魔道士リザの冒険譚(星のドラゴンクエストStory冒険日誌)   作:ジョギー

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アタシは魔道士リザ。
そして新たな・・・冒険王姉弟の一人です。
祖父である初代冒険王ガイアスの
意志を継ぎ、日々、冒険の旅をしています。
さて本日の冒険日誌。



エピソード4.「密談合」

その頃、宇宙政府関係者達の間で

会合が開かれていた。

もちろんアタシ達は知るよしもないけど。

 

「チョルルカ様が倒されただとー!?」

 

「まさか・・・チョルルカ様は、その猛烈な

激臭で対峙するもの全てを無力化し

歯向かう相手を葬り去ってきたといいます。

向かうところ敵なしだったはず。

一体何者です、チョルルカ様を倒したと

いうのは?」

 

「義勇軍と、これに加担する

ブルリア星の冒険王だ。

特に冒険王のほうはブルリア星に

配置されていた魔星王ドスラーデスを

倒したという者たちだ。

その強さは紛れもなく本物。

チョルルカやドアヌを遥かに超える

戦闘力を持っている。」

 

声の主は次期上級執行官候補の

2体の魔物。

その2体にアタシ達の事を報告しているのは

白いスライムナイト、ピエール。

 

「ヒャーッハッハッハ!

コイツはおもしれぇ、魔星王に上級執行官

が2人も!

よぉし、だったらこの俺様が

その冒険王とやらをぶっ倒せば

チョルルカ様の後任の上級執行官の座は

俺様のものだな!」

 

「アッガラーよ、敵を侮らない方が良いですよ。

我が政府の幹部級がこれほど

倒されているのです、戦うのならば

かなりの警戒が必要でしょう。」

 

「ご忠告ありがとうよ、ズデーロン。」

 

2体の執行官候補の名はアッガラーとズデーロン。

一ツ目で全身の殆どを鎧で覆っている、口調が

粗いほうがアッガラー。

上半身に鎧を纏い、裾の長いローブを履いている

髑髏の魔物がズデーロン。

ズデーロンはアッガラーとは対照的に口調が丁寧

だわ。

 

「冒険王の戦力が大きいのも脅威だが、厄介な事

に南ヨンツゥオ地方の一般市民たちがチョルルカ

討伐に協力していたという報告が入っている。

冒険王達がチョルルカと真っ当に戦えた要因として

チョルルカの激臭対策が上手くハマったのが大きい。

その対策を練り実践したのはランペェ地方の住人

だという。」

 

「なんと!由々しき事態です、

一般市民が反乱軍に加担し、

小規模ながらクーデターを成功させた

という図式になってしまうではないですか!

これは!

一般市民に『宇宙政府の統治が

揺らいでいる』という印象を

与えかねない案件です!」

 

「そうだなぁ、このままじゃ

政府が舐められるってワケだ。

で?ピエール。

義勇軍とその冒険王一味とやらの

軍勢の規模はどれくらいなんだ?」

 

「主に戦闘を担うのは冒険王姉弟の3名だ。

その他に義勇軍の3番隊隊長の女が1人。

あとは非戦闘員と見ていいだろう。」

 

「はぁ!?たった3人だとぉ!?

なんということだ、たった3人に

上級執行官や魔星王がやられたってのか?

か~~~~ったく宇宙政府の上級執行官も

地に堕ちたもんだぜ!

ドアヌ様もチョルルカ様も政府の顔に

泥を塗っちまったな!」

 

「アッガラー、口が過ぎますよ!

上層部の耳に入れば厳重処分ものです!」

 

「だってよぉ、ズデーロン。

あれだけデカイ顔してた割にたった3人に

やられたんだぜ?

倒された執行官様たちのほうが

よっぽど処分に値すると思うぜ。」

 

アッガラーという名の

下品な言葉遣いの魔物は

どうやら上昇志向が強いみたいね。

アタシ達が倒した上級執行官達に

対して蔑視しているような口調だった。

 

「ズデーロンよ、次の上級執行官には

貴公も候補者に名を連ねている。

そこでどうだろう、貴公ら2名で競い合い、

先に義勇軍を討伐した者が次の

上級執行官に就任する、という案は。

私は結果を見届け上層部に報告し

執行官任命の勅を受け取ってこよう。」

 

「あぁ?おいおいおい、ちょっと待てよピエール!

義勇軍と戦うって言い出したのは俺様が

先だぜ、なんでズデーロンと競合になるんだ?」

 

「その方が公正明大だろう。

実力で勝ち取るほうが貴公の性分に

合うのではないか、アッガラー。

議論や多数決での選出は

納得いかぬではないか?」

 

「ワタクシは別にどちらでもかまいませんが。

そのような酔狂な選出方法に頼らずとも

上層部の決定に従います。」

 

「ハンっ!このまま放っておいても

テメエが任命される、とでも

言いたげじゃねーか、気に入らねえぜ!

勝負しやがれよ、ズデーロン!!」

 

「全く・・・・アナタの口の悪さときたら。

いいでしょう。

ただし上層部がこの選出方法を

容認するかどうかはわかりませんよ?」

 

「双方、この案を飲むというのなら

私が責任を持って上層部に掛け合う。」

 

「よぉし!話は決まったな。

じゃあ俺様は自分の砦で義勇軍を

迎え撃つとしよう。

関所通交官アクルよ、義勇軍が

関所に来やがったらまず

キュウウェル西の砦に向かうよう誘導しろ!」

 

後方に控えていた部下らしき

魔物が口を開いた。

 

「ハッ!・・・しかし・・・・」

 

アクルと呼ばれた魔物は

ズデーロンのほうを一瞥した。

 

「いいでしょう、義勇軍には西の砦に

向かうよう進言なさい、アクル。」

 

「ハ、承知しましたズデーロン様。」

 

「フンっ、随分と物分りがいいなズデーロン。

しかし俺様が義勇軍を血祭りに上げた時点で

俺様の勝ちだからな!恨むんじゃねえぞ。

ピエールもわかったな!」

 

まるでアタシ達を賞レースの賞品かなにかの

ような扱いとする議論が進んでいく。

 

「アッガラー、それにズデーロンよ。

1つ注意事項を申し伝える。

義勇軍の総司令官オリオリ、彼女だけは

殺さずに捕えるのだ。

彼女には、その他大勢の義勇軍の潜伏先等、

尋問せねばならぬ事項が山程あるゆえな。

まぁ最も彼女は宇宙王の書という本の中に

封印されている。

手を出すのは不可能だがな。」

 

「ヘっ!宇宙王の書か、古臭い響きだぜ。

化石のような一族の生き残りが

生意気にも我ら政府に反抗など

思い上がりにも程があるぜ!

まぁ、いいだろう、尋問でも拷問でも

やってやれやピエール。

そんときゃぁ、俺様も立ち会うぜ、

ケーヘヘヘヘ!」

 

「オリオリの件、了解しましたピエール。」

 

「よし、では行けアッガラー!」

 

「おうよ!」

 

口が悪く残忍そうな執行官候補

アッガラーは談合の部屋から消え、

自分の砦に向かった。

 

「・・・良いのですか?ズデーロン様。

先にアッガラー様の砦へ義勇軍を

向かわせても・・・・。」

 

「アッガラーでは義勇軍、冒険王の

面々には勝てないでしょう。

彼には捨て駒になってもらいます。」

 

「・・・・なんとっ!」

 

「ドスラーデス、ドアヌ様、チョルルカ様

のみならず、ブルリア星に着任していた

ラデュラゲ様、ディミトリ様をも

冒険王とやらは倒したに違いない。

そのような強靭な相手に、

あの威張り散らすだけが能のアッガラーが

叶うはずはないでしょう、それに・・・。」

 

「それに?」

 

「アッガラーはその横柄な素行、態度が

部下たちからの不評を買っていると

耳にしています。

それが原因で自滅に陥るかも

しれませんね~クックックック。」

 

「なるほど、さすがズデーロン様。

やはり、その強さはもとより、

人格、慧眼、先見性、洞察力、

どれを取ってみてもアッガラー様の

遥か上を行かれている。

次期執行官はズデーロン様をおいて

他には居ないでしょう。」

 

「アッガラーとの戦闘後であれば、

いかな冒険王とて大なり小なり疲労の

蓄積があり、傷も1つや2つでは

済まないでしょう。

そこをワタクシは確実に突きます。

まさにアッガラーはワタクシの噛ませ犬

であり捨て駒というワケです。」

 

「ズデーロン様も人が悪い、クックックック。」

 

静かな口調の執行官候補ズデーロン。

見るからに残忍そうなアッガラーより

さらに冷酷そうな魔物ね。

そして部下の魔物はアッガラーより

ズデーロンを支持しているみたいね。

 

ピエールが口を開く。

 

「・・・通交官アクルよ、義勇軍が

関所を訪れたなら星屑魔法団を

餌にするのだ。

彼らは魔法団の行方を血眼で探している。

いとも容易くそなたの言葉を信じるだろう。」

 

「承知した!」

 

「ピエール、此度の競合、結果が

全てということでよろしいですね?

過程は問わぬということで。」

 

「・・・私は貴公らの派閥争いなど

興味はない。

アッガラーは先に義勇軍と戦うという

アドバンテージを得ているのだ。

彼が執行官に値する男なら

そのチャンスをものにすれば

いいだけのこと。

それを逸した結果、ズデーロン、貴公が

執行官に就任する、それはそれで

何も後ろ暗い事はないのではないか?」

 

「・・・なかなか物分りが良くて

助かりますよ、ピエール。」

 

「どちらが執行官になろうとも

かまわぬ。

私は早急に新たな執行官に

ダン灯台の宇宙船を動かして

ほしいのだ。」

 

「承知しました。

上層部への報告、くれぐれも

お願いしますよ。

ではワタクシも持ち場に戻ると

しましょう。

アクルよ、抜かりなく頼みましたよ。」

 

「ハっ!!ズデーロン様、

ご武運を祈り申し上げます!」

 

残る執行官候補ズデーロンと

通交官アクルもその場から

立ち去った。

残ったピエールは独り言つ。

 

「・・・・フっ、宇宙政府の内情など

こんなものか。

いくら巨大な組織といっても、

こうも一枚岩ではないとはな。

まぁ、そのおかげで新参者の私でも

付け入る隙があるワケなのだが・・・。」

 

そう言うと、ピエールは顔を上げ、

遠くのほうを見つめた。

 

「オリオリさえ、冒険王姉弟から

引き離すことができれば。

そうすれば、ようやく改革に

取り掛かれる。

ただ・・・アッガラー、ズデーロンですら

冒険王達を抑えるのは至難の業だろう。

その時は私自ら・・・!」

 

仮面の奥にあるであろう

ピエールの瞳がキラリと

光ったような気がした。




★★★登場人物★★★
・ピエール
白いスライムを駆るスライムナイト。
数々の調略を駆使し各国首脳、さらには
星屑魔法団までも宇宙政府へ恭順させる。
新しい魔星王誕生成功という事柄の
直接の張本人は"秘術"を行使した星屑魔法団だけど、
魔法団を宇宙政府側に協力させたピエールの罪は
この上なく重いとアタシは思う。
上級執行官チョルルカが倒れた後の後任候補者達の
調停役をこなす。

・アッガラー
ヨンツゥオ大陸南部地方の上級執行官候補者。
気性が荒く口調も荒い、上昇志向の強い魔物。

・ズデーロン
アッガラーと同じく執行官候補者の1人。
アッガラーとは正反対に丁寧な口調と
冷静で大局を見て先を見る力を
持ち合わせている。

・アクル
ヨンツゥオ大聖堂への関所の門番役人。
執行官候補者達よりも下位。
2名の候補者のうちズデーロンを支持している。


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