魔道士リザの冒険譚(星のドラゴンクエストStory冒険日誌)   作:ジョギー

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アタシは魔道士リザ。
そして新たな・・・冒険王姉弟の一人です。
祖父である初代冒険王ガイアスの
意志を継ぎ、日々、冒険の旅をしています。
さて本日の冒険日誌。



エピソード10.「首謀者」

アタシ達は思った以上に疲弊していた。

傷と体力の消耗は回復呪文でなんとか

解消できていたけど。

疲労感だけはどうにもならないの。

疲労感はメンタルからも作用している。

あんな衝撃的な結末だったからね、

メンタル最悪(+_+)

野営が続いてるのも疲労感が抜けない

一因になっていた。

 

「ほら、リザっ!」

 

モガ丸がアタシに乾パンを投げてきた。

 

「腹ペコじゃあ、この先の戦いは

持たないぞ!食べろよ。」

 

ミャアロの主人がくれた保存食を

アタシ達は少しずつ分け合って空腹を

誤魔化していた。

今、アタシ達は東砦に向かっている。

その道中、野営を張って僅かな休息を

取っていたの。

その・・・昨日の事。

 

*************************************

「おぉ!君達、またやって来たのか。

で、どうだい、執行官候補者様には

面会できたかい?」

 

キュウエルの関所を再び訪れたアタシ達。

この関所を守る役人が問いかけてきた。

 

「はぁ、それが・・・。

執行官候補者アッガラー様はご不在だったらしく

面会はかないませんでした。

そしてサーカス団もいないようでした。」

 

コッツがこの役人との対応をこなす。

またまた、それっぽい理由を取り繕って、ね。

 

(此奴ら、戻ってきたっ!

それに今!

此奴ら、西砦の候補者の名を口にしおった!

ワシは此奴らの前で執行官候補者の名は

ただの1度も口にしておらぬ!

アッガラーという名を口にした事実こそが、

アッガラー様と接触したという何よりの証拠!

そしてあれだけ執行官の地位に

執着されていたお方。

此奴らとの戦いがなかったとは考えられん!

つまり!

不可避だったアッガラー様との戦い。

それを制したからこそ、今この関所を

此奴らは生きて訪れている、というわけだ!)

 

「そうであったか。

何しろご多忙の身ゆえお出かけだったのかも

知れぬ、無駄足を踏ませて申し訳なかったのぉ。」

 

「あ、いえ!とんでもございません。

それでお役人様、上級執行官候補者というのは

2名おられると仰ってられましたよね?

アッガラー様がご不在でしたので、

もしかしてサーカス団ももう1人のお方の

ほうに向かったのかなぁ、と。

あと納税のほうもそちらで済ませようかと

思い、面会願おうかと思いまして。

そのお方の在わす場所を教えていただけませんか?」

 

「うむ、それがよかろう。

そのお方は、今度は逆に此処から

東に向かった先のキュウエル東砦に

いらっしゃる。

実を申すとな、ワシはそのお方こそ

次期執行官に相応しいお方だと思っている。

人格、実力共に兼ね備えた素晴らしいお方だ。

君達、覚えを愛でたくするなら、

東砦の候補者様のほうが断然いいと思うぞ!」

 

へぇぇ、人格も実力もアッガラーより

上なのね?

魔物達に取っての人格者が、イコール

一般人に取って素晴らしいかどうか

わかんないけど、少なくともアッガラーの

ような理不尽な魔物ではなさそうね。

 

「わかりました、ありがとうございます!

では我らはこれにて。失礼いたします。」

 

(フ、グフフフフ!

これでワシの役目は完了!

あとはズデーロン様があやつらを打ち倒すのみ!

ズデーロン様、いよいよ我等の時代ですぞぉ!)

 

アタシ達が立ち去った後、この役人は

笑みをこらえ切れないといった様子だった。

 

(しかし、手筈通りとはいえあやつら、

本当にアッガラー様を退けたのか?

何度見ても、一般の若者にしか

見受けられんがのぉ。)

 

*************************************

以上が昨日の関所でのやり取り。

僅かな休息と腹ごしらえを済ませ、

いよいよ東砦へと向かう。

 

しかし妙ね。

東砦の方角からは殺気や邪悪なオーラを

感じない。

アッガラーより強いと言われるもう1人の

候補者の気配が感じられない事に

アタシは疑問を感じていた。

東砦の候補者はアタシ達を襲う気は

ないのだろうか?

 

そんなに上手くいく筈ないか・・・(._.)

 

思わず楽観的な考えが頭に浮かんでしまった

自分を戒める。

まぁ、行けばわかるわよね。

 

野営の設備を撤収し砦に向かって出発する。

太陽が真上に登るより少し前の時刻に、

山あいにある砦らしき建造物が見える地点

まで到着できた。

 

「あれか?」

 

「ピ!」

 

「みんな装備の点検を!」

 

「大丈夫だ。」

 

「私も大丈夫だよ。」

 

「オリオリ様、申し訳ございません!

しばらく窮屈な思いをさせてしまいますが

道具袋の中に書をしまいます。」

 

「気にすることはありません、コッツ。」

 

それぞれ突入の準備は整った。

とりあえずだけど、オリオリには身を隠して

もらってアッガラーの時と同じように

無血で済むならそちらを選択する旨を

全員で確認し合った。

無駄かもしんないけど。

 

「よしっ!

みんな、行くよ!」

 

意を決して砦の扉を開いた!

 

ギギギッガタンッ!

 

 

そこは西砦と同じく大広間になっていた。

吹き抜けになっており上層階をのぞむ事が

できる・・・西砦と全く同じ構造。

 

1つ異なる点は広間の中央に玉座があり

そこに1体の魔物が腰掛けていたという事。

コイツがもう1人の執行官候補者かっ!?

 

「あ、あのぉ、貴方が次の上級執行官候補者様

ですか?

私達、次の代替わりの納税をするべく

訪れた者なんです・・・。」

 

コッツが例によって表向きの用件を伝える。

 

「フッフッフ、ハッハッハッハ〜〜!

待っていましたよ、義勇軍の諸君!」

 

むっ!?

既に素性が割れているっ!?

 

「え?ぎ、義勇軍?

はて、我らは義勇軍などではございません、

一般の民で・・・。」

 

「そのような他愛のない誤魔化しは

無用ですよ、ワタクシには全てお見通しです、

義勇軍とこれに加担する冒険王諸君、

よくぞ参られた。

いかにもワタクシが次期上級執行官候補です。

ズデーロンと申します。

さぁ、お出でなさい、義勇軍総司令官オリオリよ。」

 

アッガラーとは対照的な丁寧な口調。

落ち着いた物腰。

それが逆にこの男が只者ではないということが

感じられるっ!

そして!

なぜ会った瞬間からアタシ達の素性が

バレてしまったの?

 

と。

モゾモゾ、と道具袋がひとりでに動く。

 

「誰か、道具袋の紐を解いてください!」

 

くぐもったオリオリの声が袋の中から聞こえる。

そうね、これ以上の誤魔化しは

時間の無駄のようね。

 

「オリオリ様っ!は、はい!ただ今っ!」

 

コッツが道具袋の紐を解き口を開けると

中から宇宙王の書が飛び出た。

 

「プハぁ、あ〜息苦しかった!

・・・執行官候補者ズデーロンと申しましたね、

私が義勇軍総司令官オリオリです。」

 

「これはこれはっ!

偉大な宇宙王一族の貴女にお目にかかることが

でき、非常に光栄でございます。

かようなうら若き美しい女人が反乱軍の

リーダーだったとはねぇ。」

 

「わ、私は美しくはありませんっ!

何故、我らの素性を一瞬で見抜いたのですか?」

 

「ホホッ猿芝居に付き合うつもりは

毛頭なくってねぇ。

ホラ、貴女のお強い助っ人、冒険王の彼女達。

その者達から溢れんばかりの闘気を感じます。

かなり押さえ込んではいるようですが

それでも真の強者のそれが漏れ伝わってきます。

ここに入ってきた瞬間にわかりましたよ。」

 

!!!

そんな!

確かにアタシ達は気配を押し殺していたはず。

それでも気配でアタシ達の正体を

見抜くだなんてっ!

こんな事は最初にピエールと対峙した

あの時以来だわ!

 

「虎が龍を知る、といったところでしょうかねぇ?」

 

「なるほど。

真に強き者は相手の実力もまた的確に

はかれる、というわけですね。

ところでズデーロン、星屑魔法団は

ここを訪れたのでしょうか?」

 

「フフフ、そんなに愛する夫に逢いたいですか?

しかし残念ながら魔法団の所在を知っているのは

ピエールだけです、この砦には魔法団など

来ていません。

そもそも魔法団が執行官候補者に面会する

という情報は我々の捏造です。」

 

「な、なんですって!?」

 

「ワタクシとアッガラーはねぇ、

賭けをしていたんです、『先に義勇軍を

倒した者が上級執行官の地位を手に入れる』

というねぇ。

そして魔法団の居場所を餌にそれぞれの

砦に諸君らをおびき寄せたというわけです。」

 

「モガ〜、最初からオイラ達の事を

知っていて振り回してたのか!?」

 

「居場所を餌におびき寄せる・・・

それでは関所に居たあの魔物もグルだったと

いうのですか?」

 

「えぇぇぇ!

あ、あの親切な役人がっ!?」

 

「左様です、彼はワタクシの忠実な部下

通行官アクルと言います。

諸君らが関所を訪れたなら魔法団の居場所を

餌に砦に誘導するようワタクシ達が

指示しておりました。」

 

な、なんて事!

全てコイツらの掌で転がされてた

っていうの!?

しかも何!?アタシ達を使って賭けですって!?

グヌヌヌ、人をバカにするにも程があるわっ(_ _#

 

アタシはあまりにも屈辱的なズデーロン達の

企みを聞かされ怒りが込み上げてきたっ!

 

「魔法団の情報をちらつかせ我らを誘導

・・・しかしあの通行官は先にアナタではなく

アッガラーの砦へ向かうように申しました。

これはアナタにとっては不利に働くのでは

なかったですか?

もし我々がアッガラーに敗れていれば

上級執行官の地位は彼に渡っていたのですよ?」

 

「フフフさすが義勇軍総司令官殿、

見識が高い。

しかしワタクシにはわかっておりました、

アッガラーでは諸君らには勝てぬと。

彼は素行が悪くてねぇ、大して強くもないのに

部下に威張りちらす、平気で部下を見殺しに

するなどは日常茶飯事でした。

諸君らのような強き戦士達には到底

敵わぬだろうと。」

 

むむむっ!

この男、なんという洞察力!

 

「彼の部下達の不平不満もよく耳に

していましてね、ひょっとすると最後は

部下に裏切られるんじゃあないか、とも

推察しておりました。

どうです?それらしい出来事が

起こりませんでした?

戦った諸君らならご存知かとは思いますが?」

 

まるでっ!

見てきたように言う。

アッガラーですらこの男の駒でしか

なかったの!?

 

「全てアナタの思惑通り、というワケですね。

なるほど、アッガラーも部下の扱いが

酷い男でしたがアナタはそれ以上に冷徹な

男のようです。」

 

「フフフ、なんと言われようとかまいません、

さてお喋りが過ぎました、

そろそろ始めましょう!」

 

ズデーロンが玉座から立ち上がる!

両手に大小の剣を1本ずつ握っている。

二刀流か。

大小といっても小さい方の剣でも

ジョギーの握っている剣と

同じくらいの大きさ!

大きい方にいたってはズデーロンの

身長と同じぐらいの大きさ!!

 

「リザさん達、かなり頭の切れる魔物の

ようですがよろしくお願いします!」

 

どのみち執行官候補者は全員倒さないと

一般の人々が苦しむ事になるからね。

戦いは不可避だわっ!

 

「オリオリ様、こちらへ!」

 

オリオリが書の中に戻りコッツのもとへ

移動した。

 

「皆の者、お出でなさい!!」

 

ズデーロンが号令をかけると砦の上の階層

全てのバルコニーに魔物の大群が現れたっ!

 

「モガー!!ま、また大群が現れたぞー!」

 

性懲りもなく。

さてまずはまた雑魚掃除ね。

 

「ホホホ、ご心配なく!

諸君らの相手はワタクシ1人です。

彼らには手を出させませんよ、ただワタクシが

諸君らを倒し上級執行官の座を手に入れる、

その瞬間を見届ける証人として立ち会って

もらうだけです。」

 

大した自信。

それとも、部下の手を一切借りないという

アッガラーへの当てつけかしら。

冷静沈着なふうを装ってはいるけど

かなりにプライドの塊ね。

 

「フフフ、では始めましょう!」

 

ズデーロンが、その両手にもった2本の剣を

構えた。

アタシ達もそれぞれ武器を構える。

 

「やっ!!」

 

猛烈なスピードでズデーロンが飛び掛かってきた!

 

「行くよ!ジョギー!レイファン!」

 

アタシ達はそれを迎え撃つ!

戦いが始まったっ!!




★★★登場人物★★★
・魔道士リザ
本編の主人公、つまりアタシ。
職業は賢者。
偉大な魔道士を目指すべく
日々、冒険を通じ修行をしてるの。

・ジョギー
アタシの弟。
職業はバトルマスター。
得意な武器は剣。

・レイファン
末の妹。
職業はスーパースター。
回復行動に優れ、オンステージという
スキルで味方をサポートする役割が多い。

・モガ丸
モモンガ族。
おっちょこちょいで時に空気を読まない
発言が多い。けど憎めない、アタシ達の
一番の友達であり理解者。

・スラッピ
モガ丸といつも一緒にいるスライム。
言葉を話すわけじゃないけど
モガ丸だけはスラッピの話している
ことがわかるらしい。
実はスラッピが人間の言葉を話すと
関西弁だということが判明。

・オリオリ
冒険王の書に似た『宇宙王の書』という
本から現れる謎の女性。
その正体はかつて全宇宙を平和に治めていた
宇宙王の末裔。
かつ宇宙政府打倒を目指すレジスタンスグループ
『義勇軍』の総司令官。
実は既婚者だという事が判明。
これにはアタシもビックリ!

・コッツ
義勇軍3番隊の女性隊長。
3番隊と星屑魔法団の一行は
「星屑サーカス団」として身分を偽り
宇宙政府から身を隠していた。
ある時現れた白いスライムナイトの
調略により星屑魔法団は3番隊の元から
姿を消してしまう。
消えた魔法団と宇宙政府の上級執行官
との接触を阻止するため3番隊は
奮闘するが返り討ちに遭いコッツ以外の
隊員は捕虜となってしまった。

・ズデーロン
次期上級執行官候補者の1人。
高圧的で口調も汚いアッガラーとは対象的に
物腰が柔らかく丁寧な口調の魔物。
かつロジカルで先見性も備えた、
かなり頭の切れる魔物でもある。
たくさんの部下の魔物を率いているが
単身でアタシ達と戦うと宣言するなど、
絶対的な自信を持っている。

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