魔道士リザの冒険譚(星のドラゴンクエストStory冒険日誌)   作:ジョギー

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アタシは魔道士リザ。
そして新たな・・・冒険王姉弟の一人です。
祖父である初代冒険王ガイアスの
意志を継ぎ、日々、冒険の旅をしています。
さて本日の冒険日誌。



エピソード3.「平行線」

「相変わらず見事な手練だな

ブルリア星の冒険王諸君。」

 

白いスライムナイト、ピエール!

反政府運動に異を唱え、

あくまで政府改革を促す男。

 

目下のところ、今しがた倒した

上級執行官チョルルカ、魔法団との

3者で何やら画策していたらしいわね。

 

「ピエールとやら!

チョルルカは我々が倒しました、

魔法団はどこです!?」

 

オリオリがピエールに問いかける。

 

「魔法団は既にこの地を去った。」

 

「では貴方やチョルルカがこの宇宙船基地に

来た目的はなんです?

この星からの脱出を図っていたのですか?」

 

「もが!チョルルカが言っていた・・・・

『新しい魔星王はこの星そのもの』

という内容とカンケーあんのか!?」

 

「当然だろう、言わずもがな、だ。

私と星屑魔法団は魔星王となった

この星から早急に脱出する予定だった。

だがその計画も諸君らがチョルルカを

倒したことで頓挫してしまった。

私はチョルルカの城に向かい

新しい上級執行官を連れてこよう。

宇宙船は上級執行官でなければ

動かす事ができないからな。」

 

・・・この星から脱出・・・この星そのものが

魔星王・・・どういう意味かまだわかんないけど

脱出しなければいけないほどに

危ない事が起きようとしてるって事?

魔星王誕生によって具体的には

この星に何が起きようとしてるんだろう?

 

「諸君らに力がある事は重々

理解していたが、まさか上級執行官を

これほど容易く退けるとはな・・・!

しかしこれ以上我々の邪魔をすると

いうのなら・・・血の雨が降るぞ・・・!」

 

「もが~・・・・怖い・・・・・。」

 

「ハッハッハ、まぁ最も!

オリオリ、貴女が義勇軍の看板を

降ろし我らに賛同するというのなら

話は別だ。」

 

「言ったはずです!

私達が宇宙政府に協力するなど

あり得ません!!」

 

「相変わらず頑固なお嬢さんだ。

だが賢い貴女ならいずれ最良の選択を

してくれるはずだろう。

巨大な政府に盾突くことの愚かさに

気づくはず。

私は急ぐのでな、また会おう、諸君っ!」

 

「待ちなさいっ!」

 

アタシは立ち去ろうとするピエールを

呼び止めた。

 

「むぅ、何だね冒険王のお嬢さん。」

 

「先日アナタに会って。

いきなりのことだったから聞きそびれて

しまったけども。

あれからアタシはアナタの考えや

話した内容が頭から離れない。

アナタ、自分のやっている事、

わかってる?ホントに正しいと

思ってる?」

 

アタシはマタセ山の塔で初めて

ピエールと対峙したあの時から

ずーっと考えていた事や疑問を

本人にぶつけたいと思っていた。

 

「フフ、何を言い出すかと思えば。

当然だ、正しいと思ってるからこそ、

そこかしこの国々やグループに

私の考えを触れて回っているのだ。

私は純粋に全宇宙の平和を願っている。

そのための宇宙政府の内部改革を

目指している。

私が私利私欲のために動いてるとでも

言うのか?

侮辱するというのならこの場で

償ってもらうぞ、命を持ってしてな!」

 

「宇宙の平和を願っているのか、

私利私欲で動いているのか、

現時点では判断しかねるわ。

少なくともアタシの信念に

照らし合わせるならば、

アナタは明らかに間違った

行動をしているもの。」

 

「確かにな。

私と貴女はどうやら正反対の

考えをしているようだ。」

 

「アナタ、政府の内部改革のために

色々と暗躍してそうだけど、

ずいぶんと政府の役人と

関わってるんじゃない?

アナタの考えそうな事など

すでに政府上層部に筒抜けだと

思うわ。

そんな危険分子を!

邪悪で卑劣で狡猾な政府の上層部が

重用するとでも思ってるの?」

 

「で?いずれ私が政府に消されると?

フフフ、これは光栄、冒険王様に

私の身を案じてもらえるとはな。」

 

「はぐらかさないでっ!

ピエール、アナタ自分のやってきた事で

周りの人間がどれだけ不幸に陥ってるか

わかってる!?

アナタが魔法団に心変わりを促したせいで

ここにいるオリオリがどれだけ

苦しい思いをしているか!

マタセ王を心変わりさせたせいで

マタセ国をどれだけ混乱に陥れたか、

わかってるの!?」

 

「リザさん・・・・私なら大丈夫です。

私情で道を誤ることなどありません。」

 

オリオリ・・・・その思いが側で

見ている者には痛々しく映るんだよ

 

「マタセ国なら大丈夫だろう。

大臣がよく頑張ってくれている。」

 

「そんなの結果論でしょ!

それに大臣サンは今も帰ってくるはずの

ない国王を待ちながら必死に混乱を

収拾しているのよ!!

どれだけ不安な日々を過ごしてるか、

アンタにはわからないの!?」

 

アタシはピエールと会話を続けるに

つれ怒りが沸々と湧いてきた。

 

「マタセ王はそもそも義勇軍と

宇宙政府を天秤にかけていた。

私が接触せずともいずれ

宇宙政府側に付いていただろう。

私の責任ではない。

それにオリオリの苦しみは・・・。

簡単なことだ、オリオリも

宇宙政府側に付く、

そうすれば夫婦揃って過ごす

ことができよう。」

 

クッ!

ああ言えばこう言う!

なんて口が達者なのコイツ

 

「魔星王誕生はどうなの!

あんなモノを生み出すなんて。

アナタ魔星王の恐ろしさを知ってるの?

この星を滅ぼしかねないのよ!?」

 

「それについては・・・・。

確かに私もずいぶん迷った。

私は魔星王の恐ろしさについては

伝え聞いた話でしか知らない。

ハッキリ言って魔星王誕生が及ぼす

影響は私にも計り兼ねる。

だが政府は新しい魔星王誕生を

強く願っていた。

いかな宇宙政府とて無から強大な

魔星王を誕生させるのは不可能。

諸君らも知っている通り星屑魔法団の

秘術があってこそ初めて可能になるのさ。

私は魔星王誕生に尽力するという

条件と引き換えに政府からの信用を

勝ち取った。

それゆえ魔法団の説得は

最重要事項だったというワケだ。

貴女が私の身を案じてくれるのは

光栄だが、おかげで私は政府から

疑われることはない。」

 

な、な、なんですって!!

アンタのその、間違った信念で!

宇宙政府に潜り込むために!

魔星王誕生に協力したというの!

そのためにオリオリの旦那様や

星屑魔法団も巻き込んで!!

 

「ピエール!

アンタ、そんなことのために

色んな人を巻き込んで

魔星王誕生を実現させたの!?

アンタ何をやらかしたか

全っ然わかってない!!!」

 

「致し方なかったのだ。

しかし、これも政府を改革し

宇宙平和という最終目標を

達成するための手段なのだ。

現時点では・・・確かに宇宙平和からは

ほど遠い状況かもしれんがな。

冒険王よ、物事は大きく捉えなければ

いけない、いちいち目の前の事に

一喜一憂していては冒険王の

名が泣くぞ?」

 

「大局を見誤ってるのはアンタよ!

目の前のことにとらわれて

とんでもないことをしでかしたのよ!?

現にアンタ達は魔星王となった

この星から脱出しようとしている!

それは魔星王が恐ろしい存在だって

知っている何よりの証拠!

魔星王の恐ろしさを知っていれば!

致し方なく誕生させるなんて事、

絶対にできないわ。

万が一にも、考えることすらおぞましい!!」

 

「フフフ、さすが魔星王ドスラーデスを

倒した冒険王だ。

その恐ろしさをよく知ってるというワケだな。

しかしブルリア星の時と今回では

取り巻く状況も違うだろう。

なにより私が必ず政府変革を成し遂げてみせる。

ドスラーデスのような事にはさせんよ。」

 

「どれだけ己を過信すれば気が済むの!!」

 

「・・・・ずいぶんお喋りが過ぎた。

やはり話はどこまで行っても平行線を

辿るようだ。

なんなら今ここで力づくで決着を付けるか?」

 

ビュッ!!!

・・・・ガスッ!!!

 

ピエールは手に持っている槍を

こちらに向けて投げつけてきた!

槍はアタシ達の間をすり抜け、

後ろの壁面に突き刺さった。

その衝撃でまだ槍はビ~ンと

揺れている。

 

【挿絵表示】

 

「・・・・・・。」

 

「もがーーーーー!

あ、危ねえ!!

リザ達、大丈夫かーーーー!!??」

 

「ふ、さすがだな、槍が飛んできても

微動だにしない。

当たらないとわかっていたのか、

それとも動けなかったのか。」

 

「アンタから殺気を感じなかった・・・。」

 

「ハッハッハッハ!

愉快!実に愉快!!

さすがだ、冒険王リザ!

意義があったのかどうかわからんが、

貴女との会話、実に楽しめたぞ。

では諸君!

いずれまた会おう!・・・それっ!」

 

ピエールは右手を振りかざし

壁に刺さっている槍を

念動力のようなもので手元に

手繰り寄せた。

 

「さらばだっ!」

 

「あぁぁぁ!もがーーー!

ピエールに逃げられた!!

おい!リザ!どうすんだ?

追いかけるのか!?」

 

ピエールが一瞬で消え去った。

おそらくルーラだろう。

アタシ達はゾォリ天文台から

ぶっ通しでクエストを続け

今しがたチョルルカを倒したところ。

さすがに疲労の色は隠せない。

今、ピエールと戦うのは

得策ではないのは確かだ。

 

「ピエールはチョルルカの城に

向かうと言っていました。

一旦ブゥフェの町に戻り、

おばあさんにチョルルカの城について

聞いてみましょう。

リザさん達の休息も取らなければ

なりませんし。」

 

ありがとう、オリオリ。

急がなければいけないのは

重々わかってるんだけど、

また戦闘で危険な目に会うわけにも

いかないから。

休息の申し出はありがたい。

 

「リザさん、ありがとう、

私を気遣ってくれて。

でも、本当に私は大丈夫です。

それにしても・・・・ピエールとは

なかなかの切れ者ですね。

こちらの論理を全て論破しようと

してくるのですから。」

 

論破?

いえ、オリオリ、アタシは論破されたとは

露1つも思っていない。

彼の主張は矛盾だらけですもの。

宇宙平和を願う者が魔星王誕生に

加担するなど、それこそが

最も顕著な矛盾。

 

それを屁理屈を捏ねて

己を騙してるだけだよ。

 

アタシは。

モヤモヤを解消したくてピエールに

質問をぶつけた。

なのにモヤモヤはさらに

深くなってしまった。

やっぱり彼とはわかり会えない。

戦うしかないのだろうか。

 

憂鬱な気持ちのまま

アタシ達はブゥフェの町へと

一旦戻ることにした。




★★★登場人物★★★
・魔道士リザ
本編の主人公、つまりアタシ。
職業は賢者。
偉大な魔道士を目指すべく
日々、冒険を通じ修行をしてるの。

・ジョギー
アタシの弟。
職業はバトルマスター。
得意な武器は剣。

・レイファン
末の妹。
職業はスーパースター。
回復行動に優れ、オンステージという
スキルで味方をサポートする役割が多い。

・モガ丸
モモンガ族。
おっちょこちょいで時に空気を読まない
発言が多い。けど憎めない、アタシ達の
一番の友達であり理解者。

・スラッピ
モガ丸といつも一緒にいるスライム。
言葉を話すわけじゃないけど
モガ丸だけはスラッピの話している
ことがわかるらしい。
実はスラッピが人間の言葉を話すと
関西弁だということが判明。

・オリオリ
冒険王の書に似た『宇宙王の書』という
本から現れる謎の女性。
その正体はかつて全宇宙を平和に治めていた
宇宙王の末裔。
かつ宇宙政府打倒を目指すレジスタンスグループ
『義勇軍』の総司令官。
実は既婚者だという事が判明。
これにはアタシもビックリ!

・コッツ
義勇軍3番隊の女性隊長。
3番隊と星屑魔法団の一行は
「星屑サーカス団」として身分を偽り
宇宙政府から身を隠していた。
ある時現れた白いスライムナイトの
調略により星屑魔法団は3番隊の元から
姿を消してしまう。
消えた魔法団と宇宙政府の上級執行官
との接触を阻止するため3番隊は
奮闘するが返り討ちに遭いコッツ以外の
隊員は捕虜となってしまった。

・ピエール
白いスライムを駆るスライムナイト。
数々の調略を駆使し各国首脳、さらには
星屑魔法団までも宇宙政府へ恭順させる。
新しい魔星王誕生成功という事柄の
直接の張本人は"秘術"を行使した星屑魔法団だけど、
魔法団を宇宙政府側に協力させたピエールの罪は
この上なく重いとアタシは思う。


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