魔道士リザの冒険譚(星のドラゴンクエストStory冒険日誌)   作:ジョギー

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アタシは魔道士リザ。
ブルリア星の2代目冒険王姉弟の1人。
かつて全宇宙を平和に治めていた宇宙王。
その末裔であるオリオリは・・・
現在、全宇宙に君臨する邪悪な組織
『宇宙政府』、これに反抗する為
レジスタンスグループ『義勇軍』を率いて
打倒宇宙政府を目指していた。
アタシ達姉弟は義勇軍に参加しオリオリと
共に宇宙政府を打倒する為ここ惑星クラウド
での冒険を続けているの。
さて本日の冒険日誌^_^



エピソード7.「魅了するペテン師」

「覇王斬っ!!!」

 

ズザァァァ!!!

ゴォォォォォン!!!

 

「ガハァァァ!!」

 

「グヘェェェ!!!」

 

上方より巨大な劔が振り下ろされるかの

ごとき衝撃で敵にダメージを与える

ジョギーの凄まじいスキルが手下全体を

壊滅に追いやった。

 

ただ・・・倒された手下の魔物達はその場で

砕け散りロウソクに変化した。

倒した魔物がロウソクに変わるだなんて

初めて見る現象だった。

ただアタシ達は本体である偽ゼンチャンに

集中していたので、その現象にさほど

注意は払わなかったの。

 

さぁ残る敵は偽ゼンチャンのみっ!

一瞬で数的有利を得たわ( ̄^ ̄)ゞ

 

「なっ!なんだとぉ!?」

 

偽ゼンチャンが思わず驚嘆の声を上げる。

コイツは手下の陰に隠れてアタシ達と

距離を取っていたせいかあまりダメージを

負っていないみたい。

 

その手下を全て倒したのでアタシ達は

偽ゼンチャンとの間合いを詰める。

 

「な、何だぁ貴様らっ!

人間でここまで強いヤツは初めてじゃっ!」

 

「残るはアンタだけだ、覚悟しなさいっ!」

 

「う、うるさいっ!これでも喰らえっ!

カァァァァッ!!!」

 

ゴォォォォォッ!!

 

偽ゼンチャンは口を大きく開き炎を

吐いてきたっ!

間髪入れずアタシはブレス軽減の補助呪文を

詠唱するっ!

 

「主神ミトラよ、我らを光の霧で

覆い給う、フバーハッ!!」

 

ギュイイイン!

 

光の霧がアタシ達を覆いブレス攻撃への

耐性を上げる。

その直後に敵の吐いた炎に包まれた!

 

「ヒ〜ヒヒヒヒッ!

燃えろ燃えろぉ!灰になるがよいわっ!」

 

やがてアタシ達を包んでいた炎が収束する。

フバーハのお陰でさほどダメージを負って

いなかったアタシ達が生きて立っている

姿が炎の中から現れた。

 

「な、なぁにぃ!?

い、生きているだとぉ!?

な、何なんだコイツら、本当に人間かえ!?」

 

チャッ

 

ジョギーが剣を構え偽ゼンチャンに

斬りかかる。

 

ビシュッビシュ!

 

偽ゼンチャンの傷から体液が吹き出す。

アタシもジョギーを援護する。

 

「ライデインッ!」

 

バシュッ!

 

「ギョエエ!」

 

雷撃の呪文がヒットし偽ゼンチャンは

派手に吹っ飛び床に打ち付けられた。

 

「グハァ!つ、強い!

な、なんというヤツらじゃ!

・・・・ヒヒ、ヒヒヒ・・・つ、強いのぉ

お前達・・・こんなに強いヤツは

初めてじゃ・・・しかしワラワを倒す事は

叶わぬぞえ〜〜〜。」

 

明らかな劣勢だというのに、偽ゼンチャンは

何故か厭らしい笑みを浮かべた。

なんだ?何を仕掛けてくる?

状態異常か何かか!!

 

「ジョギーッ!何かおかしな事を企んで

そうよっ!早くトドメをっ!!」

 

嫌な予感がしたので勝負を急ぐよう

アタシはジョギーに指示した。

 

「おう!偽物め、命頂戴するっ!

覚悟っ!!」

 

ジョギーが剣を振りかぶった。

その刹那、偽ゼンチャンの双眼が妖しく

光るっ!!

 

ピカァ

 

偽ゼンチャンの双眼から発せられた

光をジョギーはまともに浴びふりおろそうと

していた剣がピタっと止まった。

し、しまった、敵の術中にハマったか!?

 

ガチャアアアン

 

ジョギーの手から剣が離れ落ち床に転がる。

 

「あ、あぁゼン様ぁ、あ、アナタは神・・・

全知全能の神!!

オ、俺は・・・い、いや私は・・・

アナタ様を崇め奉りますっ!」

 

え!?ジョギー!!??

な、何を言ってるの?

 

ジョギーはその場に膝をつき両の手を

胸の前で組み身動きを止めてしまったっ!

 

「に、兄ちゃん!?どうしたのっ?

なんでそんな格好してるのよぉ!!

リザ姉ちゃん、兄ちゃんどうなって

しまったのっ??」

 

これはっ!?なんなの!?

ハッ、みっ、魅了状態か!

 

「あぁゼン様〜。」

 

あちゃあ!

あれは完全に魅入られてるわね、

まずいな、魅了状態か!

この状態異常は放っておけば自然に

解けるんだけど特効薬的な解除手段が

まだ発見されていないの!

しばらくジョギーは使いものに

ならないわね!

 

「ヒーヒッヒッヒ!

かかったね〜、いかに強くてもワラワの

魅力に取り憑かれればワラワを倒す事は

できまいて!

そぉれ、お前らも魅了してやろうっ!」

 

再び偽ゼンチャンの双眼が輝く!

 

「レイファンッ!目をつぶって!

アイツの眼を見ちゃダメよっアタシ達も

やられるっ!」

 

「う、うん!」

 

アタシとレイファンは『魅惑の眼差し』を

回避すべく偽ゼンチャンから顔を背けた。

戦闘中によそ見をするなんて自殺行為とも

言えるけど止む無しだわっ!

 

「ヒーヒッヒッヒ!いいのかいよそ見なんか

してぇ!

さてっこのスキにっ!」

 

アタシ達が顔を背けた一瞬の時間を

使って偽ゼンチャンは何やら呪文を

唱えようとしていた。

緑色に光っている、補助呪文か!?

 

「さぁ面白いモノを見せてやるぞえ、

ザオリクッ!!!」

 

偽ゼンチャンの両手から緑色の光が発生し

手下の魔物達だったロウソクのうちの1本に

留まった。

 

ザ、ザオリクですってぇ!

ザオリクとは死者を蘇生させるという

人智を超えた超現象を実現する呪文!

こんなペテン師のゲスに扱えるような

シロモノではないっ!

そ、それともコイツ、マジで神の化身

だと言うのっ!?

 

しかしアタシの思いとは裏腹に!

それは現実に起こったの!!

緑色の光に包まれたロウソクはみるみる

大きくなり倒される前の魔物の姿に

戻ってしまったの!

 

「モガー!

ジョギーが倒したはずの魔物が

生き返ったぞ!

ど、どうなってるんだ!?」

 

モガ丸が叫ぶ。

けど無理もない、アタシさえも

目の前で起こった事が信じられない。

ほ、本当に生き返った!

 

「ヒーヒッヒッヒ、蘇りし我が下僕よ!

ここでワラワに魅了されておる

この若僧にアレを見舞ってやれぃ!」

 

生き返ったその、小さなイカの魔物が

魅了で動かないジョギーに向かって

何やらスキルを放つ!

 

パァァァァ!

 

そのイカの魔物から鈍い光が発せられ

ジョギーを包むっ!

するとジョギーは立ち上がり、なんと

踊りを始めたっ!

 

「ヒーヒッヒッヒ!

やったぞー、かかったっ!

さぁ、さぁさぁ!踊れ、踊り狂えっ!

死ぬまで踊り狂えぇい!!」

 

さっきまで身動き1つしなかったジョギーが

激しく踊っている!

 

「な、何してんのジョギーッ!

どんだけ敵の術中にハマってんのヨォ!!」

 

アタシとレイファンは踊っているジョギーに

駆け寄り、腕や体を押さえつけた。

けどジョギーは踊りを止めようとしないっ!

挙句にアタシとレイファンはジョギーの

踊ろうとするチカラの強さゆえに

弾き飛ばされてしまった!

 

「キャアッ!」

 

ドスッ

 

アタシとレイファンは床に転がされた。

むむむ〜、ジョギーの高い身体能力が

この時ばかりは逆に作用している、

女のアタシ達2人では押さえつけられない!

 

「こ、これだぁ!」

 

と、カラが物陰から突然叫んだ。

 

「む、村の皆んなぁがやられた時と同じだ、

今のようにゼン様は村人の意識を奪い

そして無理矢理踊らせて体の自由を

奪うんだ、そしてそれを解くことで

自分には全知全能のチカラがあると

信じさせたんだぁ!」

 

「チッ!カラめ、余計な事をっ!」

 

「自分で自由を奪っておきながら

自分でまた自由を戻す、よくよく考えたら

こんなの全知全能でもなんでもねぇ!

こんなペテンにみんな騙されちまったっ!

あぁ、なんて情けねぇ!」

 

なるほど、これがペテンのタネって

わけね、どうやって村人達を騙したのか

謎だったけど・・・確かにこんなの

全知全能でもなんでもないじゃないっ!

 

「フン、カラ、とことんワラワを侮辱する

気かえ?

コイツらを始末したらお前と旦那を

真っ先に殺してやるぞえ!」

 

そう言うと偽ゼンチャンはアタシ達の方に

向き直り攻撃してきた。

 

「喰らえっ『タイフーン』!!」

 

ビュオオオオ

 

凄まじい突風が発生しアタシ達を襲うっ!

 

「キャアッ!」

 

アタシとレイファンはもろにその攻撃を

受けてしまい吹っ飛ばされたっ!

 

「ヒーヒヒ!

さぁさぁ踊るヨォ、カツオ節をまぶし

踊り踊ってさぁ!」

 

偽ゼンチャンはアタシ達が倒れたのを

見て気分が良くなったのか激しく腰を振り

『カツオ節まぶし』で踊る踊りを

踊り始めた、悦に入っているっ!

 

踊りながらそして再び蘇生呪文を

詠唱したっ!

 

「ザオリクッ!」

 

さらにもう1本のロウソクが魔物へと

変身する。

そ、そうか、死者を蘇生するというよりは

ロウソクを魔物に変身させ、それを操ってる

といった方が正しいのかっ!

本物のザオリクじゃなくて、妖術の類ね、

まんまと騙されたわ、ったく!

何から何までペテンなのねっ!

 

とは言え、このロウソクから生まれた魔物

にジョギーが踊らされてる、アタシや

レイファンまでその術にかかると厄介ね、

一気に倒すしかない。

 

「我が友人の傷を癒し給う、ベホマラー!」

 

パァァァァ

 

レイファンが回復呪文を詠唱した。

さっきまでの攻撃で受けた傷が癒えていく。

 

「レイファン、アタシに『こだまする光撃』

をかけて、一気に倒すよ!

厄介な妖術やペテンで惑わされ気味だけど

倒してしまえばきっと解除するわ。」

 

「うん、そうだね、早く兄ちゃんを

解放してあげよう。

・・・こだまする光撃を我が姉リザにっ!!」

 

レイファンが扇を天に向かって突き上げる!

黄金色の光が生まれアタシの体へと

移動する。

アタシは呪文を詠唱する!

 

「猛きイカヅチの精霊よ、正義の稲妻で

我が敵を討ち滅ぼせっギガデインッ!!!」

 

バチバチバチィィィィィ!!!

 

さらにこだまする!

 

バチバチバチィィィィィ!!!!

 

「ウギャアアアアア!!!」

 

蘇った2体の魔物は凄まじい電撃で

砕け散り、後方で踊っていた偽ゼンチャン

にも2発の電撃は直撃した!

さらにっ!!

 

「炎の精霊グァモン・カクリティスよ、

紅蓮の炎でっ!我が敵を灰燼と化すまで

焼き尽くせっ!メラガイアー!!」

 

ゴォォォォォ、オオオオオオオオ!!!

ドォォォン!!!!

 

連続呪文でさらに偽ゼンチャンに

追い討ち、メラガイアーはアタシの

偽ゼンチャンへの怒りが乗り移り

暴走したっ!!!

 

「ギィエエエエエエエエエエッ!!!!」

 

極大の火球が偽ゼンチャンに炸裂っ!

派手に吹っ飛び壁に激突しそのまま

床へと打ち付けられた。

雷撃2発と極大の火球を喰らい、偽物は

真っ黒な焦げカスへと変貌し息絶えた。

 

ふぃ〜勝ったっ!

何から何までペテン野郎だったわね。

 

「ハッ!?オ、オレはっ??

どうしたんだっ!?

偽ゼンチャンに剣を振り下ろそうとして

ヤツの眼を見てから記憶が・・・。」

 

よかった、ジョギーにかけられた妖術も

無事解除されたみたいね。

 

「偽ゼンチャンの妖術にかかってたのよ、

けどもうやっつけたから大丈夫よ。」

 

「え、ええええ!?

な、なんと情けない、す、すまなかった

姉ちゃん、レイファン。」

 

「まぁ厄介な妖術だらけで面食らったけど

本体が強くなかったからね、助かったわ。」

 

さて厄介なペテン師も退治したし、

これでこの地方一帯に平和が戻れば

いいんだけど。

ただ、ゼンチャンの情報に関しては

振り出しね、0から情報集めをしないと。

 

「モガー!リザ達!

ちょっと手こずったけど流石だったな!」

 

「お疲れ様です、リザ殿達っ!」

 

「に、偽ゼンチャンをやっつけちまった

・・・こ、この人達は一体・・・」

 

「ズゥオオオッ!リザーー!!

おまんらめっちゃくちゃつえーんだな!

オラたまげたぞぉ!」

 

仲間達が駆け寄ってくる。

 

「これで村人達が苦しむ事もなくなる、

時間はかかるかも知んないけど、

また村や港が元の様子に戻るといいわね、

ドゼウ。そしてアナタ達夫婦も。」

 

そう言うとカラが神妙な面持ちで

語り始めた。

 

「リザ・・・と言ったか、魔物をやっつけて

くれて助かっただ、どうもありがとう。」

 

う、うん、カラが初めてアタシに向かって

話しかけてくれた。

そしてドゼウに向き直る。

 

「ドゼウ、すまんかった。

私、ゼン様が偽物で魔物だって事、

誰にも言えんくて。

そのせいでどんどんゼン様の横暴は

大きくなっていき、やがて村全体、

この地方一帯にまで不幸が及んでしまった

事、悔やんでも悔やみきれねぇ、

どんだけ謝っても足りねぇっ!」

 

カラがその思いを語り始めた。




★★★登場人物★★★
・魔道士リザ
本編の主人公、つまりアタシ。
職業は賢者。
偉大な魔道士を目指すべく
日々、冒険を通じ修行をしてるの。

・ジョギー
アタシの弟。
職業はバトルマスター。
得意な武器は剣。

・レイファン
末の妹。
職業はスーパースター。
回復行動に優れ、オンステージという
スキルで味方をサポートする役割が多い。

・モガ丸
モモンガ族。
おっちょこちょいで時に空気を読まない
発言が多い。けど憎めない、アタシ達の
一番の友達であり理解者。

・スラッピ
モガ丸といつも一緒にいるスライム。
言葉を話すわけじゃないけど
モガ丸だけはスラッピの話している
ことがわかるらしい。
実はスラッピが人間の言葉を話すと
関西弁だということが判明。

・オリオリ
冒険王の書に似た『宇宙王の書』という
本から現れる謎の女性。
その正体はかつて全宇宙を平和に治めていた
宇宙王の末裔。
かつ宇宙政府打倒を目指すレジスタンスグループ
『義勇軍』の総司令官。
実は既婚者だという事が判明。
これにはアタシもビックリ!

・コッツ
義勇軍3番隊の女性隊長。
宇宙政府との抗争のさなか、自分を除く3番隊の
隊員全員を政府に捕虜として奪われてしまう。
その事に深く後悔と自責の念を抱きながらも
アタシ達と共に懸命に冒険を続け、
上級執行官候補者やピエールとの戦いでは
実際に戦闘に参加するなど戦力面でも
成長を遂げる。
アタシに憧れを抱いている模様\(//∇//)\

・ドゼウ
全知全能のオンナ「ゼンチャン」に恨みを
抱く男性。
どうもゼンチャンはペテン師で、彼の奥さん
がゼンチャンに騙されたあげくお金を
たくさん騙し取られた事が原因で
夫婦は離婚の危機に陥ってしまったらしい。
ゼンチャンの悪事を暴くべく彼女を
必死で探しているらしいの。

・カラ
ドゼウの奥さん。
全知全能の神の化身と嘯くゼンチャンを
モロに信じ込んでしまっている。
そして多額のお金をゼンチャンに
渡してしまい、ドゼウと離婚の危機に
陥ってしまうが、それを悪びれもせず、
逆にゼンチャンを信じない夫を
激しく罵倒する始末。
しかし、それはカラの演技だったの。
彼女は実はゼンチャンが魔物で
ゼンチャンの名を騙る偽物だと
言う事を見抜いていたの。

・偽ゼンチャン
突然、ハルラ地方に現れた自称「全知全能の神」。
カツオを集め妖しげな儀式をもって人々を
幸せに導くという教えのもとキジキ村の人々を
盲信へと導き金品をだまし取っていた。
その正体は魔物でゼンチャンの名を騙る
偽物である事が発覚する。


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