魔道士リザの冒険譚(星のドラゴンクエストStory冒険日誌)   作:ジョギー

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アタシは魔道士リザ。
そして新たな・・・冒険王姉弟の一人です。
祖父である初代冒険王ガイアスの
意志を継ぎ、日々、冒険の旅をしています。
さて本日の冒険日誌。



エピソード11.「紅蓮十字剣」

その巨大な剣を軽々と振りかざしながら

ズデーロンが突進してきたっ。

 

ガキィィィィン!!

 

ジョギーが自身の剣で受け止めるっ!

するとズデーロンは余ったほうの剣で

追い打ちをかけてきた。

 

「グッ!」

 

たまらずジョギーは後方に飛ばされた。

が、なんとか倒れずに踏ん張る。

そこにズデーロンがさらに追撃を

加えようと飛ぶっ!

 

「ライデインッ!」

 

追撃しようとするズデーロンに向かって

アタシは牽制の呪文を放ったっ!

 

「チッ!こしゃくなっ!」

 

ズデーロンが呪文に気を取られているスキに

ジョギーが抜け目なく反撃の一撃を放つっ!

 

ブンッ!

 

「ガッ!」

ジョギーの剣撃を受け、今度はズデーロンが

後方に飛んだッ!

ズデーロンもまた踏みとどまり、

そのまま2本の剣をクロスさせ、その場で

振り下ろす。

切られた空気が剣圧となって飛んできたっ!

速いっ!

 

「キャッ!」

 

「グッ!」

 

予想外の攻撃にアタシとジョギーは

盾を掲げる間もなくノーガードで

その剣圧を受けてしまった。

デカイ口を聞くだけのことはある。

強いわコイツっ!

 

言い訳をするわけじゃないけど、

アッガラー戦での疲れが抜けきっていない

今のアタシ達にはちょっとキツイわね、

コイツの剣術はっ!

 

「ホッホッホッ!

さすがにこれまで政府の幹部級を

軒並み倒してきただけありますね~。

素晴らしい強さですよ、冒険王達!

しかし、少しばかり動きが鈍いようです。

アッガラーとの戦いに続きワタクシとの

この1戦、さぞやお疲れが溜まっているようで

お辛そうです。

まぁ、これもワタクシの計算通りですがね。」

 

なるほど、先にアッガラーとアタシ達とを

戦わせたのはアタシ達のコンディションを

低下させるのが狙いだったのね。

そこまで計算ずくとは!

なんと用意周到で冷徹な男・・・。

 

けどそれは。

アタシ達を警戒していることの証拠、

臆病者といえるかも知れないということよ!

 

「ピオラッ!」

 

アタシはジョギーに素早さを上げる

補助呪文を施したっ!

すると。

 

ギュイイイン!

 

アタシとレイファンにも緑の光りが降り注ぎ

味方全員の素早さが上がった。

しめたっ!賢人の閃きっ!

古の大賢者の念がこもったアクセサリーに

秘められし不思議な力。

対象が1人の補助呪文の効果を

時折全員に行き渡らせるという古の大賢者の

力が発動した。

これで鈍っている動きも多少は

改善できるだろう。

 

「ジョギー!アタシが牽制するっ!

接近戦は任せたわよっ!」

 

「わかった!」

 

「メラミッ!ベギラマッ!」

 

アタシは中級呪文をズデーロンに

放つ。

ズデーロンは2本の剣でガードし、

呪文の威力を押し殺すが

火球と灼熱の呪文によって発生した炎が

ズデーロンの周囲を包むっ。

炎に意識を取られているズデーロンに

ジョギーが斬りかかるっ!

 

ブンッ!ブンッ!!

 

「グッ!」

 

ジョギーの剣撃がズデーロンにヒットするっ!

そのままジョギーは間合いを詰め

嵐のように剣撃を繰り出す。

 

ズデーロンの剣は。

2本とも大振りなので接近戦には

向いていないだろう、というジョギーの機転。

次々とジョギーはズデーロンの体に

傷を与えていく。

 

「えぇぇい!

調子に乗ってはいけませんっ!!」

 

たまらずズデーロンは2本の剣をクロスに

構えジョギーの剣を受け止めた。

ギリギリギリ、と鍔迫り合いをする2人。

 

「ダァッ!!」

 

ズデーロンが剣ごとジョギーを押し出す。

後ろによろめくジョギーにズデーロンは

追撃をかけようと2本の剣を振りかぶった。

剣圧の衝撃波を飛ばすのかっ!

突進しなかったのは接近戦は不利と

読んだのか!?

 

「ヒャダルコッ!バギマッ!」

 

振りかぶったスキにまたアタシが

呪文を命中させてジョギーを援護する。

 

「うるさい小娘さんだっ!

それっ!!」

 

ズデーロンはターゲットをアタシに変え、

剣圧による攻撃を飛ばしてきたっ!

アタシは得意の身躱しで今度はひらりと

その衝撃波を避けたっ!

ピオラが効いているっ!!

 

「なっ!衝撃波を避けただとっ!?」

 

「ドルクマッ!ジバリカッ!」

 

横っ飛びで躱しながらさらに

中級呪文を撃ち込む。

ズデーロンはガードをするっ!

あまり効き目はなさそう。

 

「ホッホッホッ!

ちょこまかとっ!

しかし、そのような小手調べの攻撃呪文では

ワタクシには目くらまし程度にしか

なりませんよっ!」

 

・・・あとはこれかしら?

 

「イオラッ!」

 

「ヌッ!?グハっ!!」

 

ガードしてるズデーロンにイオ系中級呪文を

撃ち込むと、ガードしながらもズズズと

後ずさりをした。

わずかに苦悶の声を上げたのをアタシは

聞き逃さない。

 

「ジョギーッ!援護してっ!!

本命を撃ち込むわっ!」

 

「おぅ!了解!」

 

ジョギーはアタシの意図を理解して

ズデーロンに飛びかかったっ!

剣と剣の応酬が始まった。

 

アタシはその間に特大の攻撃呪文を

詠唱する。

 

「ジョギーッ!いいよ、離れてっ!!」

 

「わかったっ!!」

 

「キエェェェェイ!!」

 

ズデーロンが繰り出してきた剣撃を

剣で受け止め、その威力を利用して

後ろにジャンプしてその場を離脱した

ジョギー。

それを確認し、アタシは呪文を放つっ!

 

「大気と炎の精霊よ、汝ら交わりて

収縮、暴発を生み出し我が敵を

討ち滅ぼせ!イオナズンッ!!」

 

キュィィィィイイイイン、

ドガァァァァァァァァン!!!

 

イオ系上級呪文がズデーロンに

炸裂したっ!

 

「グワアアアアアアッッッ!!!」

 

爆発の余波でズデーロンが宙高く舞い、

爆風が収まると床に叩きつけられた。

 

どうやらコイツの弱点属性は

イオのようね。

アタシは牽制しながらも様々な属性の

呪文を軽めに放ち、敵の反応を

伺っていたワケ。

もっとも、アタリを引くまで

時間かかっちゃったけどね

 

「ズ、ズデーロン様ぁ!」

 

「ズデーロン様!!!」

 

「ま、まさかズデーロン様が

あれほど押し込まれるとはっ!」

 

上層階のバルコニーに控える

魔物たちが一斉にズデーロンに

声を掛ける。

彼はよほど部下から信頼され、

その強さを信じて疑われてないのか、

魔物達の声には驚愕と動揺の色が

露わだった。

 

「グ、か、加勢だっ!

ズデーロン様をお護りするぞっ!!」

 

「おぅ!」

 

魔物達がバルコニーを乗り越えようと

したその瞬間。

 

「な、なりません・・・!

ア、アナタ達、ワタクシの顔に

泥を塗る気ですか・・・

か、加勢はなりませんよぉぉぉ・・・!」

 

ズデーロンは手をつき起き上がろうと

懸命に力を振り絞っていた。

そして部下の魔物達の加勢の申し出を

制止した。

 

「し、しかしズデーロン様、

このままでは負けてしまいます・・・

敵は3名、1対3では圧倒的に

不利でございます・・・・」

 

「おだまりなさいっ!!!

ならぬと申しているっ!!!

勝手に降りてきた者はワタクシが

殺して差し上げますっ!!!」

 

「うっ、そ、そんなぁ・・・。」

 

ズデーロンは頑なに部下達の加勢を

嫌った。

よっぽどプライドが高いのか、

部下を信頼していないのか。

 

「グヌヌヌヌ、ぼ、冒険王・・・!

これほどとは!!

よ、よくもワタクシを地面に

這いつくばらせましたね~~~!

ゆ、許しませんっ!!!」

 

ズババババババッ!!!

 

大ダメージを負ったはずのズデーロンが

邪悪なオーラを発し始めたっ!

どうやらここからが本領発揮のようね。

何か大きなスキルが飛んでくるっ!

 

「ジョギー、レイファン、気を付けてっ!

何か大きなスキルを使ってくるよっ!!」

 

「あぁ、みたいだな。」

 

「姉ちゃん達、傷を癒すよ、

皆の傷を癒やし給う、ベホマラー!」

 

レイファンが高等回復呪文を唱えた。

ここまでの戦いで負った傷の数々が

癒やされていく。

 

「ワタクシ最大の秘技であの世へ

送り届けてしんぜようっ!

『紅蓮の構え』!!!」

 

大小の剣を縦横にクロスさせて

邪悪なオーラを燃やすズデーロン。

 

ぐ、紅蓮の構えっ!?

たしか大全図鑑で読んだことがある、

えーとえーと、ハッ!まさかっ!!

 

「ジョギーッ!レイファンッ!!

盾を掲げてっ!ガードよっ!」

 

「わ、わかったっ!!」

 

「うんっ!!」

 

むむむっ間に合うかっ!?

 

「主よ、ミトラ神よ、ご加護を持って

天空城の如き堅牢な城壁を我らに与え給う、

スクルト!!」

 

アタシは防御力を上げる補助呪文を

即座に詠唱したっ!

 

ギュイイインッ!

 

間に合ったっ!!

・・・て事はやっぱり!?

 

「くたばりなさいっ!!

紅蓮十字剣ーーーーーーっっっ!!!!!」

 

ズデーロンの2本の剣が炎を纏い

十文字の構えのまま振り払われたっ!

 

ゴォォォォォ!!

 

ズガアアアアアアッ!!!

 

 

十文字型の炎を纏った衝撃波が

飛んできたっ!!!

 

「キャァアアアッ!!」

 

「グッ!」

 

「キャッ!」

 

スクルトを詠唱していたアタシは

ガードできずに直撃を受けて

後方にふっ飛ばされたっ!

 

ジョギーとレイファンはガードと

スクルトの効果があったので

ダメージは最小限に抑えられ

その場に留まれた。

 

「リ、リザ姉っ!!」

 

「姉ちゃんっ!!」

 

「モガー!リ、リザー!!」

 

「ピピーーーッ!!」

 

「リザ殿っ!!」

 

「リザさんっ!!!」

 

仲間達がアタシの名を呼ぶ。

 

うぅぅぅ、イタタタタ、

いった~~~い!!!

も、もの凄い威力、恐るべし

『紅蓮十字剣』・・・。

スクルトを施していなければ

アタシ死んでたかも・・・・。

 

「め、女神エイルよ、わ、我の傷を

癒やし給う・・・べ、ベホイムッ!」

 

パァァァァァッ!

 

アタシは自ら回復呪文を唱えた。

緑色の強い光りがアタシを包み、

先ほどのスキルで受けた傷が消え

ほぼ全回復に。

 

「リザッ!」

 

「ピピッ!」

 

「良かった、間に合ったみたいだ。」

 

仲間達が安堵の声を漏らす。

 

「アンタ達、大丈夫だった?」

 

「あぁ、リザ姉のスクルトのおかげで

致命傷は免れたよっ!」

 

「うん、ありがとうっ姉ちゃんっ!」

 

よし!

じゃあ反撃よ。

 

「な、なんとっ!

ワ、ワタクシの最大奥義を受けて

なお生きているだと・・・?

こ、コイツら何者だ・・・・。

ぼ、冒険王とはこれほどに

強いのか!?」

 

プライドが高く、あれほど

余裕の表情を見せていたズデーロン

にも焦燥の色が漂い始めたみたいね。

チャンスだわ。

 

「聞いて、アンタ達。

『紅蓮十字剣』は威力は凄まじいけど

弱点があるの。スキル大全図鑑で

読んだことがある。

実際受けてみて、それは本当だって

確信したわ。」

 

「ほ、本当か?リザ姉。」

 

「それを確かめるために

ガードじゃなくてバフ呪文を選択したの?」

 

「まぁね、なかなか痛い検証代

だったけど・・・・。」

 

「無茶にも程があるぜ~~~・・・・。」

 

「ホントだよ、死ぬとこだったんだよっ!」

 

弟達の呆れた声がアタシに突き刺さる。

 

「フフ、ごめんなさい。

けどいい?ここからが本題。

次にズデーロンが『紅蓮の構え』、

これを見せた時、一気に攻め込むのよ!

そこが最大のチャンス。」

 

「え?あ、ああ、そうか!

技の発動までが遅いんだな?」

 

「なるほど、確かに大技だもんね。」

 

「そう、アタシ達は構えを見てから

行動した。いわば反応が遅れてしまった。

にもかかわらず構えてからスキルが

飛んでくるまでにアンタ達のガードも

アタシのスクルトも間に合った。

それがなによりの証拠!」

 

「わかったっ!

それで行こう!」

 

アタシは『紅蓮十字剣』の攻略を

弟たちに伝えた。

怯まず勇気を持って立ち向かう事

こそが勝利への道!

 

「ちなみにヤツにはデインは

あんまり効かないと思う。

最初のライデインがほとんど

効いてなかったからね。

わかった?ジョギー。」

 

「さすがっ!

抜かりないね、リザ姉は。」

 

「だからこないだの新しいスキルは

ダメよ、無属性かイオ系でお願いね。」

 

「了解っ!」

 

「レイファンはオフェンス面での

サポートお願いね。

もうディフェンスはいらない、

さあ、終わらせようっ!」

 

勝利への方針は決まった、

あとは実行するのみ!

 

「オンステージッ!!」

 

ピュイイイイイ~♪

 

レイファンが舞う。

ジョギーには力が漲り、

アタシは呪文の詠唱を短縮化

できる踊り。

 

「ヤァァァァッ!!」

 

ジョギーがズデーロンに斬りかかる。

 

ブンブンブンッ!!

 

「グハァァッ!」

 

オンステ効果で太刀筋のスピード、

力強さが増したジョギーの剣撃。

かなりのダメージを負っている

ズデーロンは2本の剣でガードを

するが追いついて行けず

ジョギーはどんどん攻撃をヒット

させていく。

 

「超彗星剣っ!!」

 

ズザァッ!!

 

ジョギーのスキルが炸裂した。

ニヤリ、約束通り無属性スキルね!

 

「あ、あぁぁ、ズ、ズデーロン様が

どんどん劣勢に・・・!

お助けしなくていいのか・・・!?」

 

「し、しかし、御本人からの

キツイ言いつけが・・・。

助けに入ったのに御本人に

殺されるのはゴメンだぜ・・・」

 

ズデーロンが劣勢になればなるほど

魔物たちの動揺が広がっていく。

 

「おのれぇぇぇっ!!!

こぉんのクソガキがぁ!

ワタクシをこんな目に合わせて

ただで済むと思うなよぉっ!!」

 

あらら、お下品な言葉使いだこと。

追い込まれて本性が出ちゃったかしら。

 

「我慢せずに部下達に手伝ってもらえば?

部下達も加勢したくてしたくて

たまらないみたいだけど?」

 

「うるせぇぇぇぇっ!!!

この小娘ッ!調子に乗るんじゃねぇ、

いちいちイラつくんだよぉっ!」

 

「アンタの気持ち悪い

オネェ言葉のほうがイラつくけど?」

 

「ムギギギギギッ!!!

こ、殺してやるっっっっ!!!!」

 

ズババババババッ!!!!

 

来た!

邪悪なオーラを発散させ、

その身に纏い始めたズデーロン。

『紅蓮の構え』をやるつもりだ。

 

「行くよ!ジョギー、レイファン!!」

 

「おぅっ!」

 

「了解っ!」

 

アタシは弟たちに号令をかけた。




★★★登場人物★★★
・魔道士リザ
本編の主人公、つまりアタシ。
職業は賢者。
偉大な魔道士を目指すべく
日々、冒険を通じ修行をしてるの。

・ジョギー
アタシの弟。
職業はバトルマスター。
得意な武器は剣。

・レイファン
末の妹。
職業はスーパースター。
回復行動に優れ、オンステージという
スキルで味方をサポートする役割が多い。

・モガ丸
モモンガ族。
おっちょこちょいで時に空気を読まない
発言が多い。けど憎めない、アタシ達の
一番の友達であり理解者。

・スラッピ
モガ丸といつも一緒にいるスライム。
言葉を話すわけじゃないけど
モガ丸だけはスラッピの話している
ことがわかるらしい。
実はスラッピが人間の言葉を話すと
関西弁だということが判明。

・オリオリ
冒険王の書に似た『宇宙王の書』という
本から現れる謎の女性。
その正体はかつて全宇宙を平和に治めていた
宇宙王の末裔。
かつ宇宙政府打倒を目指すレジスタンスグループ
『義勇軍』の総司令官。
実は既婚者だという事が判明。
これにはアタシもビックリ!

・コッツ
義勇軍3番隊の女性隊長。
3番隊と星屑魔法団の一行は
「星屑サーカス団」として身分を偽り
宇宙政府から身を隠していた。
ある時現れた白いスライムナイトの
調略により星屑魔法団は3番隊の元から
姿を消してしまう。
消えた魔法団と宇宙政府の上級執行官
との接触を阻止するため3番隊は
奮闘するが返り討ちに遭いコッツ以外の
隊員は捕虜となってしまった。

・ズデーロン
次期上級執行官候補者の1人。
高圧的で口調も汚いアッガラーとは対象的に
物腰が柔らかく丁寧な口調の魔物。
かつロジカルで先見性も備えた、
かなり頭の切れる魔物でもある。
たくさんの部下の魔物を率いているが
単身でアタシ達と戦うと宣言するなど、
絶対的な自信を持っている。
キラースキルは『紅蓮十字剣』。

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