魔道士リザの冒険譚(星のドラゴンクエストStory冒険日誌)   作:ジョギー

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アタシは魔道士リザ。
そして新たな・・・冒険王姉弟の一人です。
祖父である初代冒険王ガイアスの
意志を継ぎ、日々、冒険の旅をしています。
さて本日の冒険日誌。



エピソード20.「次なる大陸へ」

マタセ島・・・・

思えばこの島で起こった出来事が・・・

ヨンツゥオ大陸での冒険の

ターニングポイントだったわ。

 

この島の住人達が・・・スライムをエルフ

と呼んで奉っていた。

それは・・・人々がスライムに支配されている

というような歪な構造ではなく、

お互いの生活圏を脅かすでもなく・・・

本当に共存共栄という日常がそこにあったの。

人々が親しみを込めてスライム達に

接していたの。

 

この光景からは・・・人間と魔物との共存に

ついて考えさせられたわ。

そうかと思えば自ら魔物になろうとする

人間も居た。

 

人間を辞めようという心境がアタシには

わからないし、おぞまし過ぎて

わかりたくもないんだけど・・・。

彼は”人間を辞めてしまう”という

感覚よりも”強きチカラを得られれば

人間であることに執着しない”という

思いのほうが強かったんだろうか、

魔物へと変わり果てた末に

アタシ達に退治されてしまった。

 

うん、けど・・・・アタシの・・・

「人間を辞めて魔物になるなんて

おぞましい」というこの思いも・・・

人間>魔物という意識がアタシの中に

存在するってことで・・・。

種族差別になってしまうかも

しれないわね・・・・。

 

まぁ、いずれにしても。

人間とは?魔物とは?

人間と魔物の関係とは?という

自問自答をするようになったのは

ここマタセで起きたこれらの

出来事が深く作用していると思う。

 

そして何より!

ボロンとの別れの地。

決別を宣言したのは先だっての

ヨンツゥオ大聖堂での決戦の直後

だったけど・・・・。

 

仲間として・・・・義勇軍として共に

活動したあの頃のボロン・・・・

戦友のボロンとは・・・彼が、エルフと

呼ばれるスライム達を故郷に

送り届ける為に別行動を取った・・・

あの時すでに別れてしまっていたんだ。

 

アタシは今になってようやく・・・

再びこのマタセ島に足を踏み入れて

ようやく・・・・その事実に気付いたんだ。

 

ボロン、いえ、ピエールとの決戦後は

何かと忙しかったので、感傷に浸る

間もなかったけど・・・あまりにも色んな

出来事が起きたこの島に着いた途端、

アタシの脳裏に・・・その出来事の数々の

記憶が蘇ってきたの。

 

今は・・・一刻も早く新しい魔星王の

居場所を突き止めなきゃいけないって

・・・落ち込んでる場合じゃないって・・・

アタシ自身がオリオリに忠告した

っていうのに、ね。

 

新しい魔星王の眠る場所を知っている

・・・かもしれないゼンチャンという人物に

会うため、アタシ達はマタセ島を

訪れていた。

 

ゼンチャンはボォフゥ大陸の何処かに

いるという・・・マレドーの話を頼りに。

で、ボォフゥ大陸へは・・・

ここマタセ島から飛行船で向かうのが

最短ルートってワケ。

 

そして・・・・。

ここマタセ島を治めるマタセ国の

国王は・・・・魔物化したあげくアタシ達を

襲ってきたんだけど・・・

アタシ達はやむを得ず魔物になった

彼を亡き者にした。

 

王が原因不明の失踪を遂げたマタセ国の

混乱の収拾を・・・大臣さんに託して

この地を去ったアタシ達。

 

その後の国の様子も・・・当然気になっては

いたので、アタシ達は大臣さんを

訪ねる事にしたの。

 

「大臣・・・・お久しぶりです。

お忙しい最中の面会に応じていただき

まことに感謝します。」

 

「おぉ・・・・これはオリオリ殿!

それに冒険王殿達もっ!

お元気そうで何より・・・でもなさそう

ですか?

随分とお疲れのように見受けられますが。」

 

ハハハ・・・さすがにね・・・・

厳しい戦いの連続なうえに・・・・

厳しい現実を突きつけられたからね。

おまけにもう何日間も野営が続いてる、

もう何日もベッドで寝てないな~(´༎ຶོρ༎ຶོ`)

 

相変わらず優しそうな、柔和な笑みを

携えているマタセの大臣さんが

疲労困憊のアタシ達の様子に、

さすがに気付いて心配をしてくれた。

 

「・・・・詳しい事は存じませぬが・・・

義勇軍としての活動・・・

より厳しいものの連続のようですな。」

 

「いえ、ご心配なく。

大臣のほうこそ!

色々と心労がおありでしょう、

国の様子はどうなっていますか?

王の失踪後、さぞや国中が混乱に

陥っていることでしょう、私達も

気にかけておりました。」

 

「はぁ、それが・・・王は未だ戻られません。

失踪当初は・・・城内の者たちも島民らも・・・

不安がっておりました。

しかし幸いなことに・・・皆、王がいない

こんな時だからこそ!と国中が団結

したのです、おかげでそこまで

大きな混乱も、また暴動も起きず、

以前と変わらない暮らしが続いている

と報告を受けています。」

 

「それはっ!

本当によかった~!

きっと・・・大臣殿の人徳のおかげでしょう。」

 

「いえ、ワシなぞ、何もできぬ、

ただの年寄ですじゃ。

島民達の日頃からの心がけに助けて

もらっているようなもの。

それに・・・・こころなしか、ここ最近は

宇宙政府の圧力が以前に比べ

弱まったような気がします。

以前は毎日のように、このマタセ城にも

見回りと称して政府の者が出入りして

おりましたが・・・一番最後に政府関係者が

やってきたのは・・・いつだったか失念

してしまいました・・・・いやぁ歳を取ると

物忘れがひどくなって困りますわい、

ハハハハ・・・・。」

 

そうなんだっ!

ホントによかった~、事が事だっただけに、

アタシ達、みんな心配してたから・・・。

 

それに政府の圧力が弱まった・・・?

むぅ、それって・・・執行官達が

居なくなったのも関係してるのかも。

だとしたらアタシ達の所業も

無駄ではなかったワケね。

 

うん、打倒政府の意志は・・・

民を幸せにする可能性は十分

あるんじゃないの?ボロンッ!!

 

「ひょっとしたらオリオリ殿達の

活動のおかげかもしれませんな、

政府の圧力の縮小化は。

して、今日はどのようなご用件かな?

よもや挨拶回りだけというワケでは

ありますまい。」

 

「はい、実は・・・・。」

 

オリオリは新しい魔星王の事、

星屑魔法団の事、

宇宙政府の事、

そして・・・ピエールとして生きていくと

決めたボロンの事などを

掻い摘んで大臣さんに語ったわ。

ただ・・・。

 

やっぱり、マタセ王の事については

触れなかったけど。

 

「むむむむ、オリオリ殿、

それはそれは厳しく、お辛い旅路

でござったのですな・・・・。

心中お察し申し上げる・・・・。

で・・・そのゼンチャンなる人物を

探す為にボォフゥ大陸へ渡る、

というワケですな。

ふむ、我島の港から最寄りの港は・・・

確かハルラ港ですじゃ。

ハルラ港便なら飛行船の定期便が

出ておる。

その便で彼の地へ向かわれるのが

よろしいでしょう。」

 

「承知しました大臣、ありがとう。

で、その定期便というのは・・・

次回の出港はいつなのでしょう?」

 

「確認させますが本日はもう終業していると

思います。

明朝なら午前中に2本は便が出ていると

思います。

オリオリ殿、もしご都合に差し障りが

なければ今夜はお城に泊まられては

いかがですか?

厳しい旅と活動が続く貴殿達に、

援助できる事柄が少なく心苦しく

思っております。

せめて一晩のもてなしぐらいは

させていただけぬでしょうか?」

 

っ!!

お城に泊まるっ!!

や~~~ん、泊まりたい、泊まりたいっ!

とにかくベッドでぐっすり眠りたいっ!!

オリオリッ!お願いっ!!

うん、って言ってっ!!!

 

「大臣、お気遣い感謝します、

ありがとう。

ご厚意は・・・我らには過ぎたるもの

かとは思いますが・・・・。

それにレジスタンスグループである

我らをお城に泊めてくださるのは・・・

貴国にとって害をなしてしまうのでは

ありませんか?」

 

ゲッ!

ダメなの、ねぇダメなの!?

でもそうか、アタシ達を泊めたせいで

マタセ国が宇宙政府に睨まれちゃったら

申し訳ないか・・・・。

 

「その点はご案じめさるな、

先程も申し上げた通り、ここ最近は

政府関係者もとんと訪れなくなりました、

一晩ぐらいなら心配は無用ですじゃ。」

 

「そうですか・・・では。

親愛なる友人のお気持ちを無下に

退けるのもまた失礼にあたりますね。

ゆえに・・・お気持ち、有り難く頂戴します。」

 

「やった~~~~~!!!」

 

「えっ!?リザさん!?」

 

「モガー!ビックリしたぞリザ、

急に大きな声で叫ぶなんてっ!」

 

ハッ!

しまった、あまりにお城に泊まりたい想いと、

オリオリがいったん遠慮するような口ぶりで

もったいぶるから・・・・

思わず歓喜の叫びが出てしまったΣ(゚д゚lll)

 

「ホッホッホ、どうやら冒険王殿は

心良く我らの申し出を受け取ってくれる

ようですな。」

 

ヒャー!

は、恥ずかしいっ!!

皆の注目を集めてしまい、しかも下心も

露呈してしまい、アタシは顔から火を吹く

ような思いだった。

 

「確かに厳しい戦いはもちろんのこと、

時間との戦いの連続でもあり、

ゆっくり休息を取ることがままならなかった

のも事実。

戦いを担ってくれているリザさん達の

疲労回復も重要なミッションです。

ゆっくり休ませていただきましょう。」

 

や、やった!

恥ずかしいけどっ!

お城に泊まれるなんて、めったに

体験できない出来事だもんねっ!

 

「それでは、係の者に支度をさせます。

ワシは執務に戻りますゆえ、

ひとまず失礼させていただきますじゃ、

皆様方、どうぞごゆっくり、

旅の疲れを癒やされますよう。」

 

「大臣、本当にご厚意感謝いたします、

ありがとうっ!」

 

大臣さんは一礼すると部屋を

出ていった。

ホントにっ。

あの野心家の国王とはえらい違いの、

心優しい人だ。

 

「フフン、リザ~~~。

そんなにお城に泊まるのが嬉しいのか?

相変わらず子供っぽいな~リザは。」

 

「フフフ、でも。

そこがまたステキなんですよ~

リザ殿は。

あんなに強くて凛々しいのに、

ひとたび戦闘を離れれば

子供らしいところや女子っぽい

ところがおありで。

だからコッツはリザさんが好きなんですぅ。」

 

うぅぅぅ、モガ丸とコッツがアタシを

イジってくる~。

コッツは・・・そんな意識はないんでしょうけど、

その無邪気さが余計にアタシに突き刺さる。

 

「フフフ、雲海アイスの時も

リザさんはおかしかったですもんね、

クス。」

 

ゲッ!

ここぞとばかりにオリオリまでっ!

そんな随分の前のことまで持ち出してっ!

 

アタシ達は・・・・。

新たな大陸の冒険の前の束の間の休息を、

ここマタセで取ることができた。

 

マタセ国にとっては悲惨な出来事が

あったワケだけど、今は今の状況で

大臣さんを筆頭に国民全員が

国を盛り上げようと懸命に生きている。

 

心に引っかかっていた懸念の1つが

取り払われた安心感と、

厳しい戦いが続いた疲労感とで

アタシ達はその夜、お城でぐっすりと

眠ってしまった。

 

そして明日から。

また新しい大陸での冒険が始まる。

 

惑星クラウドのコア、すなわち新しい

魔星王の眠る場所を知るため、

その場所を教えてくれるであろう

ゼンチャンという人物を探すために

ボォフゥ大陸へと向かうところから

新しい冒険は始まるの。

 

魔星王を味方にし、打倒宇宙政府を

成し遂げるために。

宇宙の平和を取り戻す、その指導者に

ならんとするオリオリを支えるために。

 

アタシ達の冒険は続くの。




★★★登場人物★★★
・魔道士リザ
本編の主人公、つまりアタシ。
職業は賢者。
偉大な魔道士を目指すべく
日々、冒険を通じ修行をしてるの。

・ジョギー
アタシの弟。
職業はバトルマスター。
得意な武器は剣。

・レイファン
末の妹。
職業はスーパースター。
回復行動に優れ、オンステージという
スキルで味方をサポートする役割が多い。

・モガ丸
モモンガ族。
おっちょこちょいで時に空気を読まない
発言が多い。けど憎めない、アタシ達の
一番の友達であり理解者。

・スラッピ
モガ丸といつも一緒にいるスライム。
言葉を話すわけじゃないけど
モガ丸だけはスラッピの話している
ことがわかるらしい。
実はスラッピが人間の言葉を話すと
関西弁だということが判明。

・オリオリ
冒険王の書に似た『宇宙王の書』という
本から現れる謎の女性。
その正体はかつて全宇宙を平和に治めていた
宇宙王の末裔。
かつ宇宙政府打倒を目指すレジスタンスグループ
『義勇軍』の総司令官。
実は既婚者だという事が判明。
これにはアタシもビックリ!

・コッツ
義勇軍3番隊の女性隊長。
宇宙政府との抗争のさなか、自分を除く3番隊の
隊員全員を政府に捕虜として奪われてしまう。
その事に深く後悔と自責の念を抱きながらも
アタシ達と共に懸命に冒険を続け、
上級執行官候補者やピエールとの戦いでは
実際に戦闘に参加するなど戦力面でも
成長を遂げる。
アタシに憧れを抱いている模様\(//∇//)\

・マタセ国大臣
心優しい、国想いの親切な大臣。
国王がいなくなった後の国の混乱を必死に
収めるべく奮闘している。

第7章「白いスライムナイトの覚悟」了
惑星クラウド・ヨンツゥオ大陸編 了

ようやくヨンツゥオ大陸編、終了です。
次回から新大陸編です。

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