおかしかった。

付き人の話によれば、自室に1人で篭り、

時折不気味に笑い声を上げる事もあったとか

なかったとか。」

 

「大臣、王の行方はわかりません。

しかし、きっと戻られるでしょう、

それまで貴方が毅然とした態度で

王不在のこの事態を乗り越えてください!」

 

「は?あ、あぁ!

わかりました、そうですね、こんな時こそ

ワシがしっかりせねば!

オリオリ殿、かたじけない、お気遣い

感謝したしまするっ!」

 

「いえ、お力になれず申し訳ない。

ところで大臣は王と面会したという

星屑魔法団の行方はご存知ないでしょうか?」

 

「彼らなら王との面会の後、すぐに

ヨンツゥオ大陸の南部へと向かいました。

この島からの最寄の集落は・・・

そうじゃ、ランペェ村じゃ。

そこには港もある。

飛行船で向かう事ができますぞ。」

 

「承知しました。

大臣、感謝いたします。

そして国の混乱が拡がらないよう

頑張ってください。」

 

「承知致した、オリオリ殿一行もどうか

ご無事で!」

 

オリオリ・・・本当の真実を・・・

いえ、確かにこの状況で本当の事を

伝えるのは忍びないかしら(_ _;

 

自分の仕えていた主が

宇宙政府に魂を売って化物に

なったなんて、俄には信じがたいでしょう。

 

今は王亡きマタセ国を残った人たちで

盛りたてなくちゃあならないもの。

真実を知れば皆、大混乱に陥り、

国は乱れ、それこそ宇宙政府に

付け込まれてしまうかもしれない。

 

今はただ信じよう、

この優しく忠実な大臣さんが

マタセ国を一つにまとめてくれる事を。




★★★登場人物★★★
・魔道士リザ
本編の主人公、つまりアタシ。
職業は賢者。
偉大な魔道士を目指すべく
日々、冒険を通じ修行をしてるの。

・ジョギー
アタシの弟。
職業はバトルマスター。
得意な武器は剣。

・レイファン
末の妹。
職業はスーパースター。
回復行動に優れ、オンステージという
スキルで味方をサポートする役割が多い。

・モガ丸
モモンガ族。
おっちょこちょいで時に空気を読まない
発言が多い。けど憎めない、アタシ達の
一番の友達であり理解者。

・スラッピ
モガ丸といつも一緒にいるスライム。
言葉を話すわけじゃないけど
モガ丸だけはスラッピの話している
ことがわかるらしい。
実はスラッピが人間の言葉を話すと
関西弁だということが判明。

・オリオリ
冒険王の書に似た『宇宙王の書』という
本から現れる謎の女性。
その正体はかつて全宇宙を平和に治めていた
宇宙王の末裔。
かつ宇宙政府打倒を目指すレジスタンスグループ
『義勇軍』の総司令官。
実は既婚者だという事が判明。
これにはアタシもビックリ!

・コッツ
義勇軍3番隊の女性隊長。
3番隊と星屑魔法団の一行は
「星屑サーカス団」として身分を偽り
宇宙政府から身を隠していた。
ある時現れた白いスライムナイトの
調略により星屑魔法団は3番隊の元から
姿を消してしまう。
消えた魔法団と宇宙政府の上級執行官
との接触を阻止するため3番隊は
奮闘するが返り討ちに遭いコッツ以外の
隊員は捕虜となってしまった。

・ピエール
白いスライムを駆るスライムナイト。
数々の調略を駆使し各国首脳、さらには
星屑魔法団までも宇宙政府へ恭順させる。
新しい魔星王誕生成功という事柄の
直接の張本人は"秘術"を行使した星屑魔法団だけど、
魔法団を宇宙政府側に協力させたピエールの罪は
この上なく重いとアタシは思う。

Story日誌 第4章<白い騎士>了

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